棚卸資産を使って節税する方法を解説します。

棚卸資産とは、会社が販売目的のために保有している商品のことで、商品の状態によって下記のようにわけられます。

  • 商品:取引先から仕入れた完成品の在庫
  • 製品:自社で生産した完成品の在庫
  • 原材料:取引先から仕入れた原材料の在庫
  • 半製品:生産途中の未完成品で、そのまま販売できる在庫
  • 仕掛品:生産途中の未完成品で、そのままでは販売できない在庫
  • 貯蔵品:荷造用品や事務用消耗品、工場用消耗品など

売れ残り棚卸資産が多く残ってしまえば、それだけ資金繰りに悪影響を及ぼすことはお分かりでしょうが、余分な在庫は税金を増やしてしまう原因になります。

売れ残りができてしまうのは致し方ない部分もありますが、できるなら節税を含めた在庫コストを下げて、少しでも資金繰りが良くなるようにしておきたいものです。

棚卸資産が少ないと節税になる理由

棚卸資産の金額が低くなると節税効果が生まれます。

事業で生まれる利益はざっくりいうと

・売上-売上原価-経費=利益

という計算で求められます。

税金は利益に対して課せられます。

したがって、売上原価と経費が多くなれば納める税金も少なくなります。

これが節税の基本です。

では、このことと棚卸資産の額にどんな関係があるのでしょう?

答えは売上原価にあります。

端的にいいますと、棚卸資産の額が少なくなることで、売上原価が増えて利益が少なくなり、税金が少なくなるという図式です。

売上原価の計算は

・(期首棚卸高+当期仕入れ高)-期末棚卸高=売上原価

で求められます。

仮に期首棚卸高が200万円、当期仕入れ高が500万円、期末棚卸高が400万円のケースで考えてみましょう。

このときの売上原価は

1・(200万円+500万円)-400万円=300万円

となります。

ここで商品が良く売れて期末棚卸高が200万円になればどうでしょう?

2・(200万円+500万円)-200万円=500万円

売上原価は500万円となります。

思い出してください。

売上原価が増えれば利益が減って、税金も減ります。

もし売上が1000万円で経費が300万円なら、実効税率30%で計算すると納める税金は

  • (1)の場合:(1000万円-300万円-300万円)×30%=120万円
  • (2)の場合:(1000万円-500万円-300万円)×30%=60万円

と、半分の税金で済むことになります。

しょうがない部分があるとはいえ、売れない在庫というのは、資金繰り的にも税金的にもマイナスにしかならないといえます。

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棚卸資産の2つの評価方法

棚卸資産は、税務署への確定申告・決算申告を行うため、ある時点で在庫の数を数え、その棚卸資産の金額を計算し、利益額を確定する必要があります。

個人事業主は毎年12月31日に、法人は決算日に応じて棚卸しを行ないます。

棚卸資産の額を少なくするためには

  1. 数を少なくする
  2. 単価を低くする

の2つの方法があります。

数を少なくするには、販売をがんばるか仕入を調整するしかありませんが、実は棚卸資産の評価方法を変えて単価を低くして、申告することができるのです。

棚卸資産の評価方法には、「原価法」と「低下法」の2種類があります。

このうち低い方を選ぶことができます。

原価法

原価法とは、在庫を仕入れたときの価格をそのまま用いる方法です。

ただし、棚卸資産に大きな含み損が出たときは、強制的に低価法での評価が要求されます。

原価法は次の6種類のうちどれかの評価法で仕入価格を求めます。

最終仕入原価法

最終仕入原価法とは、期末にもっとも近い仕入単価を、棚卸資産の単価として計算する方法です。

評価方法を税務署長に届け出ない限り、最終仕入原価法で在庫の評価をするこことになります。

個別法

期末にある棚卸資産の全部について個別に取得価格で評価する方法です。

仕入先出法

仕入れた商品ははじめに仕入れた順から売れていくと仮定し、期末の取得価格を決める方法です。

<例>

・1/10 ヘアスプレー 20本 500円で仕入れ

・2/10 ヘアスプレー 30本 550円で仕入れ

・3/10 ヘアスプレー 10本 400円で仕入れ

この状態で合計40本売れ、在庫が20本残った場合、仕入れた順に売れていくと考えるので、期末棚卸高は次の金額になります。

・10本×550円=5500円

・10本×400円=4000円

・期末棚卸高:5500円+4000円=9500円

総平均法

期首の棚卸高と当期に仕入れた在庫を足し、総数量で割って平均単価を出し、それを取得単価とする方法です。

移動平均法

棚卸資産を仕入れる時点での平均単価を毎回計算し、取得単価とする方法です。

計算方法は

・移動平均単価 = (受入前棚卸資産の評価額 + 今回受入金額) ÷ (受入前棚卸資産数量 + 今回受入数)

