
鳥取県内の事業者で、運転資金や設備投資の事業資金を借りたいなら、まずはこの記事をお読みください。
銀行融資を成功させるコツを、法人の財務に強いファイナンシャルプランナー(CFP)がお教えいたします。
「借りられる会社」と「借りられない会社」の違いとは?
銀行の融資は「格付け」と呼ばれるもので決まります。
鳥取県の銀行も、メガバンクも同じです。
格付けとは融資の審査先を
- 正常先
- 要注意先
- 要管理先
- 破綻懸念先
- 実質破綻先
- 破綻先
という6段階にわけ、それにより融資がOKかどうか決める評価制度です。
正常先にランク付けされれば融資を受けることができますが、要管理先以下は、基本融資を受けることができません。
銀行から融資を受けられる会社と受けられない会社があるのは、この格付けを意識しているかどうかにあります。
もちろん、その他の要素も審査には影響がありますが、基本、格付けで決まると認識した方がいいです。
その格付けを決めるのは、会社の「決算書」です。
決算書をスコリングシートで採点し、その総合得点で格付けのランクが決まります。
この採点を定量分析といい、融資の審査の7割~9割は決算書の得点で決まってしまいます。
メガバンク9割、地方銀8割、信金・信組7割といった感じです。
定性分析という経営者の資質や市場分析を行う2次評価もありますが、現状は会社の決算書でほぼ融資は決まります(今後は2次評価の定性分析を重きに置くよう、方針が変わってきています)。
※融資の審査には会社の実態や社長の資産状況をみる3次評価もあります。3次評価の実態調査で、「実質債務超過」と判定される融資不可となることがありますし、決算書の数値が悪くても、社長の個人資産があることがわかるとランクが上がることがあります。
ですから、銀行から融資を引き出したいなら、普段から決算書の数字を意識し、自分の会社がどのランクにいるかを把握しておくことが大切なのです。
逆にいえば、融資のシステムも知らずむやみやたらに申し込んでも、審査が通る確率は低いといえます。
定量分析(スコアリングシート)の項目と配点
スコアリングシートは下記の項目によって採点されます。
配点の割合をみてもらえばわかりますが、スコアリングシートの得点が高いのは
- 自己資本比率
- ギアリング比
- 自己資本額
- 債務償還年数
- インタレスト・カバレッジ・レシオ
- キャッシュフロー額
の6項目です。
いい換えれば、上記6つの項目が高くなるように取組めば、スコアリングシートの得点は高くなるということです(誤解なきようにいっておきますが、高くなるよう取組むとは粉飾のことではありません)。
※この配点と総合得点は、銀行によって変わります。上記のスコリングシートはあくまで一つの例です。しかし、考え方と基本はほぼ同じです。
自己資本比率 10点
総資本のうち(純資産+借入)、自己資本の割合がどの程度か示す数値です。
高いほど良く、低いと借入の多い会社ということになります。
業種にもよりますが、優良な会社で50%以上、普通の会社で30%以上が基準となります。
自己資本額 15点
自己資本額は自己資本比率で使う、自己資本(純資産)の額です。
額が大きいほど、得点は高くなります。
自己資本が大きいと、貯まっているキャッシュも多いということなので、万が一本業に支障が出ても、貯金から返済できる余裕があるためです。
ギアリング比率 10点
自己資本に対し、何倍の借入をしているかを示す数値です。
・有利子負債÷自己資本×100
小さいほど点数が高くなります。
債務償還年数 20点
借入を本業の儲けで何年で返済できるかを見る指標です。
・有利子負債÷(営業利益+減価償却費)×100
ホテルなどの大きな設備投資が必要な業態は別ですが、基本は10年以内が目安になります。
インタレスト・カバレッジ・レシオ 15点
会社の借入金の利息の支払い能力をみる指標です。
大きいほど良くなります。
・(営業利益+受取利息・配当金)÷(支払利息・割引料)
この数値が低いということは、借入の支払利息だけで本業の儲けが飛んでいるということなので、資金繰りが厳しいことがわかります。
キャッシュフロー額 20点
借入返済の原資となる本業の儲けの額です。
