銀行融資は中小企業にとって生命線といってもいいくらい重要です。

資金調達の方法はいろいろありますが、まとまったお金を短期間で調達できるのは、現実的にいって銀行しかないからです。

であるなら、銀行からいつでも融資を引き出せる状態にすることは、会社の経営目標の一つといってもいい過ぎではないでしょう。

では、そのために何をすべきでしょうか?

それは銀行の「信用格付けを上げる」ことです。

信用格付けのスコアリングが高い企業になることで、いつでも融資を引き出されることができます。

融資の8割を決める信用格付けを理解する

銀行融資の企業格付け「信用格付」とは?

銀行が融資の判断をする際に用いるのが、「信用格付け」と呼ばれる査定方法です。

別名、スコアリングシートともいわれます。

格付けは各銀行で独自の査定があり、10~20段階で評価されます。

格付けのスコアが高いと

  • 融資を受けやすくなる
  • 融資枠が広がる
  • 金利の低い好条件で借入ができる
  • 無担保・無保証で借りられる

などの融資条件を引き出すことができます。

逆に業績の悪化などにより点数が低ければ

  • 融資が受けられない
  • 融資枠が狭くなる
  • 借入できても金利が高い
  • 担保・保証人を求められる

といった融資条件になってしまいます。

銀行は、できるだけ安全に返ってくる会社に貸したいわけですから、格付けが高く、安全度が高い会社ほど、銀行に対してもポジションが強くなります。

格付けは決算書でほぼ決まる

格付けは、企業の決算書で80%と決まるといわれています。

逆にいえば、決算書の数値が悪いと、格付けの評価も上がらないということです。

決算書の中でも、とりわけ重要視されるのが、企業の返済能力についてです。

返済能力の配分は、129点中55点もあり、割合でいえば42.6%にも及びます。

返済能力を示す数値が低いと、融資の可能性は低くなるといえます。

銀行融資を決める6段階の格付け

格付けは、最初に融資先を10~12段階に分けます。※銀行によってそれぞれ

その段階を元に、「債権者区分」が決まります。

債権者区分は次の6つのカテゴリーがあります。

正常先

業績が良好で財務内容にも問題がない会社です。

要注意先

業績が悪化していて注意が必要な会社です。

要注意先(要管理先)

貸出条件、債務履行に問題があり、返済条件を緩和している会社です。要管理先にランク付けされると、新規の融資はほぼ見込めません。

破綻懸念先

融資の返済が滞っている会社です。ここからランクが下の会社は融資が厳しくなります。

実質破綻先

融資の返済が長期間滞っていて再建の見込みが薄い会社です。

破綻先

倒産、民事再生法、会社更生法適用、破産宣告した会社です。

そして最初に格付けした段階によって、6つのカテゴリーのどこかに振分けられます。

上記のように、10段階評価の場合は、1~6までが正常先、7は要注意・要管理先といった具合です。

下に行くほど、信用力が低くなります。

この格付けが下がると、銀行は「貸倒れ引当金」を計上しなくてはいけなくなります。

貸倒れ引当金とは、将来の回収不能見込み額を見積もって、それに見合う額を計上しておくことです。

したがって、企業の格付けが下がってしまうと、銀行が用意しなくてはいけない貸倒れ金が多く発生し、銀行自体の財務状況に悪影響が出てしまいます。

そのため、要管理先に区分されると、新規の融資はむずかしくなってしまうのです。

格付けと融資の関係は次の図の通りです。

銀行の「格付け」の決め方

銀行の格付けは、次の3段階に分けられます。

  1. 第一次評価;定量評価 決算書の数値による格付け
  2. 第二次評価:定性評価 市場動向、競合状態など、決算書に表れない要素のスコアリング
  3. 第三次評価 実態評価 実質財産の価値の評価し直し評価による返済能力計測。

