重加算税を回避するために知っておきたいポイント

節税対策

ご存じだと思いますが、税金にはペナルティがあります。

申告期限までに税金を納付しなかった、納めるべき税金を納付しなかった、こんなときに課せられるペナルティです。

その中に「これは悪質だ」と税務署が認識した場合、「重加算税」を課せられることがあります。

もし重加算税と指摘を受けた場合でも、慌てることなく反論すれば、その指摘を取り消せる可能性があります。

重加算税は踏んだり蹴ったり

申告が適正にされなかった場合や源泉徴収義務を怠った場合に課せられるペナルティに、過少申告加算税、無申告加算税、不納付加算税、重加算税の4種類があります。

とりわけ重いのが、事実の一部を隠ぺいし、または仮装した場合に課せられる重加算税です。

重加算税は追加本税の35%~40%にもなります。

そして重加算税の課せられた会社は、「過去の調査事績及び資料情報等から不正計算が想定され、特に注視する必要がある法人」として、国税のデータベースに登録されてしまいます。

その結果、税務署に目を付けられ、税務調査の頻度が多くなってしまうのです。

そのことが銀行に見つかれば、格付けも下げられてしまいます。

まさに踏んだり蹴ったりのペナルティが重加算税なのです。

経営者であれば、どうやっても避けたいところです。

重加算税が対象なのは隠蔽・仮装したとき

ところでこの重加算税、どんなとケースで課せられるペナルティでしょうか?

重加算税は先ほども触れたように、意図的に「隠ぺい」や「仮装」をしたと認められた場合です。

その中に納税者側の「ミス」は含まれていないのです。

要は単なる「ミス」の場合でも、税務調査官に「重加算税」と指摘され、それをそのまま受け入れてしまっているケースが多々あるのです。

重加算税がどういう場合に課せられるのかは、下記記事を参考にしてください。

どういう場合に重加算税が課せられるのか?

重加算税が取り消されたケース

たとえば、次のケースです。

窓口で顧客から直接手渡された現金50万円を、社員のAさんは入金帖に記載しました。

しかし経理処理のミスにより、この売上を総勘定元帳に記載することを忘れてしまいました。

税務調査の入った時点で、その50万円の所在は不明です。

そしてそのことを調査官から指摘された会社側は、「使ってしまったかもしれない」回答しました。

その回答を持って仮装・隠ぺいがあったとし、国税は重加算税を課したのです。

ですがそれを不服とした納税者は、裁判に訴えました。

その結果、国税不服審判所は、納税者の主張を認め、重加算税を取り消す判決を下したのです。

その理由は、

「売上計上もれは事務処理のミスで、納税者が「積極的に」売上を除外したと認定できる事実もない」

です。

よって仮装・隠ぺいに当たらないので、「重加算税ではない」としたのです。

この判例のケースでは、社員Aさんは最初の段階で入金帖に、50万円を受け取ったことを記入しています。

もし意図的に隠ぺいしようとするなら、そもそもそんな記録を残さないでしょう。

これは裁判所も認めるように、単なる売上げを計上することを忘れていた「ミス」である証拠です。

にもかかわらず、国税は「重換算税です」と指摘してきたのです。

ただの「ミス」なら反論する

で、何がいいたいか?

と申しますと、税務調査で「重加算税です」といわれても、あなたに仮装・隠ぺいを意図的にした事実がなく、単なるミスであるのなら、過少申告加算税にしかならないということです。

過少申告加算税とは、申告期限内に提出された申告書に記載された納税額が過少であった場合に課される税金です。

新たに納めることになった税金の10%相当額が課されます。

なお、自主的に修正申告をすれば、過少申告加算税はかかりません。

要するに、重加算税よりペナルティの重さが軽いのが、過少申告加算税なのです。

本来であれば過少申告加算税で済むものを、調査官の思い込みで重加算税にされてしまったのではたまったものではありません。

しかも悪質な企業として登録までされ、しばしば税務調査を受けることにもなります。

ちなみに上記の判例は、毎回愛読している、税理士の見田村先生のメルマガから引用させていただきました。

大変役立つ見田村先生のメルマガの登録はこちらからできます。

重加算税を指摘できるのは簡単ではない

それに重加算税を立証する責任は、税務署側にあります。

「重加算税です」と指摘して「はい、そうですか」とおめおめと認めてしまえば、実はホッとしているのは調査官側なのです。

納税者側に、意図的に隠ぺい・仮装した事実がないのなら、そこで慌てず反論すべきなのです。

加えていえば、税務署が誤りを指摘するのは、納税者の用意した資料からです。

それすなわち、「隠ぺいする気がないから提出できた」とも反論できるわけです。

そこから納税者側の反論を覆すためには、よほどの確証がない限り、立証することはむずかしいでしょう。

重加算税とは、本来簡単に指摘できるものではないのです。

まとめ

重加算税について解説してきました。

重加算税が対象なのは、意図的に隠ぺい・仮装したときです。

単なるミスは対象ではありません。

もし隠ぺい・仮装した事実がないなら、堂々と反論しましょう。

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