債務超過でも銀行から融資を受ける秘訣とは?

融資対策

債務超過に陥った企業が融資を受けるにはどうすればよいでしょうか?

債務超過になった企業は融資を受けられない?

いいえ、そんなことはありません。

債務超過になってしまった場合でも、銀行は融資に応じてくれることもあるのです。

この記事では、債務超過と融資の関係、債務超過解消法について解説していきます。

債務超過とは?

債務超過とは、会社の負債が資産より大きくなり、資産をすべて売っても借入を返済しきれない状態のことです。

貸借対照表の「純資産」がマイナスになります。

さらに債務超過が問題なのは、会社の資産が利益を生み出す源泉であることです。

その源泉が枯れていけば、いずれ利益を生むこともできなくなります。

債務超過を放っておけば、経営自体行き詰っていくことになるでしょう。

債務超過、イコール融資が受けられないというわけではありませんが、銀行の格付けの債務者区分が「要注意先」となり、融資が非常に厳しくなることは間違いありません。

そのため、少しの金額でも資産が負債を上回るよう、日ごろから注意しておく必要があります。

実質債務超過

債務超過にも、決算書上の債務超過と、実態に合わせて修正をして「本当は債務超過だった」という実質債務超過があります。

たとえば、決算書上に載せる売掛金や棚卸資産には、実質回収不能になった売掛金や不良在庫とな棚卸資産も含まれていることがあります。

これらを、回収できない売掛金、売れない在庫として、資産から引いてしまいます。

このように修正してみると、総資産が小さくなり、実態は負債の方が大きいことを実質債務超過といいます。

ちなみに、建物などの減価償却費を意図的に長年計上してない場合は注意が必要です。

減価償却費を未計上のまま何年も経過させると、建物の価値が減らずに貸借対照表上に、数年前の価格で計上されてしまいます。

つまり、実際の価値より高い状態になっているということです。

しかし減価償却の未計上は、別表をみればすぐわかってしまいます。

そこで銀行は、未計上分の減価償却費を引いて、実質価値を計算します。

すると、長年たまった未計上分で、総資産が一気に減少し、いきなり債務超過ということもあり得るのです。

いずれにしても、実質債務超過でも、融資は厳しくなります。

債務超過の解消法

債務超過になれば、絶対でないにせよ、融資の審査を通すことはむずかしくなります。

債務超過を解消するには次の方法があります。

債務超過解消法1:稼ぐ

債務超過を解消するには、王道は「稼ぐ」ことです。

利益を稼いで内部留保を貯め、負債より純資産が大きくなるよう、利益体質を変えていきます。

簡単にいえば、稼いでお金の貯まる会社にするということです。

この方法で債務超過を解消するには速効性はありません。

しかし。債務超過解決の根本治療になるほか、企業の継続的な成長には欠かせない取り組みです。

債務超過解消法2:増資

現実的ではないでしょうが、第三者から増資してもらうのも方法としてあります。

増資して資本注入してもらい、債務超過を脱します。

ただし、仮に1億円の債務超過なら、1億円増資しても、その瞬間に消えてしまうので、そのような案件に投資してくれる企業や個人はほぼいないと考えた方がいいでしょう。

また社長個人のお金で増資を行うことも考えられますが、債務超過に行き着くくらいですから、その余裕もないというのが現実です。

増資は、第三者、社長個人とも実現性の低い解消法といえます。

債務超過解消法3:役員借入金の免除

債務超過になるような状態なら、社長個人が会社にお金を貸していることもあります。

いわゆる「役員借入金」です。

この役員借入金は会社の社長に対する借金なので、いずれ返済しなくてはいけません。

しかしこの役員借入金を、社長が免除します。

すると、負債が減って利益が出て、その結果資本に組み込むことができるのです。

資本になれば、役員借入金の額にもよりますが、債務超過を解消できます。

ただし、役員借入金を免除すると、債務免除益が発生します。

そのため、その期の利益によっては、法人税が課せられることもあるので、実行のタイミングには注意しましょう。

役員借入金を銀行はこう見る

ちなみに銀行は、役員借入金を「返済予定のない」ものに限り、資本金にみなしてくれる場合があります(銀行によって)。

銀行が何によって「返済予定のない」ものとみなすかは、1年ルールに則ります。

返済期間が1年以内かどうかで、1年以上なら「返済予定のない」とみなしてくれます。

そのため、役員借入金がある場合は、短期借入金でなく長期借入金に科目を入れるようにします。

短期の借入に入っていると、「返済するお金」となります。

