銀行融資に生命保険はどう影響するのでしょうか?
生命保険に加入していると銀行融資には有利になるのか?
この記事では、銀行融資と生命保険の関係について解説していきます。
銀行融資に生命保険は有利になる
結論からいってしまえば、生命保険は銀行融資にプラスの効果があります。
とはいえ、大事なのは本業の儲けや会社の財務体質です(つまり決算書の数値)。
生命保険は担保価値に留まることは忘れないようにしましょう。
まず銀行融資に関係あるのは、生命保険の換金価値です。
法人で加入する生命保険は、解約したらお金が返ってくるタイプのものがあります。
このお金を解約返戻金といいますが、この積立タイプの保険の資産価値が評価され、融資の審査でプラスに評価されます。
なぜなら業績が悪くなって返済が滞った場合、その保険を解約して返済に充当してもらえるからです。
しかも生命保険の評価額は、額面とほぼ同額になります。
不動産などは時価の50~70%しか評価してもらえないことを考えれば、いかに生命保険の評価価値が高いことがわかります。
生命保険の解約返戻金は換金性が高く、経済的な保障もカバーすることから銀行の評価は高くなるのです。
経営者の個人保険も評価対象
また同じ理由で、経営者個人の生命保険(積立タイプ)も高く評価されます。
中小企業の経営者の場合、会社と個人の資産は一体とみなされます。
会社の業績が悪化すれば、社長個人の資産を投入することは当たり前にあることです。
そのため、経営者が個人資産を持っていると、銀行からの評価は高くなるのです(審査の3次評価)。
そういう意味では、経営者の加入する個人保険は、一般的なサラリーマンと同じではいけないともいえます。
融資や事業保障、個人の保障も踏まえて、保険の加入を考えるべきです。
生命保険を担保にして資金調達する方法
生命保険を担保にして資金調達する方法があります。
その方法は2つあり、一つは銀行に対して融資を申し込む方法と、加入している保険会社に申し込む方法の2つです。
生命保険に質権を設定して融資を受ける方法
生命保険はそれ自体で銀行から融資を受けることもできます。
ただし、どの銀行でもできるわけではないことに注意が必要です。
生命保険証券に質権を設定し、銀行に預け入れ、それを元に融資を受けます。
質権(しちけん)とは、民法によって定められている担保物権の1つです。
質権を有する人(この場合銀行)は、債権の担保のため、債務が弁済されるまで債務者等の所有物を占有することが特徴です。
万が一借入が返済されない場合には、目的物を売却することで、債務の弁済に充てることができます。
その質権は生命保険にも設定できます。
終身保険や養老保険には積立たお金が貯まっていますので、これに質権を設定して融資を受けるというわけです。
生命保険の担保の評価は、その時点で保険を解約した場合の解約返戻金の範囲内になるのがほとんどです。
この方法のメリットは、生命保険の保障を維持しつつ融資で資金調達できることです。
なお、生命保険を質権に入れて銀行ら融資を受けなくても、生命保険には「契約者貸付け」という制度があり、それを使ってお金を借りる方法もあります。
生命保険会社の「契約者貸付け」制度を使う方法
生命保険の契約者貸付け制度とは、契約している生命保険の解約返戻金を担保にしてお金を借りることをいいます。
貸主が加入している保険会社というのが、質権を使った生命保険の融資とは違うところです。
契約者貸付けで借りられる額の範囲は、解約返戻金の70%~90%までです。
借入の利息は予定利率に1%~2%を足したものになります。
利息や借入の範囲は、その保険会社や保険商品によって異なります。
契約者貸付けのない商品もありますので、事前に確認が必要です。
こちらも保険を解約しないでお金を借りられるので、保険の保障を維持しつつ資金調達を行えます。
借入の際は審査がありませんので、スピーディーに資金調達できることも特徴です。
ただし、返済しないままでいると、保険の契約が失効あるいは解除になります。
解除や失効になれば、解約返戻金は借入れ額と相殺されることになります。
また、借入の範囲が解約返戻金額の7割~9割となりますので、解約返戻金の額によって、資金調達できる額も決まってきます。
解約返戻金が多ければ借入できる額も大きくなりますが、解釈返戻金が少なければ、借入できる額は小さくなります。
