赤字が融資にとってマイナスであることは間違いありません。

赤字となって融資が出なければ、資金不足に陥り、借入の返済や従業員の給料などの支払いができなくなります。

そうした理由で不安になり、何はなくとも損益は黒字を確保するため決算書の粉飾に手を染めてしまうケースもあります。

たしかに粉飾をすることで、融資を引き出すことができるかもしれません。

しかし粉飾決算が問題なのは、会社経営に負のスパイラルをもたらすことです。

この記事では、銀行融資と粉飾決算について解説していきます。

銀行が疑う決算書の粉飾科目

粉飾をしても銀行にバレないと考えるのは甘いです。

中小・零細企業が行う粉飾は、ある程度パターン化されています。

多かれ少なかれ粉飾を銀行員は知っていて、あえて口に出さないだけの場合もあります。

ここでは銀行が決算書のどの部分を見て粉飾を見破るか解説していきます。

貸借対照表編

貸借対照表の中で粉飾を疑う科目です。

1・売掛金

架空の売掛金や回収不能な売掛金を計上することで、資産と利益を大きく見せることができます。

架空売掛金

商品を販売したとき、現金回収ではなく、後日あらためて決められた日に販売代金を回収することを売掛取引といいます。

架空売掛金は売上原価が計上されないので、赤字を埋めることはできます。

たとえば、200万円の赤字の企業で、300万円の売掛金を計上すれば、100万円の黒字にできます。

しかし、架空の売掛金なので回収することはできません(回収できないどころか、利益が出れば税金まで持っていかれます)。

そして回収できない売掛金は、貸借対照表に売掛金として計上され、資産(架空の)を増大させます。

銀行は売掛金の粉飾を、「売掛期間回転日数」でチェックします。

・売掛期間回転日数=売掛金残高÷平均月商

この数値が前年に比べ高くなっていると、粉飾を疑われます。

売上げが200万円なのに、売掛金が1000万円もあれば、5カ月資金が寝ていることになり、あきらかに不自然です。

回収不能な売掛金

売掛金にも貸倒れになったものなど、回収不能な売掛金があります。

この回収不能な売掛金を計上することで資産を大きく見せる手法です。

この場合、税務署に提出した勘定科目明細書から、支払わななかった前例がある取引先、前年、前々年と売掛金額が変わらない取引先を調べられ、回収不能な不良債権として、資産から引かれます。

回収不能な売掛金は、本来貸倒れとして損失に計上しなくていけませんが、売掛金の貸倒れ計上は厳しい要件があり、なかなか損失に上げれないという事情もありますが、資産価値のないものは実態を調べられ引かれてしまいます。

2・棚卸資産

棚卸資産とは在庫のことです。

棚卸資産も粉飾によく使われる科目です。

棚卸資産が粉飾に使われる理由は、在庫が増えると利益が増えるからです。

仕入などの売上げ原価は、売上に対応したものだけが費用として計上できます。

つまり、在庫が増えると売上原価は小さくなり、その結果利益が大きくなるのです。

売上げ原価は次の式で求められます。

・売上原価=期首の在庫+当期仕入高(当期購入高)- 期末の在庫

仮に、期首の在庫が20万円、当期の仕入れが15万円、期末の在庫が10万円だった場合、売上原価はどうなるでしょうか?

・20+15-10=25万円

売上原価は25万円です。

このとき売上が50万円なら利益は25万円になります。

・50-25=25万円

では期末の在庫が18万円だった場合どうなるでしょう?

・売上原価:20+15-18=17万円

・利益:50万円-17万円=33万円

このように期末の棚卸資産(在庫)が多く計上されれば、売上原価が小さくなり、その結果利益が増えてしまうのです。

そういった理由から、棚卸資産が粉飾に使われるのです(架空の在庫や売れない在庫が増えても利益が増えるので、税金が増大することになります)。

棚卸資産も、銀行は回転期間で調べます。

・在庫回転期間=棚卸資産÷平均月商

この期間が前年、前々年に比べ大きく伸びていたら、粉飾を疑われます。

3・仮払金

仮払金とは、どの科目にも入れようがないものや、金額が確定しないものなど、一時的なお金です、

来期は費用になりますので、資産とはいえないものですが、不明瞭なお金が流れ込む科目だけに、粉飾に使われます。

期末の仕入れを費用でなく仮払金として計上し、当期の売上原価を減らし、利益を多くみせたり、前期分の法人税を支払いを仮払金にして、利益を増やす粉飾などさまざまあります。

