会社の財務基盤を強くする利益計画。会社はいくら利益を稼げば良いのか?

財務改善

利益は事業を存続させるために必要な燃料です。

利益とはキャッシュであり、キャッシュとは事業を前進させる推進力そのものです(利益とキャッシュは違うともいわれますが、それは時間軸の違いでしかありません)。

キャッシュの豊富な会社は、人材獲得でも顧客獲得でもあらゆる面で他社より有利でいられます。

それに対しキャッシュが少なくなれば、会社の未来は先細ります。

利益とは事業を存続させるためになくてはならないものです。

利益をしっかり確保する施策が事業方針に必要です。

利益は出るだけ出ればいいは危険な思想

「利益は出るだけ出ればいい」普通はこのように考えるものです。

しかしこの考えの怖いところは、利益を「残ったもの」や「余ったもの」と捉えてしまうことです。

利益が残った余ったものなら、無駄な支払いを抑えようという発想が出てきます。

手っ取り早いのは節税です。

とにかく経費を使って利益を減らし、余った利益から発生するコスト(法人税)を抑制しようとしてしまうのです。

けれども節税は利益を削る分、当期純利益を減らし手持ちキャッシュの減少まで招きます。

節税が財務基盤の弱体化を招く

さらに会社の財務体質を強化する、「内部留保ができない」という弊害をもたらします。

内部留保が貯まらなければ、会社の自己資本は増えていかず、他人資本に頼ることになるため財務基盤が安定しません。

借入や買掛金が大半で会社を回しているような状態です。

どれだけ不安定かわかるでしょう。

借入が多く自己資本がすくなければ、簡単に債務超過になりやすく、融資にも悪影響を及ぼします。

自己資本を大きくするとは、一つの経営目標なのです。

その内部留保するには、税引き後利益となる毎年の利益剰余金でしか行うことができません。

そのため利益剰余金を圧縮してしまう節税は、会社を強化する財務戦略とは相反する行為なのです。

節税を行うにしろ、〇年後には自己資本〇〇〇千万円達成するというように長期の財務方針を計画し、その上で節税を行うべきなのです。

しかし利益を「残ったもの」「余ったもの」と考えてしまうと、長期の財務的視点が欠落し、無駄な節税で会社にとって必要な利益を流出させてしまうのです。

経常利益で1人あたり目標利益を出す

では目標とする利益をいくらに設定すべきか?

ここで一つの指標になるが経常利益です。

経常利益とは、本業で稼いだ営業利益と本業以外の資金運用などで稼いだ営業外収益から、支払い利息などの営業外費用を引いたものです。

この経常利益を従業員数で割ることで、従業員一人当たり稼がなくてはいけない利益が見えてきます。

・経常利益÷従業員数

こうして経常利益を従業員数で割ることで、「営業活動や財務活動から1人当たりいくら利益を稼いだか」を知ることができます。

上場企業で100万円、中小企業なら50万円が目安といわれています。

仮に従業員10名の中小企業なら必要な経常利益は500万円です。

社会保険料などのバカ高いコストが掛かるわけですから、逆に「これだけは稼いで頂戴ね」ともいえるわけです(従業員は人なので、そんなに簡単な話ではないでしょうが、経営者のマネジメント目標としては持つべきでしょう)。

従業員10名で経常利益が5%の会社の場合、達成しなくてはいけない売上は1億円です。

節税を考えるならこのラインを超えてからです。

借入がある場合の目標利益額の算出法

借入のある会社なら借入返済金額から、逆算して目標利益を導きだすのも方法です。

仮に次の条件の企業があったとします。

  • 借入年間返済額:1000万円
  • 固定費:3000万円
  • 粗利益率:60%

この企業が返済しなくてはいけない年間のお金は1000万円です(このケースでは減価償却費を考えない)。

税引前利益で必要な利益は、法人税30%とすると

・1000万円÷(1-0.3)=1429万円

目標利益1429万円から逆算すると、固定費が3000万円かかりますので、粗利益は4429万円必要です。

そこから粗利益率で割ってやると、必要な売上高がみえてきます。

・4429万円÷60%=7382万円

このように必要な目標利益を決めることで、達成しなければいけない売上も求めることができます。

このケースでは税引前利益が1429万円以下だと、稼いだお金で返済できないということになりますので、節税どころではないでしょうという話です。

より生産性を高めることが必要になる

ご存知の通り、現在の日本は人手不足です。

人を雇いたい企業の方が多く、働き手の供給が追い付かない状態です。

就職の選択権は求職者に移りました。

そなると企業は人材を確保するため、給料面を含め少しでも良い条件を出さないと人を雇用するのがむずかしくなります。

そして人件費がアップすれば、利益は小さくなってしまいます。

つまり利益を稼ぐ生産性が上がらなければ、給料のみが上がってしまい、企業の利益を圧縮するだけで終わってしまうということです。

これでは何のための人材採用かという話です。

ただ単に仕事を回しているだけで、その内会社は疲弊してしまいます。

今後は人材を確保の費用がアップすることは確実で、より生産性を高める仕組みや工夫が必要になります。

でなければ給与で利益が圧縮され、最悪は事業が成り立たなくなってしまいます。

給与というコストが上がる中、会社の財務を強化するには、売上より利益管理が重要になります。

まとめ

利益は会社を存続させるために必要な燃料です。

その燃料が少なければ、必然的に前進する力は弱まります。

だからこそ、利益を「残ったもの」「余ったもの」と捉えるのは危険です。

利益を残った余ったと考えると。無駄な節税を招き、いたずらに会社の体力を奪ってしまいます。

会社を存続させるためにいくら必要なのか、しっかり把握して達成計画を立てましょう。

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