会社の中に使わない固定資産があれば、これを処分することで節税できます。
この方法のおススメなのは、キャッシュアウトが生じないことです。
節税でまず行うべきはキャッシュアウトの伴わない対策です。
会社の中に使ってない資産がないか調べてみましょう。
除去する資産がないか固定資産台帳を調べる
会社が保有している資産で、10万円以上の取得価格で購入し、使用期間が1年以上になるものを固定資産といいます。
法人が使用する、建物、建物付属設備、機械設備、車両、工具などが固定資産に当たります。
この固定資産の取得費は、減価償却と呼ばれる方法で、取得価格を使用可能年数に応じて毎年減価償却していきます。
この減価償却資産は、「固定資産台帳」に記載して、減価償却計算の管理を行います。
この固定資産台帳の中に、現在使ってない不要なものを探します。
固定資産台帳にある資産の中には、すでに処分して現場にはないにもかかわらず、名前だけ記載されていることもあります。
これを「固定資産除去損」として計上することで、キャッシュアウトのない節税ができます。
固定資産台帳とは?
固定資産台帳とは、自社で使う固定資産を記載した帳面のことです。
固定資産とは、
- 10万円以上で取得したもの
- 使用期間が1年を超えるもの
をいいます。
固定資産台帳の記載内容は
- 資産区分
- 資産名称
- 耐用年数
- 償却方法
- 取得年月日
- 取得価格
- 減価償却累計
- 当期減価償却費
などがあります。
この記載内容からもわかる通り、各資産の帳簿額、毎年の減価償却費が正しく計算されているか、資産が実際にあるかどうかの確認のためなどに使われます。
固定資産台帳の目的は以下の通りです。
会計処理
貸借対照表や損益計算書ではわからない、各資産の帳簿計上額や減価償却費などの内訳が正しく計上できているかを確認するため
税務処理
税金計算における減価償却費の根拠とするため。
資産管理
固定資産が実在するかどうかを調べます。無くなったものが盗難や紛失のためか、貸出によるものなのか原因を把握し、不要な固定資産を除却することで節税に役立てるため。
このように意外に大事な役目があるのが固定資産台帳です。
使ってない固定資産を除去損として費用計上できるのは元より、市町村に提出する固定資産税の申告書で固定資産の減少を申告すれば、その分固定資産税も抑えられます。
固定資産を廃棄したときの計上できる金額
固定資産を廃棄した場合、「固定資産除去損」として費用計上できます。
費用計上できる額は、固定資産台帳にある「期末帳簿価格」になります。
期末帳簿価格はその年の減価償却を行った後の金額で、まだ費用になってない価格、つまり価値として残っている価格のことなので、これを除去損として計上できるのです。
固定資産を廃棄するといっても、やはり処分費がかかります。
その場合、廃棄にかかった費用も損金に計上できます。
固定資産の中には、減価償却期間が過ぎて残存価格が1円のものもあります。
除去損で1円しか費用計上できなければ費用倒れになりますが、廃棄費用を計上できれば、その分だけでも節税につながり、廃棄費用を軽減できます。
注意点
固定資産除去損として経費計上するためには、廃棄したことを証明する必要もありますので、管轄の税務署で事前に確認するようにしましょう。
一括償却資産を除去した場合は
取得価格20万円未満の固定資産については、一括償却資産として取り扱うことができます。
一括償却資産とは、3事業年度にわたって、3分の1ずつ費用計上できる制度です。
取得価格20万円未満のものは、通常の減価償却と一括償却を選ぶことができますが、一括償却資産を選択した場合、償却期間中に除去の処理したときは注意が必要です。
一括償却資産とは、会社が20万以下で取得した資産を個別で管理する事務負担を少なくするための制度で、償却期間中に除去した資産があっても、原則通り3年間で償却していくことになります。
<例>
15万円のパソコンを購入し一括償却した場合、3年間で5万円ずつ償却していくことになります。
このパソコンを2年目で除去したときは、2年目、3年目も同じように5万円ずつ費用計上することになります。
除去した年に2年分の未償却分全額の10万円を費用計上することはできません。
なお、除去にかかった費用は雑損失等で処理します。
固定資産を買い替える場合の節税対策
固定資産を買い替えをした際は
- 古い資産:買換えたときに残っている価格
- 新しい資産:取得した費用を減価償却
と2種類の費用を計上できます。
そして固定資産の買換えをするときは、「下取り」と「新品の値引き」のどちらかを選ぶことになります。
この2つのケースでは、「新品の値引き」の方が節税につながります。
下取の場合は、残存価格と下取り価格の差額が損金として計上できます。
たとえば、残存価値が200万円の機械を買い替える場合、下取り価格が120万円だと損金計上できる除去損は80万円です。
これが下取り価格が0円なら、損金計上できるのは200万円になります。
となるなら、新品を80万円値引きでしてもらい、下取を0円にしてもらった方が、費用を多く計上できることになります。
300万円の新品を下取り価格120万円で購入した場合の損金計上できる額
・300万+80万円=380万円
300万円の新品を80万円の値引き、下取価格0円で購入した場合損金計上できる額
・(300万円-80万円)+200万円=440万円