・期末棚卸額 = 期末棚卸数量 X 直近で算出された移動平均単価

となり、複雑になります。

売価還元法

販売価格に原価率をかけて取得価格を求める方法です。

個々の棚卸資産の原価を把握する必要がないため計算自体は比較的簡単になります。

ただし、他の評価方法に比べて評価額が高く計算されることが多くなります。

低価法

現在の時価と原価を比較して、仕入れ価格の低い方を選べます。

原価法と比べると低価法を選択した方が取得価格は低くなります。

低価法は原価と時価を比べて低い方を選べるので、時価と原価のどちらが高くても有利になります。

しかし時価がいくらかを証明するのがむずかしいというのが難点です。

最終仕入原価法を使った節税法

評価方法の選択は、事業年度がはじまる前に所轄の税務署長へ届け出る必要があります。

最初にも書きましたが、評価方法を届け出ないと最終仕入原価法での棚卸資産の評価をすることになります。

この最終仕入原価法は、期末にもっとも近い時点で仕入れた価格が取得価格になります。

したがって期末の仕入単価高ければ、あえて翌月に仕入れを持ち越すことで、取得価格を低く設定することができます。

反対に期末の仕入単価が通常より安ければ、期末のギリギリに仕入れることで、棚卸資産の評価を最低価格にすることができます。

このように、最終仕入原価法の特性を理解すれば、評価額を低く設定でき、節税へとつなげることができます。

最終仕入原価法を選択したときは、仕入の管理をしっかり行いましょう。

棚卸資産の評価損を使って節税

棚卸資産の評価損を使った節税法の解説を致します。

棚卸資産を使えば利益調整が簡単にできてしまう

企業の利益は

・売上-(売上原価+経費)=利益

で決まります。

したがって、売上原価を大きくすれば利益は小さくなって節税になります。

売上原価は

・期首棚卸高+当期仕入高―期末棚卸高

で求めます。

つまり、期末の在庫数を増やせば利益は小さくなり、その反対に少なくすれば利益は大きくなるのです。

このように、棚卸資産を増減させれば簡単に利益調整することができてしまいます(同じ考えで、銀行融資対策の粉飾に使われるのもこの項目です)。

そのため期末在庫の評価については、税務署もチェックする項目になります。

まずは、このことを念頭においてください。

※棚卸資産をあえて少なく計上(利益操作)することは、脱税になりますので注意しましょう。

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棚卸資産の評価損ができるケース

棚卸資産は厳しくチェックされとはいえ、すべて売れるとは限りません。

型落ちや破損、品質劣化といった理由で在庫になってしまうケースもあります。。

このような何かしらの理由があって普通に販売できない商品は、棚卸資産の評価損として計上できます。

しかし、前述の通り棚卸資産は簡単に利益の調整に使われやすい項目ですので、税法では一定のルールを設けて損金計上を制限してします。

  • 棚卸資産の評価損によって損金を計上できるケース
  • 災害によって著しい損傷を受けた場合
  • 破損や型くずれなどの品質劣化がある場合

上記2つに準ずる特別な理由

(資産の評価損の計上ができる事実)
第六八条 法第三十三条第二項(特定の事実が生じた場合の資産の評価損の損金算入)に規定する政令で定める事実は、物損等の事実(次の各号に掲げる資産の区分に応じ当該各号に定める事実であつて、当該事実が生じたことにより当該資産の価額がその帳簿価額を下回ることとなつたものをいう。)及び法的整理の事実(更生手続における評定が行われることに準ずる特別の事実をいう。)とする。
一 棚卸資産 次に掲げる事実
イ 当該資産が災害により著しく損傷したこと。
ロ 当該資産が著しく陳腐化したこと。
ハ イ又はロに準ずる特別の事実

引用元:第九目 資産の評価損(第六十八条-第六十八条の三)

災害によって大きく損傷し、売り物にならない商品は、評価損として計上しても問題とはならないでしょう。

まさに災害によって、外側や中身を「著しく損傷」して、商品価値がなくなってしまったことが明らかだからです。

では、棚卸資産の物的損傷はないにもかかわらず、「著しく陳腐化」して売れ残ってしまった商品とはどういうものをいうのでしょう?

上記の「ロ」の項目で定められている「著しく陳腐化した」とは

  • 季節商品で売れ残ったものについて、今後通常の価額では販売することができないことが、これまでの実績や事情に照らして明らか。
  • 用途はだいだい同じであるが、新商品の登場により、在庫商品が今後通常の方法により販売することができないようになった。
  • 型落ち、たなざらし、破損などにより商品価値が劣化したもの

というような状態を指します。

(棚卸資産の著しい陳腐化の例示)
9-1-4 令第68条第1項第1号ロ《評価損の計上ができる著しい陳腐化》に規定する「当該資産が著しく陳腐化したこと」とは、棚卸資産そのものには物質的な欠陥がないにもかかわらず経済的な環境の変化に伴ってその価値が著しく減少し、その価額が今後回復しないと認められる状態にあることをいうのであるから、例えば商品について次のような事実が生じた場合がこれに該当する。(昭55年直法2-8「三十一」、平17年課法2-14「九」により改正)

