店舗の売上げは、さまざまな要素が集まった一つの塊です。
その構成している要素を分解していけば、売上高を予測できるとともに、何を改善すれば売上アップにつながるのか大きなヒントになります。
売上げアップの予測と改善のためには、最初に売上げを構成している要素を分解してみましょう。
売上げ予測が必要な理由
売上げを予測するということは、その店舗が持つ「売上げのポテンシャル」を測れるということです。
ポテンシャルを計測することで、売上げの適正値を知ることができれば
- 適正値より売上げが足りてない場合は、改善の余地があることがわかる。
- 適正値より上の場合は、別な影響が起因している可能性を冷静に状況判断でき、一過性の出来事に振り回されなくなる。
- 根拠のない売上目標にならない(到達できない目標)。
- 適正値より下過ぎる売上目標にもならない。
といったことができます。
要するに、売上げのポテンシャルを予測できれば、自店の置かれている状況を冷静に判断できるということです。
そうすれば、低すぎる目標設定で機会損失を防げますし、無理過ぎる目標設定で空回りしなくてもよくなるということです。
ただし、これはあくまで理想論であり、物事は表裏一体で、適正値という名分に胡坐をかいてしまえば、そこで売上の伸びはストップしてしまうことに注意しなくてはいけません。
売上げを求める3つの公式
売上げを増やすためにどうするか?この疑問への解は、漠然と考えていても出てきません。
売上げという塊を分解することで、具体的な改善策のヒントになります。
売上げの分解方法はいくつかあります。
オーソドックスな売上高を求める公式
- 売上げ=客数×客単価
お客様の客数に、その方たちが1人平均いくらで購入しているかを掛けた数字で売上をを予測する数式です。
この数式のポイントは
- いかにお客様を増やすか?
- 1人のお客様にどうやってたくさん買っていただくか?
- そのお客様に何度も来店していただくためにはどうするか?
の3つになります。
お客様の数を増やす
お客様の数を増やすには、さまざまな方法があります。
しかし、お客様が来店しても、お買上げいただかなければ、何の意味もなくなってしまうことに注意しなくてはいません。
ビジネスモデルによって異なりますが、小売店タイプの場合、お客様が来店しても、見て帰ってしまうだけでは売上にはならないのは当然のことです。
つまり、「客数×客単価」の計算式には、お店の販売努力が入っていないのです。
客数の中には、買上げ客数があり、それは
- 買上げ率=買上げ客数÷来店客数
で求めることができます。
この「買上げ率」が高いということは、お店の販売努力や事前のマーケティングに成功したという証左であり、その逆の低いということならば、
「期待したものがなかった」
「セールスをしてなかった」
「セールス力が足りてなかった」
というサインになります。
ただし、来店客数が減っているのに、買上げ率が高い場合は注意が必要です。
それは、「強引なセールスをしている」可能性が高いからです。
売る気満々のお店は、入ってイヤなものです。
強引なセールスが客数の減少を招いている可能性があり、長期の視点でみればマイナスとなりかねません。
客単価
客単価も分解していくことで、具体的な改善点がみえてきます。
- 客単価=1人当たりの買上げ点数×平均商品単価×来店回数
1人当たりの買上げ点数は、お客様が1人当たり何点買ったかを見る数値で、次の式で求めますす。
- 1人当たりの買上げ点数=買上げ点数÷買上げ客数
買上げ点数を増やすためには、まとめ買い(パック販売・セット販売)を促したり、バスケット分析で、「A商品を買った人はB商品を買いやすい」というようなデータを採っておくことが有効になります。
平均商品単価は
- 売上げ合計額÷買上げ点数
で求めることができます。
高品質や付加価値サービスを加えることで、商品の単価はアップします。
しかし、競業の状況もありますし、客層に合わない単価設定にすると客数が減り、売上も減るという状況を招くこともあります。
そうかといって安売りをすれば、客数は増えるかもしれませんが、それに伴って、買上げ点数と売上げが伸びるとは限りません。
むしろ、利益は減り、客層の悪化を招くことだってあります。
このあたりは何とも微妙ですが、大事なのは店舗責任者が、どういう戦略をもって販売価格を設定するかでしょう。
客数が減ってもいいから、単価アップして利益を伸ばしたいのか、単価を下げてとにかく売って資金繰りを回したいのか、そのお店の方針が販売価格に反映されます。
どんな意図を持って客単価を設定するか、すべてはそこが基本になります。
来店回数
来店回数もお客様の満足度とつながっています。
リピ率を上げる施策に、サンキューレターやニュースレターを送るというものがありますが、基本、商品・サービス・接客に合格点をいただかないとリピート率アップにはつながりません。
まずは、基本を見直して、リピ率改善につなげましょう。
その他のパターン
ここで紹介した売上基本は、客数×平均客単価ですが、その他のバージョンも簡単ですがご紹介しておきます。
