銀行融資の決算書対策は「純資産額」と「営業利益」の改善から

融資対策

銀行から融資を引き出すには、あれこれむずかしい経営分析指標で考えるよりも、決算書の2つの数値を改善することから取り組みましょう。

2つの数値とは

  1. 純資産額
  2. 営業利益

のことです。

この数値が改善されることで、決算書を評価するスコアリングシートの点数が上がり、その結果格付けのランクが上がります。

銀行融資の8割が決まる「信用格付け(スコアリング)」を制する方法

格付けが上がれば、銀行は喜んで融資をしてくれます。

融資は依然決算書がメイン

銀行融資は決算書で8割が決まるといわれています。

昨今では事業そのものの収益性や成長性で融資の可否を判断しようという流れになっています。

いわゆる事業性評価です。

ただ現実はまだまだ決算書で判断されています。

事業の収益性や成長性で判断しろといわれても、100%見通すことなんてできないわけで、外れる確率もかなりあるでしょう。

それでいてもし貸倒れになれば、その担当行員の責任になるとなれば、普通は及び腰になってしまいます。

そんな事情もあって、融資の審査は依然決算書がメインとなっています。

逆にいえば、決算書の数値が良ければ8割は審査に通ったも同然なのです。

決算書で重要なのは2点

ただ経営者の中には、決算書アレルギーともいうべく、苦手意識をお持ちの方も多くいらっしゃるでしょう。

決算書と聞くだけで「何だかむずかしくてどこから手を付けていいのかわからない」となるかもしれません。

しかし融資対策として決算書で主に改善すべき項目は

  1. 貸借対照表→純資産額
  2. 損益計算書→営業利益

この2つです。

他の項目(短期・長期借入、売掛金、棚卸資産、固定資産など)もありますが、純資産額と営業利益に比べればその影響力は小さいです。

決算書の評価を上げるには、純資産額と営業利益の2つに取組むべきです。

決算書を採点するスコアリングシート

決算書は銀行独自の採点表、スコアリングシートにより採点されます。

さらに二次評価と三次評価を加えた総合得点により

  1. 正常先
  2. 要注意先
  3. 要管理先
  4. 破綻懸念先
  5. 実質破綻
  6. 破綻先

の6段階に格付けされます。

融資を確実に受けたければ正常先にランク付けされなくてはいけません。

この格付けの評価が決算書を採点するスコアリングシートの得点で8割方決まるのです。

スコアリングシートの得点を上げるには、純資産額と営業利益の数値が良いと採点が上がるようになっています。

何も売掛債権回収期間がうんちゃらかんちゃらと経営分析を行わなくても、2つの項目の数値が良ければ融資を受けることができるのです。

営業利益と純資産額は配点が高い

スコアリングシートでいえば、純資産額は「自己資本比率」「ギアリング比」「自己資本額」「債務償還年数」という配点の大きなものにかかわっています。

営業利益も「債務償還年数」「インタレスト・カバレッジ・レシオ」「キャッシュフロー額」に関係していて、こちらの配点も高いです。

「借入総額」と「営業利益」

とくに「債務償還年数」は重要で、この数値の良し悪し(正常とカウントされるのは10年以内)は融資に大きく影響してきます。

その債務償還年数は

・総借入額÷(営業利益+減価償却費)

で求められます。

上記数式からもわかるように、営業利益の額が大きければ、債務償還年数は短くなり、融資の審査で評価は高くなるのです。

銀行が純資産額と営業利益をどれだけ重視しているかが一目瞭然です。

だからこそ決算書の得点を高くするために効果的なのは、純資産額と営業利益の改善なのです。

営業利益と純資産額の意味

では、純資産・営業利益は何を表す数値でしょう?

営業利益はよくご存じだと思います。

営業利益は損益計算書にある項目で、本業の儲けのことです。

純資産額とは貸借対照表にある項目で、会社がこれまでの活動で得た資産のことです。

つまり利益が多くて資産を貯めている会社、要は万が一のときでも取りっぱぐれのない会社が、銀行の貸したい相手ということです。

あらためて聞いてみれば、そんなの当たり前だろうと思われるでしょうが、小難しい決算書を睨みながら銀行員が調べているのはそのことなのです。

営業利益と純資産額の改善法

営業利益を改善するためには、これはあなたもご存知の通り、売上に対して仕入れや経費を削って利益を厚くすれば営業利益は大きくなります。

あるいはその逆に、経費や仕入れ値はそのままで、付加価値を付けて高価格で販売することでも実現できます。

純資産額を増やすためには、本業で稼いだ利益を内部留保で貯めていく必要があります。

内部留保で貯めるには、税引き後の利益でなくてはいけません。

つまり節税などで利益を減らしてしまうと、純資産額に貯まる資産は少なくなります。

節税と融資対策は真逆の位置にあるということです。

純資産額は大きければ良いだけではダメ

ちなみに、純資産額に貯まっているのはお金だけではありません。

不動産や機械設備といった固定資産に化けている場合もあります。

そういう意味では、純資産額もただ大きければ良いわけではありません。

不動産や機械設備がキャッシュを生み出していれば良いのですが、そうでないなら、売却して現金にした方が会社の財務体質は強くなります。

そうすれば貸借対照表の現預金が増えて「当座比率」が上がり、さらに銀行からの評価が上がります。

キャッシュが尽きれば会社が終了してしまうことを思えば、現金に換金しにくい固定資産を持つよりも、1円でも多く現金を持つことの方が重要です。

財務改善は簡単ではない

純資産額・営業利益を改善することは簡単ではありません。

ライバルとの競争の中で、十分な粗利益を取ることさえむずかしいでしょう。

仕入や経費の削減も今でも切り詰めて行われていると思います。

またその残った利益を内部留保するにしても、少ない額になるのはやむを得ないです。

改善とは簡単にいえますが、現実は厳しい道のりです。

それでも取り組まなければ、いつでも融資を引き出さるような強い財務体質になりません。

キャッシュは事業の推進力です。

失くせば前に進む力はなくなります。

しんどくても純資産額・営業利益の改善に取組んで、財務体質の強化を目指しましょう。

まとめ

融資の決算書対策などと聞けば、むずかしいことに取組まなくてはいけないと思いがちですが、決算書で見るべきポイントは、そう多くはないですし、さほどむずかしいことでもないのです。

2つともいっぺんに改善できればバストですが、純資産額・営業利益のうちどれか1つでも改善すれば融資をグッと引き寄せられます。

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