日本政策金融公庫で創業融資を受ける際、「自己資金の額」が審査の大きなポイントになります。
残念ながら自己資金ゼロだと、審査に通る確率は非常に低くなります。
ではいったいいくら自己資金を持っていれば大丈夫なのでしょう?
さらに自己資金の中身についても、必ず確認されます。
自分では自己資金だと思っていても、融資担当者は自己資金とみなしてくれない場合もあるのです。
この記事では、日本政策金融公庫で融資を受ける際の、自己資金について解説します。
自己資金に必要な金額
起業前や創業したばかりの個人事業主や会社にとって、日本政策金融公庫は心強い味方です。
民間の金融機関では断られるケースでも、日本政策金融公庫なら融資が出る確率が高くなるからです。
その日本政策金融公庫で融資を受けたい場合、どれくらの自己資金があればよいのか、一つの目安は融資額の3割です。
1000万円の融資を受けたいなら、自己資金は300万円用意しておくと、審査に通る確率がアップします。
Q・自己資金はいくらあれば融資を受けられますか。
A・自己資金は重要な要素のひとつですが、それ以上に創業計画全体がしっかりしているかが重要になります。創業計画のたて方については、「創業計画Q&A」を、自己資金の目安については「創業計画Q&A(Q4)」などを参考にして下さい。公庫が融資先の創業企業を対象として実施した調査(「新規開業実態調査」)によると、創業資金総額に占める自己資金の割合は平均で3割程度となっています。
よくあるご質問 創業をお考えの方
ちなみに付け加えておきますと、Q&Aにも書いてある通り、自己資金は一つの目安です。
自己資金が3割近く、またはそれ以上あれば審査に有利なことに変わりはありませんが、それより大事なのは創業計画です。
創業計画が穴だらけで失敗すると判断されれば、融資の審査は通らないことに変わりはありません。
後で説明しますが、自己資金も計画性、事業計画も計画性、創業融資では融資申込者の計画性を重視されます。
自己資金が1/10、またはゼロでも借りられる新創業融資制度
上記では自己資金が3割は必要と書きましたが、日本政策金融公庫の融資の中には、自己資金が10分の1で借りられるものがあります。
それが「新創業融資制度」です。
新創業融資制度は、新たに事業を始める方や事業を開始して間もない方に無担保・無保証人で利用できる制度で、起業する方にとっては利用しやすい融資制度です。
自己資金要件
新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を1期終えていない方は、創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金(事業に使用される予定の資金をいいます。)を確認できる方
新創業融資制度
融資限度額は3000万円ですので、自己資金300万円あれば、3000万円まで借りられる制度となっています。
自己資金が50万円しかなくても、最大500万円までは借りられることになりますので(理屈上はです)、自己資金が少ない起業家は、一度は検討されてみてはいかがでしょう。
なお下記に該当する方は、形式的には自己資金ゼロでも融資を受けられます。
・現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方で、次のいずれかに該当する方
(1)現在の企業に継続して6年以上お勤めの方
(2)現在の企業と同じ業種に通算して6年以上お勤めの方
・大学等で修得した技能等と密接に関連した職種に継続して2年以上お勤めの方で、その職種と密接に関連した業種の事業を始める方
・産業競争力強化法に規定される認定特定創業支援等事業(注1)を受けて事業を始める方
・地域創業促進支援事業又は潜在的創業者掘り起こし事業の認定創業スクール(注2)による支援を受けて事業を始める方
・公庫が参加する地域の創業支援ネットワーク(注3)から支援を受けて事業を始める方
・民間金融機関(注4)と公庫による協調融資を受けて事業を始める方
・新商品の開発・生産、新しいサービスの開発・提供等、新規性が認められる方
・中小企業の会計に関する指針または基本要領の適用予定の方
新創業融資制度の「雇用創出等の要件」、「自己資金要件を満たすものとする要件」
自己資金はあればいいというわけではない
日本政策記入公庫の担当者は必ず自己資金の内容について確認します。
それが「本当にその人が自分で用意したお金かどうか」についてです。
自己資金はあればいいというものではないのです。
自己資金の中身によっては、自己資金とみなしてくれない可能性もあるのです。
ではどのようなものを自己資金と認めてくれるのでしょう?
