友人や知り合いなどに顧客を紹介してもらった際の紹介料は、「接待交際費」として損金に計上できることができます。
紹介料ではなく商品券を配った場合も同じです。
しかし接待交際費には、「年間800万円まで損金算入できる」という上限が設けられています。
接待交際費とは、主に得意先を接待するためにかかる費用のことですから、中小企業であれば接待交際費だけで年間800万円を支払うということはそうそうないでしょう。
だったら顧客の紹介料も接待交際費として経費に計上できれば問題ないと思われるかもしれませんが、さにあらず。
何千万と取引金額が大きくなれば、800万円という上限を簡単に超えてしまいます。
たとえば融資額1億円の紹介手数料を1.5%支払えば、それだけで150万円の接待交際費です。
年間約5億3千万円以上の融資紹介手数料を支払えば、接待交際費の枠を超えてしまいます。
そこでこの記事では、顧客や仕事を斡旋してもらった場合の紹介料を、接待交際費以外で経費計上できる方法を解説いたします。
情報提供料として損金処理できる3つの条件
会社が顧客や仕事を紹介してもらったときに支払う、紹介料・販売手数料・情報提供料(以下、情報提供料)は、次の3つの条件を満たすことで、情報提供料として損金に計上できます。
- その金品の交付があらかじめ締結された契約に基づくものであること。
- 提供を受ける役務の内容が当該契約において具体的に明らかにされており、かつ、これに基づいて実際に役務の提供を受けていること。
- その交付した金品の価額がその提供を受けた役務の内容に照らし相当と認められること
(情報提供料等と交際費等との区分)
61の4(1)-8 法人が取引に関する情報の提供又は取引の媒介、代理、あっせん等の役務の提供(以下61の4(1)-8において「情報提供等」という。)を行うことを業としていない者(当該取引に係る相手方の従業員等を除く。)に対して情報提供等の対価として金品を交付した場合であっても、その金品の交付につき例えば次の要件の全てを満たしている等その金品の交付が正当な対価の支払であると認められるときは、その交付に要した費用は交際費等に該当しない。(昭54年直法2-31「十九」、平6年課法2-5「三十一」により追加、平19年課法2-3「三十七」、平23年課法2-17「三十」、平28年課法2-11「三十一」により改正)
(1) その金品の交付があらかじめ締結された契約に基づくものであること。
(2) 提供を受ける役務の内容が当該契約において具体的に明らかにされており、かつ、これに基づいて実際に役務の提供を受けていること。
(3) その交付した金品の価額がその提供を受けた役務の内容に照らし相当と認められること。
第1款 交際費等の範囲
1・あらかじめ契約されたものであること
1つ目の「その金品の交付があらかじめ締結された契約に基づくものであること」とは、事前に契約書を交わしていないとダメです、という意味です。
それができない状況(紹介キャンペーンなど)であれば、紹介手数料の支払い基準が公表されていたかがポイントになります。
契約書がない場合は、支払い基準を公表したチラシやポスターでも代わりになります。
2・契約内容がわかり、実際に提供されていること
2つ目の「提供を受ける役務の内容が当該契約において具体的に明らかにされており、かつ、これに基づいて実際に役務の提供を受けていること」とは、
「こういう人を紹介してくれたら、いくら支払います」、という具体的な情報提供料の内容が契約書(場合によってはポスターやチラシ)に書いてあり、実際に紹介してもらった場合のことです。
要は情報提供料を架空で計上してはダメですよということです(当たり前か)。
3・その情報提供料が妥当であること
3つ目の「その交付した金品の価額がその提供を受けた役務の内容に照らし相当と認められること」とは、情報提供料が高すぎても安すぎてもいけませんよ、ということです。
100万円の案件に100万円支払う人はいませんし、逆に1000円では安すぎます。
また、支払う相手によって情報提供料が変わったりした場合には、単なる「謝礼」としての支払いとして接待交際費とされる場合があります。
どのくらいの金額が相当か、というのは業務内容により個別に判断するしかありません。
しかしその金額に設定した事について、明確な基準を説明できるようにしておけるようにしておくことが重要です。
情報提供料に該当する人しない人
なお紹介することをビジネスにしている人へ支払った情報提供料は、そもそも論として上記3つの条件を抜きにして、情報提供料として損金に計上できます。
また、相手方の従業員等からの紹介は、職務上行うべき業務であるので、紹介料を支払った場合は謝礼とみなされ、交際費に該当します。
それ以外の人から紹介の場合、上記の3つのポイントを押さることで情報提供料として損金に計上できるというわけです。
情報提供料で処理できると消費税の節税になる
情報提供料等として認められる取引は、「対価性のある」取引であるため、消費税の課税取引となります。
その一方、接待交際費は「対価性のない」取引となるため、消費税の不課税取引となります。
この点でも情報提供料として計上できた方が会社としてはメリットがあるということです。
何もわからない情報提供料はキツいペナルティがある
ちなみに紹介の手数料として支払った場合、現金の流れも不明瞭、渡した相手もよくわからないとなると、「使途秘匿金」だと指摘される怖れが出てきます。
使途秘匿金とみなされる支出の条件は次の3つです。
- 支出先の氏名又は名称がわからない
- 住所又は所在地がわからない
- 支出した理由がわからない
このような支出があると、意図的に隠しているとみなされます。
上記の3つを具体的にすることができなければ、使途秘匿金としてペナルティを受けることになります。
使途秘匿金といかないまでも、役員賞与と認定されれば、
支払ったお金が損金に算入されない(すなわち法人税の課税)
社長に賞与分の所得税が課税される
といういわゆる往復びんたを喰らうことになります。
情報提供料をわけのわからない会計処理をすることだけは、絶対にやめておきましょう。
まとめ
紹介手数料・販売手数料を情報提供料として損金処理するための方法について解説してきました。
一般的な会社では接待交際費の800万円の上限までいくことはないでしょう。
しかし情報提供料が高額になる会社では、「情報提供料」として接待交際費と別に計上できるようにしておく必要があります。
ただし、情報提供としてきっちり処理し、あとで問題となる処理の仕方は絶対にやめておきましょう。
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