ご存知の通り最近の日本では少子高齢化が進んでいて、労働人口は減っています。
そのため人を採用するのにも苦労し、雇用市場は完全に売り手市場となりました。
採用するのに人件費は高騰し、人手不足と人件費高騰で経営者の頭をダブルパンチで悩ませます。
2018年8月の記事ですが、日本経済に下記の記事がありました。
小売企業などでパートの待遇改善が進んでいる。小売りや外食の労働組合で構成するUAゼンセンでは2018年の春季労使交渉で、パート1人当たりの平均賃上げ率は2.47%(速報値)と、過去最高を4年連続で更新。正社員の賃上げ率(2.12%)を3年連続で上回った。人手不足を背景に大手を中心に高い賃上げで非正規社員をつなぎ留めようとする動きが広がっている。
引用元:日本経済新聞
この記事からもわかるように、求人するためにはまず待遇の向上が必要で、これまで以上に採用には人件費を含めて費用がかかるようになります。
大企業に比べ資金力の乏しい中小・零細企業にとって、これは大きな痛手です。
それなら「不足する銀行で借りればいい」とお考えになるかもしれませんが、銀行は「人件費が増えた」という理由で融資をしてくれませんので、申し込んでも断られます。
資金使途に人件費はなし
結論からいえば、銀行は人件費という資金使途でお金は貸してくれません。
資金使途とはお金の使い道のことで、これは融資を申し込めば必ず聞かれる項目です。
お金の使い道によって返済の可能性が決まるため、融資のときは非常に重要となる項目です。
とはいえ、融資には「賞与資金」というものもありますし、新規出店するときに人件費込みの事業計画を出して審査が通ったということもあるでしょう。
しかしこれは前提が違います。
銀行が融資に応じる前提は、「費用を投下することで生じる新たな収益」が見込めるからです。
新たな事業を起こして、そこから生まれる利益がこれぐらいあるから、これぐらい融資してもお金は返済できる、このような具体的なプランがあるからお金を貸してくれるのです。
当然この中には、そのビジネスを回していくための人件費も含まれます。
人がいなくてはビジネスは回りませんから、要は事業を運営していくための経費として人件費を見てくれるわけです。
人件費で融資されない理由
では純粋な人件費はどうでしょう?
仮に「人手不足で新たに人を5人採用したい。そのための資金にお金を借りたい」といった場合、銀行はどう思うでしょう。
「ではその5人を採用して何年でいくら利益を稼ぐのか」と質問するのではないでしょうか?
この疑問にあなたは明確に返答できますか?
その人材が1か月で稼ぎ出す利益を計算し、その利益内で返済をまかなえるのか、そしてその根拠は何か、具体的な資料と計画書を提出して答えなくてはいけません。
そうなると本来の事業計画とは違って、返済の原資となる明確なものがはっきりせず、「どうやってお金を返すのか?」ということになるのは当然です。
これがたとえばハイテク機器などの設備投資なら、「だいたいこれくらいは利益が見込める」と計算できます。
人は計算できない存在
しかし人の場合は、いくら費用をかけたとしても、その社員がどれくらい成長していくら収益を稼ぐかは、最初の段階ではまったく見えてこないでしょう。
期待して採用したのにそれほどでもなかったというケースもありますし、何年も低迷して一気に成長したという人もいるでしょう。
あるいはとくに期待してなかったのにすごい人材だったなどなど、あなたにも予測不能です。
銀行にとってはそれ以上です。
何より回収が重要な銀行にとって、計算できないものに融資はできないのです。
人手不足だからこそ助成金の活用を
銀行融資で純粋な人件費をまかなうことはできませんが、助成金を利用すれば人件費をカバーすることができます。
助成金は返済不要のお金で、銀行融資のように返す必要はありませんので、資金に余裕のない中小・零細企業は活用したいところです。
それに助成金の場合は支給する目的が、新たな雇用の創出や労働者の雇用の安定や待遇改善になります。
そういう意味では、時給や給与を高くするということは、従業員への処遇改善となりますので、助成金の利用目的と合致するといえます。
厚生労働省も喜んで支給してくれるでしょう。
ただし助成金は後払いが基本なので、人を雇ってもその費用ははじめは持ち出しとなります(支給までに1年を超えるケースもあります)。
助成金を資金繰りの当てにすると痛い目にあうことは覚えておきましょう
まとめ
人手不足が進む昨今ですが、人件費名目の資金使途ではお金は基本借りられません。
もしかしたらこういった時代背景を読んで、人件費名目のあらたな融資商品が出てくるかもしれませんが、現時点ではないのが実情です。
人件費をカバーするためには、助成金を賢く活用するのが今は一番の方法です。
とはいえ今後も人手不足は続いていきますし、その中で人材を確保するには、やはり利益を稼ぐということが重要になります。
利益を稼がなければ高騰する人件費をまかない切れないですし、好条件で求人を出すこともできないわけですから。
人手不足時代を乗り切るには、さらなる経営体質の強化が求められます。
話が変わってしまいましたが、人手不足を解消するには、今のことろ銀行融資は対応できないのが現状です。
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