鳥取県が中小企業や創業間もない起業家を支援するために、信用保証協会と金融機関を連携させて事業資金の融資を行うことを「制度融資」といいます。
それ以外にも、市町村が行う制度融資もあります。
制度融資は、信用保証協会が融資の保証人となり、鳥取県が融資の資金となる預託金を金融機関に提供し、保証料や金利の一部を負担してくれます。
このような仕組みを持つことで、民間の金融機関が貸し倒れるリスクを軽減でき、積極的に事業資金を融資してくれるよう働きかけてくれているのです。
このため、通常では断られる起業したばかりの会社に対しても、事業資金を融資をしてくれやすくなります。
鳥取県の制度融資の流れ
1・鳥取県の制度融資の取扱い窓口から事業資金の融資の申し込みを行います。
2・鳥取県の担当局部が書類審査を行い、制度融資の対象要件(業種、所在地、資本金、従業員数など)にあうか確認します。
ここで合格すれば、地域の民間金融機関に向けて紹介状か斡旋書を発行してくれます。
3・申込者は、斡旋書などを持って取引銀行または鳥取県から紹介を受けた金融機関に出向き、あらためて制度融資を申込みます。
4・金融機関で指定された、融資に必要な書類を揃えます。
5・金融機関から信用保証協会への保証申し込みについて案内されるので、それに従いって手続きを行いましょう。
6・信用保証協会で審査が行われます。面談が行われることもあります。
7・信用保証協会の審査をクリアすれば、次は金融機関の審査に入ります。
8・金融機関でOKが出れば融資が実行されます。融資の審査に3者を経るので、申し込みから融資実行まで3カ月程度かかります。
鳥取県の制度融資のメリット・デメリット
鳥取県が行う制度融資は、民間の金融機関独自の融資より享受できるメリットとデメリットがあります。
デメリットよりはメリットの方が大きいですが、しっかり把握しておくことが大事です。
制度融資のメリット
ますは制度融資のメリットからです。
融資が受けやすい
鳥取県が事業支援を目的として斡旋し、信用保証協会も保証をしてくれますので、信用の少ない創業時でも審査が通りやすいのが特徴です。
金利が低い
鳥取県が中小企業や起業家などを支援する目的の融資ため、一般の融資に比べ金利が安くなります。
据置き期間が長い
据置き期間とは元本を返済せずに金利だけを支払う期間をいいます。
制度融資の場合、この据置き期間が1年のものもあり、当初の返済負担を抑えることができます。
返済期間が長い
一般の融資に比べると返済期間が長く設定されているものがあります。
そのため毎月の負担が小さくなり、資金繰りを圧迫しない返済計画にできます。
利子や保証料の一部を負担してくれる
制度融資の中には、金利や信用保証協会への保証料の一部を負担してくれるものもあります。
制度融資のデメリット
何かと優遇されている鳥取県の行う制度融資ですが、やはりデメリットも存在します。
融資実行までに手間と時間がかかる
事業資金の融資実行までに、鳥取県、信用保証協会、金融機関の3社の審査を経なくていけません。
そのために、通常の融資より、手間と時間がかかります。
中小企業の資金繰りは急を要することが多いので、時間と手間がかかることを念頭に、資金調達計画を立てる必要があります。
信用保証協会付きの制度融資と保証協会の付かない制度融資の違い
実は制度融資には、信用保証協会の保証の付くものと、付かないものの2つがあります。
信用保証協会の保証が付かないものが貸倒になったときは、金融機関がすべて負担しなくてはいけなくなります。
鳥取県も負担してくれません。
そうなると銀行の持つリスクは大きくなり、実質プロパー融資と同じです。
ですから、信用保証協会の付かない制度融資は、審査が厳しくなると考えましょう。
信用力に乏しい場合は、信用保証協会の付かない制度融資はあえて申し込まないのも一つの選択です。
それに対し信用保証協会付きの制度融資は、貸倒れた場合でも、信用保証協会と鳥取県が負担をしてくれ、銀行のリスクが減ります。
そのため、融資の審査が通りやすくなることは先にお話しした通りです。
ただし、金融機関の負担がなくなるわけではありませんので、その分の審査については、通常の融資と変わりません。
ですから、金融機関が融資の際、何を重要視するかを知っておくことは、制度融資といえど重要なのです。
融資の審査で担当者がチェックする6つのポイント
融資の申し込み時に金融機関がチェックしたポイントは、実はそんなに多くありません。
そこをきちんと押さえることにより、融資の審査は通りやすくなります。
そのポイントとは次の6つです。
- いくら必要か?
- 使い道は何か?
- お金を返す財源は?
- 万が一のときの保証は?
- 返済する期間・金利は?
- 企業の業績
それぞれの項目について解説していきます。
いくら必要か?
事業に必要なお金、つまり「いくら不足するから〇〇〇万円借りたいという金額」を明確にしなくてはいけません。
「新しい設備を投入して生産効率を上げたい。購入資金は500万円で、不足する資金は300万円だ。この300万円を銀行で借りたい」
と具体的にできるから、銀行も「御社の場合は○○○万円融資できます」「今の状態ではむずかしいです」と審査を含めて回答できるのです。
逆にいえば、具体的な事業計画を作れる経営者でなければ、銀行も安心して貸してくれるわけがないのです。
「借りられるだけ申し込みたい」「うちならいくらまで借りられますか?」と聞いてしまう経営者は、事業プランを持っていない証拠であり、銀行には通用しないと認識しましょう。
使い道は何か?
