経営者が知らないとマズい数値「ROA」とは?

財務改善

経営者は貸借対照表を読めなくてはいけません。

その理由は「お金の動き」をつかむためです。

会社の倒産は主にお金のあるなしで決まります。

にもかかわらず貸借対照表が読めないということは、資金繰りの危ない兆候を察知したり、資金繰りが悪化している原因をつかめないということです。

これは指標なしで経営を行っているようなもので、とても怖い状態です。

貸借対照表の読み方をすべてマスターする必要はありませんが、最低限、貸借対照表からお金の動きを把握できる読解力は身につけておきたいところです。

社長がみるべき決算書のポイントとは?

もちろん貸借対照表は、それ以外にも経営にとって重要なことを教えてくれます。

その一つが「経営効率」を表す指標「ROA」です

ROAとは

ROAとは「Return On Assets」の略語で、日本語では「総資産利益率」と呼びます。

ROAの表す意味は、企業がいくらの資産を用いて、どれだけの利益を稼いだかを見る指標です。

ROAが高ければ、自社の資本を使って効率よく利益を増やしているということになります。

その反対にROAが低ければ、投資効率が悪いという意味になります。

ROAの求め方は次の通りです。

・当期純利益÷総資産×100

この計算式からもわかるように、ROAを算出するためには、損益計算書の当期純利益、貸借対照表の総資産の数値を使わなくてはいけません。

とはいえ、それほどむずかしいことではなく、損益計算書の「当期純利益」の科目と、貸借対照表の「総資産」の科目を使えばよいだけです。

損益計算書の当期純利益

貸借対照表の総資産

ROAがいくらなら合格点かはその業種によりますが、10%以上で優良企業、5%で良好状態、2%で普通といわれています。

ROAを改善する方法

ROAを改善するためには、

  1. 損益計算書の当期純利益を大きくする
  2. 貸借対照表の総資産を小さくする

という2つの方法しかありません。

ROA改善1・損益計算書の当期純利益を大きくする

当期純利益を大きくするためには、粗利益を大きくする必要があります。

粗利益を大きくするためには

  • 販売単価を上げる
  • 仕入れを低くする
  • 経費を削減する
  • 役員報酬を見直す

という方法があります。

御大層ないい方をしていますが、要はどこの企業でも経営改善として行う施策です。

とはいえそれも簡単ではありませんが。

節税に走る危険

ちなみに当期純利益を大きくするということは、法人税も節税を最小にして支払うということです。

節税を最優先させたいのであれば、当期純利益は小さくなります。

節税大好きな経営者にとってみれば、経営指標といった数値は後回しになり、何より目先の法人税額を低くしてキャッシュの流出を食い止めることが第一目的になります。

しかしそれが企業の財務にどんな歪みを生じさせるか?よくよく考えましょう。

節税のための無駄なキャッシュアウトが生じ、これから解説する貸借対照表の資産が無駄に膨らみ、資金繰りは圧迫します。

それすなわち、当期純利益が小さくなり、総資産が大きくなることで、ROAが低くなることです。

こんなことを続けていたら会社がどうなるか、賢明な経営者ならご理解いただけるはずです。

節税に走りすぎると会社が傾くということは、ROAという指標一つとってみても、その原因が内包されていることがわかります。

必要以上に節税することで会社の財務体質がどうなるかは、貸借対照表や損益計算書に実は如実に表れるのです。

ROA改善2・貸借対照表の総資産を小さくする

貸借対照表の総資産を小さくするということは、売上げに関係のない無駄な資産を極力持たないことです。

もし次の項目で売上に関係ない資産と思われるものは、売却してしまうかなるべく持たないようにすれば、貸借対照表の総資産は小さくなります。

  • 棚卸資産
  • 土地・建物
  • 有価証券
  • 機械設備

その結果、当期純利益に対し総資産が小さくなり、ROAが改善します。

上記資産を購入するためには、自己資本や借入金からキャッシュが流出していることを意味します。

それが売り上げに関係してない資産の購入なら、無駄なキャッシュアウトと言わざるを得ないでしょう。

無駄な贅肉を削ぎ落せば、飛躍するスピードも速くなります。

ROAの注意点

ROAの注意点として気を付けておきたいことがあります。

それは自己資本がほとんどなく、多額の負債を使って利益を生み出していても、効率よく利益を生み出していればROAは高くなることです。

ROAが高いか低いかだけではなく、流動比率、当座比率、固定比率、負債比率などの指標を使って、財務に歪みがないかをチェックすることも大切です。

まとめ

中小企業の大事な経営指標となるROAを求めるには、貸借対照表を使わなくてはいけません。

さらに進めてROAを改善する際も、貸借対照表の中身をみて、無駄に膨れている資産がないかを調べなくてはいけません。

貸借対照表を使えることは、経営者にとって必要なことなのです。

「わからないからそのまま」では、自ら経営危機を招くようなのもです。

お金の動きもわからない、経営状態がどうなっているかもわからないでは、いつ経営危機になっておかしくないでしょう。

すべて理解とはいかないまでも、貸借対照表を使った読み方は、最低限のことはマスターしておきましょう。

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