退職金には、大きな税制優遇があります。

受取る側は老後の生活資金となりますので、まともに所得税をかけられて、半分近くを税金で持っていかれてしまうと大変なことになります。

それだけに、退職金には、他にないぐらいの優遇措置が取られています(いい換えれば、社長の手取り収入を最大化するには、退職金を絶対に利用しないとダメということです)。

しかし、社長がもらう退職金には、老後資金以外にも、事業承継の節税対策や、万が一自身が亡くなったときの会社とご遺族への資金問題といったことまで、複合的に絡んできます。

社長の退職金は、社長のものといえど、社長個人の問題ではないのです。

社長がハッピーリタイアするためには、「正しい退職金のもらい方」が必要です。

しっかり知識を身につけ、あとでトラブルにならないように備えましょう。

退職金で社長の生涯収入を最大化するプラン

退職金は、他にないほどの税優遇があります。

この特性を活かすことで、会社に残した多額のお金を、社長個人へと少ない税負担で所得移転できます。

会社と個人でどちらにお金を残した方が、税負担が少なく、キャッシュを最大化できるか?

これは役員報酬の額にもよりますが、2018年現在では、法人税の実効税率は30%程度、それに対し個人の所得税は、4000万以上の収入で45%(住民税含むと55%)にもなります。

つまり、個人の所得が多くなるほど、法人にお金を残した方が、手元のキャッシュは多くなるというわけです。

しかし、会社のお金には、基本「法人のことにしか使えない」という制限があります。

給与以外の形で持ち出しても、認められたもの以外は、後々給与課税されてしまうことになりますし、あるいは、会社から借入れて「役員貸付金」という形を取っても、

  • 会社に利息を支払って、必ず返済しなくてはいけない
  • 銀行からの資金調達の際、融資を受けられない可能性がある

といった、経済面でも経営面でも、支障をきたすことになります。

「率」で考え、会社にお金を残しても、実はとても使いづらいお金になってしまうのです。

したがって、いくら手元キャッシュが最大化になるといっても、結局のところ、そのお金を「どう社長個人へ所得移転するか?」まで考えていないと、何ら意味を持たないのです。

そこで使うのが「退職金」です。

退職金の持つ、最大の税優遇を利用することで、会社に残したお金を、最も税負担少なく、社長個人の手元へ「ごっそり」所得移転することができるのです。

退職金には社会保険料もかかりません。

逆にいえば、退職金を利用しなければ、社長の生涯手取り収入を最大化することはできないといえます。

しかし、それだけ優遇された退職金ですから、何でも許されるという訳にはいきません。

ややもすれば租税回避の温床となる退職金ですから、税務所が目を光らせています。

だからこそ、正しい知識をもって、あとで否認されないような退職金プランを設計する必要があるのです。

退職金の正しい知識が、社長の生涯手取り収入を最大化するには必須といえます。

社長の退職金額の決め方

退職金は税制の優遇があることはお話しましたが、それがために会社の利益操作に使われる一面があります。

意図的に退職金を多く支払い、会社の利益を圧縮、そして、法人税を節税。

その上社長個人は、税制の優遇を受けて所得を増やせます。

退職金を使えば、このようなスキームを簡単に組むことができます。

それを際限なく認めてしまえば、不当に税金を納めなくて良いことになってしまいます。

そこで税法では、退職金の支払いについて一定限のルールが定められています。

では適正な退職金とはいくらなのでしょう?

役員退職金の支給額に相場はある?

これは良く誤解されるところなのですが、社長の退職金はいくらに設定してもかまいません。

相場はありません。

「社長がもらいたいだけ」支給しても、問題ないのです。

退職金の税制上のメリットは、「個人」と「法人」があり、社長が高額の退職金をもらっても、「個人」の税制優遇は受けることができます。

問題なのは、「法人」です。

法人側では、高額の退職金は、「不相当に高い部分」が損金不算入とされることがあります。

では、いくらまでなら損金算入できるのでしょう?

