事業資金を借りるときの正しい銀行の選び方

融資対策

事業資金の融資の申し込みは、どの銀行でもいいというわけではありません。

あなたの状況に合わせて、銀行を選んで申し込まないとダメなのです。

むやみやたらに申し込んでも断られるだけです。

この記事では、事業資金を借りるときの銀行の選び方について解説していきます。

各金融機関の特徴

まず最初に各金融機関の特徴を解説していきます。

銀行の選びのヒントにしてください。

メガバンク

メガバンクの特徴は規模の観点から、地方銀や信金・信組には取り扱えない額の融資を行えることです。

そして金利も他に比べて低いです。

会社の業績が良ければ、低金利で融資をし、実行までのスピードも速いという特徴があります。

しかしその反面、年商が10億円以上の企業でなければ相手にしてもらえません。

小口の融資をたくさんかかえるより、大口の取引先に一件どんと貸出した方が効率的という考えです。

また、割切りが早いというのも特徴で、業績が悪くなりダメと判断すると、資金をさっと引き上げてしまいます。

融資の可否の判断は、9割が決算書の数値といわれています。

そのため、メガバンクと取引をするためには、財務状況が良いことがが条件となります。

地方銀行

地方銀は、第一地方銀行と第二地方銀行に分けられます。

メガバンクに次いで金利が低く設定されています。

地方銀の融資は、信用保証協会付き融資が中心になります。

地方銀は特定の地域を営業エリアにしていますので、地域の経済を支える役目も求められています。

裏を返せば、企業側も地域の役に立っていることをアピールすることが大切といえます。

また地域に根差して営業しているので、業績が悪くなったとしても、すぐに資金を引き揚げるようなスタンスではなく、回収する場合も地域の噂を気にするため、強引なことは避ける傾向にあります。

信金・信組

メガ信金と呼ばれる大規模な信金もありますが、預金残高が1000億円未満の信金・信組が多く1件当たりの融資金額も少額になります。

そのため、メガバンク、地方銀と比べると、貸出し条件は悪くなります(金利が高い、融資額が小さいなど)。

とはいえ、基本的に地域密着、きめ細かなサービスを売りとしていますので、多少条件の悪いことは目をつぶっても、信金・信組をメインバンクにしている中小企業もあります。

また、企業の財務状況が悪い状態、または創業間もない信用の少ない状態でも、融資を出してくれる可能性があるのも、信金・信組の特徴です。

さらに、貸し剥がしや貸し渋りをすることがないので、長期的なお付合いができるパートナーになります。

日本政策金融公庫

日本政策金融公庫は政府系の金融機関です。

政策的な意図もあり、、信用が低く、民間の金融機関で融資を受けにくい中小・零細企業、起業前、創業して間もない方へ積極的に融資をしてくれます。

日本政策金融公庫の特徴は、民間の金融機関より金利を低く借りられることです。

信用保証協会

貸出し機関ではありませんが、信用保証協会が付いてくれる「信用保証協会付き融資」があります。

中小・零細企業が銀行から融資を受けようとすると、信用の少なさから融資を断れてしまいます。

そこで信用保証協会が、万が一貸倒れた際の損失を代わりに返済(代位弁済)することで、銀行のリスクが軽減され、中小・零細企業に融資を出しやすくしています。

このため、銀行独自のプロパー融資より、信用保証協会付きの融資の方が審査に通りやすい特徴があります。

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正しい銀行の選び方

事業資金の融資を申し込むときは、主に2つのパターンから判断します。

1・会社の時期で決める

会社の時期とは、創業期、成長期、安定期などです。

この期によって選ぶ銀行も変わります。

起業前・創業期

起業前・創業期は、日本政策金融公庫、信金・信組(信用保証協会付き)がメインとなります。

とくに起業前・創業期に借りやすいのは、日本政策金融公庫です。

まずは、日本政策金融公庫に申し込んでみましょう。

成長期

成長期は年商が大きくなり、それに比例して借入残高も大きくなっていきます。

複数との銀行の取引を開始し、銀行間で競争させ、自社にとって有利な借入条件を引き出します。

売上規模のさらなる拡大を目指すなら、第一地方銀行とのお付き合いを視野にいれていきます。

また、売上が順調に伸びてくると、メガバンクからの営業を受けることが出てきます。

そんなときは、金利などの貸出し条件だけで判断しないようにしましょう。

先にも書きましたが、メガバンクは割切った対応となるため、金利のみで選んで取引シェアを大きくしてしまうと、万が一のとき資金を引き揚げられてしまうと大変なことになるからです。

