業務委託契約は社長の年金復活対策に使える方法です。

いわゆる外注費としてお金を受取れば、年金支給停止の対象外のお金となるからです。

しかも外注費は消費税節税対策にも使え、一挙両得の優れものプランです。

しかしそれだけに、です。

税務署が目を光らせていることを忘れてはいけません。

実態が伴ってない業務委託契約は、税務署から給与だと否認されてしまいます。

安易に「年金を復活させるため」と業務委託契約を導入すると、後々痛い目にあうことになります。

役員報酬以外で受取れば対象外

現在の年金には、在職老齢年金という制度があり、一定額を超える報酬をもらっていると、年金の支給が全部停止や一部停止してしまいます。

せっかく支払った保険料が損にならないようにするには、支給停止基準に引っかからない水準まで役員報酬(賞与を含む)を減額しなくしなくてはいけません。

しかし年金を復活させるために年収まで少なくなってしまえば意味ないわけで、何かの形で不足した収入を補いたいと考えるのが普通です。

そこでお金の受け取り方を変えます。

その少なくなった役員報酬額分を、他の受け取り方で収入にすれば(つまり役員報酬・賞与以外の受け取り方する)、在職老齢年金の対象とならず、収入を保つことができます(または増やすことができる)。

在職老齢年金の対象となるのは

  • 年金の月額換算額(基本月額)
  • 総報酬月額相当額

の2つです。

つまり厚生年金保険法上の報酬や賞与に含まれないお金なら、「総報酬月額相当額」に該当しないので、年金支給停止の計算に影響しないというわけです。

その方法には、

  • 役員借入金の返済を受取る
  • 会社に不動産や車を賃して賃料で受取る
  • 個人事業の事業収入で受取る※従業員数が5人以下

などの方法があります。

そしてこれ以外にも、特定の業務を業務委託契約を交わして、会社から業務委託料を受取る場合も、総報酬月額相当額に当たらないので、年金支給停止に影響しないのです。

その収入は外注費か?それとも給与か?

しかしこの場合、年金には関係してきませんが、その業務委託契約が「外注費か?」それとも「給与か?」を、税務調査に入られた場合チェックされることになります。

何しろ外注費を否認できれば、不足分の消費税は徴収でき、給与として源泉所得税も徴収でき、さらに給与を損金不算入にして法人税を課せられます。

これほど突っ込みたくなる調査項目はないでしょう。

そして外注費か給与かの調査では、その実態を見られることになります。

体裁上外注費にしておけばいいなどと安易に考えていたら、自ら否認されにいくようなものです。

業務委託契約を給与とみなされないためには

  • 契約書
  • 請求書
  • 発注書
  • メールのやり取り

は残しておくのはもちろんのこと、次の条件を満たしてないと否認される怖れが高くなります。

  1. 外注先は会社の指揮監督を受けない
  2. 必要な材料や用具を外注先で負担している
  3. 外注先は自分でその業務を行わなくてもいい(下請けに流せる)
  4. 引き渡し前の成果物が不可抗力により滅失した場合は、外注先は報酬を求めない。
  5. 外注先が報酬を計算して、発注先の会社に請求できる

その消費税節税対策は大丈夫?外注費を給与にされない5つのポイント

さらにこれに加えて、外注先が自ら確定申告をしていることも重要なポイントになります。

これらの条件を実態が満たして、はじめて外注費と認められます。

要は本当の意味で外注に出したと同じ状態です(「本当の意味で」と付くのもおかしな表現ですが)。

体裁だけ外注費にしても、間違いなく否認されるでしょう。

役員に給与とは別に業務委託として外注費を支払うと

否認された時点で終わり「確定」

そしてここが重要なのですが、この外注費か給与かで国税不服審で争われた場合、納税者側が勝った判例は「存在しない」とのことです。

つまり税務調査で否認された時点で、ほぼ100%その判定は覆ることがないのです。

安易に「年金を復活させたい」と考えて、実態の伴わない業務委託契約を結んでも、きちんと運用してないと後々大変な目に合うことになります。

ただし実態に則してきちんと業務委託契約を運用するなら、年金を復活させることはありです(※否認されないことを保証するものではありませんし、相当な根拠と論理を持って行わいとむずかしいことには間違いありません)。

年金のために役員報酬額を下げるリスクは大きい

年金保険料が払い損にならないよう、事前確定給与届出を使った年金復活プランに代表される、月額の役員報酬を減らして、年金の一部や全部を受取りたい気持ちは重々ご理解致します。

しかしながら高額な役員報酬を受け取る社長の場合、その減らした月額の役員報酬が、自身の役員退職金や会社の存続を決める事業承継に大きく影響してくることをわすれてはいけません。

社長は年金の満額支給のために役員報酬を低く設定すべきか?

