決算対策として速効性のあるのが「短期前払い費用」です。

条件はありますが、保険料や家賃などの費用を1年分まとめて前払いすることで、それを今期の経費として計上できる節税法です。

1年というまとまった金額なので、計上すればそれなりの額を節税(その期だけ)できます。

ただし、1年分まとめて支払うため、手元資金が減少するという大きなデメリットもありますので、実行する際はよくよく考えて行わなくてはいけないです。

短期前払い費用とは

通常、サービスの提供(役務の提供)を受けた場合、サービスを受けたその月ごとなど、サービスと連動して支払うのが一般的です。

しかし中には、事業年度中にはサービスを受けてはいないが、支払いだけは済ませているケースがあります。

保険料、家賃、保証料などがあたります。

このような前払いした料金を条件を満たして1年分前払いすれば、翌期の経費を今期の経費として計上できるのです。

これを「短期前払い費用」といいます。

国税庁では、短期前払い費用を次のように解説しています。

法人が、前払費用の額で、その支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るものを支払った場合において、その支払った額に相当する金額を継続してその支払った日の属する事業年度の損金の額に算入しているときは、1にかかわらず、その支払時点で損金の額に算入することが認められます。

ただし、借入金を預金、有価証券などに運用する場合のその借入金に係る支払利子のように、収益の計上と対応させる必要があるものについては、たとえ1年以内の短期前払費用であっても、支払時点で損金の額に算入することは認められませんので注意してください。

引用元:No.5380 短期前払費用として損金算入ができる場合

たとえば、家賃10万円の事務所を借りていた場合、期末に1年分の家賃120万円を前払いすると、その期の経費として計上できるのです。

※短期前払い費用とできるには条件があります。

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前払い費用の原則

前払い費用の経費処理には原則があり、通常は「役務の提供を受けたその月」に経費計上するのが原則です。

前払費用は、原則として、支出した時に資産に計上し、役務の提供を受けた時に損金の額に算入すべきものです。

引用元:No.5380 短期前払費用として損金算入ができる場合

たとえば3月決算で、翌月の4月の家賃を支払っても3月の経費として計上はできません。

3月時点で4月分の家賃は資産計上され、翌期の4月にはなってはじめて経費として計上できます。

これを「費用収益対応の原則」といいます。

その一方で「重要性の原則」と呼ばれるものもあります。

それは「重要でないことは厳密に処理しなくてもよい」という考えです。

その原則に則って考えると、毎月か1年かの処理の仕方で経費の総額が変わらないのであれば、税額もかわりませんので、1年分まとめて費用計上してもよいということになるのです。

しかしそれだけに、何でも短期前払い費用になるとはいきません。

認めてしまえば利益の調整弁として使われてしまいます。

そこで短期前払い費用として認められるには、条件を設けているのです。

短期前払い費用と認められる6つのポイント

短期前払い費用として認められるには次の6つがポイントになります。

  1. 支払日から「1年以内に役務の提供を受ける」ものであること
  2. 契約に基づき、同一サービスを継続的に受けるもの
  3. 継続的に支払時に費用処理していること
  4. 収益計上と対応させる取引でないこと
  5. 決算までに支払うこと
  6. 重要性の原則の範囲から逸脱していないこと

支払日から「1年以内に役務の提供を受ける」ものであること

支払日から1年以内にサービスの提供を受けるものに限定されています。

したがって、1年以上の前払いは経費として認めてもらえません。

タクックアンサーでも次のようになっています。

期間20年の土地賃借に係る賃料について、毎年、地代年額(4月から翌年3月)241,620円を3月末に前払により支払う→短期前払い費用として認める

期間10年の建物賃借に係る賃料について、毎年、家賃年額(4月から翌年3月)1,000,000円を2月に前払により支払う→短期前払い費用として認められない

引用元:短期前払費用の取扱いについて

上記のケースの違いは支払い時期です。

1つ目は支払時期が3月で1年以内にあんりますが、2番目は支払い時期が2月で、役務の提供が1年を超えてしまいます。

このように1年分以上の前払いをしたときは、単に1か月分しか経費として認められなくなってしまいます。

仮に14カ月分の家賃を前払いをしたときは、12か月分を損金に計上できるのではなく、期末当期分の家賃のみ計上して、それ以外の前払い家賃は損金に計上できなくなるので注意が必要です。