そうなると、資本金にはみなしてくれないので、注意が必要です。

債務超過解消法4:役員借入金を増資に振り返る

役員借入金を増資に振り返ることもできます。

借入が資本金になるので、自己資本額が増え、金額によっては債務超過を解消できます。

デメリットとしては資本金が増加するので、場合によっては、法人税の均等割額の増加や外形標準課税の対象になるなど増税の可能性があります。

また、借入から資本への組み替え時の方法によっては債務免除益や贈与税課税の問題も出てきます。

債務超過解消法5:遊休資産を売る

遊休資産が会社にある場合は、これを売れば、総資産が減少し、売却で得たお金で借入れの返済を行えば、金額によっては債務超過を解消できます。

実質債務超過の解消法

実質債務超過は、帳簿上ではプラスでも、実態がマイナスの状態をいいます。

この状態から債務超過を解消するには、不良資産を一気に表面化させるのではなく、利益の出た年に合わせて損金計上していく方法がソフトランディングになります。

たとえば先ほど紹介した役員借入金の債務免除益です。

役員借入金の債務免除益と、不良資産の損失計上を相殺させることによって、目立たず処理をしていけます。

債務超過解消期間

銀行にとって、債務超過に陥った企業が問題であることは間違いありません。

しかし融資がむずかしいという話であって、条件によっては融資に応じてくれるケースもあるのです。

融資に応じてくれるケース
  • 債務超過が一時的なもので、すぐに脱せられると考えられる場合
  • 直近で利益が出ていて、返済能力がある考えられる場合
  • 価値の高い不動産などの担保資産がある
  • 社長個人が資産を持っている
  • 経営改善計画を提出して、債務超過を脱する道筋を示している

債務超過を解消する期間は、銀行によりますが、概ね5年とされています。

債務超過解消年数は、経常利益で債務超過額を割って求めます。

・債務超過解消年数=債務超過額÷経常利益

仮に債務超過額1億円で、経常利益が1200万円なら、解消年数は8.3年です。

・1億円÷1200万円=8.3年

これを5年以内の解消計画にしたいなら、経常利益を2000万円にしないといけないことがわかります。

・1億円÷5年=2000万円

このような債務超過を解消する経営計画を立てることで、融資を受けられる可能性があるのです。

経営計画にあたっては、次の原則を守る必要があります。

  • 計画が原則5年以内であること
  • 終了後、企業の債務者区分が「正常先」となる計画であること
  • すべての取引金融機関と文書で合意していること
  • 金融機関の支援内容が、債務放棄や現金贈与などの資金提供を伴うものでないこと

以上の条件を満たしたうえで、「合理的であり、その実現性が高い」経営改善計画なら、融資を受けられる可能性もあるのです。

社長の個人資産を増やしておくことは安全対策

会社が債務超過であっても、社長に個人資産があることがわかれば、銀行が融資に応じてくれるケースもあります。

それは、仮に資金繰りに詰まった場合でも、「社長が個人資産を処分して返済してくれる」とみているからです。

そのように考えれば、社長が個人資産を貯めておくことは、会社の防衛対策として必要な施策といえます。

ケチとか守銭奴とか、そういう卑しい話とは次元が違うのです。

  • 役員報酬を多めに取る
  • 生活費以外のお金をしっかり貯めておく
  • 個人マネーの無駄な支出をなくす

社長にはこのような見直しも必要です。

社長の給与を高くするべき2つの理由

融資を申し込む銀行を選ぶ

債務超過に陥った場合、融資が厳しくなるのはやむを得ないことですが、融資を申し込む銀行にも気をつけなくてはいけません。

メガバンクは論外として、まず申し込むべきは、信金・信組、第二地方銀などの地域密着を基本としている金融機関です。

金融機関も融資をして利益を得て生き残っていかなくてはいけません。

優良企業としか取引しませんなら、貸出し先がなくなってしまいます(そもそも日本の中小企業の7割は赤字といわれています)。

そのため、少々難があっても融資に応じてくれるケースがあるのです。

もちろん、債務超過を解消するための経営改善計画は必要ですが。

まとめ

銀行融資と債務超過について解説してきました。

実際債務超過から抜け出すには、並大抵の苦労ではないでしょう。

簡単なことではないことはわかりますが、債務超過を解消しなければ、いずれ倒産が待っています。

債務超過でもあきらめなければ、銀行が融資に応じてくれることもあります。

債務超過対策を行って、ピンチを脱しましょう。

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