これについて、税法では明確な定めはありません。

条文では「その役員がその会社の業務に従事した期間、その退職の事情、同業種同規模法人における役員退職金の支給状況に照らし、その退職した役員に対する退職給与として相当であると認められる金額」と定めているに過ぎません。

これでは、何だかわかったようなわからないような、実務レベルでは退職金額を算出することができません。

適正な退職金額の決め方

そこで、次の計算式で退職金額を求めるのが、実務では一般的です。

・役員退職金支給額=最終報酬月額×在任年数×功績倍率(+功労加算)

最終報酬月額とは?

最終報酬月額とは、役員の退職時の給与の額です。

余談ですが、「事前確定給与届出」を使った、年金復活プランや社会保険料削減スキームがありますが、極端に役員報酬を低く設定している場合は注意が必要です。

国税不服審判所は、役員の最終報酬月額を

  • 最終報酬月額は、通常は退職した役員の在職期間中における報酬の最高額を示すものである。
  • 退職の直前に大幅に引き下げられたなどの特段の事情がある場合を除き、退職した役員の在職期間中における法人に対する功績の程度を最もよく反映している。

との見解を示しています。

あまりにも低い額を設定していると、退職金の損金算入額も、低くなってしまう可能性があります。

最終報酬月額が「著しく低い」場合は、「1年あたりの平均額法」が採られますが、その場合、類似する法人を参考に役員退職金の損金算入額が決められます。

しかし、一般企業では類似法人の退職金に関するデータを入手することはまずできません。

そうなると、自社の損金に認められる額も、果たして適正化どうかもわからなくなります。

これはとてもリスキーなことです。

年金復活プランや社会保険料削減スキームを実行しているなら、気をつけなければいけないポイントです。

役員在任年数とは?

在任年数は、役員として在籍した年数のことです。

従業員としての期間は含まれません。

功績倍率とは?

役員任期中の会社への貢献度を、ある一定の倍率としたものです。

功績倍率はそれぞれの会社で自由に決めて良いこになっています。

とはいえ、功績倍率を高くしすぎると損金に認められない(不相当に高い部分が)ことになります。

そのため、一般的には下記の表の倍率を用います。

功労加算

功労加算は、役員の功績によって30%を上限として加算できる金額です。

ただし、30%の功労加算は、功績倍率3.0に30%上乗せできる性質のものではありません。

この場合だと、「3.0×1.3=3.9」となり、高すぎる部分が否認されるおそれがあります。

功績倍率は、慰労金、功労金など、名目の如何を問わず、退職時に支払われるすべてを含んだものと解釈されています。

つまり、功労加算30%の上乗せしても、功績倍率が3.0以内にならなくてはいけないのです。

功績倍率に功労加算を加えるということは、功労金を二重にもらっていることになります。

したがって、30%の上乗せするなら、功績倍率は2.3にしなくてはいけないということです。

・2.3×1.3=2.99

退職金を計算

実際に退職金を計算してみます。

<条件>

  • 役員報酬:200万円
  • 役員在任期間:30年
  • 功績倍率:3.0倍

<功績倍率での計算式>

・200万円×30年×3.0=1億8000万円

1億8000万円までは、会社の損金算入可能額になります。

最終年の役員報酬が著しく低い場合

社長が一線を退いて非常勤取締役になっていた場合や、あるいは退職時の報酬月額が役員在職中の職務内容からみて、著しく低い場合は、上記の「功績倍率法」ではなく、「1年あたりの平均額法」で退職金額を求めます。

「1年あたり平均額法」とは、類似する法人を数社選定し、その平均的な1年あたりの退職金額をもとに、適正な退職金額を求めるという方法です。

・退職金相当額=比較法人の1年あたり退職金平均額※×勤続年数

比較法人の1年あたり退職金平均額=役員退職金÷在職年数

比較法人の1年あたり退職金平均額=比較法人の1年あたり退職金合計の額÷比較法人数

一般企業では、類似業種の退職金に関する詳しいデータを入手することはできません。

よって、実務上は公表されている退職金支給額に関するデータで、他社との比較を行うことになります。

退職金を増やすため、意図的に役員報酬を増額した場合は?