そのため銀行員は、仮払金をはじめから資産としてみてくれません。

4・貸付金

貸付金は相手に貸したお金で、1年以下の短期で回収予定は流動資産に、1年以上の長期で回収予定は固定資産に計上されます。

貸付金とありますが、実態は不透明で、回収ができないものが多く含まれています。

  • 社長が会社から持ち出したお金を貸付金で処理している
  • 売掛金の貸倒れや不渡りの受取手形を、そのまま償却処理すると赤字になるので、貸付金に計上している
  • 赤字の関連会社に貸付金として貸している

このように、ほぼ回収見込みがないものが貸付金の実態です。

銀行員がもっとも嫌う科目で、融資を申し込むと、なぜ貸付金が発生したか?どうやって今後解消するのか?を聞かれます。

ハッキリ答えれないと、それだけで融資を断られる理由となります。

もちろん、資産価値としてみてくれません。

5・減価償却費

粉飾ではありませんが、減価償却費の未計上も調べられます。

法人の場合、減価償却の計上は義務ではありません(個人事業主の場合は義務)ので、赤字が出そうなら減価償却費を未計上にすることで、赤字を避けようとします。

ただし、減価償却費を未計上にすると、利益が増えて状況によっては法人税が発生します。

また、銀行が融資の返済原資とみる大事な営業キャッシュフロー額が減ってしまいます。

・営業キャッシュフロー額(償却前利益)=営業利益+減価償却費

さらに、減価償却費を未計上にすることで、貸借対照表の資産も水膨れします。

本来なら、毎年減価償却費を計上することで、建物や機械設備などの資産価値も、年々減少していくことになります。

しかし減価償却費を未計上にすれば、資産価値が引かれないまま貸借対照表上に残るので、その差額分、水膨れした状態になります。

その結果、たまりにたまった未計上分の減価償却費を引いてみると、実は債務超過だった、というケースも考えられるのです。

減価償却費を利益の調整のためだけに使うと、後々しっぺ返しを喰らうことになります。

損益計算書編

決算書で銀行が重要と見るポイントは、「経常利益」です。

経常とは「常に一定の状態で変わらない」という意味で、経常利益がプラスであれば、「事業収入が普通の状態で一定額ある」ということになります。

そのため融資の際は、基本「経常利益が黒なら可」「経常利益が赤なら不可」と判断されます。

まず、このポイントを抑えて下さい。

そして経常利益からその期だけに発生した特別な利益や損失を加えて、税引前の当期利益が求められます。

ということは、同じ利益でも、損失と収益の科目をどこに振り分けるかで、経常利益を黒にしたりすることができるということです。

たとえば次の損益計算書をみて下さい。

経常利益は-6万円、当然なが税引前当期利益も-6万円となります。

その原因となっているのが、営業外費用の16万円です。

では、この16万円をその下の特別損失に移せばどうなるでしょうか?

税引前当期利益は同じく-6万円ですが、経常利益は10万円の黒字にすることができます。

このように科目を調整することで、経常利益だけは黒字を確保することもできるのです。

となれば、本来なら特別損失に入れるべきではないものについて、特別損失に入れて利益調整している可能性もあるのです。

もちろん許される範囲のことでなら、こういった手法で経常利益の黒字を死守することは問題ないのですが、入れるべきでないものを入れたりしても、銀行もそれを見抜いてきます。