第一次評価:定量評価

会社の信用格付けの8割は、定量評価で決まるといわれています。

定量評価とは、企業の決算書の数値を使って、

  • 安全性
  • 収益性
  • 成長性
  • 返済能力

をさまざまな切り口で分析する手法です。

基本的に分析する項目は決まっているので、誰が行っても同じ分析結果になります。

銀行は、融資の審査や格付けに対して、圧倒的に定量分析を重視します。

要するに、決算書の数字が悪いと貸さないということです。

決算書は通常1年に1回しかでませんので、そこで数字が悪いと、その1年はその数字で銀行に判断されることになります。

銀行に融資を断られたら終わりの会社にとって、粉飾してでもキレイに見せたい理由がわかります。

※粉飾がバレてないと考えるのは間違いで、銀行は粉飾を見抜いています。

安全性分析

自己資本比率

総資産に対して、自己資本がいくらあるかを見る指標です。

自己資本が厚いほど、優良会社です。

・自己資本比率=純資産÷総資産×100

ギアリング比

自己資本に対する有利子負債の比率です。

要するに、自己の資本(純資産)に対して、何倍の借入をしているかをみる指標です。

・ギアリング比=有利子負債÷純資産

固定長期適合率

固定資産を、長期の固定負債と純資産で、どのくらいまかなっているかをみる指標です。

固定長期適合率が100%を超えている場合は、短期の流動負債でまかなっていることになり、資金繰りが厳しい会社との見方をされます。

・固定長期適合率=固定資産÷(固定負債+純資産)

流動比率

流動負債に対する流動資産の割合です。

この数値で、短期の支払い能力を見られます。

ただし、流動資産の中には、不良在庫や回収不能な売掛金も含まれるため、よりシビアに見る場合は、当座比率でも分析されます。

・流動性資産÷流動性負債

収益性分析

売上高経常利益率

売上高に対する経常利益の割合をみる指標です。

企業の財務活動を含めた収益性を示します。

・売上高経常利益得率=経常利益÷売上高

総資本経常利益率

総資本に対して、どれだけの経常利益を稼いだかを示す指標です。

別名ROAと呼ばれます。

少ない資本で大きく稼いだ方が、経営効率が良いということです。

・総資本経常利益率=経常利益÷総資本

収益フロー

過去3年分の税引前利益が継続して黒字であるかどうかを見られます。

2期連続で赤字は、融資が厳しくなります。

成長性分析

経常利益増加率

当期の経常利益が、前期に比べどれだけ増えたかをみる指標です。

・経常利益増加率=(当期経常利益-前期経常利益)÷前期経常利益

自己資本額

自己資本の額は、会社にとって重要な財務基盤です。

この額が大きいほど、財務体質が強いといえます。

そのため、配点も最高15点と高配分となります。

売上高

売上高の規模をみる指標です

返済能力分析

債務償還年数

有利子負債を、簡易的な営業キャッシュフロー(営業利益+減価償却費)で返済するとして、何年で返済できるかをみる指標です。

一般的には10年が目安となります。

・債務償還年数=有利子負債÷(営業利益+減価償却費)

インタレスト・カバレッジ・レシオ

金利支払い前の利益(営業利益+受取利息+配当金)が、支払利息・割引料の何倍あるかを見る指標です。

倍数が高いほど高得点で、1を切ると営業利益で利息が払えないということになります。

インタレスト・カバレッジ・レシオ=(営業利益+受取利息+配当金)÷支払利息・割引料


キャッシュフロー額

営業利益に減価償却費を足したもので、借入金の元本の返済原資にあるお金です。

この項目も、最高20点の配点で、銀行が重視している数値になります。

シミュレーション

では実際に、定量評価がどうスコリングされるかシミュレーションしてみます。

次のような財務状況の会社の場合でスコリングしてみます。※単位は百万円

スコアリング結果は129点中57点で、100点換算にすると44点になりました。

格付けは5で、「リスクはあるが平均水準」となります。

第二次評価:定性評価

銀行の格付けは基本的に決算書で決まりますが、数値で表しにくいものを定性評価で分析します。

項目は以下の通りです。

  • 分析項目
  • 市場動向
  • 景気感応度
  • 市場規模
  • 競業状況
  • 業歴
  • 経営者・経営方針
  • 株主
  • 従業員のモラル
  • 営業基盤
  • 競争力
  • シェア