(1) いわゆる季節商品で売れ残ったものについて、今後通常の価額では販売することができないことが既往の実績その他の事情に照らして明らかであること。

(2) 当該商品と用途の面ではおおむね同様のものであるが、型式、性能、品質等が著しく異なる新製品が発売されたことにより、当該商品につき今後通常の方法により販売することができないようになったこと。

(棚卸資産について評価損の計上ができる「準ずる特別の事実」の例示)
9-1-5 令第68条第1項第1号ハ《棚卸資産の評価損の計上ができる事実》に規定する「イ又はロに準ずる特別の事実」には、例えば、破損、型崩れ、たなざらし、品質変化等により通常の方法によって販売することができないようになったことが含まれる。(平12年課法2-19「十三」、平17年課法2-14「九」、平19年課法2-3「二十一」、平21年課法2-5「七」により改正)

引用元:第2款 棚卸資産の評価損(棚卸資産の著しい陳腐化の例示)

損金を計上できないケース

ちなみに、棚卸資産について損金評価を計上できない場合も定められています。

そこでは、棚卸資産の時価の下落が

  • 作り過ぎて売れなかった
  • 物価の価格変動で安くなった

といった理由では認められないことになっています。

(棚卸資産について評価損の計上ができない場合)
9-1-6 棚卸資産の時価が単に物価変動、過剰生産、建値の変更等の事情によって低下しただけでは、令第68条第1項第1号《棚卸資産の評価損の計上ができる事実》に掲げる事実に該当しないことに留意する。(平12年課法2-19「十三」、平17年課法2-14「九」により改正)

引用元:第2款 棚卸資産の評価損(棚卸資産について評価損の計上ができない場合)棚卸

資産の評価損による節税には証拠が大事

棚卸資産の評価損の規定をよくよく読んでみればわかりますが、実は明確な基準はありません。

それだけに迷うところですが、いずれにしても売れなくなくて不良在庫になってしまった「証拠」を残しておくことが重要です。

災害が原因で売れなくなった場合
  • 災害の日付を証明する新聞
  • 被害を受けた商品の写真
  • 担当者の報告書や上司への稟議書
  • 災害を受けた商品の見本

など

商品が著しく陳腐化した場合のケース
  • なぜ陳腐化したのか、その事実を説明する書類
  • その商品の過去の販売実績(販売価格や販売数量)
  • 他店のHPやチラシなどで値段の状況を明らかにしておく

不良在庫は叩き売って節税

棚卸資産の評価損を計上するには、書類や証拠を残しておかなくてはいけなくて、それはそれで面倒ですし、立証するのも簡単ではありません。

評価損の価格によっては、税務署から指摘されることも考えられます。

また、仮に大きな評価損を抱えている資産があったとしても、それが売れるとは限らず、その場合は長期保有をしておかなければいけなく、在庫管理コストもかかってしまいます。

したがって不良在庫になってしまう商品の場合は、安売りをして叩き売ってしまうのも方法です。

安売りでは利益が出ない、赤字になる、などの理由で躊躇してしまうケースもあると思いますが、在庫を抱えている以上、

  • 棚卸などの在庫管理のコスト
  • 無駄な税金がかかる(不良在庫は売上原価に計上できないため)
  • 不良在庫のスペースによる無駄な賃料
  • 売れる商品の陳列・在庫スペースまで侵食

などの無駄が発生します。

こんなコストがかかるなら、損して得取れではありませんが、赤字覚悟で売ってしまった方が何倍もお得です。

たとえば不良在庫がある状態でも、期末に利益が出たら節税対策を行うでしょう。

そうなれば、です。

無駄に法人税を発生させているのに、それを穴埋めする形でさらに節税で法人保険などに加入すれば、余分な資金が流出します。

在庫を赤字でも処分しておけば、防げるのにです。

たとえば、仕入価格500万円の不良在庫を300万円で売ったとします。

このとき不良在庫で眠っていた現金が300万円入ってくることになります。

しかも売却損の200万円(500万円-300万円)が発生しますから、その分だけ利益が圧縮され節税効果が生まれます。

200万円利益が少なくなれば、実行税率30%とするなら、60万円(200万円×30%)のキャッシュが手元に残ることになります。

さらに、不良在庫を処分したことで、会社全体の資産も小さくなるので、ROA(純資産利益率)が高くなり、金融機関からの評価が上がります。

※純資産利益率とは、会社のすべての資産をいかに効率よく運用したかを見る指標。小さい資産で大きな売上を作れる方が、経営効率が良いといえます。

それでも売れないときは、廃棄処分してしまうことも検討しましょう。

廃棄処分の際も、証拠を残しておくことが大事です。

まとめ

完璧な在庫管理はできるものではありあせんが、極力在庫を少なくすることは大切です。

釈迦に説法ですが、在庫が少なくなれば

  • 節税になる
  • 経営効率が高くなる
  • 資金が眠らなくなる

などの相乗作用があるからです。

もし不良在庫ができてしまった場合でお、ここで紹介した方法で、節税して利益が増やせないか検討してみてください。

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