日本政策金融公庫は民間の金融機関に比べると審査に通りやすいといえます。
しかし当たり前ですが、何でも通してくれるわけではありません。
審査に落とされるには落とされるだけの理由がありますし、反対に審査に通るにはそれなりの理由があります。
この記事では日本政策金融公庫の融資の審査に通すポイントについて解説します。
日本政策金融公庫の審査を通すポイント
実現可能な事業計画書(創業計画書)を立てる
日本政策金融公庫が融資を実行するのは、基本的に事業計画に「将来性がある」と判断するこらです。
つまり、利益が出て返済も可能であるということです。
事業計画に将来性がなければ、返済に詰まることになるわけですから、わざわざそんな会社や人にお金を貸す奇特な金融機関はありません。
そのため事業計画書(創業計画書)は、非常に重視されるポイントで、面談時にも事業計画について詳細を聞かれます。
事業計画(創業計画)は利益を出しつつ最終的に返済を終えられる計画になっているのが理想的です。
ただし理想を念頭に置きすぎて、事業計画が現実とかけ離れてしまうのはよくありません。
バラ色の数字を並べた事業計画の内容では、担当者は実現性を信じてくれないでしょう。
また事業計画で融資額とのバランスも大事です。
極端な話、月商50万円なのに融資に5000万円借りたいとなると、明らかにキャパオーバーで、バランスを欠いています。
投資に対して売上げはいくらあり、そのうち利益をどれくらい稼いで何年で返済できるか、このバランスを考えることも大切です。
自己資金の額
自己資金の額は事業計画書と同じくらい重要になります。
とくに創業融資の場合は、自己資金が少ないとそれだけで融資を断られる理由となります。
現実的にいっても、自己資金が少なければ事業が成功する確率は低くなります。
さらに日本政策金融公庫としても、自己資金は回収のための
自己資金とは自分で用意したお金です。
自分で用意したといっても、消費者金融や知人から借りたお金は含まれませんので気を付けましょう。
自己資金がどれくらいあれば大丈夫かという目安は、融資額の3割です。
融資額の3割自己資金があれば、融資が実行される確率は高くなります。
もし3割に満たないときは、提出した事業計画の現実性が厳しく問われます。
設定した売上げを上げる根拠をきちんと説明しましょう。
自社の強みを明確に打ち出し、市場で勝てることを明確に打ち出します。
とりわけ営業力のアピールは効果的です。
これまでの実績や顧客リストなど、営業力を売り込めるものは漏れなくアピールします。
またできるのであれば、親に共同経営者になってもらい出資してもらう、贈与契約を結んで財産を贈与してもらう(年間110万円を超えると贈与税が発生します)などの対策をとることも考えましょう(ここでのポイントはお金の貸し借りをするのでなく、返済が発生しないお金を集めることです)。
商品力・サービス力の強みを打ち出す
売上を作れるかは、一つには商品力・サービス力にかかっています。
そのため商品力・サービス力の高さは審査の大事なポイントになります。
たとえばニーズのある商品でも、競合がたくさんいるようなものであれば、そこで売れるには他社と比べ優位であることが重要です。
商品力・サービス力の強みといったところです。
他社より優位となる強みがあれば、「これは売れる」と判断していただけます。
反対に商品力・サービス力に強みがあっても、ニーズが小さければ売上を作るのはむずかしいでしょう。
ここで証明しなくてはいけないことは、「売れる」ことへの証明です。
誰に対してどういう営業活動をして、それをいくらで買ってもらうのか、これをきちんと証明しましょう。
事業計画書だけではわからない、ニーズが一定規模あることを証明する市場調査の資料や、競合との比較資料などを提出し、売れることへの裏付けを行うことも有効です。
面談の事前準備
提出する書類も大事ですが、事業計画書だけではわからないことを担当者に伝えるのが面談の場です。
事業の細かい内容や、質問されそうなことを想定し、事前に準備しておきましょう。
そして面談において聞かれたことは、下手に隠し立てはせず、情報提供を惜しまないようします。
担当者が知りたい情報をくまなく提供することで、信用力もアップします。
よくわからない不透明な部分があると、不信感を持たれます。
また「客観的な分析ができる経営者」であると担当者に思われると評価は上がります。
そのため、自社について、商品・サービスについて強みだけでなく弱点も話せると心証が良くなります。
ただこのとき注意したいのが、「その弱点をどう克服するか」を対策として挙げておくことです。
対策のない弱点アピールは、単なる愚痴になってしまいます。
ちなみに服装や身だしなみ(とくに清潔感)、言葉遣いや礼儀作法は社会人レベルできちんとしましょう。
