事業資金の借換えは、月額の返済額や金利の負担が減るなど、大きなメリットを得られることができます。
しかしそれだけに、借換えのデメリットも知っておかなければ、後々不利益を被るかもしれません。
この記事では、銀行融資の借換えについて解説していきます。
借換えに失敗しなためにはじめにすべきこと
銀行からの事業資金の借換えの第一条件といえば、「金利を安くすること」になります。
複数の銀行から借入がある場合は、「他行の分もうちで一つにまとめませんか?」といった提案も行われるでしょう。
そこで大事なのは、今より負債の総額が減るかどうかです。
月々の返済の負担が減っても、トータルの負債がドンと増えるような提案では、借換えをする意味はありません。
また、事業資金の借換えには諸費用がかかります。
ですから借換えの際には、借換え前と借換え後のシミュレーションをしっかり行い、どれくらいプラスの収支になるかを計測しなくてはいけません。
「金利が●%安くなります」という言葉に惑わされないようにしましょう。
借換えのメリット
ここからは借換えのメリットにつて解説していきます。
メリット1・利息が安くなる
事業資金の借換えのメリットといえば、利息が安くなることです。
これは借換えとセットで行われる提案で、これを取引のある銀行への交渉材料に使うこともできます。
メリット2・月々の返済の負担が小さくなる
事業資金の借換えをすることで月々の返済額の負担を減らすことができます。
仮に次のような条件で借入れをしていた場合※ボーナス払いなし、残存期間10年
- 融資額2000万円、金利3.5%、毎月の返済額約20万円
- 融資額1500万円、金利2.5%、毎月の返済額約14万円
この融資の毎月の返済額は合計で34万円です。
これを3500万円の融資1本に借換え、1.5%の利息で借りた場合、約31万円に毎月の負担を減らすことができます。
さらに返済期間を10年から12年に延ばせば、毎月の返済額は26万円まで圧縮できます。
ただし総返済額は、3771万円から3826万円に増えますが、3.5%と2.5%で返済期間10年でそれぞれ借りると総返済額は4055万円になるので、それでも229万円は安く済みますが。
このように、金利が下がることで、毎月の返済額を減らすことができ、資金繰りを楽にすることができます。
メリット3・連帯保証人にならなくてもよい融資の提案をされる
通常、中小企業の社長は、会社が7事業資金の借入をすれば、それとセットで連帯保証人になることを要請されます。
しかし銀行間で競争が起これば、他行より有利な提案をしないと借換えてもらえないので、連帯保証人にならなくても良い融資の提案を受けられることがあります。
もちろんそれは、財務状況の良いという条件付きでしょうが、連帯保証人という大きな足かせを外せるチャンスがあることはメリットです。
メリット4・プロパー融資を受けられる
銀行間で競争が起これば、プロパー融資への道が開けてきます。
一行のみの取引なら、プロパー融資は財務状況が良くないと、なかなか門が開かれません。
しかし銀行間で競争が起これば、融資条件を緩和せざるを得なくなるのです。
銀行融資は基本、金利くらいしか他の銀行との差別化ができません。
それゆえ、ぷろぱあー融資という好条件を付けて借換えの提案がなされることもあるのです。
プロパー融資になれば、信用保証協会に保証料を支払わなくて済みますので、その分費用を安くすることができます。
そのため、
借換えのデメリット
返済額の負担が減ることが借換えの大きなメリットですが、やはりデメリットも生じます。
デメリット1・費用がかかる
事業資金の借換えには費用がかかります。
利息だけでなく、諸費用も計算に入れ、トータルの収益で考えましょう。
借換え手数料
事業資金の借換え手数料は、これから借りる銀行と、これまで借りていた銀行の2つに発生します。
その額は数万円程度ですが、ここで注意点が一つ。
借換えによって違約金が発生することがある、ということです。
契約書に「返済期間10年以内に繰り上げ返済した場合は、借入残高の○○%を支払う」といった文言が入っていれば要注意です。
事前に確認してから、借換えの検討をしましょう。
登記手数料
不動産を担保に入れている場合は、現在借入している銀行から、これから借換えをする銀行へ登記(抵当権)の変更をしなくてはいけません。
そのため、登録免許税が発生します。
登録免許税は、「借入額(元本)×4/1000」で計算されます。
借入が5000万円なら、5000万円×0.004%=20万円の登録免許税を納めることになります(プラス司法書士への成功報酬)。
借入が高額だと、利息で得した分が登録免許税で飛んでしまいます。
トータルの費用で、損か得かを考えましょう。
デメリット2・既存の銀行との関係性の悪化
他行へ事業資金を借り換えるということは、現在の借入先である銀行との関係性は悪化します。
