銀行から融資を借りるコツは次の3つの要件を満たすことです。
- 資金使途
- 返済財源
- 保全
資金使途とはお金の使い道、返済財源とは何を返済に充てて返すのか、その財源、保全とは担保・保証人のことです。
要は、使い道は何で、何をもって最後まで返してくれるのか、もしそれがダメになったときは別の何で返済してくるのか?この条件を全部クリアできれば、融資は出たも同然です。
むしろ貸さない理由がないくらいです。
この記事では、銀行かる融資を借りる3つのコツについて解説していきます。
借りるコツ1・資金使途
資金使途とは、借りたお金を何に使うのか、その「使い道」です。
資金使途は融資を出す銀行にとっては、とても重要な項目になります。
それは何に使うかによって、返済できるどうか決まってくるからです。
仮に赤字の補てんでお金を貸して、融資したお金が返ってくるのかという話です。
返済される可能性は低いといわざるを得ません。
そのため赤字の穴埋めのような「後ろ向き資金」の融資には、銀行の融資は通りにくくなります。
融資の返済の基本とは、事業で稼いだお金です。
いわば事業プランに融資するといっても過言ではありません。
何に使うか?とは、いい換えれば「返す算段のある使い道か?」ということなのです。
資金使途の種類
資金使途には運転資金と設備資金の2種類があります。
運転資金
経常運転資金
通常の商売のサイクルで不足する運転資金です。
仕入から販売・回収までの立替え資金のことです。
経常運転資金を求める計算式は次の通りです。
・(売掛金+在庫+受取手形)-(買掛金+支払手形)
増加運転資金
売上の増加により必要になる運転資金です。
つなぎ資金
一時的な資金不足を補うための融資です。
季節資金
季節によって売上に変動のあるビジネスで、売上の落ちる時期の資金不足カバーするために借りるお金です。
納税資金
法人税を納めるために借りるお金です。
賞与資金
賞与を支払うための資金です。賞与を支払うことで起こる手持ち資金の不足を補う借入です。
設備資金
設備資金
事業に必要な設備を購入したり構築したりするための資金です。
設備資金は運転資金に比べ金額が大きくなるため、基本は長期の返済になります。
短期の返済計画を組んだり、設備資金の大半を自己資金でまかなおうとすると資金繰りの悪化を招くので注意が必要です。
借りるコツ:資金使途を説明する
繰り返しになりますが、資金使途は基本事業で使う資金です。
それに加え、その事業で得たお金で返すプランでなくてはいけません。
したがって、「資金使途をどう銀行に説明するか」が借りるためのコツになります。
経常運転資金・増加運転資金の説明のコツ
経常運転資金は資金使途が明確なので、借りやすい融資です。
返済財源も間近の売上で見込めます。
そのため、新規で経常運転資金を申し込むときと増加運転資金を申し込むときは、今後の売上の見込みや取引条件を、資金繰り表など資料を添えてきちんと説明することが大事になります。
季節資金・賞与資金・納税資金の説明のコツ
季節要因で一時的な資金不足を補うために借りる資金は、資金使途がわかりやすいという点で銀行も取組みやすい融資です。
この資金の返済財源は、損益計算書の当期利益になります。
時期で不足する資金を、1年間のトータルの利益で返済するというイメージです。
そのため、少なくとも当期の利益が黒字の見通しでなくてはいけません。
前期、前々期までさかのぼって決算書を見られるため、減収減益傾向の企業の場合、借入枠を減らされてしまいます。
今期の予想収益と資金繰り表を使って、今期も黒字が見込めること、資金繰りも問題なく回っていくことを説明しましょう。
つなぎ資金の説明のコツ
工事代金の立替えなどで必要になるのがつなぎ資金ですが、最大のポイントは「返済の確実性」です。
返済財源が確実にあることをきちんと証明することが借りるコツとなります。
過去の販売・回収実績で返済財源が確実にあることを説明し、半年から1年の資金繰り表を同時に作成して、最後まで返済に問題ないことを数字で理解してもらいます。
つなぎ資金の場合も、1年の営業利益が黒字になっていなくてはいけません。
ただし、過去につなぎ資金を別のことに流用していた場合は、借入はむずかしくなります。
長期運転資金の説明のコツ
長期運転資金は次のものがあります。
- 赤字、不良在庫、売掛金の焦付きの補てん
- 設備資金の借り入れ不足
- 社外への投資資金
- 無形固定資産取得資金
この中で代表的なのは赤字の補てんなどに使う、後ろ向き資金です。
