社長が現役で役員報酬をもらい続けるかぎり、年金額を停止される可能性が出てきました。

現状でも払い損とならないために、役員報酬を少なくしているケースがあると思いますが、では、年金を満額受け取るために、あえて役員報酬を少なくするべきでしょうか?

いいえ、社長の場合、役員報酬を安易に下げてしまうことは、リスクの方が大きくなります。

年金の多寡だけ考えて役員報酬を決めるのは危険です。

2020年に在職老齢年金が廃止?!

そのニュースは2018年5月25日に流れてきました。

政府は一定の収入がある高齢者の年金を減らす在職老齢年金制度を見直す方針を固めた。6月にまとめる経済財政運営の基本方針(骨太の方針)に明記する。将来的な廃止も視野に高所得者の年金減額の縮小を検討する。少子高齢化の進展で生産年齢人口の急激な減少が見込まれており、高齢者の就労意欲をそぐ同制度はふさわしくないと判断した。2020年度の法改正を目指す。

今でも在職老齢年金といって、60歳~65歳未満の人で月28万円以上、65歳以上で48万円を超える収入のある人は、年金の一部減額・停止をされる制度があります。

在職老齢年金の支給停止の仕組み

しかしこの制度があることで、就業時間を短縮して年金を満額もらえるよう調整する人も出てこられました。

つまり在職老齢年金の制度があることで、逆に「勤労意欲を削ぐ結果」になっているということなのです。

この現況を鑑みた安部首相は、次の方針を打ち出しました。

安倍晋三首相は16日の人生100年時代構想会議で「65歳以上を一律で高齢者とみるのはもはや現実的でない」と指摘。潜在成長力の向上に向けて、65歳以上の就労環境の整備を検討するよう加藤勝信厚労相らに指示していた。厚労省の社会保障審議会などで議論を重ね、20年度に法改正する段取りを描く。

現在の在職老齢年金の支給停止基準28万円と48万円があることによって、年金を満額もらうために就業時間を調整する人が現れるなら、2020年の法改正によって、支給停止基準の額を思いっきり下げられるか、あるいはそれそのもの撤廃すると考えるのが妥当でしょう。

社長は役員報酬を低くすべき?

そこで社長の年金です。

もし2020年の法改正で、在職老齢年金の支給停止基準が撤廃され、報酬を受取る限り年金は支給停止となればどうでしょう?

社長が60歳を過ぎて年金を満額受給したいなら、会社からは無報酬か、会社を退職しなくてはいけません。

もしかたらそれはやり過ぎということで、在職老齢年金の支給停止基準が10万円程度に抑えられるかもしれません。

ではこのとき、役員報酬を低く設定すれば問題ないでしょうか?

いいえ、役員報酬を低額に設定すると別の問題が出てきます。

それが役員退職金の問題です。

さらに役員退職金は事業承継でも重要な役割を担っています。

やはり社長は、先を見据えてある程度高額に役員報酬を設定しておかなくてはいけないでしょう。

退職金リスク

では、役員報酬を低く設定することで、役員退職金の何が問題となるでしょう。

それが「退職金の損金算入限度額」です。

一般的に退職金の損金算入額の適正額は

・最終報酬月額×役員在職年数×功績倍率+功績加算

で計算されます。

この式からもわかるように、最終報酬月額が低すぎると、損金算入額が極端に低くなってしまうのです。

最終報酬月額は役員賞与を含めた総報酬ではなく、判例では月額の給与と解釈されています。

国税不服審判所の解釈

  • 最終報酬月額は、通常は退職した役員の在職期間中における報酬の最高額を示すものである。
  • 退職の直前に大幅に引き下げられたなどの特段の事情がある場合を除き、退職した役員の在職期間中における法人に対する功績の程度を最もよく反映している。

最終報酬月額が極端に少ない、あるいは0円などのときは、「功績倍率法」ではなく「1年あたり平均額法」で算出されることになります。

この方法は同業の役員退職金の1年あたりの平均額をベースに、自社の役員退職金を求める計算方法です。

しかし「1年あたり平均額法」は「同業の平均額のデータをどこから見つけてくるか?」という問題があります。

さらに会社側が適正と思われるデータで計算しても、それ自体否認されてしまったという事例があり、安易に最終報酬月額を決められないのです。

したがって最終報酬月額をある程度高額に設定しておくことは、適正な退職金を支払う上で非常に重要なことです。

ガッツリ増やす社長の役員退職金完全マニュアル

誤解なきようにいっておきますが、退職金自体はいくら支払っても社長「個人」は問題ありません。

個人で認められている退職金の非課税枠を使うことができます。

ですから社長がほしい額をほしいだけもらえば良いのです。

しかし法人の場合、損金算入額を超えた部分には法人税が課せられます。

退職金の非課税枠が小さいと、納めるべき法人税も多くなってしまいます。

また否認された場合には、重加算税と延滞税を課せられる可能性もあります。

会社が赤字でもかまわないというケースを除き、退職金を適正額にできないことは企業にとって大きなリスクです。

退職金は事業承継にも影響する

さらに退職金は事業承継にも大きく関わってきます。

たとえば自社株の評価です。

自社株の評価方法には、類似業種比準価額方式と純資産価額方式の2つがありますが、株価を下げるには「利益圧縮」と「資産圧縮」をしなくてはいけません。

この2つの圧縮を行う場合、退職金が非常に効果を持ちます。

利益圧縮はその期の利益を小さくすることなので、退職金で大きな損金を作れば可能になります。

資産圧縮は会社に貯まった資産を退職金という形で吐き出すことで実現できます。

とくに会社資産が1億円未満の企業であれば、社長に退職金を支払うことで株価はどんと下がります。

わざわざ事業承継税制の贈与税・相続税の猶予を使わなくても、少ない納税額で事業承継を行えるのです。

役員報酬を低くしてしまうということは、有効に使える手段を自ら封じてしまうようなものです。

トータルでみれば大したメリットはありません。

社長の場合、年金を満額もらいたいからと、役員報酬を低い額にしていると危険です。

結論

社長は会社や後継者の資金繰りまで考えたら、役員報酬は高めに設定しておかなくてはいけません。

社長の役員報酬は社長のものだけにあらず、トータルで考えなくてはいけないものです。

ちなみに、退職金をもらう年だけ役員報酬を上げれば良いのでは?と思われるかもしれませんが、最終年だけ極端に役員報酬を上げると、その額を税務署から否認される怖れがありますので注意が必要です。

ただし2020年に在職老齢年金に新たな法改正がされたら、残念ながら払い損となる可能性は高いです。

もちろん社長の人生は会社だけで終わるものではありません。

会社を退職後もずっと続いていきます。

その間年金が収入の柱になりますし、障がい者年金や遺族年金もあることを思えば、一概に払い損と決めつけることはできません。

しかし公的年金が給付に見合ったものか、これを機によくよく考えてみるべきでしょう。

見合わないとお感じなら、社会保険料を削減して、そのお金を別なもので運用するなり、新たな投資に充てたりする方がよっぽど得かもしれません。

まとめ

社長が年金対策として役員報酬を低くしてしまうのは、結構なリスクがあります。

それは主に退職金とそれにかかわる事業承継です。

社長の役員報酬は社長のためのものであるわけですが、その影響は意外に大きく及びます。

年金の支給額のみで決めてしまうの危険です。

年金対策における社長の役員報酬は、トータルで考えて設定しましょう。

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