一般企業でも同じですが、取引条件で乗り換えられたとなると、気分の良いものではありませんし、それはやはり屈辱的なことでもあります。
それが長い取引歴がある場合や、業績悪化のときにも融資を出してきた経緯があるとなると、なおさら裏切られた感が強くなります。
もちろん、事業資金を借り換える側の企業にも言い分はあるでしょうが(キャンペーンなどのお付合いに無理に応じてきた、あまりにも金利が高いなど)、それがしこりになって信頼関係を壊してしまいます。
ややもすれば、今後一切取引はしない、などの状況を招くかもしれません。
もし、現在の銀行と取引を続けたいなら、事業資金のすべて借換えてしまうのは避けた方が賢明です。
デメリット3・選択肢が少なくなる
三行あった取引銀行を、一行にまとめて借換えしていまえば、取引銀行は一行のみとなります。
となれば当然、融資を受けられる銀行の選択肢は少なくなります。
さらに新たに取引をはじめた銀行が、どこまで積極的に事業資金を融資してくれるかも未知数です。
これまで取引のあった銀行には、返済という実績があります。
銀行にとって、何年も滞りなく返済してきたという実績は、何よりも大きな信頼となります。
この信頼があるがため、少々の業績悪化でも融資を出せる、または出してきたという面があります。
しかし新規の銀行には、この実績と信頼関係がありません。
それゆえ、業績悪化などのピンチの際、どこまで融資をしてくれるのかが未知数なのです。
さらに、仮に新規の銀行一本で借入をまとめてしまった場合、業績悪化でその銀行が全部手を引いてしまったら、資金繰りは一気に悪い方に向かいます(もちろんこれは、既存の取引銀行1本にしてしまったときにも同じことがいえます)。
業績悪化や資金ショートがどこで起こるかは、誰にもわからないことです。
そういう意味では、見えないところで大きなリスクを抱えているようなものです。
借換えをするか決めるポイント
借換えをするかどうか決めるポイントは2つあります。
それは
- 借入条件で考える
- 銀行との関係性で考える
の2点です。
借入条件で考えるのは、主に金利の高低で、トータルの返済額がいくらになるか?毎月の返済額の負担は減るか?など、金銭面でのメリット・デメリットを考えれば良いだけです。
これは電卓を叩けば誰でも答えは出せます。
しかしもっと大事なのは、銀行との関係性です。
それはあなたもお考えのように、今後の資金調達に影響を及ぼすからです。
既存の取引相手である銀行なら、これまでの実績から、少々の業績悪化した場合でも融資をしてくれる可能性はあります。
ですが、金利などの取引条件だけで、ドライな付き合い方をしていればどうでしょう。
状況が悪くなれば、さっさと撤退してしまうかもしれません。
そんな状況を招くのは、自分に原因があったといえます。
したがって、今後も関係を保ちたいと考えるなら、損得だけで事業資金の借換えを決めてしまうのは賢明とはいえません。
では、借換えの提案をしてきた銀行にはどう対応すべきでしょうか?
こちらも、今後も付き合っておきたいと考えるのなら、全部ではなく一部を借入して実績を作っておくといった方法をとっておきます(もちろん借入する余裕があればです)。
銀行別付き合い方
メガバンクの特徴は、業績の良い企業に対しては、地銀が取り合付けないような金利を提案したり、スピーディーに融資を実行してくれることです。
しかしその反面、「撤退も早い」という側面もあります。
ダメとなったらすぐに回収、要するに割切りが早く、面倒はみてくれないということです。
それに対し、地銀。信金・信組は、地域に根付いた営業をしていますので、メガバンクのような割切りの早さはないといえます。
このような特徴を踏まえ、借換えの提案を検討しましょう。
銀行から有利な借換えを提案されるには
銀行から有利な条件で借換えを提案されれば、これに越したことはありません。
では、借換えの有利な提案をされるにはどうすればよいでしょう。
それは、資金繰りの管理をしっかり行い、経常利益が安定して出続けている会社になることです。
経常利益が安定して出続けていれば、毎年の返済もきちんとできるということです。
さらに、利益剰余金を貯めることができるので、現金・預金や資産を持っていると予測でき、万が一のときにも返済していけるということです。
資金繰りの管理を行っているということは、返済で詰まる可能性が低いことを示しています。
このような企業なら、貸しても貸倒れの可能性が低く、銀行が喜んで貸したい相手となります。
一朝一夕にはいきませんが、努力して目指したいものです。
まとめ
銀行融資の借換えについてまとめました。
借換えは融資の条件だけに目が行きがちですが、お金の損得だけでなく、今後の銀行との付き合い方も考えなくてはいません。
賢い借換えは、自社に有利な状況を作ります。
しっかり考えて、ベストな借換えを行いましょう。
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