難易度MAX銀行のプロパー融資を攻略!メリット・デメリットを徹底解説

融資対策

プロパー融資は銀行が独自に行う融資です。

銀行の行う融資には、信用保証協会付き融資とプロパーの2つがありますが、メリットで考えると、プロパー融資の方が大きいのです。

この記事では、プロパー融資のメリットとデメリット、どうすればプロパー融資を受けられるのかなど、解説していきます。

プロパー融資とは

プロパー融資とは、銀行がすべてのリスクを負って貸出す融資のことです。

もし融資先の企業が倒産したときは、その損失を銀行が全部かぶることになります。

一般的な企業への融資の場合、信用保証協会が保証の8割をしてくれます(一部の取引を除く)。

そのため貸出し企業が倒産しても、銀行の損失は2割で済みますが、プロパー融資は銀行が100%自己資金で貸し出しているため、損失をそのまま負うことになるのです。

※信用保証協会とは、その名の通り借入の保証をしてくれる協会のことです。

信用力や担保のない中小・零細企業は、銀行からお金を借りたくても借りれないということが起こります。

そこで、信用保証協会が万が一倒産した場合は損失の一部を肩代わり(代位弁済)することで、銀行のリスクを軽減し、融資を受けられるようにする仕組みです。

プロパー融資のメリット

1・金利が安い

プロパー融資は信用保証協会付き融資に比べ、金利が安くなります。

プロパー融資は、基本的に優良企業しか借入できないので、貸出金利も低く設定されます。

2・限度額がない

信用保証協会付き融資の場合、普通保証で2億円、無担保保証で8千万円(このうち無保証人枠が1250万円)の、合計2億8千万円の限度枠があります。※法人・個人の場合

創業当初や事業規模が小さいときには、この限度枠で間に合います。

しかし売上規模が大きくなれば、信用保証協会の枠だけでは足りなくなってしまいます。

そこでプロパー融資が必要になってきます。

プロパー融資は限度枠がありませんので、事業に必要なお金を資金調達することができるのです。

3・保証料がかからない

信用保証協会付き融資は、信用保証協会が保証をしますので、そこに保証料が発生します。

これを信用保証料と呼びますが、その額は、貸付金額、保証料率、保証期間、分割係数によって決まります。

保証料の目安は、1000万円の借りれで、5万~20万円になります。

プロパー融資だと、信用保証協会がつきませんので、信用保証料がかからないというメリットがあります。

4・企業にとって信用の証

対外的なことですが、プロパー融資を受けられるということは、財務状況が良く、信用力の高い企業という証です。

そのため、融資をプロパーで受けているという事実が、企業の一つのステータスになり、信用力が高くなります。

プロパー融資のデメリット

1・審査が厳しい

プロパー融資は銀行が100%リスクを負いますので、信用保証協会付き融資に比べ、審査が厳しくなります。

そのため十分な対策を行ってから融資の申し込みをしなくてはいけません。

銀行にとって返済の実績がある、決算書の数値が良い、銀行が行う企業格付けのランクが高いなど、クリアする壁が高くなります。

2・不動産担保が必要になることがある

信用保証協会付き融資の場合、貸出し先の企業が倒産しても、信用保証協会が保証をしてくれ、銀行は貸倒れのリスクを回避することができます。

しかし、プロパー融資ではそのような保証がないため、不動産のなどの担保を抑え、万が一の回収不能な状態に備えようとします。

不動産がプロパー融資を受ける絶対条件ではありませんが、不動産があることで、審査にプラスに働きます。

プロパー融資の審査のポイント

プロパー融資の審査は厳しいと先ほど述べましたが、審査でポイントとなる点があります。

まずはこのポイントをしっかり確認しましょう。

格付けのランク

銀行に融資を申し込む際、決算書3期分を提出することになります。

この決算書により、銀行は企業を格付けと呼ばれる1~10までのランク付けを行います。

この10段階の格付により、債務者区分といわれるものにさらにわけられます。

一番上から

  1. 1~6までは正常先
  2. 7は要注意先
  3. 8は要管理先
  4. 9は破綻懸念先
  5. 10は実質破綻先、破綻先

となります。

プロパー融資を受けるには、最低でも正常先に入っていなくてはいけません。

格付けはどう決まるか?

銀行の行う格付けは、1次評価、2次評価、3次評価の三段階で評価されます。

1次評価は定量評価といわれる決算書のスコアリングで決まります。

2次評価は定性評価といわれる、市場環境、競業状態、経営者・従業員の資質など、決算書に直接表れない要因を評価します。

3次評価は実態評価で、会社の固定資産を洗い直し、実質の評価で資産価値をはかったり、社長の個人資産などをみて、審査のプラスマイナスを加えます。

そしてここからが大事なのですが、銀行の行う格付けは、7割~9割は1次評価で決まるといわれています。

つまり、決算書の数値の良し悪しで、格付けがほぼ決まってしまうのです。

ですから、プロパー融資を受けるには、日ごろから決算書を意識した経営改善を行わなくてはいけないのです。

定量評価の内容

定量評価は次の4つの部門があり、配点はそれぞれ重要項目によって振分けられまます。※配点は銀行によってそれぞれですが、ここでは129満点

  1. 安全性:34点
  2. 収益性:15点
  3. 成長性:25点
  4. 返済能力:55点
安全性
  1. 自己資本比率:10点
  2. ギアリング比:10点
  3. 固定長期適合率:7点
  4. 流動性比率:7点
収益性
  1. 売上高経常利益率:5点
  2. 総資本経常利益率:5点
  3. 当期利益の推移:5点
成長性
  1. 経常利益増加率:5点
  2. 自己資本額:15点
  3. 売上高:5点
返済能力
  1. 債務償還年数:20点
  2. インタレスト・カバレッジ・レシオ:15点
  3. キャッシュフロー額(営業利益+減価償却費):20点