相手方との同意が必要

なお、相手方の同意なく、勝手に1年分を支払っても短期前払い費用には認められません。

短期前払い費用と認められるには、相手方との同意が必要になります。

ですので、お互いの同意に基づき、年払方法が可能であることを契約書で交わしましょう。

税務調査で突っ込まれた際、口約束では契約の存在を証明できません。

契約書があれば確かな証拠となります。

一定の契約に基づき、同一サービスを継続的に受けるもの

同一サービスを継続的に受けるとは、毎月同じようなサービスを受けることを指します(等量・等質のサービスといいます)。

等量・等質のサービスとは、建物の賃借料、生命保険や損害保険の保険料、器具や機械の保守料などが該当します。

それに対し、税理士や弁護士に支払う顧問料は、「一定の契約に基づき、継続的に受けるサービス」に該当しますが、等量・等質のサービスとはいえないので(同一ではない)、短期前払い費用の対象外となります。

継続的に支払時に費用処理していること

毎期、同じ経理の処理をしなくてはいけません。

一度短期前払い費用で計上したものは、その処理で毎期行わなくてはいけないのです。

「毎期同じ処理」ということは、赤字であっても同じ処理です。

「前期は黒字だったけど、今期は赤字だから短期前払い費用として計上するのは止めにしておこう」というのは、残念ながら通用しません。

そういう意味では、「今期儲かったから」と安易に短期前払い費用を利用してしまうのは考えものです。

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収益計上と対応させる取引でないこと

短期前払い費用は、本来「費用収益対応の原則」に基づいて処理すべきところを、条件を満たすことで例外的に経費として認められるものになります。

したがって、原則に基づいて、費用と収益が対応していることが必要なのです。

そのため、賃貸物件を他に転貸しているような場合、貸している人から入る賃料収入(収益)と、借りている大家に支払う家賃(費用)とを期間対応させなくてはいけないのです。

ですからこの場合、家賃を1年分前払いしても費用として認められないのです。

決算までに支払うこと

短期前払い費用と認められるには、その事業年度に支出が行われなくてはいけません。

仮に、3月決算の法人が、4月から翌年3月までの家賃を「3月」に支払えば適用可能になります。

それに対し、4月から翌年3月までの家賃を「3月」に「未払い計上」したものは、短期前払い費用にはなりません。

あくまで短期前払い費用となるのは、決算日までに支出した費用のみです。

重要性の原則の範囲から逸脱していない

これまでお話ししてきた短期前払費用の要件

  1. 短期前払い費用として認められるには次の6つがポイントになります。
  2. 支払日から「1年以内に役務の提供を受ける」ものであること
  3. 契約に基づき、同一サービスを継続的に受けるもの
  4. 継続的に支払時に費用処理していること
  5. 収益計上と対応させる取引でないこと
  6. 決算までに支払うこと

という5つを満たしていたとしても、重要性の原則の範囲から逸脱していると否認される可能性が高くなります。

重要性の原則とは、あまりにも大きすぎる金額のことです。

ではその金額がいったいいくらなのかというと、ケースバイケースになるようです。

下記の事例からもわかるように、一概に高い金額が否認されるというわけではありません。

1500万円の家賃が短期前払費用として認められた例

4583万円の傭船料が否認された例

ただし、節税目的で露骨に利益調整として短期前払い費用を利用すると、否認される怖れが高くなることは間違いないでしょう。

実行の際は、慎重に行いましょう。

短期前払い費用に節税効果なし。

短期前払い費用は、来期の経費を今期に計上しているだけなので、法人税額そのものが減る、いわゆる恒久的な意味での節税にはなりません。

あくまで今期の法人税を来期に繰延べしているに過ぎないのです。

ただし、来期の売上を確定することはできませんので、そういう意味では、短期前払い費用で節税しておくメリットはあります。

しかしすでに書きましたが、短期前払い費用は「儲かったときだけ利用する」ということはできません。

今期まとめて計上したものは、来期売上が少なくても同様に処理せねばならず、その点でいえば、不確定な未来に対し、支払いを確定させておくことが、本当にメリットがあるのかは疑問です。

節税の本来の目的と外れる

また、1年分の費用をまとめて支払うということは、それだけ手元キャッシュは少なくなります。

節税の目的とは手元キャッシュを最大化することです。

にもかかわらず、短期前払い費用で節税すればその逆の現象が起こります。

つまり、節税のための節税で、目的から外れてしまうことも、短期前払い費用のデメリットです。

手っ取り早く取り組める節税法ですが、実行はよくよく考えて行うべきです。

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まとめ

期末で利益が出そうなとき、すぐに取組める節税が短期前払い費用です。

ですが、適用されるには要件を満たす必要がありますし、1度の繰延べ効果しかないうえ、手元資金の減少など、大きなデメリットを抱えてしまいます。

安易に取組んでしまうのは危険です。

リスクに見合う対価があるか慎重に検討したいところです。

手元資金を最大にするという、節税の本来の目的を忘れないようにしましょう。

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