青色申告する場合、「これは経費になるの?」「これは経費にならないの?」とお悩みになることがあると思います。
そこでこの記事では、青色申告の際、「経費になるもの」と「経費にならないもの」の選別の仕方について解説します。
青色申告で経費になる基準とは
はじめに青色申告における経費の考え方についてお話しします。
実は経費になるかどうかの仕分け方はシンプルです。
経費になるものは「その事業にかかわるものか」が判断基準です。
事業にかかわるものは「経費」、事業と関係ないのもは「生活費」となります。
たとえば、テレビや雑誌の取材で写真や動画撮影を受ける場合、ボサボサ頭で出れば企業のイメージが台無しになってしまいます。
そこで美容院に行ってカットする場合、これは広報的な意味合いが大きいため「広告宣伝費」で経費とすることができます。
一方、毎月定期的に通う美容院代は、テレビや雑誌の取材といった名目もなく、経営者の身だしなみに必要と訴えても個人負担になります。
身だしなみを整えることは一般的で、業務に必要な特別な理由がないからです。
このように同じ美容院代でも、「業務にかかわるもの」と認められるときは、経費にすることができます。
迷ったときは、「これは業務に関係あるものか」を基準にすると仕分けしやすくなります。
経費に上限はあるか?
経費に上限はありません。
業務に関係するものならいくらでも経費に計上することができます。
経費の額が多くなれば、その分だけ税金の対象となる利益がへりますので、節税効果を得られます。
ただ節税効果は得られますが、経費が多くなった分だけ手元のお金が減りますので、節税目的の経費の使いすぎには注意が必要です。
経費に上限はないが「割合」は大事
経費に上限はありませんが、売上に対して経費の割合が高くなると、チェックの対象になることに注意しましょう。
税務調査では「売上に対して経費の割合が多すぎないか」「同業他社と比べ経費が多くないか」をチェックされているのです。
仮に経費の割合が少なくて、それを否認できたとしても、追徴課税できる金額はしれていますし、調査官の評価も上がりません。
同じ調査するなら金額が大きいものを狙うのは、人として合理的な考えです。
ですから、上限がないからと経費を使い過ぎると、後々厳しいチェックに合うことになるので注意が必要です。
青色申告で経費になるもの一覧
- 仕入れ高:仕入れた商品や材料などにかかる費用
- 旅費交通費:移動費や宿泊費など
- 接待交際費:取引先や得意先の接待費用、事業に関わる人との交際費用
- 広告宣伝費:商品やサービスの宣伝に使う費用
- 租税公課:税金や公共料金として支払った費用
- 水道光熱費:事業に使った水道・電気・ガスなどの費用
- 通信費:インターネット代、電話代、切手代などの事業に使った通信費用
- 損害保険料:自動車の損害保険や事務所の火災保険などの保険料
- 修繕費:建物などの修繕費用
- 消耗品:10万円未満、もしくは法定耐用年数が1年未満のものを購入する際の費用
- 減価償却費:建物や器具備品などの固定資産を決められた年数で計上する費用
- 福利厚生費:従業員用の社会保険料、健康診断料、従業員の懇親会費などの費用
- 地代家賃:事務所や駐車場等の土地や建物の賃借料
- 荷造運賃:配送料や荷物の梱包材料費などの費用
- 外注工賃:外部の業者に業務委託した場合の費用
- 利子割引料:借入の支払利息や手形の割引料などの費用
- 専従者給与:青色申告者の専従者(親族)の給料
- 雑費:他の勘定科目に該当しない少額の費用
個人の費用も一部は事業の経費にできる
個人事業主やフリーランスの場合、個人の持ち物を事業に使っていることも多くあります。
たとえば自宅の一部を事務所や仕事場として使っている場合などです。
さらに自宅兼事務所の場合は、水道光熱費や通信費といったものも、事業とプライベートの費用が混在しています。
このようなプライベート兼事業用の支払いは、実際に事業に使った割合を求めて、その割合分だけ経費にすることができます。
これを家事按分といいます。
事務所費用なら、「支払い家賃×業務使用面積の割合」、水道料金や電話料金は、1か月のうちどれくらいの時間業務で使用したかを割り出し計算します。
家事案分することで、個人の費用の一部を事業用として経費にすることができます。
繰り返しますが、税務署は経費の割合に注目しています。
経費の割合に不審な点があれば、それを調査すれば追徴課税できるかもしれないと考えます。
どうせ調査に入るなら、何らかの成績を残したいですよね。
ということは調査の対象になるかどうか、選別の時点で対象から外されることが大事ということです。
たとえば、自宅兼事務所なのに事務所の負担割合が80%なら、「事務所として使っている部分もあるが、プライベートな部分も含めているだろう」と推測し、税務調査の対象とすべきと考えるでしょう。
しかし、事務所割合いが50%ならどうでしょうか?