後ろ向き資金の場合は、返済の見込みが低くなるので、担保がないと融資に踏み切れなくなります。
そのため日本政策金融公庫などの政府系や、信用保証協会付き融資の利用がメインになります。
また、融資のために銀行を説得しなくてはいけません。
経営計画書を作成・提出して、今後利益が確保できる見通しを話し、銀行の理解を得らるようにしましょう。
設備資金の説明のコツ
設備資金で銀行が知りたいのは、やはりここでも「返済の確実性」です。
つまり、「新たな設備投資で得られる利益でへんさいできるか」ということです。
それが無理な場合でも「事業全体で返済資金を補って返せるか」を見られます。
求められるのは設備投資単体の収益計画になりますので、資金繰り表より損益計算書を中心とした中長期の経営計画です。
その経営計画書では、毎年の利益が確保されていることが銀行への説得材料となります。
説明のポイントはお金の流れを示すシナリオ
ここまで解説してきたように、銀行が求めるのは「返済の確実性」です。
その返済の確実性をシナリオ風に伝えると理解しやすくなります。
たとえば、新規出店に2000万円の融資が必要だったとします。
この新規出店で見込める売上は3000万円です。
ならば
「新規出店で2000万円が必要です。新たなお店から見込める年間の売上は3000万円、税引き後当期利益と減価償却費の合計は250万円です。したがって融資の2000万円は8年間で返せる予定です」
とシナリオを組み立て説明すれば、非常にわかりやすくなります。
その根拠となる資料を、事業計画書や資金繰り表で補足しながら説明します。
理路整然と組み立てられた返済のシナリオ、それこそが銀行側が求めるものなのです。
間違っても、「いくらまでなら借りれますか?」などと、計画性の欠片もない質問はしないようにしましょう。
資金使途違反には注意
融資のお金は、申し込んだ資金使途の通り使わなくてはいけません。
なぜなら、使途資金以外でお金を使われてしまえば、当初の返済計画そのものが崩れてしまうからです。
極端なことをいえば、運転資金名目で借りたのに、社長が個人の株式投資にお金を投入したのならどうでしょう?
返済の目途は極端に低くなります。
ですから銀行は、融資したお金がその通りに使われたのか、きちんとチェックします。
仮に設備資金で申し込んだ融資なら、当初の目的通り設備資金に使われたのか、現地を調べたり、領収書の提出を求められます。
資金使途違反が判明したときは、融資の即刻返済や、今後の取引の中止といった事態を招きます。
とくに信用保証協会は資金使途厳格です。
この点は忘れないようにしておきましょう。
借りるコツ2・返済財源
銀行融資では「返済財源」が一番の重要ポイントになります。
もっとも基本的なことは「最後まで確実に返せること」です。
これを数字を使って具体的に説明することが借りるためのコツになります。
返済財源は、短期借入と長期借入のの2種類があります。
短期借入とは1年以内に返すお金で、長期借入とは1年を超す借入のことです。
この2つは、同じ借入でも返済財源は異なります。
短期借入れ金の返済財源の示し方
短期借入の返済財源は売上の入金額になります。
短期借入は、ほとんどが運転資金になります。
短期借入の返済財源は売上になりますので、売上が黒字かどうかがポイントになります。
もし収支がギリギリになら、資金繰り表を作って、資金が回ることを理解してもらわなくてはいけません。
このとき大事なのは現実に即した予測であることです。
バラ色の資金繰り計画や収支計画では、銀行の理解は得られないので注意しましょう。
長期借入れ金の返済財源の示し方
長期借入の返済財源は
・税引き後当期純利益+減価償却費
で求めます。
減価償却費とは、キャッシュアウトを伴わない費用のことです。
税引き後当期純利益とは、売上から売上原価、経費、法人税を支払った後に残るお金です。
このお金に減価償却費を加えたお金が、長期借入の毎年の返済財源となります。
つまり、「返済額」より「税引き後当期純利益+減価償却費」の額が上回っていれば、返済をしていけるということです。
ですから銀行員は、事業計画で
・税引き後当期純利益+減価償却費>返済額
となっているかをチェックします。
もし、
・税引き後当期純利益+減価償却費<返済額
と返済額の方が多くなっていれば、返済できない事業計画なので、融資はきびしくなります。
なお、資金繰り表についても、借入の返済ができる見込みの計画になっていなくてはいけません。
資金繰り表が融資を決める?!