・税引き後当期利益+減価償却費
この数値が大きいほど、毎年の本業の儲けが大きく、返済の安全度が高いということです。
詳しい採点方法とその他の項目については下記の記事をご覧下さい。
・銀行融資の8割が決まる「信用格付け(スコアリング)」を制する方法
スコアリングシートで高得点を得るには、配分の高い6項目を改善することが最善の方法です。
逆にいえば、経営努力を「満遍なく」するのではなく、「配点の高い項目に集中して行う」という明確な目標を持つことができます。
もちろん経営は銀行融資のためだけに行うものではありませんが、資金調達が企業の命綱であることを思えば、課題として十分取組むべき目標といえます。
数値の改善方法
6項目を改善する方法は以下の通りです。
自己資本額・自己資本比率
自己資本の増額と総資産の縮小です。
自己資本の増額のためには、営業利益を高くすることはもちろんのこと、無駄な節税で利益を余分に小さくしてしまうことも避けなくてはいけません。
自己資本に貯まる額は、税引き後の利益でなければ貯まらないのです。
また、無駄な資産(売れない棚卸資産や不動産など)を売って、既存の借入を減らすなどして、会社の資産をスリム化することも必要です。
ギアリング比
ギアリング比は自己資本に対しての借入の大きさを測る指標なので、既存の借入を減らすか、減らすと同時に自己資本を増やすことを考えなくてはいけません。
債務償還年数
債務償還年数は、借入の総額を、現在の本業の利益で返すと何年になるかを測る指標です。
したがって、
- 本業の利益がそのままの場合→借入の総額を減らす
- 借入総額がそのままの場合→本業の利益を大きくする
- 療法の場合→借入の総額を減らす+本業の利益を大きくする
という3パターンが基本になります。
キャッシュフロー額
キャッシュフロー額は、毎年税引き後に残る本業の儲けです(簡易キャッシュフロー額)。
税引き後の利益で、借入の元本を返済し、利益剰余金として、自己資本に繰り入れることができます。
キャッシュフロー額が0円かマイナスということは、特別な損失がない限りは、本業が赤字かそれに近いということです。
つまり、儲ける力がないということです。
このような会社にお金を貸したがらないのは当たり前のことです。
しっかりキャッシュが残るように、
- 売上を上げる
- 粗利を確保する
- 原価を見直す
- 経費を削減する
といったことが必要になります。
インタレスト・カバレッジ・レシオ
インタレスト・カバレッジ・レシオは、本業の儲けに対し、支払利息が何割くらいを占めているかをみる指標です。
そのため、営業利益を増やすか、借入の圧縮、利息の削減交渉を行う必要があります。
銀行員が見る決算書のチェックポイント
ここからは銀行員が特に決算書でチェックしている項目について解説していきます。
心当たりがある場合は、すぐに対策を行いましょう。
1・当期の決算が赤字
間近の決算内容が赤字の場合、債務者区分(格付け)が「要注意先」に区分されてしまいます。
ただし、赤字であってもそれが特別な理由の赤字(その期だけ大きな焦付きが発生したなど)や、一過性の赤字(災害で大きな損害を被ったなど)の場合は、その点をきちんと伝えましょう。
そしてそれを決算書に必ず反映させます(損益計算書の特別損失に記入する)。
そうすることによって、債務者区分を下げられること防ぐことができるかもしれません。
2・赤字が2期連続している
2期連続赤字が続いている場合、基本的に融資は厳しくなります。
1期では一過性や突発的な理由で赤字になる場合はあっても、2期だと「赤字体質」とみられてしまうことが理由です。
ただし、同じ赤字でも好意的に見られるケースとそうでないケースがあります。
前者は赤字の額が小さくなっている場合、後者は赤字の額が大きくなっているケースです。
赤字が小さくなっているということは、経営改善が功を奏し回復基調にあることがうかがえますが、赤字が拡大しているということは、状況が悪化していると考えられるからです。
もし2期連続で赤字の状態で融資を受けたい場合は、しっかりした事業計画を作成し、今後どのようにして赤字を解消し、返済していくことができるか、その根拠と共にプランを明確に説明しなくてはいけません。
