銀行融資には、
- 金融機関の種類
- 融資方法
- 融資形態
があります。
これらをその時々の状況に合ったものを利用することで、資金繰りに詰まらない資金計画を立てることができます。
金融機関の種類
メガバンク
年商10億円~30億円以上の企業が取引先相手となります。
決算書で融資の9割が決まるといわれています。
金利も安く、大口融資に強く、プロパー融資に力を発揮します。
また非常にドライな面があり、業績不振になると引き上げが早いのも特徴です。
地方銀行
地方銀行は、第一地方銀行と第二地方銀行に分けられます。
年商10億円規模までの売上が目安です。
信用金庫より融資限度枠が大きい分、審査が厳しくなる傾向にあります。
地域密着のビジネスのため、メガバンクのようなドライさは比較的少ないといえます。
信金・信組
個人事業主、売上規模1億円~3億円くらいの企業が対象となります。
それ以上の売上規模になると、地銀が取引先になってきます。
信金・信組も、その地域に根付いてビジネスを展開しているため、地域の企業と共存共栄のスタンスです。
そのため、業績が悪くなったからといって、すぐに撤退ということは少ないでしょう。
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫は政府系金融機関です。
日本政策金融公庫は、民間の銀行では融資が受けにくい中小企業、創業期の会社、これから起業する起業家などへ積極的に融資をしてくれます。
日本政策金融公庫は、民間の金融機関でカバーし切れない部分を補完する存在であるため、会社の規模が大きくなるにしたがって、融資のシェア率は低くなるのが一般的です。
ノンバンク
ノンバンクとは、銀行、信金・信組など以外で、貸金業を営む金融会社の総称です。
銀行や政府系金融機関に比べ審査は緩いですが、その分、企業の貸倒れに備え、金利は5%~20%と高めです。
そのため、大きな融資を長期間借入することは避け、なるべく少額を、短期で借りて返すが、基本のスタンスとなります。
また、ノンバンクから借りることによって、銀行や政府系金融機関に融資を申し込んだ際は、そのことが審査においてマイナス要素として働きます。
借入は銀行や政府系金融機関を優先させたいところです。
融資方法
融資の方法にもいくつか種類があります。ここでは、銀行とノンバンクの融資の方法について解説します。
銀行
プロパー融資
プロパー融資とは、銀行が保証協会を付けずに、自行が直接貸す融資のことです。
万が一貸倒れになった際のリスクも銀行自らが負うことになります。
プロパー融資のメリットは
- 保証料がかからないこと
- 限度額がないこと
の2つです。
信用保証協会付きの融資の場合、保証協会に保証料を支払わなくてはいけませんが、プロパー融資には保証協会が付きませんので、保証料を支払わなくてよいメリットがあります。
また、保証協会付き融資には限度枠がありますが、プロパー融資には限度枠はありません。
そのため、売上が上がっていくと、必然的にプロパー融資での借入を考えなくてはいけなくなります。
反対に信用保証協会に借入限度枠があることを考えれば、業績が落ちてきた時に備えて保証協会枠を残しておくため、プロパー融資で借りることを優先的にした方がよいといえます。
デメリットとしては、銀行自らが100%リスクを負うため、その分審査はきびしくなります。
信用のない創業当初はほぼプロパーで借りることはできませんし、業績の悪い企業も審査はむずかしくなります。
信用保証協会付き融資
信用保証協会付き融資とは、業歴が浅い、決算書の内容が良くない、担保がないなど、プロパー融資を受けられない中小企業に対し、信用保証協会が保証をすることで、融資を借りれやすくしてくれる制度です。
中小企業・小規模事業者1人に係る保証限度額は、中小企業信用保険における普通保険の限度額2億円(組合4億円)と無担保保険の限度額8,000万円(組合も同額)を合わせた2億8,000万円(組合4億8,000万円)となっています。
ただし、これとは別に信用保証協会が目安としている運転資金の総額の目安があります。
それが、月商の3カ月分です。
仮に2億4000万円の年商の企業の場合、月商は2000万円です。
そのため運転資金(無担保の場合)の上限の目安は、2000万円×3カ月=6000万円になります。
つまり、無担保の借入枠が8000万円だからといって、必ずしも8000万円まで借りられるというわけでないことに注意が必要です。
また、保証協会自身も融資を希望している企業に対して審査を行います。
万が一のときは、信用保証協会が銀行に代位弁済しなくてはいけないためです。
さらに、保証料がかかるので、プロパー融資に比べコストが高くなります。
ノンバンクによる融資
不動産担保融資
土地や建物を担保として入れることで受けられる融資です。
無担保融資では受けられない額を、不動産を担保に出すことで受けられるようになります。
ノンバンクの不動産融資の特徴は