自己資金と認められるもの
自分で貯めたお金
自己資金には、
- 自分で貯めたお金
- 他人から受け取ったお金
の2種類があります。
このうち自分で貯めたお金は、当たり前ですが文句なしの自己資金となります。
自分でお金を貯めるには、基本は給与やボーナス、副業やアルバイトでコツコツ貯めることになるわけですが、それを一定の金額まで貯めるには、生活費の支出もありますから、忍耐力と時間が必要になります。
そういった姿勢は、起業に対する準備ができているとして、担当者からの評価も上がります。
自己資金の確認については、通帳の提出を求められますので、そこでしっかり自己資金の内容について説明しましょう。
当然ですがウソはやめましょう。
バレますし、バレた瞬間信用はなくなります。
保険を解約したお金や車を売ったお金
保険を解約したお金や車を売ったお金は自己資金として認められます。
株などの売却して作ったお金も自己資金になります。
これらはもともと自分の財産だからです。
ただし現金化したときの領収書や証明書類を求められますので、しっかり保存しておきましょう。
贈与を受けたお金
親せきや親から借りたお金は返済の義務があるため自己資金とみなされません。
ただ贈与を受けたお金は自己資金とみなされます。
贈与は返済義務がないからです。
ただし贈与であることを証明しなくてはいけません。
そのため「贈与契約書」など、贈与があったことを証明する証拠書類が必要になります。
とはいえ担当者に100%信用されるとはいえず、場合によっては贈与者に確認の電話を入れられます。
また贈与は年間110万円の非課税枠を超えると贈与税が発生し、税金を納める義務も生じますので、贈与の場合は納税分も考慮しておく必要があります(贈与税は贈与を受けた方が支払います)。
自己資金にならないお金
見せ金はNG
消費者金融やカードローン、友人知人からお金を借りて、それを通帳に振り込んで自己資金と偽装するケースがあります。
これを「見せ金」と呼びます。
日本政策金融公庫の融資の際の審査では、申込者本人の個人通帳だけでなく融資を申し込んだ年からさかのぼり2年前までの確定申告書、または源泉徴収書も提出しなくてはいけません。
つまり、財務状況が筒抜けになるのです。
そのような状況で、辻褄のあわない何百万円ものお金が振り込まれていたら、何事か疑われるのは当然です。
そこでそれが、贈与のお金であったり、自分の財産を売却して得たお金なら問題はありません。
しかし、カードローンや他人から借りたお金だと判明すると、見せ金として判断されます。
見せ金の評価はゼロです。
タンス預金も注意
タンス預金も注意が必要です。
タンス預金のように客観的証拠(貯めた経緯がわかる通帳など)がない場合、それをどう貯めたのか証明できません。
タンス預金は自己資金という明確な証拠書類がないため、自己資金に疑義ありといして否決される可能性があります。
自己資金を増やす方法
現金がない場合でも自己資金を増やすにはいくつか方法があります。
1・みなし自己資金を増やす
開業前にすでに支払った事業のための支出がある場合については、その一部については自己資金として認められます。
2・現物出資で増やす
法人設立する場合に、自己の持ち物の車やパソコンなどを、会社の財産とするとその分自己資金が増えます。
3・出資者を増やす
出資者を増やして、共同創業の形を取れば資金を増やすことができます(役員として働いてもらうことを自己資金の要件とする場合もあり)。
まとめ
自己資金は創業融資の審査の大きなポイントになります。
自己資金ゼロだと審査に通らないのは、自己資金3割は必要という基準でなく、計画性を重視されるためです。
もちろん、自己資金はリスクヘッジのための大事なお金ですので、いざというときの回収のためないよりはあった方が審査では有利になります。
しかしそれよりも大事なのは、起業に対していかに計画的に準備してきたかなのです。
計画性のない人にお金を貸しても、返ってこない公算の方が大きいでしょう。
したがって自分でコツコツ貯めた自己資金を計画的に貯めたということが、審査では重視されるのです。
しっかり自己資金を貯めてから、日本政策金融公庫の融資に申し込みましょう。
コメント