3・債務超過である
債務超過とは、会社の資産より負債が多いことをいいます。
会社の資産を全部売却して返済しても、借入が残る状態、つまり完全に回収ができない状態です。
したがって債務超過の場合は、基本的に銀行は融資がNGとなります。
そのため、ほんのわずかな金額でも債務超過にならないように気をつけておかなくてはいけません。
仮に債務超過なら、社長からの借入(役員借入金)を資本にするなどして、債務超過から脱出できないか検討します。
※役員借入金を資本に振り分けたときは、状況によっては課税されるケースがありますので、必ず税理士の先生と相談してください。
4・毎月の利益が出ていない
企業の返済力は、損益計算書の
・税引き後当期利益+減価償却費
で決まります。
この利益を超えての返済は赤字となるため、融資も厳しいと判断をされます。
仮に「税引き後当期利益+減価償却費」を超えて資金繰りが回っているということは、他からの借入か、貯金を取り崩して回している状態です。
役員報酬を減らして、営業利益を確保する、同じ赤字であっても、損益計算書の「特別損失」に振分けられるものがないか探すなどの方法を検討します。
銀行は本業の儲けである「営業利益」が黒字であれば、最終的な税引き後利益が赤字であっても、稼ぐ力はあると判断してくれ、審査にプラスに働きます。
5・適正な減価償却を行っていない
法人の場合は、減価償却を行うかどうかは任意になります。※個人事業主の場合は義務になります。
そのため、赤字を出したくない会社は、あえて減価償却費を計上せず、黒字を保とうすることがあります。
このような減価償却費の未計上を行っても、銀行の方で「適正な減価償却費計上を行った場合の計算」をされてしまいます。
そこで赤字なら、提出した決算書が黒字でも、実態は赤字と判定されます。
減価償却費を計上したりしなかったりは、利益操作とみなされ、融資対策上は不利になりまなす(そもそもが、利益操作を行うのは、信頼関係を築きたい相手にとって不誠実です)。
また減価償却方法を「定額法」から「定率法」へ勝手に変更するなども、不正な行為になるため評価を下げる一因になります。
※減価償却の耐用年数の変更は、税務署への届け出が必要になります。
減価償却は正しく行い、適正な額を計上するようにしましょう。
6・価値のないものを資産計上している
貸借対照表の「資産の部」に計上されているものの中には、実際は価値がないのに、価値があるものとして計上されているものがあります。
たとえば、売掛金です。
売掛金の中には回収不能の取引先もありますが、このような不良債権でも資産として計上されています。
そこで銀行は実態に合わせた「実態バランスシート」を作って、実際の資産価値を評価します。
その結果、提出した決算書と乖離が起きたり、ひどいときには債務超過に陥っていたというケースも出てきます。
経営者に会計知識がなくこのような状態になることもありますし、意図的に粉飾を行うケースもありますが、この状態を長く放置している会社なら、銀行融資でも「会計が適切な処理が行われていない会社」として評価を下げます。
もし、実態以上に資産が大きくなっているなら
- 適切な会計処理をする
- 正しい会計処理を行って損失が大きくなる場合は、利益の出た期に処理して、損失を小さくする
などの対策が必要です。
7・税金などの未払いがある
税金(従業員の給与の源泉徴収なども)や社会保険料の未払いがあると、融資はアウトになります。
これが顕著なのが、制度融資や政府系金融機関の融資です。
税金の未払いだけでなく、公共料金や家賃の支払いが遅れていた事実があっただけでも、断られるケースがあります。
なお、未払いはギリギリに支払えば問題ないというのは間違いで、ある程度の実績期間が必要になります。
具体的には、融資を申し込む6カ月前程度から、税金等の支払いを済ませ、支払いも遅れないようにしておくことが大切です。
8・経営者が経営の内容を語れない
「経営者である以上、経営内容を把握している」と考えるのは普通です。
逆にいえば、「経営者なのに経営のことを把握してない」ような社長に、どこの銀行が安心して融資できるというのでしょう?
