銀行から融資を断られたとき資金繰りを改善する3つの対処策

財務改善

「借りたいときに借りられない」

多くの中小企業にとって銀行の融資とはそんなものかもしれません(ただそれは、銀行融資を意識した経営を行ってないためともいえますが)

中小企業がお金を借りたいときとは、事業を成長させたいときか、業績が悪くなってきたときです。

このうちお金が借りられなくて困るのは、売上減になって業績が落ちてきたときです。

銀行は雨の日には傘を貸さないという話がありますが、状況が悪くなるほど、融資を受けることは困難になります。

では銀行から融資を断られたときはどうすればいいのでしょう?

そんなとき焦らずあなたがすべき対処策を解説します。

資金調達は早めの行動が何より効果的

対処策の前に基本的なことですが、資金調達を行うには早め早めの行動を起こすのが大切です。

大手の取引先がいきなり倒産した(本当に何の前触れもなく突然に)というなら別ですが、業績が傾いてくるのは徐々にです。

そして経営者は、まだ大丈夫、まだ大丈夫、何とか持ち直す、と問題を先送りにし、資金繰りがヤバくなったところで重い腰をようやく上げます。

しかし状況が悪化してからでは遅いのです。

融資に見る会社の財務状況とは

  1. 全額プロパー融資→財務内容が良い
  2. 一部プロパー融資・残りは信用保証協会保証枠→財務内容は普通
  3. 全額信用保証協会保証枠→財務内容は良くない
  4. 融資不可→財務内容は悪い

なのです。

全額信用保証協会付き融資で借りているのなら、その段階で融資を断られるのは、銀行は会社の財務内容が悪くてこれ以上は無理と判断しているのです。

ですから、2の状態にあるなら2のうちに、3の状態にあるのなら4になる前に融資を申し込んで、少しでも資金調達しておきべきなのです。

とはいえ、今さらいったところでどうしようもありません。

状況が悪化して融資を断わられたのなら、次の対処策を行いましょう。

資金繰り表で現状を確認

まず資金繰り表で現状を確認しましょう。

資金繰り表とは、現金収支をまとめた表になります。

いつ入金があって、いつ出金があるのか、それが一見してわかります。

資金繰り表を作ることで、お金が不足するタイミングがわかるので、突然の資金ショートを防げます。

キャッシュフロー表との違い

同じように「現金の支出」をまとめた資料に「キャッシュフロー計算書」というものがあります。

キャッシュフロー計算書は、決算書(貸借対照表・損益計算書)を作った時点で、同時に作れるものですが、同じ現金の支出をまとめた資金繰り表とは決定的な違いがあります。

それがキャッシュフロー計算書は、「過去」の一定期間のキャッシュの支出を計算した資料ということです。

それとは反対に、資金繰り表はこれから起こる「未来」に対して予測・確認を行うために作る資料です。

キャッシュフロー表と資金繰り表では、その役目がまったく違うのです。

1年間の総括のキャッシュフロー表で間に合うのは、資金繰りに余裕のある会社です。

業績が悪化して資金繰りの問題が生じている会社は、資金繰り表でタイトにキャッシュを管理しないとダメなのです。

ちなみに、業績がもっと悪くなると日にち単位での管理、「日繰り表」が必要になります。

日繰り表で管理しなくてはいけないのは、いつ資金ショートが起こってもおかしくない企業です。

可能な限り細分化して支出と出金を管理しましょう。

この期におよんでどんぶり勘定はアウト

いずれにしても、融資を断れらた段階で、どんぶり勘定で何とかしようとするのは間違いです。

数字による管理で、客観的に状況を把握し、それを乗り切る術を見つけ出さなくてはいけません。

資金繰り表を作るという作業を通じて、自分の会社にどれだけの時間的余裕があるかを把握します。

資金繰りを改善する3つの対処策

時間の余裕を把握したら、資金繰りの改善を行います。

資金繰りを改善するためには、

  1. 支出を減らす
  2. 資金を増やす
  3. 売上げを増やす

の順番で取り組みます。

対処策1・支出を減らす

売上を増やすことはいうは易しで、相手があってのことで簡単ではありません。

これは資金的余裕ができてからの後回しです。

一方、支出を減らすは自社でコントロールすることができ、しかも減らせばその月から効果を発揮します。

最初に着手するのは、支出を減らすことです。

対処策2・資金を増やす

それと同時に資金を増やすことも行います。

資金を増やすのは売上を上げるだけが方法ではありません。

売上を上げるためには、あらたな資金が必要になり、実は現実的ではないのです。

たとえば資金が枯渇した状態で売上を急回復させようとしたら

  • 仕入れ資金が必要になるうえ、代金回収前に支払い日が到来する
  • 従業員の労働時間が増え、代金回収前に給料の支払い日が来る
  • 売掛金の支払い日を延ばされる可能性が出てくる
  • 増産に走り、不良在庫になる可能性が高くなる