定性評価は、銀行員の「イメージ」で決まります。

ですから、もじもじ話すよりは、堂々と今後の展望などを話すことで、評価が上がりやすくなるといえます。

基本的に、市場動向や競業状況などを、銀行員が正確に把握することはむずかしいでしょう。

銀行員をかばうわけではありませんが、経営コンサルでも上記項目を正確には無理です、できてたらどんなビジネスでも成功できます。

定性評価は評価する人の主観で決まるだけに、定量評価と違って、人によって評価が違ってくるという特徴があります。

それだけに、バラつきが大きく、格付けへの影響は1割~2割程度になってしまいます。

つまり、決算書で出される定量評価の結果が、定性評価から得られる結果によって覆るというようなことはまずないと考えておくべきです。

※決算書の数値が良くなるということは、それすなわち経営改善ということなので、決算書の数値を良くしておくことは、格付けどうこうというより、日々の経営において重要な管理目標です。

第三次評価:実態評価

決算書に表れてない、実態を評価されます。

オーナー経営者の資産余力があれば、プラスに評価されます。

その他にも、不良債権や不良在庫、価格が下落した土地(本業以外の土地は時価で評価)や有価証券などあれば、実態価格でマイナス評価されます。

売掛金は、売掛金明細をチェックされ、2期、3期連続で回収できていない売掛金を調べられます。

その上で、回収不能の不良資産と判断されたものは、減額修正されます。

いわゆる、実態バランスシートで評価し直されるということです。

社長の個人資産が豊富にあれば、スコアが上がる可能性もあります。

また、粉飾決算もここで判定されます。

以上の、定量評価、定性評価、実態評価の3つの評価で、会社の格付けが決まります。

「信用格付」を上げるための方法

銀行の格付けを上げれば、融資を受けやすくなるのはもちろん、

  • 低金利で借りれる
  • 融資枠が広がる
  • 無担保・無保証で借りれる
  • お願いしなくても借りれる

と、融資条件が飛躍的に良くなるのもメリットです。

やはり、企業にとって格付けを上げることは、経営目標として十分大きな効果があるといえます。

では、銀行の格付けを上げるにはどうすれば良いでしょう?

