「経費で落とすと税金が減る」
こんなことを聞いたことが一度はあるでしょう。
起業したての経営者や税金の知識がない経営者なら、「よくわからないけど税金が減るなら経費を使った方がお得」と思えるかもしれません。
しかし、経費と税金について間違った認識を持てば、経費の使いすぎで会社が大ピンチといったことにもなりかねません。
なぜ経費で落とすとお得か、正しい知識を持って経費を使うのが大切です。
この記事では、経費と税金の関係について解説していきます。
経費とは?
「経費で落とす」「経費する」とは、そもそもどんな意味なのかというと、「事業に使った費用を経費にする」ということです。
だから何なんだ?という話ですが、経費にすることで、その分を費用として売上から引くことができます。
・売上-仕入れ-経費=利益
この計算式からもわかるように、経費を多くかければ、残る利益は少なくなります。
税金は利益に対して課せられるものなので、利益が少なくなれば税金も減るというわけです。
まとめると
- 経費が少ない→税金が多くなる
- 経費が多い→税金が少なくなる
という関係になります。
経費を増やすと税金が減る仕組み
たとえば、1000万円の売上があって、経費が500万円かかったとします。
このとき法人税を30%で計算するなら、税金は90万円になります。
・(1000万円-500万円)×30%=150万円
次に経費を200万円増やした700万円のパターンで計算してみます。
その結果法人税は、90万円まで減らすことができます。
・(1000万円-700万円)×30%=90万円
先述した通り、経費が増えれば税金は減るということがよくわかると思います。
実質3割引きで購入できる
さらに法人税が減るということは、実質値引きをしてもらったようなものです。
仮に10万円のパソコンを経費で購入したとすると、法人税を3割で計算すると、3割引きの7万円で買えたと同じことです。
・10万円×(1-30%)=7万円
社長が個人で購入した場合
ではこれを会社の経費でなく、社長の給与から200万円の車を買った場合を考えてみましょう。
話がわかりにくくなるので、給与所得控除などの各種控除、個人の所得税率や社会保険料は抜きにして、税率は30%で計算します。
先ほどと同じように収入が1000万円、経費が500万円、そこから200万円の車を購入したとします。
このとき社長の支払う税金は、150万円です。
・(1000万円-500万円)×30%=150万円
しかし法人で購入するのとは違い、社長は個人マネーで買うわけですから、「税引き後」のお金でしか車を購入することができません。
法人から個人にお金を移すときは、必ず所得税というゲートを潜らなくてはいけないからです。
したがってこのときの社長の税引き後の手取り収入(可処分所得)は、350万円になります。
・500万円-150万円=350万円
この手元に残った350万円から200万円の車を購入します。
するとキャッシュは150万円しか残りません。
・350万円-200万円=150万円
法人の経費で購入した場合はどうだったでしょうか?
手残りのキャッシュは210万円です。
・法人税:(1000万円-500万円-200万円)×30%=90万円
・手残りキャッシュ:300万円-90万円=210万円
社長が個人マネーで200万円の車を購入するよりも、手元に残るお金は60万円増えています。
・210万円-150万円=60万円
購入のタイミングが「課税前」か「課税後」で手残りのキャッシュは変わる
なぜこのような現象が起こるのか?それは課税のタイミングです。
法人の場合は、「課税される前」に経費として落とすことができるので、手残りが多くなるのです。
一方、個人の場合は「課税された後」のお金で購入することになるので、税金で引かれた分、手元キャッシュが減ってしまうというわけです。
頭の良い人はお気づきになったかもしれませんが、これってつまり、会社で200万円の車を購入すれば、用意すべきお金は200万円で済むということです。
その反対に個人で購入する場合は、法人から個人へ所得移転するのに税負担が生じるので、その分だけ余計にお金を用意しなくてはいけなくなります。
上記のケースでいえば、30%の税負担が発生するので、200万円の車を買うために必要なお金は約286万円です。
・200万円÷(1-30%)=285.7万円
会社の経費で落とした方が、86万円もお得なのです。
経費で落とすのがお得な意味がご理解いただけたかと思います。
経費で落とせるのは売上に関係あるものだけ
ただし何でも経費で落とせるわけではありません。
経費で落とせるのは、「売上を上げるために直接的・間接的に必要なもの」だけです。
何でも経費になってしまったら、誰も税金を払わなくなってしまいます。
プライベートで使うものの購入費用は、経費では落ちませんので気を付けましょう。
落ちないどころか、税務調査で否認されると、高い税率を課せられたり、場合によっては重加算税など重いペナルティンを受けることもあります。
また税金を少しでも安くしたいからと、架空の経費を作ると「脱税」になります。
経費は正しい知識を持って使わないと、後で手痛いしっぺ返しが待ってます。
「経費になるもの」と「経費にならないもの」をしっかり区別しておくことが大事です。
まとめ
経費を使うとその分だけ税金が減ります。
これは節税の基本です。
ただし経費を使うと税金は減りますが、その分手元キャッシュも減るという弊害が起こります。
税金を安くするために無駄な経費を使うと、それだけ会社の資金繰りが傷んでしまいます。
その結果、会社の業績が傾いてしまうこともあるのです。
節税になるからと、無駄な経費を使うのは危険です。
節税対策で経費を使う場合は、会社の成長に役立つものが基本です。
正しい知識と節度を持って、経費で落としましょう。
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