固定資産・消耗品の購入で節税する方法を徹底解説!ポイントは減価償却

節税対策

固定資産、消耗品を購入することで節税になります。

要は、固定費・消耗品を購入することで利益を減らし、それによって節税できるというわけです。

利益が出た期に手っ取り早くできる節税法です。

それだけに注意が必要で、税金を払いたくないからと、これといった目的もなく固定資産・消耗品を購入することは、いたずらに利益を削るだけで会社の財務としては最悪です。

税金は減らせますが、手持ちキャッシュも同時に減ってしまうからです。

固定資産・消耗品で節税を考えるときは、目的を持って行う必要があります。

事業で使う目的で購入するものでも、金額や使用年数によって、固定資産か消耗品にわかれます。

固定資産とは

固定資産とは、以下の3つを満たすものをいいます。

販売する目的で保有している資産でないこと(販売目的の資産は棚卸資産)

  1. 1年以上継続して使う資産
  2. 取得価格が10万円以上のもの

固定資産の種類には次の3種類あります。

  1. 有形固定資産:土地、建物、建物付属設備、車両運搬器具など
  2. 無形固定資産:営業権、ソフトウエア、特許権、借地権など
  3. 投資関連:投資有価証券、長期貸付金、出資金など

消耗品とは

それに対し消耗品とは、使用期間が1年未満のもの、または取得価格が10万円未満のものをいいます。

具体的には、次のようなものが挙げられます。

・固定資産:文房具、インク、伝票類、蛍光灯など

No.5403 少額の減価償却資産になるかどうかの判定の例示

なお、使用期間が1年未満かどうかの基準は、

法定耐用年数でみるのではなく、その法人の営む業種において一般的に消耗性のものと認識され、かつ、その法人の平均的な使用状況、補充状況などからみて、その使用可能期間が1年未満であるものをいいます。

となっていて、企業ごとに判断基準がわかれます。

とはいえ、一般常識を超えるものは否認されてしまいますので注意しましょう。

消耗品と固定資産では処理の仕方が変わる

取得したものが、固定資産、消耗品にわけられることにより、税務処理の方法が変わってきます。

消耗品の場合、取得した事業年度に経費として全額計上できます。

しかし、固定資産になりますと、取得した金額により

  1. 10万円~20万円:一括償却資産、小額減価償却資産の特例、減価償却資産のうちどれか
  2. 20万円~30万円:小額減価償却資産の特例または減価償却資産
  3. 30万円以上:減価償却資産

と、条件の中から選択することになります。

減価償却を理解する

ここで減価償却という言葉が出てきましたが、この概念を知っておくことは、経理上も財務上も大切ですので詳しく解説していきます。

減価償却とは

減価償却とは、取得するための金額を使用可能期間の経費に分配して、その期ごとに費用計上する方法です。

仮に120万円の普通乗用車を社用車として購入した場合、120万円を使用可能年数の6年で割ります。

・120万円÷6年=20万円

1年ごとに20万円ずつ計上し、6年で全額を経費として償却するというわけです。

この経費を分配する手続きを「減価償却」といいます。

なお使用可能年数は資産によって法律で定められていますので、好きな期間にすることはできません。

減価償却する理由

なぜこのような複雑な処理の仕方をするのかというと、機械や設備などは、毎年使用することで収益が発生することが前提になっています。

つまり、機械や設備を取得するための支出は、「将来の収入を生み出すための前払費用」と考えられるのです。

企業会計の原則、「費用収益対応の原則」から考えても、取得した資産を使用可能年数に分配するという考えは辻褄が合っています。

費用収益対応の原則

費用及び収益は、その発生源泉に従って明瞭に分類し、各収益項目とそれに関連する費用項目とを損益計算書に対応表示しなければならない。(企業会計原則より引用)

損益計算書の目的は、企業経営の成績を明らかにするためです。

それには、ある会計期間のすべての収益と、これに対応する費用を記載しなくてはいけません。

そうではないと、何に基づいて売上が発生したのか、正確に把握できないですよね、ということです。

減価償却できる固定資産とできない固定資産がある

固定資産には減価償却できる資産と、減価償却できない資産にわかれます。

減価償却できない資産は次のものです。

  • 時間の経過によって価値の減少しないもの
  • 事業の用に供してないもの(購入したけど使用してないものも含む)
  • 使用期間が1年未満のもの
  • 取得価格が10万円未満の資産