銀行は借りたいときに必ずしも借りられるわけではないので、周りとのバランスをみながら決めましょう。

安定期

安定期になり、年商が10億円を超えてくると、信金・信組、地方銀、信用保証協会付き融資ではまかなえきれなくなってきます。

したがってこの段階では、いかにプロパー融資を受けるかがポイントになります。

信用保証協会付き融資の場合は、借入に限度枠(保証枠)が設けられています。

無担保の場合8千万円、担保も含めれば2億8千万円までです。

またこの枠は、すべての銀行を合算したものになります。

プロパー融資にはこの枠がないため、年商が大きくなってくると、プロパーで借りないといけなくなるのです。

そのため、プロパー融資に強いメガバンクとのお付き合いを視野に入れていかなくてはいけません。

また借入れ枠という観点からみれば、いざというときのために信用保証協会の枠を取っておくという考えも必要です。

借りやすい資金使途(つなぎ資金、賞与納税資金、季節資金など)からプロパー融資を打診したり、銀行間で競争させてプロパーを提案させるように誘導したりの方法で、プロパー融資の実績を作っていきましょう。

2・会社の売上げ規模で決める

会社の売上規模で融資を申し込む銀行を決める方法です。

売上げ3億円未満

日本政策金融公庫、信金・信組(信用保証協会付き)、地銀(信用保証協会付き)

売上げ3億円~10億円

地銀、地銀からのプロパー融資を目指す。

成長している会社は信用表協会の保証枠だけでは足りなくなってきます。

そのため、プロパー融資で運転資金や設備資金を調達をしないと、事業に支障をきたすようになります。

売上げが伸びてきているのなら、早い段階でプロパー融資を受けられないか準備しておきましょう。

売上げ10億円以上

メガバンク、メガバンクからのプロパー融資を目指す。

10億円以下の企業の場合、メガバンク側が親身になって付き合ってくれない可能性があります。

取引銀行は複数行と付き合う

銀行との取引は複数にしておくべきです。

理由は次の3つです。

  1. 安心感を与えることができる
  2. 選択肢を広げることができる
  3. 銀行間を競争させることができる

理由1・安心感を与えることができる

複数の銀行と取引があると、銀行は「自行以外に取引銀行がある」と安心します。

逆に自行のみだけなら、貸出しの許容範囲も限られているため、融資枠が限度に近づいてくると「これ以上は出せない。しかし当行が手を引いてしまったら?」と不安にさせてしまいます。

理由2・リスクヘッジになる

自社にとっても複数行との付き合いの方が安心です。

仮に一行が融資を出せない場合でも、複数なら他行が出せる可能性もあります。

複数行との付き合いがリスクヘッジになるのです。

なお、借入額に対する付合いをすべき銀行の数は以下の通りです。※あくまで目安です。

  1. 3000万円まで→2行以上
  2. 3000万円~1億円→3行以上
  3. 1億円以上→4行以上

理由3・銀行間を競争させることができる

銀行間を競争させることで、自社にとって有利な貸出し条件を引き出せます。

銀行員にはノルマがありますし、銀行自体融資が利益を稼ぐ商品です。

シェアを拡大したいのは常にある目的です。

ですから、貸出し条件を緩くし、少しでも多く借りてもらおうとするのは、自然の流れです。

金利の低下はもちろん、プロパー融資、連帯保証人なしの融資なども引き出せることができます。

また、銀行の提案を受けて、それを借入している銀行との金利交渉にも使えます。

ただし、プロパーや無保証融資などの好条件を引き出せるのは、財務状況の良い会社です。

業績の悪い会社は、交渉を下支えできる条件がないので、強く交渉に出られません。

やはり財務改善は、常に行わなければいけない施策です。

まとめ

事業資金の融資を受ける際の正しい銀行の選び方について解説してしました。

企業はおかれたステージによって、付き合うべき銀行は変わります。

間違った相手に融資を申し込んでも、やはり上手くいかないのです。

自社の状況に合わせた銀行選びえおしましょう。

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