新たな固定資産を減価償却を行うにしても、値引きによって毎年の費用が低く抑えられることはキャッシュ対策として望ましいでしょう。
買換え時の下取や新しい機械などの値引きは、これという相場はなく、交渉次第になります。
それなら下取を高く買取ってもらうより、新品の値引きで交渉してみるべきでしょう。
ただし、あまりにも不自然な高額買取や高額値引きは、税務署からの突っ込みを誘発する恐れがありますので注意してください。
廃棄せずに固定資産を除去する「有姿除却」
使ってない固定資産を廃棄する場合でも、お金や手間がかかることがあります。
その費用がもったいなくて、除去の処理ができないケースもあるでしょう。
そんなときは、「有姿除去」という方法を選ぶことができます。
有姿除去とは、解体や廃棄はしていないけど、「もう使わない状態」で工場などの現場に残っていいるものを、固定資産から除去してしまう方法です。
固定資産除去損として計上できる額は
・固定資産残額-処分見込み費用=固定資産除去損
となります。
たとえば、50万円の残存価値のある機械設備を、処分見込み額3万円で有姿除去したときは
・50万円-3万円=47万円
を固定資産除去損として計上できます。
ただし有姿除去は
- 「もう使えない」
- 「使わない」
ことが前提でできる処理です。
いったん有姿除去をした固定資産は、その後使うことはできません。
使っていることがバレたら、有姿除去として計上した額は税務署に否認されますので、絶対にしないようにしましょう。
有姿除去ができる状態とは次のように定められています。
7-7-2 次に掲げるような固定資産については、たとえ当該資産につき解撤、破砕、廃棄等をしていない場合であっても、当該資産の帳簿価額からその処分見込価額を控除した金額を除却損として損金の額に算入することができるものとする。(昭55年直法2-8「二十五」により追加)
(1) その使用を廃止し、今後通常の方法により事業の用に供する可能性がないと認められる固定資産
(2) 特定の製品の生産のために専用されていた金型等で、当該製品の生産を中止したことにより将来使用される可能性のほとんどないことがその後の状況等からみて明らかなもの
引用元:第1款 除却損失等の損金算入
使わない、使えないことを証明するためには、客観的にみて「これは使えないだろう」ということをわかるようにしておかなくてはいけません。
そのためには、
- あえて雨ざらしの状態にしておく
- 機械の中心部をドリルで穴を空けておく
- 駆動装置を壊しておく
- 「もうこの機械は使用しない」ことを会社の稟議書などで記録しておく
などの状態を作っておくことが肝心です
ソフトウエアも除去できる
目に見えない資産の代表といえばソフトウエアですが、ソフトウエアも除去できます。
ソフトウエアの除去損ができるのは次の場合になります。
(ソフトウエアの除却)
7-7-2の2 ソフトウエアにつき物理的な除却、廃棄、消滅等がない場合であっても、次に掲げるように当該ソフトウエアを今後事業の用に供しないことが明らかな事実があるときは、当該ソフトウエアの帳簿価額(処分見込価額がある場合には、これを控除した残額)を当該事実が生じた日の属する事業年度の損金の額に算入することができる。(平12年課法2-19「九」により追加)(1) 自社利用のソフトウエアについて、そのソフトウエアによるデータ処理の対象となる業務が廃止され、当該ソフトウエアを利用しなくなったことが明らかな場合、又はハードウエアやオペレーティングシステムの変更等によって他のソフトウエアを利用することになり、従来のソフトウエアを利用しなくなったことが明らかな場合
(2) 複写して販売するための原本となるソフトウエアについて、新製品の出現、バージョンアップ等により、今後、販売を行わないことが社内りん議書、販売流通業者への通知文書等で明らかな場合
引用元:第1款 除却損失等の損金算入
有形固定資産の場合は、目に見えて使えないことを確認できますが、無形資産のソフトウエアの場合は確認することがむずかしくなります。
しかし、ソフトウェアの機能が陳腐化した等の理由で事業の用に供しないこととなった場合には、資産としての価値が失われたことになりますので、この場合は固定資産から除去できるのです。
ただし、目に見えないものだけに、「使えない」「使わない」ことを客観的証拠として残しておかなくてはいけません。
そのため国税庁でも「社内りん議書、販売流通業者への通知文書等で明らかな場合」と定めておりますので、突っ込みを入れられたときに明確に応えられるように、しっかりとした根拠(証拠)を残しておきましょう。
まとめ
除去は固定資産の残存価値が少なければ、大きな額の節税とはなりません(簿価0円や1円のケース)。
しかし、キャッシュアウトの生じない節税ですので、漏らさず行っておく価値はあります。
もちろん、廃棄のための費用がかかればキャッシュアウトを伴いますが、その分は損金に計上でき、節税を行うことができます。
また、固定資産をきちんと管理するという経営上の観点からも大事です。
ただし、簿価がゼロになっても、1円になっても、まだその資産を事業の用に供している場合には除却処理はできませんので、この点は忘れないようにしておきましょう。
一度固定資産台帳を見て、処分できるものがないか調べてみましょう。
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