減価償却の対象とならない資産の具体例

  • 土地
  • 借地権
  • 棚卸資産
  • 有価証券

減価償却の方法

減価償却の方法は、主に使われるのは「定率法」と「定額法」の2つです。

定額法

毎年の減価償却費が固定となる計算法です。

・計算式:取得価額×耐用年数に応じて定められた定額法の償却率=減価償却費

毎年「同じ金額」で償却していくので、定額法といいます。

定額法のメリット・デメリット
  • 定額法より初期の償却額が少ないので、費用を抑えられることができる
  • 計算が簡単にできる
  • 収益力が低下する後年は、メンテナンス費用がかさみ、費用の負担率が高くなる
定率法

償却費の額が初めの年ほど多く、年数が経つごとに徐々に減価償却費が減少していく方法です。

毎年、減価償却資産の取得価額から前年までに減価償却した額を引いた残高に対して一定の率を乗じて減価償却費を計算します

・計算式:前期末の帳簿価額(取得した年は取得価額)×耐用年数に応じて定められた定率法の償却率=減価償却費

毎年「同じ率」を掛けて償却していくので、定率法といいます。

定率法のメリット・デメリット
  • 早期の費用化が見込めるので、投資額の早期回収ができる
  • 最初の年に大きな償却額を計上できるので、初年度は節税できる額が大きくなる
  • 後年は償却額が小さくなるので、収益力が低下してメンテナンス費用がかさんでも利益を圧迫しないで済む
  • 初期の減価償却費が大きく、場合によっては初年度から利益を圧迫する

定額法と定率法、どちらが有利か?

はじめにいっておきますと、定額法も定率法も、取得価格以上の節税効果はありません。

また、最終的に償却する額も取得価格までなので、どちらも同じ額までしか節税効果はありません。

しかし、定額法と定率法の大きな違いは初期の償却額にあり、多額の減価償却費を初年度から計上できる定率法が有利だといわれています。

資産の取得額を早期に費用化できるからです。

定額法と定率法の選び方

法人の場合、原則は定率法により計算を行います。

ただし、事前に「減価償却資産の償却法の届出書」を提出することにより、定額法を選択することができます。

個人事業主の場合、原則は定額法になります。

ただしこれも同じで、事前に「減価償却資産の償却法の届出書」を提出することにより、定率法を選択することができます。

減価償却費の計上

法人の場合、減価償却費を計上するかどうかは、法人の任意とされています。

そのため赤字の出そうな年は、銀行融資対策のためにあえて減価償却費を計上しないことがあります(しかし銀行は、その手の小細工はお見通しですので、減価償却したものとして再計算されてしまいます)。

これが個人事業の場合、その資産を事業に使っていれば、利益が出ていなくても減価償却費を必要経費に計上しなくてはいけません。

減価償却費の耐用年数

減価償却費の耐用年数は「減価償却資産の耐用年数等に関する省令別表」によって、減価償却資産の種類、用途ごとに定められています。

耐用年数表

中古資産の耐用年数

中古資産の耐用年数は、法定耐用年数ではなく、取得後の使用可能期間を合理的に見積もるとされていますが、簡便法により求めることもできます。

法定耐用年数の全部が経過しているもの

・法定耐用年数×0.2

法定耐用年数の一部が経過しているもの

・(法定耐用年数-経過年数)+経過年数×0.2

2年に満たない場合は2年で計算をします。

固定資産の減価償却方法

固定資産の減価償却の方法は、取得した金額で選択できます。

金額ごとの処理の仕方を解説していきます。

10万円未満の場合

取得価格が10万円未満、または使用期間が1年未満のものは「消耗品」として、購入した事業年度に損金に計上できます。

たとえば、9万円のパソコンを購入した場合、パソコンは1年で壊れるわけではありませんが、購入価格が10万円なので、消耗品として計上できるというわけです。

ただし、セットで購入する場合は注意しなくてはいけません。

個別の商品では10万円以下でも、セットで10万円以上になると固定資産として計上しなくてはいけません(購入した事業年度に損金として全額計上できない)・

<例>

  • 応接セット(ソファー、机)
  • パソコンとプリンター
  • カーテン(一室でセットとみなされる)
10万円は消費税込みの価格か?抜きの価格か?