言葉遣いや態度が悪い、清潔感がないなどは、担当者の心証を悪くしてマイナスポイントになります。
経営者の人柄
日本政策金融公庫の融資では、経営者の能力も重要な判断材料になります。
過去にどのような実績があるのか、どのような経歴なのかという情報からは、事業計画の実現力や返済能力を判断できるためです。
創業融資の場合は、経営者のこうれまでの経歴も大切なポイントで、面接の際には必ず聞かれる項目です。
担当者に「この人なら事業を成功させてくれるに違いない」と思わせることができれば、審査通過の能性は高くなります。
そのためには事前の準備が大事になります。
担当者のプレゼンを助ける
融資は担当者の一存で決まるわけではありません。
担当者の上には上司がいて、その上司が融資の可否を決めるのが一般的です。
上司は担当者から伝わる情報を参考にして、融資の判断していますので、担当者を味方につければ融資の可能性は高くなります。
また担当者の上司に対するプレゼンを助けるという意識も必要です。
担当者が融資をしたいと思った場合、それを実行するには上司を説得する材料が必要になります。
その材料は、事業計画書であったり、補足資料であったり、面談で直接聞いたことであったりします。
それらの材料がきちんと揃ってしれば、担当者は上司を説得しやくなり、融資もスムーズに進みます。
逆に説得材料となる資料が揃っていなかれば、担当者もやる気がそがれるでしょうし、準備不足で上司を説得できない可能性が高くなります。
担当者の上司に対するプレゼンを助けるという意識を持つと、融資が実行されやすくなります。
小口の借り入れで実績を作っておく
先に「事業計画と融資額とのバランスが大事」と書きましたが、大口の融資額を希望するのであれば、最初に小口の借入れで実績を作り、その後信用ができたところで大口の融資を申し込むのも方法です。
初回より2回、3回と申し込みを重ねた方が信頼は厚くなります(もちろん滞納はなし状態で)。
そのため初回より希望する金額をスムーズに可決されます。
これは日本政策金融公庫だけでなく、民間の金融機関にもいえることですが、地道にコツコツ信頼関係を築くのがやはり王道、審査を通すコツです。
大口の場合もいきなりでは、やはり日本政策金融公庫も警戒します。
最初は小口で、返済の実績を作ってから希望額を申し込むと、融資もスムーズにいきます。
これがあると日本政策金融公庫からの融資は厳しくなる
税金の未払い
税金を滞納していると、日本政策金融公庫からの融資は厳しくなります。
日本政策金融公庫は政府系金融機関のため、その原資は税金から捻出されています。
その税金を滞納しているとなると、融資を受けることはできないでしょう。
もちろん、税金の滞納=儲かってないと受取り方もありますので、どの道融資は受けられません。
社会保険料の未払い
社会保険に加入義務のある会社が、社会保険料を滞納していると融資を断られます。
社会保険に加入すると企業負担が生じます。
そのため意図的に従業員の加入手続きを取らない「加入逃れ」をする企業には融資をしないと、2019年よりなりました。
加入義務のある会社は、社会保険料をきちんと納めましょう。
公共料金や家賃の支払いの遅れ
公共料金や家賃の支払いの遅れが多くあると審査が通らなくなります。
お金の支払いにルーズな人にお金を貸したくないのは、個人も金融機関も同じです。
支払いに遅延があるかどうかは、審査の際に提出する会社の通帳を見れば分かることです。
バレないと考えずに、遅延しないように支払いを済ませておくことが肝心です。
金融事故
融資を受けようとしている経営者に、個人的な金融事故があると融資の可能性が低くなります。
金融事故とは、自己破産、債務整理、ローンやクレジットカードの支払い遅延などです。
こういった金融事故は5年間から10年間、個人信用情報機関に保管されます
融資の担当者は個人の信用情報を必ず調べ、金融自己がある場合は、金融機関への返済ができない人に融資しても資金の回収ができないと判断され、融資不可の原因となります。
クレジットカードローン、消費者金融からの借入れも問題となるケースがあります。
ほかに借入れがある場合は、どれくらいが限度をはいえませんが、事業の成功確率が高ければ許容度は大きくなりますし、反対に成功の見込みが低いと判断されれば許容度は小さくなります。
その際は事業計画の良し悪しにかかってきますので、事業計画をしっかり作り込むことが重要です。
まとめ
日本政策金融公庫の融資の審査に通すポイントについて解説してきました。
日本政策金融公庫の融資は民間に比べ審査が通りやすい特徴があります。
ただしそれは上記でお話をしたポイントを押さえてのことです。
日本政策金融公庫の審査に落ちないためには、ポイントをしっかり押さえて臨みましょう。
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