もし税務調査に入ったとしても、反論も想定され、否認もしづらくなります。
たとえば50%を否認して30%が適正だと指摘する場合、それを証明する証拠を調査官側が提示しなくてはいけません。
要は、とっても面倒くさいわけで、仮に否認できたとしても自身の成績はそれほど上がりません。
こんなところにわざわざ税務調査に出かけていくでしょうか?
したがって経費の割合をあえて抑えることが、調査の対象から外すことにつながるのです。
青色申告で経費にできないもの
借入金の元本
借入金の元本の返済は、借りていたお金を返しただけのことですので、経費にはなりません。
その一方、借入れに対する支払い利息は経費になります。
返済の元本部分と支払い利息は別々にわけて経理処理しなくてはいけませんので注意しましょう。
敷金
敷金は経費ではなく「資産」として処理します。
敷金は退去時に戻ってくるものなので、経費にならないのです。
事業所を借りるときの礼金
礼金は金額が20万円未満の場合は一括して「地代家賃」で経費として処理します。
20万円以上の場合は資産として処理し、賃貸する期間や5年間で「長期前払費用」で減価償却します。
1点の購入価額が10万円超のもの
1点10万円超の購入価格のもの(パソコンや機械など)は一括して経費計上するのではなく「固定資産」としていったん計上します。
その後、定められた法定耐用年数に応じて「減価償却費」として経費にしていきます。
スーツやカバン代
スーツやカバンは事業に使うものなので経費になると思われるかもしれませんが、基本的には経費にできません。
例外としては、そのスーツやカバンを業務以外に使わないのであれば、経費にできます。
生計を一にする家族・親族への支払い
原則として、個人事業主が生計を一にする妻や夫、両親、子供など家族や親族に対して給料や報酬、家賃などの支払いを行っても経費にすることができません。
ただし、青色事業専従者給与の届出を出した家族・親族で、条件を満たす場合のみ、給与を経費にすることができます。
経費にならないものを経費にするのはリスクがある
個人で購入するより事業の経費で落とせた方が、お得なのは誰でもわかることだと思います。
そんなとき「ちょっとくらいプライベートな費用を経費にしてもわからないのでは」と悪魔のささやきが聞こえてくるかもしれません。
しかし、そこでいったん立ち止まって考えましょう。
本来経費にできないものを経費にして発覚したときは、追徴課税という余計な税金を納めることになる可能性があります。
経費の世界にはのりしろがあって、厳密にここからここまでが経費と分けられるものではありませんが、少なくとも経費を否認されたときはリスクがあることを認識しておきましょう。
それが悪魔のささやきに対抗するストッパーになります。
青色申告で経費にするために必要なもの
業務にかかわる商品・サービスの購入費用を経費にするためには、購入した証拠を残しておかなくてはいけません。
証拠になる書類は
- 領収書
- レシート
- 出金伝票
があります。
経費にするには「領収書じゃないとダメ」と思われているかもしれませんが、実際はレシートや出金伝票でもかまいせん。
出金伝票は、香典や結婚祝いなど、領収書がもらいにくいときに使います。
ただし、レシートの場合は宛名(誰が購入したか)がありませんので、高額なものを購入するときは、領収書の方がふさわしいです。
領収書の保管期間
領収書やレシートは、一定期間保管しておかんくてはいけません、
では、領収書やレシートの保管期間はどれくらいでしょう?
法律や法人・個人事業主の違いがあって、一概にはいえませんが、「法人は10年、個人は7年」と覚えておくと間違いないです。
なお、領収書は電子データでの保存も認められています。
2017年には、スマホやデジカメで撮影した領収書やレシートの電子保存が可能になりました。
電子データでの領収書の場合、収入印紙も不要といったメリットもあります。
今後はどんどん活用していきたいところです。
・領収書をPDF(電子データ)で発行すれば収入印紙を貼らなくていいって本当?税務署に電話して確かめてみた!
まとめ
青色申告の「経費になるもの」と「経費にならないもの」の選別の仕方について解説してきました。
よくわからなかった経費になるかならないかの基準も、「業務にかかわりあるも」と考えれば、かなり仕分けしやすくなると思います。
この記事が参考になれば幸いです。
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