- 決算書の数字の意味がわからない
- 事業計画を自分の口で語れない
- 現状の問題点を答えられない
では、信用を一気に失います。
すべて把握することはむずかしいでしょうが、大切なポイントは自分の口で語れるように、事前にチェックしておきましょう。
9・返済の実績が少ない
銀行は借入の実績を大事にします。
普通の会社でもそうですが、これまで一切の取引のない会社との新規の取引は、やはり警戒するものです。
それは銀行も同じなのです。
どんなに素晴らしい展望を経営者が述べたとしても、本当に返済をきちんとしてくれるかは、実際に返済されてみないとわからないからです。
借入枠が当初から積み増されていくのも、取引を通じ「信用力」が増えていくからです。
したがって、小さくても借入の実績をあえて作っておくのも方法です。
追加融資の場合も、最低6カ月以上の返済実績が必要になりますので、6ヵ月を一つの目安にしてみて下さい。
10・会社や経営者に融資のできない背景がある
融資のできない背景とは、業種や経営者の背景です。
信用保証協会の場合は、農林・漁業・風俗関連・金融業・宗教法人などは、信用保証の対象にならないとしています。
また、反社会的勢力とつながりがあることがわかれば融資を断られてしまいます。
経営者についても、
- 過去に経営していた会社が貸倒れをしてないか
- 反社会的勢力とつながっていないか
- 犯罪歴がないか
- その経営者は「真の」経営者か
- 労働問題など、社会的問題を起こしてないか
などを見られます。
ケースによっては融資を断られることもあります。
11・融資の使い道に問題がある
借入のお金が「赤字補てん」「生活費の補てん」に充てられてしまうと、返済の可能性は限りなく低くなります。
表向きの理由はどうあれ、「融資の使いみちに問題あり」と思われてしまうと、融資はむずかしくなると覚えておきましょう。
そのため、それを疑わせる項目があると、融資の評価でマイナスになります。
良くある例では、貸借対照表にある「役員貸付金」「仮払金」などの項目です。
役員貸付金があれば、経営者の生活費に会社のお金が使われている可能性を疑われますし、仮払金のような使途不明金が大きい場合も粉飾を疑われる可能性があります。
融資の際は、これらの項目を解消するよう要求されることもあります。
銀行融資では、融資のお金の使い道(これを資金使途といいます)が重要視されることを覚えておきましょう。
12・リスケジュールをしている
通常の返済が困難になったため、「返済期限の延長」や「返済額の減額」を金融機関との合意に基づいて行うことを「リスケジュール」といいます。
リスケジュールを行っている会社への新規融資は、基本NGと考えておきましょう。
またリスケジュールから脱却し通常返済に戻しても、その後の返済実績が6ヵ月は必要になるのが一般的な取扱いです。
13・借入が多い
借入が多い会社は、その分だけ返済力が劣ることになります。
そのため、借入がない状態より、借入限度枠も小さくなります。
借入の限度額をみる指標は
- 債務償還年数
- 借入月商倍率
- ギアリング比率
- インタレスト・カバレッジ・レシオ
などがあります。
限度額を算出する方法知りたい方は下記記事を参考にしてみて下さい。
銀行別融資スタイルの違い
民間の銀行は、メガバンク、地方銀行、信用金庫・信用組合の3種類に分けられます。
実はそれぞれの銀行によって融資スタイルも異なり、使い分けが必要になります。
メガバンク
メガバンクは年商10億円以上が一つの目安になります。
プロパー融資の金利は低いですが、業績が悪い企業に対しては高い金利を設定するなどドライな面があり、業績不振時の切り捨ても早いといわれています。
10億円以下の企業は、地方銀、信用・信組をメインとして融資を受けた方が良いでしょう。
地方銀行
地方銀行は、その地域の企業と共存共栄がスタンスで、メガバンクのようにドライではありません。
プロパー融資は、メガバンクに比べて0.5%程度高い傾向にあります。
信用金庫・信用組合
信用金庫・信用組合は、こちらも地域に根差した経営スタイルです。
担当一人の守備範囲が狭いため、きめ細かいサービスが売りとなります。
営業担当が定期的に会社に訪問してきてくれます。
プロパー融資はメガバンクに比べ1%程度、地方銀に比べ0.5%程度高くなります。
鳥取県内の銀行、信用金庫の事業者向け融資
鳥取県内の地方銀と信用金庫の法人向け融資の一覧です。
鳥取銀行 法人向け融資の一覧ページ
山陰合同銀行 法人向け融資の一覧ページ
鳥取信用金庫 法人向け融資の一覧ページ
・資金調達
倉吉引用金庫 法人向け融資の一覧ページ
米子信用金庫 法人向け融資の一覧ページ
・資金調達
まとめ
むずかしい言葉が出てきてやや混乱されているかもしれませんが、要は「貸したお金が確実に返ってくるか?」を銀行は知りたいのです。
そしてそれを調べるために、決算書を使って格付けを行っています。
融資に関する情報が何もないなら、えいやあの出たこと勝負になりますが、銀行融資が何によって決められるかを具体的に知ることができれば、取組むべきが何かも明確になります。
鳥取県内の会社で、事業の融資をお考えなら、しっかり融資対策を行って、希望額を資金調達できるようにしておきましょう。