それぞれの詳しい内容については下記記事を参考にして下さい

銀行融資の8割が決まる「信用格付け(スコアリング)」を制する方法

スコアの改善には自己資本とキャッシュフロー額

この決算書のスコリング評価の得点を高くするには、自己資本(純資産)とキャッシュフロー額の改善が欠かせません。

逆にいえば、自己資本(純資産)とキャッシュフロー額の2つの数値を改善できれば、スコアの評価は断然高くなるということです。

自己資本(純資産)

自己資本とは、貸借対照表の右側にある「純資産」のことで、会社の総資産に占める自社の持ち分の割合いのことです。

自己資本額が大きいということは、自社が持っている現金や資産が多くあり、借入れに頼らない経営をしているということです。

また、万が一業績が傾いて毎月の支払いに詰まることがあっても、資産を売ったり預貯金から返済することができるため、安全性の高い企業であること示します。

自己資本額を上げるためには、毎年税引き後に残る利益剰余金を貯めるしかありません。

銀行目線としては、40%以上で優良企業といわれていますが、まずは25%~30%を目指しいたところです。

資産の水増しは見抜かれる

ただし、自己資本を大きくしようとして、資産を水増ししても3次評価の実態評価で実質の価値に引き戻されてしまいます。

たとえば、

  • 売掛金の中の回収不能な債権
  • 在庫の水増し
  • 不動産や株券などの含み益や含み損
  • 役員貸付金などの資産価値のない資産

などです。

これらを引いて実態の資産価値を見るので、かならずしも提出した決算書の数値で得点が決まるわけではありません。

ちなみに、売上や経常利益が横ばいなのに、売掛金や在庫が増えていると黒字化のための粉飾を疑われます。

通常、売上が下がれば、在庫などは安売りしてでも捌きたいため、在庫数は減少するものだからです。

キャッシュフロー額

キャッシュフロー額とは

・営業利益+減価償却費

の額のことです。

キャッシュフロー額が大きいということは、毎年の稼ぐ利益が大きいということなので、返済能力の高さを示します。

キャッシュフロー額を大きくするには、

  • 高単価のもの販売して粗利益率を高くする
  • 値引き販売は最低限度に抑える
  • 仕入原価を下げる
  • 固定費や経費を削減する
  • 労働生産性の見直し

といった施策が有効になります。

ごくごくありきたりのことですが、方法はそれしかないということです。

プロパー融資を受けるには実績を作る

財務状況の良い会社(格付けの高い会社)が、プロパー融資を受けられるといっても、業歴の浅い会社や返済実績のない会社が、いきなり多額のプロパー融資を申し込んでも、そこは審査は厳しくなるでしょう。

そこで、少額の短期借入から実績を作るのも方法です。

少額で短期の借入(季節資金、納税・賞与資金など)なら、銀行も融資を出しやすいので、そこから実績作りをはじめます。

そして返済実績を積み上げていき、借入額を徐々に大きくしていけば、プロパー融資の実績ができます。

そしてプロパーで融資を受けられたこと他銀行にアピールしていけば、他行も追従しやすくなります。

プロパー融資を受けるタイミング

プロパー融資を受けるタイミングもあります。

それは自社がどのステージにいるかで決まります。

創業時や業歴が浅いとき、売上規模が小さいときは、プロパー融資を受けたくても受けられないなど、企業のステージによって申し込みのタイミングを見極めることが大切です。

  • 創業時→日本政策金融公庫、信用保証協会付き融資
  • 1億円~3億円→信金プロパー融資
  • 3億円~10億円→地方銀行プロパー融資
  • 10億円~メガバンクプロパー融資

融資はプロパー融資を優先で

借入は、プロパー融資のみでなく、信用保証協会と抱合せで行われることが一般的です。

最初は信用保証協会付き融資、次に信用保証協会とプロパー融資の抱合せ、最後にプロパー融資のみといった形です。

いわば、信用保証協会付き融資で返済実績を作り、それによりプロパー融資への門が開かれるという感じです。

プロパー融資の特徴は、先述した通り借入の限度枠がないことで、それに対し信用保証協会付き融資は限度枠があります(法人・個人の場合、普通保証2億円、無担保保証8千万円の合計2億8千万円)。

ということは、プロパー融資と信用保証協会付き融資を受けられる場合は、借入限度枠のないプロパー融資を優先させた方が良いということです。

プロパー融資を優先させれば、信用保証協会の借入れ枠はそのまま残りますので、いざというときのために温存しておけます。

借入の順番を考えて、自社の安全対策を行いましょう。

まとめ

プロパー融資のメリット・デメリット、プロパー融資を受けるためのポイントなどについて解説してきました。

基本、プロパー融資を受けられるのは、財務状況の良い優良企業ということになります。

プロパー融資を受けることが経営の目標ではありませんが、プロパーで借入れをできるということは、それだけ財務状態が良好ということであり、それはそれで、企業の目指すべき経営状態の一つです。

それには決算書を意識した日々の経営改善が必要です。

資金調達はプロパー融資でいえるくらい、財務改善を行いましょう。

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