- 不動産担保の評価を高く見てくれること
- 不動産価値重視で審査を行ってくれること
の2点です。
銀行が不動産担保の評価をするときは、時価の70%程度なりますが、ノンバンクの場合は時価の90%~100%くらいでみてくれるところがあります。
また銀行の場合は会社の業績(決算書の数値)で融資が決まり、業績が悪ければ不動産担保があっても受けられないことがあります。
しかしノンバンクは不動産の価値を重視しているため、業績が悪かった場合でも、不動産の価値が高ければ融資が通ることがあります。
逆にいえば、換金性の悪い土地の場合、担保価値がないと判断されてしまうということです。
売掛債権担保融資
売掛金を担保とした融資です。
売掛金を担保にする融資のポイントは、まとまった金額の売掛金があることです。
継続的な売掛取引の会社が数社あれば、それだけでまとまったお金になり、売掛金を担保とした融資を受けやすくなります。
逆に、売掛額が大きくとも取引先が少ない、売掛が単発取引になると、売掛債権担保融資は受けにくくなります。
この場合はファクタリングを受けた方がよいでしょう。
なお、売掛債権担保融資を受けるには、次の3つのうちいずれかをクリアしなくてはいけません。
- 売掛先への通知
- 売掛先からの承諾
- 融資を受ける会社への商業登記簿への債権譲渡登記
生命保険を担保とした融資
保険を解約したときに返ってくるお金(解約返戻金)の7割~9割を、保険会社から借りれます。
金利は3%~4%程度です。
その保険の保険証を担保として、2割乗せの9割で融資してくれるノンバンクもあります。
手形割引
手形割引は銀行に限らずノンバンクでも割引いてくれます。
銀行では対応してくれない次のようなケースでも割引対応してくれます。
- 信用度の低い手形
- 自社の業績が悪化している
- 割引してくれる銀行に対して、別の融資でリスケジュールを行った
ただし、その分は銀行に比べ割引手数料が高く設定されています。
銀行融資の4つの形態
銀行融資の借入方法は次の4つの形態がります。
- 商業手形割引
- 手形貸付
- 証書貸付
- 当座貸越
下に行くほど銀行のリスクが高くなるので、企業にとっては借りにくい融資の形態となります。
商業手形割引
商業手形割引とは、企業が売上代金の決裁として受け取った手形を、銀行が買い取って現金化します。
現金化は手形の期日前になるので、手形の期日までの金利(年利)を割引料として支払うことになります。
もし割引した手形が不渡りになれば、その手形を割引依頼した企業に、買戻し義務が発生します。
そのため、割引依頼する企業に対しても審査が影響してきます。
また商業手形割引は貸借対照表の借入金にならないため、決算書の財務内容の改善に効果があります。
手形貸付
手形貸付とは、約束手形を担保に入れて借入する方法です。
主に、返済期間1年以内の短期の融資で受ける方法です。
- つなぎ資金
- 賞与資金
- 納税資金
- 季節資金
手形を使ってない企業の場合は、貸付用の手形を利用します。
手形貸付は手形に署名・捺印するだけで受けられるので、手続きが簡単なことがよく利用される理由となります。
手形貸付を受けるには、利用する法人側にある程度の信用力がなければなりません。
判断基準となるのは赤字経営かどうかです。
利益を確実に出すことのできている企業であれば、手形貸付を利用できる可能性が高くなります。
証書貸付
証書貸付は、金銭消費貸借契約書に署名・押印して銀行からお金を借りる方法です。
証書(契約書)を交わせて借りるので、証書貸付と呼ばれます。
契約書の作成、借入企業や連帯保証人の押印、印鑑証明など、用意する書類が多くあり、手続きが面倒なため、取引が頻繁にある短期融資には向いていないため、主に返済期間が1年超の長期融資に使われます。
企業にとっては、返済期間が長期となるため、月々の返済額が抑えられ、資金繰りを圧迫しないで済みます。
当座貸越
当座貸越とは、融資の限度額を設定し、そこまでは自由に融資を受けられる方法です。
当座貸越は、必要なときにすぐ借りられる使い勝手のよい方法ですが、銀行にとってはそれだけ回収できないリスクが高くなります。
したがって、財務内容の良い企業でなければ審査は通らないという特徴があります。
当座貸越には次の2種類があります。
- 専用当座貸越
- 一般当座貸越
「専用当座貸越」は当座預金とは関係なく利用することができます。
それに対し「一般当座貸越」は当座預金と連動して貸越額が決まります。
当座預金の残高が不足すると自動的に貸越になります。
一般当座貸越の場合、当座貸越の極度額を2000万円で設定した場合、この2000万円までは自動的に貸越できます。
まとめ
銀行融資の種類について解説してきました。
自社に合った金融機関と借入方法で、無理のない資金計画を立てましょう。
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