社長が現役である限り年金受給額が減る、または受け取れない可能性が出てきました。

政府は、一定の収入がある年金受給者の年金額を減らす在職老齢年金を廃止・縮小する方針を固めました。

現在は給与と年金の合計額が、60~64歳は月28万円超、65歳以上は47万円超の場合、超えた分の半額を年金から差し引くなどの仕組みになっています。

この在職老齢年金制度を廃止・縮小することで、高収入の高齢者には年金制度の支え手になってもうらうというわけです。

在職老齢年金の廃止・縮小で進められる

一定の給与がある高齢者の厚生年金を減らす在職老齢年金制度について、厚生労働省は廃止・縮小を検討する方針を固めた。年金が減ることを理由に高齢者が働かなくなるのを防ぎ、引き続き保険料や税金を払う「支え手」になってもらう狙いがある。

厚労省は、夏の参院選後に社会保障審議会(厚労相の諮問機関)で具体的な議論を始め、来年の通常国会への関連法改正案の提出を目指す。ただ、完全に減額をやめれば年金支給額は年1兆円以上も増えるため、財源の手当てなどが課題となる。今後の年金制度改革の焦点の一つになりそうだ。

稼ぐ高齢者の年金減額、見直しへ ただし原資は1兆円超

昨年からこのニュースは出ていましたが、はっきりした方向性が打ち出されました。

これにより社長として現役で働き続ける限り(社長としてでなくても高収入であれば同じですが)、年金を受け取れないか、受け取れてもその金額は今より縮小されるでしょう。

社会保険料には将来の年金原資となる厚生年金保険料も含まれています。

社会保険料の負担は年々重くなり、現在は個人負担は約15%です。

オーナー社長の場合は会社分も自分で支払っているのと同じなので、労使合わせて約30%の保険料になります。

しかし在職老齢年金制度の廃止・縮小で、高額なその保険料が本当に見合うものなのか、考える時期にきているのではないでしょうか?

社長が年金を受給できる年齢になったら、きっぱり引退して働かないというのであれば、支払った保険料と釣り合うかもしれません(けれども、老後破産が公的年金のみに頼ったことが主な原因であることを考えれば、それそれでリスキーなことですが)。

ですが、60歳、70歳を超えても社長で働き続けるなら、払い損になる可能性が高くなります。

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社長が高齢になって役員報酬を低く設定するのは大きなリスクがある

年金を受給するために、役員報酬をぐんと低く設定することも考えられます。

在職老齢年金制度の廃止・縮小は段階的に進めるということで、少額の収入なら年金を受け取れるかもしれません。

しかし社長という立場であれば、高年齢になるほど、少額の役員報酬であることのリスクは大きくなります。

そのリスクは次の通りです。

1・退職金の損金算入額が小さくなってしまう。

退職金自体いくら支給しても個人側に問題はありません。

個人で受けられる退職金控除枠を利用することはできます。

しかし会社側は別です。

無制限に損金参入枠を認めてくれません。

法人の損金算入額は功績倍率法によって求めるのが一般的です。

・退職時最終報酬月額×役員在職年数×功績倍率

※功績加算を加える場合も、社長の場合、原則3.0倍を超えないこと。超えると否認されるリスクがあります。

この計算式かわらもわかるように、最終報酬月額が計算の一部になっていますので、その金額が低ければ損金に算入できる金額も低くなってしまうのです。

損金に算入できない金額が大きくなれば、残した会社に多大な額の迷惑を掛けることになります。

ちなみに、最終報酬月額は裁判所の考えでは、賞与を含めた「年収÷12か月」で求めた金額ではありませんので注意が必要です。

あくまで退職時の役員報酬の月額が対象となります。

それなら退職する期だけ役員報酬額を上げればいいと思われるかもしれませんが、その期だけ一気に役員報酬を上げると租税回避行為として否認される怖れがあります。

退職金には大きな控除枠が用意されていますが、それは何も節税をじゃんじゃんしてくださいという意味ではなく、長い間お疲れさまでしたという恩恵的な意味で用意されいるもので、ここを勘違いしてはいけません。

趣旨が違うわけですから、退職金制度を利用してあからさまに節税しようとすると、それは否認される原因となります。

2・退職金を多くとらないと老後に支障が出る

在職老齢年金制度が廃止・縮小になれば、受け取れる年金額も減ってしまいます。

その減った分をカバーすには、退職金を多く受け取らなくてはいけません。

退職金は最大の税控除があるため、税引き後の手残りの額も最も大きくなります。

年金額が減った分、税額控除を利用して老後資金の不足分に充てるためにも、役員退職金は多く受け取るべきでしょう。

にもかかわらず、役員報酬が少なければ、1の理由で会社側に多大なダメージを与えることにり、退職金を多く受け取れない足かせになってしまいます。

3・高額の死亡退職金を多く出せない

年金を受け取れる高年齢になると、当然死亡のリスクも高くなります。

社長が亡くなったときは、会社は死亡退職金を支払うことができます。

しかしこのときも、会社側は損金に計上できる額に上限があります。

損金の上限枠は1で説明した功績倍率法で求めるのが一般的です。

したがって同じ理由で役員報酬額が少なすぎると、会社側に損金計上できる額が少なくなるので、思い切った額を死亡退職金としてご遺族に支給できなくなります。

死亡退職金は、ご遺族にとって大切な生活資金となります。

ましてや社長に負債があるとなると、その返済原資にもなるお金です。

それが少ない額しか支給できないとなると、これは残されたご家族にとって死活問題となります。

役員報酬の額は、ガンのような形で死期が迫ってくれば対応しようもありますが、突然死の場合はいつ起こるかも予測できません(病気死亡の場合は前兆はあると思いますが)。

そのときが起こってしまえば、もう手遅れです。

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4・事業承継に問題が出てくる

事業承継は会社の株価を意図的に安くして、そのタイミングで行うのがベストです。

後継者の資金負担が少なくて済むからです。

その株価を安くするのに役立つのが退職金です。

退職金という大きなお金を支出することで、会社の資産が減り、その結果として株価が下がるからです。

しかしこのときも問題となるのは、会社側の損金計上額です。

1で説明した功績倍率法で求めた金額を超えた部分は、損金に計上することができません。

必然的に役員報酬額が少なければ、少額しか損金計上できず、会社側は多額の税金が発生することになります。

その社会保険料支払う必要ある?

という感じで長々と説明してきましたが、年金を受け取れる高齢になってから、役員報酬を低く設定してしまうと、それはそれで年金を満額受給するより大きなリスクを抱えてしまうのです。

したがって社長は高齢になったら、下手な小細工はせず、逆に受け取れるだけの高額な役員報酬を設定した方がよいということです。

ただし年金受給額と支払い保険料のバランスは取った方がいいです。

死亡のリスクが低い50代までは社会保険料を抑制し、60代を超えれば役員報酬を高額に戻すのような感じです。

社会保険料を削減して余った資金は、個人でも会社でも別の方法でお金を運用した方が、払い損となる年金で受け取るよりも、手元資金を増やせる可能性があります。

まとめ

社長が現役で働き続ける限り、年金は支給されない公算は大きいです。

支給されても今より受給年齢は引き上げられることになるでしょう。

それはつまり年金保険料の払い損を意味します。

もちろん社長の人生は会社を引退してからも続きますので、会社のところだけ切り取って払い損と決めつけるわけにもいきませんが(実際、遺族年金や障害年金もありますし)、しかし、本当に支払った保険料に対して正当な見返りがあるかどうかは、真剣に考えるべきです。

この記事がそのきっかけになれば幸いです。

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