そんなの「退職時期や事業承継時に合わせて役員報酬額を上げていけばいい」と反論があるかもしれませんが、では死亡の場合はどうするのでしょう?

人の死はタイミングを選んでやってくるわけではありません。

いついかなる時に来るかは誰にもわからないことです。

現役の社長がお亡くなりになった時点でも会社は大変でしょうが、そんなときに死亡退職金や弔慰金はどう影響しますか?

最終月額報酬が低ければ、死亡退職金額を会社の損金に算入できる額が読めなくなってしまいます。

ガッツリ増やす社長の役員退職金完全マニュアル

さらにご遺族が「非課税」で受取れる弔慰金も低くなってしまいます。

死亡退職金・弔慰金は、ご遺族の今後の生活資金や会社の運転資金、相続税の納税資金という(場合によっては遺留分に備えて)、極めて重大な役割があります。

事業承継時のリスク

そして突然訪れる死亡時の事業承継にどう対処するのでしょう?

きっと慌ただしく承継することになると思いますが、自社株の評価が高いままなら、死亡退職金で株価を引き下げることができなければ、ご遺族に高額の相続税が発生します。

その納税対策として死亡退職金2億円を支払って、株価を下げる場合はどうなるでしょうか?

死亡退職金の遺族の非課税枠は

・500万円×相続人の数

死亡退職金の会社の損金参入枠は

・最終報酬月額×役員在職年数×功績倍率+功績加算

です。

相続人がたくさんいらっしゃるなら、ご遺族の非課税枠は大きくなりますが、4人くらいなら2000万円が非課税枠です。

これに基礎控除5400万円(基礎控除3000万円+4人×600万円)を加えると、トータルの非課税枠は7400万円です。

もし2億円の死亡退職金を支払えば、1億2600万円が相続税の対象です。

・2億円-7400万円=1億2600万円

さらにここに自社株や被相続人(亡くなった社長)の不動産・金融資産などの相続財産も加わります。

※配偶者がいる場合は配偶者控除があるため、それほど納税額が大きくならない可能性があります。

では会社の損金算入額はどうでしょう?

仮に同業の平均役員報酬額で求めた最終報酬月額が100万円で、在職年数30年、功績倍率3.0なら

・退職金損金算入額:100万円×30年×3.0=9000万円

これに弔慰金が加わります。今回は業務外死亡で計算すると

・弔慰金:100万円×6ヵ月=600万円

したがって

・2億円-(9000万円+600万円)=1億400万円

が損金不算入となります。

目的通り自社株評価は下がるでしょうが、この大きな金額が損金不参入となってしまえばどうでしょう。

1億400万円は税引き後利益で支払うことになる上、今期赤字が出ても、その損失を翌期に繰り越せなくなります。

しかし役員報酬下げずに200万円受取っていたならば

・200万円×30年×3.0=1億8000万円

・200万円×6ヵ月=1800万円

・2億円-1億9800万円=200万円

となり、その額が200万円で済むことになります。

年金をもらうことと、会社を大きなリスクにさらすこと、天秤にかければどちらが重たいかということです。

死んでしまえば後のことは知らん、というなら別ですが、退職や事業承継を視野に入れないといけない社長が、年金のことだけを考えるのはあまりにも近視的な見方といわざるを得ないです。

まとめ

年金を復活させるために、業務委託契約を導入する場合は、外注費対策をよくよく考えましょう。

繰り返しますが、体裁を整えても実態が伴っていなければ、税務調査で否認される可能性が高くなります。

そして税務調査に入られれば、外注費は必ずチェックされる科目であることも忘れてはいけません。

社長なら年金のことだけを考えて物事を決めるのは、あまりにも大きなリスクが伴います。

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