融資申し込みのときには、必ず使い道を聞かれます。
お金の使い道のことを「資金使途」といいますが、資金使途は融資の大切なポイントになります。
まず、銀行が使い道の分からないお金に融資してくれることはありません。
仮に犯罪行為に使われてしまっては大変ですし、事業以外で社長の生活費などに使われてしまったら、返済される可能性は低くなります。
そのため、銀行から資金使途について明確な説明を求められます。
資金使途には「運転資金」と「設備資金」の2つがあります。
このうち運転資金については、基本的に事業の運営にかかるさまざまお金で、使い道がはっきりしないことも多いでしょう。
しかしながら、資金使途に「運転資金」とだけ書いても、審査に通らないことが多いので注意してください。
資金繰り表や人件費の明細表などを元に、資金使途をしっかり説明しましょう。
お金を返す財源は?
融資を返済するための財源はきちんとあるかを見られます。
お金を貸す側としては、注目の高い項目となります。
銀行は借りたお金を最後まで返してもうらわなくてはいけないので、きちんと返ってくる財源があるかどうかが融資の大きなポイントになります。
返済財源は
- 将来の事業で生み出す利益
- 予定されている売掛金の入金
- 手持ちの資金・資産
などになります。
最後まできちんと返済できるかを明示するためには、事業計画書や資金繰り表が必要になってきます。
事業計画書は現実に即して確実性の高いプランでなくていけませんし、資金繰り表も「返済できる見込み」が立っていなければ、その会社に融資するのは危険と判断されす。
実現達成できて利益が出ること(キャッシュが残ること)、事業計画書においてはこれが大事になります。
万が一のときの保証は?
完璧に仕上げた事業プランも、その通りにいくとは限りません。
事業には万が一が存在します。
そんな返済ができなくなったときのリスクに備えて、どう回収するかの保証について、保証人や担保などを銀行は求めてきます。
もし事業計画がダメになったときも、不動産を担保にとっていれば、不動産を売却して返済してもらえます。
そういう意味では、社長の個人資産や役員報酬も審査では見られてきます。
通常、経営者は会社の借入について連帯保証を求められますので、社長の個人資産や役員報酬も返済財源として見込めるからです。
ただし、担保や第三者の保証人は、こちらから提示する必要はありません。
審査の評価があと少し足らず、銀行の方からの提案で「担保や社長以外の第三者の保証人をつけることはできないか?」と聞かれたときに検討しましょう。
返済する期間・金利は?
返済期間とは、借りるお金を何年で返すかの期間です。
一般的に運転資金は3~7年、設備投資は5~10年が目安になります。
財務内容の良い会社は、交渉で希望の返済期間に近づけることができます。
ただし、制度融資の場合は期間の範囲が決められていますので、交渉の余地はありません。
金利ついては、返済期間が長い方が高く、短い方が低くなります。
このため、返済期間をとるか金利をとるかの判断は、その会社の財務状況と方針によって変わります。
毎月の返済額を低くしたい場合は、金利負担を多くして期間を長くします。
金利負担を少なくしたい場合は、毎月の返済額は増えますが返済期間を短くします。
資金に余裕のない会社の場合は、金利負担が少し高くなったとしても、月々の返済額が少なくなるよう、返済期間を長くするのが基本パターンです。
企業の業績
銀行の資産では、間近3期分の決算書の提出を求められます。
しかし、決算書の数字だけで事業内容がわかるわけではありません。
仮に、2期連続黒字で今期だけ赤字ということもあるでしょう。
そんなとき、なぜ今期赤字になったのか?その理由と、立て直しの見込みと事業計画を融資担当者に資料と文章で伝えれば、稟議書でフォローしてくれる可能性が高くなります。
融資担当者は、企業と融資を審査する部署との橋渡し役です。
求められた書類や資料を提出することが大事なのではなく、担当者に正確に事業内容を理解・伝えることが審査通過のポイントになります。
日本政策金融公庫と制度融資のどちらが有利か?
信用力のない創業時には、日本政策金融公庫と制度融資が主な融資申込先となります。
それだけに、「日本政策金融公庫と制度融資ではどちらが得か?」とお悩みになる方もいらっしゃるでしょう。
この判断基準のポイントは、事業主の状況によって変わります。
同じ創業向けの融資でも、日本政策金融公庫と制度融資では、
- 融資限度額の違い
- 適用要件の違い
がありますので、事業主の置かれた環境によって選択肢が変わってきます。
ただし制度融資の中には、利息や保証料の一部を負担してくれるものもあります。
そのため、資金に余裕のない創業者にとっては、この部分でいえば制度融資の方がお得といえます。
しかしそのれだけに、手続きが増えて手間がかかり、融資が実行されるまで時間がかかるというデメリットが発生します。
すぐに事業資金がほしいというときは、制度融資は不向き(条件よっては)なケースがあります。
鳥取県の制度融資の主なもの
企業自立サポート融資
「企業自立サポート融資」(鳥取県制度融資)制度により、中小企業者が金融機関から融資を受ける際に、借入利息及び信用保証料の一部を補助を行うことで、低利融資を実現する制度融資です。
小規模事業者融資
従業員の数が20人(商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)にあっては10人)以下の小規模事業者で、既保証と合わせた保証合計残高が8,000万円以下の事業者が対象の制度融資です。
創業支援資金
創業等に係る事業の実施のため必要となる運転資金及び設備資金を融資する制度融資です。
中小企業への融資一覧ページ
鳥取県の中小企業への制度融資の一覧ページです。
まとめ
鳥取県の制度融資の仕組みとメリット・デメリット、融資の審査で担当者がチェックするポイントについて解説してきました。
制度融資は資金が豊富にない事業者、信用力の少ない起業予定の人などに利用しやすい制度になっています。
しっかり利用して、事業を成功へと導きましょう。
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