10万円未満の基準に消費税を含めるのか含めないのか疑問になります。

消費税については次の基準で判定されます。

  • 税抜き経理を行っている場合は、消費税を含めない税抜きの金額で判定します。
  • 税込み経理を行っている場合は、消費税を含めた税込みの金額で判定します。
消耗品の注意点

消耗品は原則としてその年に使ったものだけが損金となりますが、次の要件を満たさないと、消耗品として計上できません。

  • 毎月おおむね一定数を購入するものであること
  • 毎年経常的に購入するものであること
  • 処理方法を継続して適用していること

つまり、その年度だけあまりにも大量に購入してしまうと、利益調整に使われたのではないかと、税務署から指摘を受けてしまう可能性があるのです。

消耗品で節税対策をする場合は、不自然にならないように気をつけましょう。

10万円以上20万円未満の固定資産を購入した場合

10万円以上20万円未満ものものは、固定資産として減価償却しなくてはいけません。

ただし、減価償却の方法を、「一括償却」「少額減価償却の特例」「通常の減価償却」の3つの中から選べます。

1・一括償却

法定耐用年数に関係なく、3年間で均等に分割して減価償却できる、「一括償却」として処理できます。

18万円のパソコンを購入した場合は、1年目6万円、2年目6万円、3年目6万円というふうに、3年間同じ額を減価償却していきます。

一括償却には節税効果がある

通常、10万円以上の減価償却資産を購入したときは、償却資産税がかかります。

しかし、一括償却資産として処理すると、償却資産税の対象外となり節税できます。

なお、通常の減価償却や少額減価償却資産での減価償却で処理した場合は、償却資産の対象になります。

※固定資産税は課税標準が150万円未満の場合は課税されません。したがって、150万以下の資産の場合は、一括償却、少額減価償却、減価償却のどの方法を選んでも課税されないことになります。

2・少額減価償却資産の特例を適用する

青色申告を提出する個人事業主、または青色申告を提出する資本金が1億円以下の法人の場合、30万円未満の減価償却資産を取得した場合は、年間(法人の場合は1事業年度)300万円まで。取得にかかった費用を全額経費にすることができます。

これを中小企業の「少額減価償却資産の取得価格の特例」といいます。

複数の資産を同時に購入したときは、資産1つにつき30万円未満かで判定を行い、年額300万円までは経費とすることができます。

事業年度が1年に満たない場合には、300万円を12で割り、その事業年度の月数を掛けた金額が上限となります。

No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例

3・通常の減価償却

通常の減価償却で処理します。

仮にパソコンの場合、法定耐用年数は4年なので、12万円で購入したパソコンなら、定額法なら3万円ずつ4年で償却していきます。

固定資産の減価償却方法まとめ

取得費の金額をまとめると

  1. 10万円未満:消耗品
  2. 10万円以上20万円未満:一括償却資産、小額減価償却資産の特例、減価償却資産のうちどれかを選択
  3. 20万円以上30万円未満:小額減価償却資産の特例、または減価償却資産を選択
  4. 30万円以上:減価償却資産

となります。

商品の取得費は1セットで判定されます。

No.5403 少額の減価償却資産になるかどうかの判定の例示

金額に消費税を含めるかどうかは、

  • 税抜き経理を行っている場合は、消費税を含めない税抜きの金額で判定します。
  • 税込み経理を行っている場合は、消費税を含めた税込みの金額で判定します。

となります。

まとめ

良くある勘違いですが、減価償却自体に節税効果はありません(資産を購入して利益が減って法人税額も少なくなるという意味での節税効果はあります)。

ここまで説明してきたように、減価償却は取得した価格を耐用年数によって按分して計上しているだけだからです。

取得した価格を、一括計上できるか、分割計上するかの違いしかないのです。

間違っても、100万円で取得した資産を減価償却することで、120万円分減価償却できるわけではないのです。

この点は誤解ないようしっかり理解しておきましょう。

固定資産・消耗品を購入して節税するときは、減価償却の考え方をきちんと理解して行いましょう。

減価償却にも、定額法と定率法があり、その選択によって投資の戦略もかわるからです。

正しい選択をして、お金の残る節税にしましょう。

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