粉飾決算の「本当」のリスク

粉飾は銀行から融資が出ないことを怖れて行われますが、本当の意味でのリスクは別なところにあります。

それは次の通りです。

リスク1・資金繰りが悪くなる

銀行に対して行う粉飾は利益の水増しです。

そのため、利益を増やせば税金の支払いが発生してしまいます。

粉飾を行うくらいですから、本業の利益は少ないはずです。

それなのに税金を支払わなくてはいけないということは、資金繰りを悪化させる原因となります。

リスク2・経営改善が遅れる

粉飾を行って融資を受けるということは、曲がりなりにも資金繰りが回るということです。

本来であれば、融資を受けられる状態にないにもかかわらず、です。

したがって、融資を受けられない時点ではじめなくてはいけない経営改善を行うことができす、ズルズルと改善のチャンスが遅れます。

リスク3・リスケを申し込んでも断られる

粉飾決算を行っも一時的に資金繰りが楽になっても、会社の経営体質が変わらない限り、売上は右肩下がり、赤字を出し続けることになります。

そうすると返済に行き詰まるようになり、いずれリスケジュールを申し込むことになります。

しかしそのとき、粉飾決算を行っていたこともバレてしまいます。

粉飾決算が理由で追加融資を断られれば、会社の息の根も止まってしまう可能性があります。

リスク4・一度はじめると抜けられなくなる

粉飾決算に手を染めてしまうと、ズルズルと続き、抜けられなくなってしまいまいます。

数字や説明のつじつまが合わなくなるからです。

また粉飾をしているという罪悪感や、いつかバレるという不安から、大きなストレスを抱えることになります。

リスク5・社長が経営の実態をつかめない

社長が本来置かれている会社の状況を、正確に把握できないことも大きな問題です。

1年2年なら本当の数値を把握できるかもしれません。

しかし粉飾決算が何年も続くと、どれが本当の数値かわからなくなります。

正しい数値だからこそ、正確な経営判断ができます。

粉飾された数字をもとに判断すれば、会社は間違った方に進んでしまいます。

リスク6・M&Aで会社を譲渡できない

M&Aを行うにあたって、粉飾決算をしていることがわかれば、話そのものがなくなってしまいます。

また、経営責任を問われることになるかもしれません。

粉飾決算をどう修正するか?

決算書は黒字なのに、借入額がどんどん大きくなれば、銀行の担当者もおかしいと思うでしょう。

ひょっとしたら銀行員も、薄々粉飾決算と気づいていて、口に出してないだけかもしれません。

しかしだからといって「実は粉飾決算をしていました」と伝えても、それで解決とはならないでしょう。

また、「粉飾決算」とハッキリ口に出すことで、問題が大きくなる可能性もあります。

そこでポイントになるのが、「銀行に対する伝え方」です。

粉飾という言葉を使わず、「決算書を精査」したところ、実態の数値とかけ離れたいました、と伝えることで、いく分か柔らかく伝わります。

要するに、意図的に行っていたのでなく、認識の違い(または認識不足)から、数字の解離を起こしてしまったというニュアンスです。

銀行が粉飾より知りたいこと

そしてここからが大事ですが、銀行が知りたいのは、「だからこれからどうやって改善するのか」です。

そのため、事業計画がいっそう大事になります。

どうすれば膨らんだ借入を返済できるか、融資を受けてどう回復するか、これを徹底的に説明し、銀行の理解を得なくてはいけません。

積極的かそうでないかはわかりませんが、粉飾に手を染めていたことで、銀行からの信頼は著しく低くなるため、事業計画を納得してもらえない限り、融資を受けることはむずかしいでしょう。

まとめ

粉飾決算と銀行融資について解説してきました。

粉飾決算の一番のリスクは、手を染め続けることで会社の現状を正確に把握できなくなることです。

間違った数値で物事を判断しても、上手くいくとは思えません。

やはり、粉飾に手を染める前に、経営をオープンにし、銀行に相談にいくのがベストです。


<社長におススメの【資金繰りに役立つ】記事>

【2019年最新】働き方改革推進で活用したい助成金大特集

【消費税・社会保険料対策】知らないと怖い業務委託契約の事実

【緊急レポート】今すぐ節税・社保削減したい社長のための極秘マニュアル



<おススメサービス>

社会保険料最適化【無料相談】社会保険料の負担でお悩みの経営者に無料でご相談を承ります

銀行から見た「自社評価がわかる」格付け診断サービス

社長のキャッシュがザクザク増える社会保険料削減スキーム