決算書に次いで重要な書類が資金繰り表です。
資金繰り表とは、事業計画から予測する具体的なキャッシュフロー額で、かつ、実際のお金の流れのわかる表です。
損益計算書は利益を見ることはできますが、実際のお金の流れを把握することはできません。
そのため、現実にお金が回っていくかどうかは、資金繰り表で確認することになるのです。
まさに銀行が知りたいことはそこで、資金繰り表が返済に問題がないことを証明する資料となります。
ある意味、事業計画と一対となって返済財源が確実にあること証明するのが資金繰り表なのです。
その他の要素でアピール
返済財源が確かなことをアピールできるのは、決算書、経営計画書、資金繰り表だけではありません。
会社を取り巻く環境や自社の強みなども同時にアピールすることも忘れないで行いましょう。
昨今では、金融庁の方向転換で、決算書に頼った審査から、事業の将来性を評価する「事業性評価(定性評価)」にも重きを置く方向で進んでいます(現在でも、地方銀で20%~30%、信金・信組で30%~40%の比重といわれたます)。
そのため、定性評価の審査項目も同時にアピールしすることで、審査の点数が加算されます。
事業性評価の内容は、大まかにいうと次の4つのカテゴリーに分けられます。
経営者の資質
経営者の考え方や性格、ビジョンや経営理念、また後継者の有無などについてです。
決算書に役員貸付金や仮払金があることを銀行は嫌いますが、これらの項目があることで経営者の資質を疑われます(公私混同の区別がつかない、お金にルーズなど)。
もしあるようなら、解消しておくようにしておきましょう。
事業把握
業歴、営業基盤、競争力、シェアなどを見られます。
他にない商品力や技術があれば、それが参入障壁となって競争力やシェアを高めます。
そういった自社の強みがあれば、しっかりアピールしましょう。
逆に誰でも参入できる業種であれば、必然的に競争力やシェアは厳しくなりますので、それを補う集客・営業力や、利益を稼げるビジネスモデルであることのアピールが必要になります。
資本の投下に巨額がかかるビジネスの場合は、それ自体が参入障壁となりますので、それもまた強みになります。
企業を取り巻く環境
業界動向や市場規模、競合他社との比較、優位性などを見られます。
成長市場であることは、それ自体が高く評価されます。
反対に、衰退期に入っている市場で、競合との競争が激しいと評価は低くなります。
仮に衰退期・競合が激しい状態であるなら、その中でどう自社が生き残っていける道筋をつけているのか、しっかり説明して理解してもらわなくてはいけません。
何も手立てがないでは、貸す方は不安になります。
内部管理体制の着目
自社内の人材育成状況や組織体制、事業計画、目標設定等についてみられます。
会社と社長の資産も評価の対象
返済財源は、事業の収益から得られるキャッシュフロー以外にも、会社の資産や社長個人の資産も見られます。
会社の資産とは、貸借対照表にある左側の列に並んでいる項目です。
売掛金や棚卸資産などありますが、これは「実態バランスシート」で再計算されます。
売掛金や棚卸資産の中に、焦付きや不良在庫があると、その分差し引かれて、実態に合わせた資産額で評価されます。
逆に土地や株の含み益(値上がり分)があれば、プラスの評価をされます。
また、社長の個人資産が多くあれば、こちらも評価は高くなります。
コツ3・保全
保全とは、銀行側が万が一に備えて行うリスクヘッジです。
具体的には、土地や建物を「担保」にしたり、社長から「保証人」をとることです。
これらの保全を行うことで、返済が万が一できなくなったときでも、担保の土地や建物を売って回収したり、保証人に代位弁済してもらうというわけです。
手堅く回収したい銀行にとって、保全部分があれば安心して貸せるので、融資にプラスに働きます。
融資には担保が絶対条件ではない
ただし、保全がなければ融資が出ないかといえばそんなことはありません。
銀行が最重視しているのは、その事業から得られるキャッシュです。
借りたお金で事業を回し、それで利益を得て、しっかり返済できるか、なのです。
たとえば、担保を売ってお金を回収できるといっても、土地や建物がすぐに売れるわけではありません。
また、任意売却でなくても、裁判所で競売にかけるにしても、手続きも面倒ですし、コストも発生します。
それでいて、満額回収できるわけでもないのです。
このようなリスクがある以上、銀行も担保での回収を避けたいのです。
保証人については、経営に関係ない第三者の保証人はとらないように金融庁からの指導もあり、保証人がいないことが融資できない理由とはならないのです。
このように、必ずしも担保や保証人がなければ融資を受けられないというわけではないのです。
事業に対してリスクを取って融資(投資)する、本来の金融業とはそうしたものであるべきですが、銀行の貸出し姿勢もそういったものになりつつあります。
それだけに、事業計画がしっかりしていることをきちんと説明し、銀行の理解を得られることが重要です。
まとめ
銀行融資の借りる3つのコツについて解説してきました。
銀行融資を攻略するポイントは、資金使途、返済財源、保全の3つです。
この3つを抑えれば、銀行融資の審査も通る確率が高くなります。
コメント