
社長の給与は、社長のためだけにあらず。
会社のことを考えたなら、ある程度の高設定にしておくべきです(本業が赤字にならない程度。赤字なら下げるべきですが)。
なぜなら、社長の給与は
- いざというときの確実な資金調達の方法になる
- 銀行融資のプラス評価になる
という2つの側面があるからです。
この2つは、どちらも会社の存続を握るキーワードです。
万が一会社が倒産してしまえば、その影響は、社長のみならず、従業員、取引先、親族、そして愛するご家族にも及びます。
そう考えれば、社長の給与の取り方は、すべての影響まで視野に入れて設定しなくてはいけない事項です。
役員報酬の基準
最初にお断りしておきますが、給与を高く設定しておいた方がいいと申しましても、それには限度があるわけで、会社の運転資金が回るというのが前提です。
その年の営業利益が赤字であっても、社長個人の給与で補てんできるのであれば、会社の資金は回りますので、それは受取可能な給与の範疇です。
しかし、営業利益は赤字、なのに、資金繰りに支障をきたすほど、役員報酬が高過ぎなのはもらい過ぎというものです。
ここでいう役員報酬の高額設定とは、売上相応、借入があれば借入相応の給与という意味です。
肝心のキャッシュを生み出す会社の運営に問題が出てしまっては、意味がないというものです。
理由1・確実な資金調達の方法になる
社長が給与として受け取ったお金は、違法なものでないなら、基本何に使っても問題はありません。
趣味に使おうが、ギャンブルにぶっ込もうが、奥様以外のオネーちゃんに貢ごうが、それで身を持ち崩すかは別として、ご本人様の自由です。
そして社長の個人資産は、会社が資金シュートなどのピンチにも、資金に補てんにも使えます。
銀行がピンチのときに貸してくれるとは限りません。
むしろピンチのときほど銀行は危ういとみて、御社への融資に慎重になります。
借りたいときに借りれない。
そんな状況のときほど、社長の個人資産は、確実な資金調達ルートといえます。
だからこそ社長は、給与を高めに設定して、個人資産を緊急用に貯めておかなくてはいけないのです。
理由2・銀行融資のプラス評価になる
2つ目の理由は、銀行融資の評価ポイントになるということです。
銀行融資は、会社の本業の儲けや資産だけが、評価の対象というわけではありません。
通常、中小零細企業が融資を受ける際は、社長の個人保証を求められます。
株式会社の場合、負債の責任は、その出資した範囲にとどまりますが(有限責任)、個人保証をすると、無限責任となって会社が負った債務をすべて引き継ぐことになります。
つまり、銀行からしてみれば、社長の個人資産も担保の一部となるのです。
だとしたら、
- 給与をたくさんもらっていている。
- 余裕資金がある。
- 株や不動産などのその他の資産がある。
といったことが、融資の評価のプラスポイントになってくるといえます。
となれば、です。
もし会社の格付けが低く評価されても、個人資産がプラス評価されれば、総合評価が上がって、融資を受けられる可能性が高くなるということです。
もちろん、会社の本業の儲けが借金返済の財源であり、利益を稼ぎ出せる体質こそが何より重要であることに変わりはありません。
しかし、社長が給与を高く設定して、あえて余分にもらっておくことは、銀行融資対策として重要なポイントになるのです。
もし、必要なときに融資が受けられないとなれば、倒産の危機にもなりますし、事業を拡大するチャンスを逃すことにもなります。
社長の役員報酬に対する考え方は、金に汚いとかセコいとか、そんな次元の低い話ではないのです。
社長の給与が低すぎて起こること
社長の給与が低すぎるメリットは、社長の個人資産が貯まらないということですが、それつまり、「社長の保証能力の低下」という意味です。
社長個人の保証能力が低下すれば、追加担保を求められるケースも出てくるでしょう。
やはり社長は、それ相応の給与をもらっておかなくてはいけません。
社長こそ個人のファイナンシャル・プランニングで見直しが必要
ただし、です。
給与を高く設定することが、会社にとって必要だからといって、受取ったそばからジャンジャン使っていたのでは手元資金は残りません。
それこそ周りからは、守銭奴だの私利私欲の塊だのと陰口叩かれて、そっぽを向かれてしまいます。
社長の個人資産が、会社の財務戦略上重要な位置づけだからこそ、個人のファイナンシャル・プランニングを見直して、無駄な支出を減らして、余裕資金が生まれるようにしておかなくてはいけなません。
とくに社長の場合、法人というポケットがあります。
このポケットを使うことで、一般のサラリーマンがお金を貯めるより、2倍、3倍のスピードでお金を増やしていけます。
生命保険料や居住費も、法人に支払ってもらうことができますし(条件はあります)、社会保険料や税金も、法人を使うことで、低い負担にすることもできます。
社長は、法人というポケットがあることで、通常のサラリーマンより、節約や節税、社保削減など打てる手が多くあるのです。
そして、支出を見直して余裕資金ができたのなら、もっと効率良く増えるように、金融資産への投資も検討するべきです。
融資のプラス材料が増えることは、会社にとって資金調達を容易にすることでもありますが、資産自体、売ったり解約したりしてキャッシュに換金することができます。
お金はあっても困るものではないとはよくいったものです。
法人でも個人でも、お金にシビアになってお金を増やすことが、ある意味社長としての宿命です。
まとめ
社長の給与は、会社の財務に関わる事項です。
そしてそれは、ときに資金調達という会社の存続に直結してくることなのです。
釈迦に説法ですが、会社の存続は、社長一人の問題ではありません。
従業員、取引先など会社に関わる人に影響するのはもちろん、社長自身や愛する家族の生活まで激変させてしまいます。
だからこそ、社長の給与の受けり方は、社長一人の問題にととまらないのです。
人はお金のことになると恥ずかしいものという認識を持ってしまいますが、わたしは声を大にしていいたい。
社長がお金にシビアになるのは、カッコ悪いことではありません。
むしろシビアでないと、生き残っていけないくらいです。