機会損失を防いで儲けるための計算法

事業計画 財務改善

物事には「機会損失」という考え方があります。

機会損失を簡単にいうと、「儲け損ない」や「稼ぎ損ない」のことをいいます。

要するに、実際の取引によって発生した損失のことではなく、本来なら得られた利益を、意思決定のマズさから逃してしまうこと。

その損失を機会損失といいます。

この機会損失を防ぐことで、より多くの売上げを作ることができます。(過ぎてしまったことに対して、「そこに機会損失が発生していた」と証明することはむずかしいですが、少なくとも「そこに機会損失が発生する可能性がある」という仮定を想定することで、あらたな売上を作る見込みはできます)

機会損失はこのようにして起こる

たとえばあなたは洋服店を営んでいたとします。

あなたの目利きセンスは素晴らしく、仕入れた100枚のTシャツが、販売開始3時間で飛ぶように売れてしまいました。

このシチュエーション、本来ならもろ手を挙げて喜びたいところですが、でもよくよく考えれば、損しているとも考えられるのです。

要は100枚以上Tシャツを販売したとしても、「もっと売れたのでは?」ということです。

さらにいえば、販売数を2倍の200枚にして、たとえ売れ残りができたとしても、トータルの利益で考えれば100枚完売するより稼げれたかもしれないということです。

では具体的に計算してみます。

仮にTシャツの仕入れが1000円で販売価格が1800円だとします。

このとき、Tシャツを100枚完売した場合と、Tシャツを200枚用意して30枚売れ残ったケースを比較してみましょう。

Tシャツを1800円で100枚完売した場合

(1800×100枚)-(1000円×100枚)=80000円

Tシャツを200枚販売し30枚売れ残った場合

(1800円×170枚)-(1000円×200枚)=106000円

この計算結果からわかるように、100枚完売した方が、200枚仕入れて30枚売れ残った方より儲け損なっているのです。

上記ケースでいえば、リスクを取って強気で販売した方がより利益を大きくできたということです。

これこそがまさに「機会損失」です。

仕入れ損にならないための損益分岐点を求める

ちなみに200枚仕入れて販売した場合、100枚完売したときと利益が同等となる販売枚数はいくらになるでしょう?

つまり80000円の利益を確保するのに最低限販売しなくてはいけない枚数です(いわゆる損益分岐点)。

仕入れの20万円は確定しています。

そこから稼がないといけない利益は8万円。

この2つを足した28万円が、損益分岐点となる利益です。

あとは28万円を販売単価の1800円で割れば、達成しなくてはいけない枚数が求められます。

・28万円÷1800円=156枚(四捨五入

Tシャツを200枚仕入れて156枚売れた場合

・(1800円×156枚)-(1000円×200枚)=80800円

要するにこのケースでいうと、1800円のTシャツを156枚以上販売できなければ、リスクを取って200枚仕入れする意味はないということです。

それなら最初から100枚の販売で済ました方がよいことになりますし、現実的にも100枚以上売れるかどうかはわからないことです。

とはいえ、具体的な数値を理解することで、リスクをカバーするために必要な努力目標はわかります。

200枚完売するための損しないバーゲン計画

以上のことが機会損失と呼ばれるものですが、しかしできれば200枚を完売したいと思うのが経営者の気持ちです。

残った在庫は売れるとも限りませんし、それどころか税金や管理費を増やす金食い虫となりかねず、何としても在庫は避けたいところです。

棚卸資産を使った節税法~棚卸資産の評価法と評価損~

売れ残りを出さずに完売するためには、やはりバーゲンは必要になります。

ですがバーゲンをすることで、不必要に利益を削ってしまうことも避けたいものです。

最近では人手不足で、新たな人材を確保するためには、利益を確保することはこれまで以上に重要な経営戦略といえます。

人手不足を解消するには利益体質の改善が必要

そこで売れ残りを値引きして販売したとしても、必要な利益を確保するための販売計画を作っておくことは大切です。

その場合値引きに耐えうるだけの初期値入率を設定しておかなくてはいけません。

その値入率を求める計算式は次の通りです。

・初期値入率=目標粗利益率+(1回目の値引き率×目標消化率)+(2回目の値引き率×目標消化率)

損しないための初期値入率を求めるには、最初に目標利益率を決めます。

仮に35%を最終的に確保したい目標利益率(粗利益)に設定したとします。

そして何枚売れた段階で値引きをするかを想定しておきます。

たとえば、160枚販売できた段階で、20%値引き、さらにそこから30枚売れ、残り10枚は50%割引で在庫一掃を狙う計画を立てました。

※残り枚数は率に換算しておきます。このケースでは定価で80%販売し、残り20%は20%は20%割引、最後の5%は50%割引

すると次の計算式で最初に設定すべき値入率を求めることができます。

・35%+(20%×20%)+(5%×50%)→35%+4%+2.5%=41.5%

この販売計画では最初に41.5%以上の値入率を設定しておけば、35%の粗利益は確保できるということです。

今回のTシャツの販売価格は1800円ですので、値入率は44%※(1800円-1000円)÷1800円ありますので、この値引き計画なら余裕で利益を確保できるとなります。

まとめ

機会損失は誰にでも起こりうるものです。

目に見えないものですから、さらに厄介といえます。

それを未然に防ぐには、経営者がどう判断するかにかかります。

その経営判断をする際に、上記のような計算方法を知っていれば、仮に判断が間違っていたとしても、そのリスクを最小限にすることができます。

人口減少、少子高齢化が進行している日本では、機会損失をなるべくなくすことが、アップセル・クロスセルと並んで重要になってきます。

機会損失を見過ごさないようにしましょう。

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