営業日数を加えたパターン
- 売上高=客数×平均客単価×営業日数
回転率を加えたパターン(飲食店など)
- 売上高=席数×平均客単価×回転数
稼働率を加えたパターン(ホテルなど)
- 売上高=部屋数×平均宿泊料金×稼働率
飲食店の場合で考えてみます。
- 座席数:20席
- 平均客単価:1500円
- 回転数:6回
・20×1500円×5回=150000円
これに1カ月の営業日が25日なら、
・150000円×25日=375万円
1年なら
・375万円×12カ月=4500万円
この飲食店の年間最高売上げは4500万円ということです。
マーケットシェアで売上高を求める公式
売上高を
- マーケットサイズ
- 商圏人口
- シェア率
の3つに分解して求める方法です。
- 売上高=マーケットサイズ×商圏人口×シェア
この考えで売上を上げるには
- マーケットサイズ→取扱い品目を増やす
- 商圏人口→商圏を拡大する
- シェア率→ブランディング、満足度、広告などで支持率を上げる
という方法が挙げられます。
マーケットサイズ
マーケットサイズとは、その商品・サービスの人口一人当たりの1年間の購買金額のことです。
平たくいうと、その商品・サービスの総売上高を総人口で割った数値です。
仮に、2016年の学習塾の平均支出額を調べてみますと、小学生23.5万円、中学生27.8万円、高校生34.8万円となっております。
このとき、中学生を対象とする学習塾なら、マーケットサイズは27.8万円ということです。
商圏人口
商圏人口とは、お店に通ってくれるお客様がいる範囲のことです。
店舗ビジネスの場合、お店から5km以内がリピート客8割というくらい、店舗近隣が商圏になります。
たとえば先ほどの学習塾で、商圏内に500人の中学生がいる地域なら、
・27.8万円×500人=1億3900万円
のマーケット規模があるということです。
シェア
最後にシェアです。
その商圏内のうち、何%の人がお店に通ってくれるかということです。
シェアは、ブランド力、満足度、広告宣伝による認知度で、シェア率が変わってきます。
上記の学習塾で、商圏内に20%のシェア率なら
・27.8万円×500人×20%=2780万円
の売上が見込めるということです。
シェアは、船井総研の理論によりますと
- 26%以上:トップシェア→商圏内で一番店
- 15%以上:優位シェア→競合の中で頭一つ出た状態
- 11%以上:他店に影響を与えている状態
- 7%以上:商圏内で存在を認められている状態
このマーケットシェアで売上を考えた場合、3番目のシェアを上げるのが一番の方法になります。
商圏を拡げても、店舗の場合、ご近所の人が主なリピーターで、遠くの人を集客してもリピ客にならないという特性があります。
マーケットサイズは、新規の分野に進出するというのは、一定のリスク(在庫、販売、認知の問題など)がつきものです。
やはり、基盤となる本業のシェア率を高めることが、一番の王道といえます。
店前の通行人から売上げを求める公式
売上高を
- 店前通行人
- 入店率
- 滞在時間
- 視認率
- 買上げ率
の各要因で求めます。
- 売上高=店前通行人×入店率×滞在時間×視認率×買上げ率
店前通行人
店前通行人の集客に影響を与えるのは、立地やアクセス環境になります。
立地やアクセス環境を良くするためには、移転しかありませんが、通行人が少ない環境では、やはり広告が主な集客手段になります。
入店率
通行人が少なくても、店舗イメージ、看板、ブランド戦略、信用力、お店の知名度などをアップすることで入店率は上がります。
入店率の計算式は
・入店客数÷店前通行人×100
で求めます。
1日300人お店前を通る人がいて、その内20人入店されたら、6.7%が入店率です。
滞在時間
入店したお客様が、どれくらいお店に滞在したかを見る指標です。
一般的に、お店の滞在時間と売上は比例していて、滞在時間が長いほど売上は上がる傾向にあります。
滞在時間を上げるには、お客様の導線(レジの位置を奥にして、あえて導線を長くして売上アップした例あり)、商品構成や売場の演出、スタッフの声かけのタイミング、接客マナーなどで変わってきます。
視認率
視認率は、お客様が商品に関心を持って立ち止まっていただける確率のことです。
POPは視認率を上げる有効なツールといえます。
しっかり活用したいところです。
買上げ率
買上げ率は、実際にお客様にご購入いただける確率のことです。
価格設定を含め、ここで買いたいと思っていただける工夫や仕組みが必要になります。
まとめ
お店の置かれた環境やビジネスモデルで、どの売上げの公式を使うべきかは変わります。
しかし、共通していえることは、売上は一つの塊ではなく、いくつもの要素の集合体ということです。
ここで挙げた各要素も、さらに分解していけば、もっと改善するヒントを見つけることができるでしょう。
店舗のポテンシャルとなる、適正な売上げ高を予測して、しっかり売上を確保しましょう。
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