といったふうに、売上資金の回収前に、キャッシュがどんどん流出する現象が起こるのです。

新たな売上げで資金を作ることが目的なのに、逆に資金ショートの可能性が起これば本末転倒です。

ですから売上を作ることより、資金を増やすことが先決になります。

ただし、高金利の消費者金融や、ファクタリングなどに安易に手を出すのはやめましょう。

とくにファクタリングは売掛金を担保にお金を借りる行為です。

いったん借りてしまえば、抜け出せなくなる可能性が高いです(しかも高金利)。

簡単に借りれるというのは、それに応じたリスクがあることを知っておきましょう。

資金を増やす方法1:会社の資産を売却する

売上を増やすことなく資金を作るためには、貸借対照表の「資産の部」の下半分に注目しましょう。

ここには会社の固定資産が計上されています。

事業に使う、土地建物、工具器具、車両などを処分することはむずかしいですが、ゴルフの会員権や生命保険、有価証券があれば、これを売ったり解約したりすれば、お金を作ることができます。

土地や建物でも事業に関係ないものであれば、売ってしまって資金を作った方が得策です。

「今」お金を作って業績を回復させなければ、いずれ売却する羽目になるのですから、大事なのは資金を作って今を乗り切ることです。

資金を増やす方法2:運転資金を小さくする

次に運転資金を見直します。

運転資金とは事業を回していくために必要な資金のことです。

運転資金の計算式は

・(売掛金+棚卸資産)-買掛金

で求めます。

これがなぜ運転資金なのかと申しますと、ビジネスは商品を仕入れて販売し、その後代金を回収するというサイクルで回っています。

いい換えると、商品を仕入れてから代金を回収するまで、それはお金が寝ていることを意味します。

その反対に、商品を仕入れてから仕入れ代金を支払うまでの間は、手元に資金が残っている状態です。

そして通常のビジネスでは、代金の回収より仕入れの支払い日の方が先にくることがほとんどです。

ということは、寝ているお金から、手元に残っているお金を引くと、その分だけ不足するというこがわかります。

したがってそれが事業に必要な運転資金ということになります(これを経常運転資金ともいいます)。

このことを逆に考えれば

  • 売掛金の回収を早めれば寝ているお金が少なくなる
  • 在庫を少なくすれば寝ているお金が少なくなる
  • 買掛金の支払いを延ばせば手元のお金が増える

ことを意味します。

つまり必要な運転資金が減少することで、その分資金繰りに余裕ができるのです。

売掛金の早期回収・買掛金の期間延長の交渉は簡単ではないですが、資金繰りが苦しいときは見直すべき課題です(もちろん在庫管理も)。

資金を増やす方法3:貸付制度を利用する

あなたが、小規模企業共済、経営セーフティ共済、民間の生命保険に加入しているときは、貸付制度を利用することで資金調達することも可能です。

貸付制度は、これまで支払った掛け金を担保にお金を貸してくれる制度です。

ただし民間の生命保険の契約者貸付は、小規模企業共済と経営セーフティ共済に比べ高めですので、小規模企業共済・経営セーフティ共済を優先させた方がよいかもしれません。

資金を増やす方法4:日本政策金融公庫の経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付)を利用する

日本政策金融公庫の融資には、経営状態の悪化に活用できる「経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付)」があります。

経営環境変化対応資金は、社会的、経済的な環境の変化により、一時的に業況の悪化をきたしている企業の経営基盤の強化を図るための融資制度です。

融資限度額は4800万円です。

銀行から融資を受けられないときは、日本政策金融公庫からの借入れも検討してみましょう。

日本政策金融公庫は中小企業を支援する役目もありますので、民間の銀行よりは融資を受けやすいといえます。

ただしどんな中小企業でも融資を受けられるわけではりません。

「中長期的にはその業況が回復し発展することが見込まれ」ことが条件で、それ以外にも必要な条件があります。

詳しくは、経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付)のページでご確認下さい。

経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付)

資産を増やす方法5:借入先にリスケジュールを依頼する

どこの金融機関も貸してくれないようであれば、リスケジュール(返済猶予)を行い支出を止めます。

リスケによるデメリットは、新たな融資を受けれないことです。

しかしすでに融資を受けれていないのであれば、デメリットになりません。

むしろ毎月の返済が少なくなるので、資金繰り的には大きなメリットになります。

ただし一度リスケを受けて正常化に戻ったとしても、すぐには融資を受けることができないので注意が必要しょましょう。

対処策3・売上げを増やす

ここまで来て資金繰りに余裕が出てきたら、いよいよ売上げアップに取り組みます。

収入が増えなければ状況は好転しません。

とはいえ、売掛金・買掛金・在庫などの運転資金の見直しで、現状でも資金的に余裕ができるのは大きいです。

精神的に追い詰められませんので、長期の展望に立っじっくり取り組めます。

まとめ

銀行に融資を断れたときに、資金繰りを改善する対処法について解説してきました。

記事の中でも触れましたが、資金繰りが苦しいときに売上アップに走るのは間違いです。

逆に資金不足を加速させる原因となります。

融資を断られたときの資金繰り改善には順番があること忘れないでください。

正しい順番と方法で経営危機を残り超えましょう。

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