経営を効率化するためには、無駄な資産を持たず、その分キャッシュの残高を増やすことが大切です。
そのためには貸借対照表の固定資産に計上されているもので、事業とは関係ない有価証券、不動産、ゴルフ会員権などを売却してしまうのも方法です。
そうすれば貸借対照表はスリムになり、効率的な経営を行うことができます。
しかし売却しても購入当初より値が下がった状態なら、赤字となってしまい、そのことで躊躇してしまうかもしれません。
「どうせ売るならトントンか値上がりしたところで・・・」、そう思うのが人情です。
ですが、値下がりした状態で売却しても、丸々損になることはないのです。
損失分を節税すると発想を変えれば、赤字でも売却することにためらいがなくなります。
ROAを意識した経営
事業を成長させようとするなら、余計な資産を持っておくことは賢明とはいえません。
事業の経営効率を見る指標「ROA」からしても、無駄な資産を持っているということは、それだけ非効率な経営を行っているということです。
たとえば同じ1億円の売上をあげるのにでも、資産を5000万円使って売上をつくるのと、資産を3000万円使って作るのでは、どちらが経営効率が良いかという話です。
答えを聞くまでもなく、経営効率が良いのは後者です。
事業に関係ない資産を持つということは、無駄に会社の資産を膨らませているだけで、効率の観点から視れば余分なお荷物というわけです。
そんな資産ならさっさと売却処分してしまった方がいいでしょう(他人事)。
しかしトントンならまだしも、値下がりした状態なら、売るだけ損で、それなら塩漬けしておいた方がまだましと考えられるかもしれません。
値下がりで売却しても60万円返ってくる
ですが、含み損を抱えて売却した場合でも、実は丸々損になるわけではないのです。
たとえば、帳簿価格500万円の有価証券を時価300万円で泣く泣く売却したとします。
このとき売却損が200万円発生します。
・500万円-300万円=200万円
ほら見たことか、200万円も損じゃねーかと声を荒げる前に少しお待ちください。
たしかに200万円の損失は出ますが、その分だけ利益が圧縮され法人税が減ることになります。
仮に法人税率を30%で計算するなら、60万円の節税効果を生んだことになり、その額だけ手元に返ってくることになります。。
・200万円×30%=60万円
つまり、売却代金の300万円と節税分60万円の合計360万円キャッシュが増えることになるのです。

にっちもさっちもいかなくなって、半ば眠らせていたお金が事業に活かせるばかりか、節税効果で60万円というオマケまでついてくるのです。
値下がりした状態でも売る価値はあるでしょう。
名義変更プランで節税するスキーム
ちなみに、この売却損を利用したスキームに、低解約返戻金型の逓増定期保険の名義変更プランがあります。
ここからは少し長いので、興味のない方は読み飛ばしてください。
低解約返戻金型も逓増定期保険とは、5年などの一定期間の間は解約したときに返ってくるお金が低く抑えられているのですが、5年を過ぎると一気に解約返戻金が増えるタイプの保険送品です。
5年を経過した後は、徐々に解約返戻率が下がっていきます。

したがってこの商品のうま味を享受するため、5年目に解約することになります。
この4年目と5年目の返戻率の落差が、このスキームのポイントです。
仮に以下の低解約返戻金型の逓増定期保険に加入したとします。
- 年間保険料:500万円
- 4年目までの解約返戻金率:20%
- 5年目の返戻率:95%
まず4年目までは法人で保険料を支払います。
法人の負担した保険料の累計は2000万円です。
このときの保険の価格は解約返戻金相当額なので、法人保険の時価は400万円です。
・2000万円×20%=400万円
そして解約返戻金がピークになる5年目に、法人から社長個人へ名義変更を行います。
法人から個人へ名義変更する際は、社長は解約返戻金相当額で法人から買い取らなくてはいけません。
したがってこのときの買い取り額は400万円です。
まとめると、法人は2000万円の保険料を支払った保険を、社長個人に300万円で売却するわけです。
400万円で買い取った保険が2375万円に
そして法人から保険を買い取った社長は、5年目の1年間だけ保険料を支払い、その後解約します。
すると受け取れる解約返戻金は2375万円です。
・保険料総額:500万円×5年=2500万円
・解約返戻金:2500万円×95%=2375万円
社長は個人で支払った保険料500万円と法人から買い取った400万円で、2375万円のお金を手に入れれるのです。
この後も一時所得課税で有利な税制を受けられるわけですが、これが簡単な説明ですが、低解約返戻金型の逓増定期保険の名義変更プランです。
だから何なんだという話ですが、実はこの名義変更プランは社長個人が得するだけではありません。
会社にも名義変更時に大きな損失を作れるというメリットがあるのです。
法人側に大きな損失を作れる
原理は先ほどの有価証券の含み損と同じです。
会社は支払った保険料2000万円の保険商品を、社長に400万円で売却するわけです。
ここでは話を簡単にするため、保険料の損金については省きます。
すると会社の損失は1700万円になります。
・400万円-2000万円=1600万円
つまり損失の分だけ法人税の支払いを免れることができるのです。
名義変更プランの詳しい解説は下記記事をご覧下さい。
・法人保険の逓増定期保険・名義変更プランで個人買取し、節税する方法
そしてここからが重要ですが、この損失を作るのは損金割合が大きくなるほど効果は大きくなります。
まだ通達は出ていませんが、今のところ解約返戻率が85%を超える場合、1年から10年は9割を資産計上する見込みです。
となれば、です。
名義変更プランを使った場合、名義変更時に多額の損金を作れてしまうことになるのです。
事業承継時、法人の株価を低く抑えるときなどにも使えますね。
ちなみに、から長い説明でしたが、要はそういうこともできてしまうということを伝えたかっただけです(棒読み)。
※名義変更プランが利用できるかは、今後発表される通達次第となります。
まとめ
有価証券や不動産など、たしかに会社の資産ですが、それが収益を生み出していないのなら、思い切って売却するのも方法です。
たとえ値下がりしていても、売却損が出れば、その分だけ節税できてお金が返ってきます。
損の部分だけ目をやるのではなく、見方を変えればプラスになることもあります。
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