キーポイントは、純資産、経常利益、営業利益の3つです。

企業格付の改善ポイント

銀行の格付けを上げるために、スバリいって評価の対象になっている項目の数値の改善をすることです。

定量評価のポイントになる数値は、決算書の決まった項目しか使われません。

ならば必然的に、その数値が改善するよう日々経営努力に取組むしかないでしょう。

安全性を高める

安全性のポイントになっているのは、貸借対照表の「純資産」です。

自己資本比率、ギアリング比、固定長期適合率、流動比率のうち、3つに関わっています。

要するに、純資産を上げることで、得点も上がりやすくなるということです。

純資産を厚くするには、内部留保で利益を貯めるか、資本を注入するしかありません。

新たな資本注入は現実にはむずかしい面もありますが、「役員借入金」があればこれを自己資本金に振り替えることができます。

ただし、役員借入金を資本に振り替える場合、社長からの借入の返済義務を免除してもらうことになり、債務免除益が出て課税されることがありますので、注意が必要です。

内部留保を貯めるには、会社の利益を残すことが絶対条件です。

いい換えれば、内部留保を貯めたければ、必ず法人税というゲートを潜らないといけないということです。

そのため、節税による利益圧縮と相反することになります。

余計な税金を支払う必要はありませんが、無駄な節税で利益を圧縮してしまうと、内部留保が貯まらず、純資産は厚くならないのです。

ちなみに、売掛金・在庫の圧縮を忘れないようにしましょう。

回収不能な売掛金、回収サイトが長い売掛金、売れない不良在庫などは、たとえ流動性比率が高くても、何の意味もないことです。

手元資金が増えるように、売掛金と在庫の圧縮にも努めましょう。

流動性比率を高める方法には、借入による、現金・預金の残高を増やすという方法もあります。

最近の銀行は、自己資本比率より、手元キャッシュの多さを重視しているという話もありますので、借入によって戦略的に現金・預金を増やすのもの方法です。

ただし、不必要に借入を増やしてしまうと、債務償還年数の得点が悪くなるので、バランスを見ながら借入額を増やす必要があります。

収益性を高める

収益性を高めるポイントは「経常利益」です。

売上高に対しての経常利益、総資本に対しての経常利益の率が高くなることで、スコアの得点が上がります。

売上高に対して経常利益を高めるには、粗利そのものを大きくするか、経費削減で残る利益を大きくするかの2つです。

総資本に対し経常利益を高めるには、上記の方法で経常利益を大きくするか、資本を小さくして経営効率を高めるかになります。

無駄な不動産や機械などは売ってしまって、資本を小さくするなども方法です。

なお、経常利益は、決算書の「特別損益」の上にある利益です。

経常利益から特別損益を引いたものが、「税引前当期利益」になります。

ということは、特別利益にあるものの中で、売上高に振り分けられるものがあれば、売上高の移せば、経常利益は上がります。

あるいは、売上原価、販管費の中から、特別損失に振り分けられるものがあれば、科目を特別損失にすることで、経常利益は上がります。

※当たり前ですが、認められる範囲での話です。

科目を移動させても、税引前利益は同じですが、経常利益は良くなります。

銀行もこの手の手法は知っていますが、認められる範囲であれば、科目の移動で決算書の状態をより良く見せておくことことも必要です。

成長性を高める

成長性の項目の中で、最も得点の高いのが、自己資本額です。

その配点は、15点もあります。

スコリング全体から見ても、高い配点です。

自己資本額を高くするには、安全性を高めるのことろで解説したように、利益を残して、会社内部に利益剰余金を貯めるしかありません。

経常利益増加率も売上高の規模も、結局ところ、入ってくるものは、他人の都合や情勢で変わってしまうので、コントロールすることはできません。

それ対し利益を残すということは、自分の意思でコントロールできる部分が大きいです(そいう意味では、経常利益を厚くする経費削減もコントロールできます)。

利益をコントロールして、自己資本額を増やしましょう。

返済能力を高める

返済能力を計測する得点は、129点中55点もあり、スコリングの中で銀行が一番重視しているカテゴリーになります。

ここでポイントになるのは、損益計算書の「営業利益」です。

営業利益が高くなることで、債務償還年数、インタレスト・カバレッジ・レシオ、キャッシュフロー額の得点が上がります。

銀行融資の場合、本業の儲けが何より大事ということです。

また、このカテゴリーの中で債務償還年数は20点も配点されています。

この項目の数値を良くしておくと、スコリングの得点も高くなります。

そのためには、営業利益以外にも、無駄な借入を減らしておくこもとポイントになります。

借入で手元キャッシュを増やしておくことは安全性を高めることになりますが、不必要な借入が多すぎると、やはりバランスを崩してして、債務償還年数の得点が悪くなります。

バランスをしっかりみましょう。

融資を引き出しやすくする方法

経営計画書を提出する

経営計画書により、その事業を続けていくことで、返済できるかどうかを見られます。

そのため、今後その事業がどのように利益を上げていくかを、書面で説明しなくてはいけません。

通常の融資では10ほどの影響ですが、決算書の内容が悪い企業の場合、影響度は70にも増えるといわれています。

経営計画書では、次のような項目を入れます。

  • 経営理念
  • 経営方針
  • 今後の事業展開と、数値目標
  • 今後の業界の展望と、自社の立ち位置。それに伴う方向性
  • 方向性や数値目標を達成するための具体的プラン

会社の長所をリストアップ

事業計画を提出するときに、自社の長所をリストアップして渡しましょう。

口頭では伝わりません。

紙にして、リストアップしておくのがベストです。

定期的な報告

定期的に銀行を訪問し、報告を行いましょう。

これにより、信頼関係が強くなります。

まとめ

銀行融資は、企業の信用格付けで80%決まるといわれています。

それだけに、スコアリングが上がる取り組みを行うことは、経営目標の一つといっても過言ではありません。

そのためには、信用格付けがいかにして決まるか?その仕組みと方法を知っておくことがはじまりです。

知らなければ、手の打ちようがありません。

銀行の企業の格付けを理解して、いつでも融資を受けられる会社を目指しましょう。

それが、財務体質の強い、長期で生き残る企業になります。

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