したがって、保険加入初期の段階では解約返戻金がたまってないため、資金調達に使うには一定期間経過後ということも考慮しておかなくてはいけません。
こういった形で資金調達ルートを確保できることを思えば、解約返戻金のあるタイプの保険に加入することの意味もあります。
ただし、保険契約を継続しているのであれば、保険料の支払いが発生しますので、借入しなければ手元資金がない状態なら、契約貸付でお金を借りても資金繰りは苦しくなります。
事業資金にも団体信用生命保険の加入を
住宅ローンを借りる際、団体信用生命保険に加入することは一般的になりました。
団体信用生命保険とは、債務者がその債務を返済する前に死亡、または所定の高度障害状態になった場合、その保険金で債務を返済するための生命保険です。
この団信は住宅ローンだけでなく、事業融資の場合にも使えることがあります。
取扱いがあるのは、日本政策金融公庫と信用保証協会です。
事業性融資は融資金額が大きいだけに、団信に加入して万が一のときに備えることで、残されたご家族の経済的リスクはぐんと抑えることができます。
団信でカバーできない範囲の保障は、民間の生命保険の掛け捨てタイプで備えるようにしておくとよいでしょう。
生命保険の加入には順番がある
ここまで説明してきたように、法人の加入する生命保険には、融資の審査でプラスの評価をされ、さらに生命保険自体を使って資金調達することもできます。
その上法人保険には、保険料を損金計上できるものもあります。
つまり、保障を得ながら、保険料を損金で計上して節税しつつ、解約返戻金を貯められ、それを担保に資金調達できるという、まさに一つで保障と節税(繰延べ効果しかありませんが)と蓄財と融資に備えるという、まるでスーパーマンのごとき活躍ができます。
とはいえ、だからジャンジャン加入した方が得ですよ、という話にはなりません。
保険の本来の目的とは、リスクに対して保障を備えることです。
事業の融資の場合、何千万単位になることが多く、さらに経営者は事業資金の連帯保証人になっていることがほとんどです。
仮に、経営者が死亡や高度障害になったとき、その経済的損失を被るご家族のリスクは甚大です。
そういったリスクに備えるため、保険に加入するのが本道です。
事業保障に備えた生命保険に加入した後で、はじめて資産性や節税の生命保険への加入を検討すべきです。
節税効果のある生命保険でも、保険は保険です。
加入することで、毎年キャッシュが出ていきます。
とくに解約返戻金を貯めておけるタイプの商品は、それだけ保険料が高くなります。
その保険料が多ければ、会社の資金繰りを圧迫することはもちろん、決算書の内容まで傷めてしまいます。
銀行が担保価値のある生命保険を評価するとはいえ、それより評価が高いのは本業の利益をいくら稼ぎ出すかです。
本業の利益を安定して稼ぎ出すからこそ、安心して返せると銀行は考えます。
さらに本業の利益が大きくなれば、
- 債務償還年数
- インタレスト・カバレッジ・レシオ
- 営業キャッシュフロー
といった、会社のスコアを決める大事な財務指標の数値も改善します。
無駄に節税で利益を減らしてしまうのは、資金調達の観点からみれば、賢い選択とはいえないのです。
さらにいえば、保険に加入することで手元資金が少なくなれば、将来への投資資金も不足することになります。
投資をしなければ、事業は衰退していきます。
これでは何のための節税かということです。
本業が傾いてしまったら、お金を貯めるどころの話でなくなります。
会社の加入する生命保険は、まずは事業リスクに対して保障目的加入することが先決です。
それでまだ利益が出るのなら、融資とのバランスを考えて節税型の生命保険を検討するようにするとよいでしょう。
順番を間違うと、資金繰りが苦しくなるだけでなく、会社の衰退や資金調達に悪影響を及ぼす危険性があります。
まとめ
生命保険と銀行融資について解説してきました。
生命保険(積立タイプ)に加入していると、銀行融資ではプラスの評価をされます。
事業の利益に余裕があるのなら、資産性のある生命保険の加入も検討したいところです。
ただし、保険の加入には順番があることは忘れてはいけません。
結論。
生命保険は使い方次第で、銀行融資に役立てることができます。
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