平均功績倍率方式で計算する場合、「最終報酬月額」が高いほど、退職金を高く設定できます。

しかしそのために、退職に合わせて急激に役員報酬を上げてしまうのはリスクがあります。

それまでは100万円だった人が、突然200万円に役員報酬を上げるのは不自然です。

これがもし、税務調査で「退職に合わせて最終報酬月額を上げた臨時的昇給」と指摘されれば、一部を過大と否認されるかもしれません。

また、役員報酬を上げれば、それ自体が職務内容に対して適切かを問われますので、もし「不相当に高い役員報酬」となれば、その額が損金不参入となってしまうリスクも含んできます。

否認のリスクを避けるためには、退職に合わせて、中長期の計画で役員報酬を設定する必要があります。

社長個人の税制優遇

退職金には、他にないほど税の優遇が3つあります。

1つ目は、退職所得控除です。

年数が大きくなるほど、非課税部分(控除部分)が増えるようになっています。

2つ目は、2分の1課税です。

役員の在職期間が5年超だと、課税所得が2分の1になります。※5年以下は適用なし。

この2分の1課税が、とても大きいのです。

課税の対象が半分になるのは、退職金ぐらいしかないでしょう。

3つ目は、分離課税です。

他の所得と分離して税金が計算されるので、ここでも税額が少なくなります。

年収が1800万円超の人だと、もし分離課税されないで、総合課税されると、給与との総支給で50%(所得税・住民税)で持っていかれることになりますので、分離課税もメリットです。

個人の納税額を計算してみます

それでは先ほどの条件で、個人の側でどれだけの税制優遇を受けられるか計算してみます。(千円未満切上)

<条件>

  • 役員報酬:200万円
  • 役員在任期間:30年
  • 役員退職金:1億8000万円
1・退職控除額

20年以下の部分:40万円×20年=800万円

20年超の部分:70万円×10年=700万円

800万+700万円=1500万円

2・課税退職所得金額(2分の1課税)

18000万円-1500万円×1/2=8250万円

3・退職所得の源泉徴収額(分離課税)

所得税:8250万円×45%-479.6万円=3233万円

復興特別所得税:3232.9万円×2.1%=68万円

4・その他の税金

住民税:18000万円×10%=1800万円

5・手取り額

18000万円-(3233万円+68万円+1800万円)=12899万円

実質税率:28.3%

4000万円超の所得税・住民税が55%ということを考えれば、実質税率28%がどれだけ低いかがわかります。

役員退職金は分割支給できる

役員退職金は、一括ではなく、2~3年であれば分割支給することができます。

この場合の会計処理は、

  1. 支給する年に全額を損金に計上し、毎年の支払い時には、お金だけ支給し、未払い金として処理する
  2. 事業年度支払うごと、その年の損金に計上する

2つの方法があります。

ただし、分割支給の理由が「利益調整」ではなく、資金繰りの都合がつかないなど、分割にする合理的な理由が必要です。

資金繰り難による分割支給でも、1年目は資金繰りが苦しかったから1000万円、しかし、2年目は売上が回復したので3000万円の支給などと、株主総会で追加支給を決議しても、税務上は損金として認められません。

その場合、利益調整とみなされ、寄付金または役員賞与とみなされます。

分割して受取る場合の個人の税金は、3年を超える長期間だと、「退職のための一時金」ではなく、「退職年金支給」ではないかということになり、退職所得の優遇ではなく、雑所得して課税されるリスクがあります。

2~3年の短期間の支給の場合、退職金の税優遇は受けられます。

過大退職金として否認された場合

税務署に役員退職金が否認されると、「過大な部分」が、法人での損金不算入になります。

先ほどの例の退職金の場合、18000万円が適正であれば、18000万円全額が損金に認められます。

しかし、仮に18000万円支給した内の、9000万円部分が過大と判断されたら、損金算入額は9000万円になり、残り9000万円は役員賞与となって、損金不参入になります。

そして、損金不算入部分の9000万円に対して法人税がかかります。

役員個人に対しては、退職金の税制優遇は受けられます。

社長の退職金支給の準備と手続き

役員退職金の支給については、会社法により、定款を規定するか、または株主総会での決議が必要と定められています。

ただ現実では、詳細まで株主総会で決めることは少ないです。

そこで実際は、役員退職金の額、支給時期、支給方法などを取締役会に一任するのが一般的です。

退職金の決定プロセス

ます株主総会で支給することを決めます。

その際、退職金額も一緒に決めることができます。

また。株主総会で支給することだけを決め、退職金額については、取締役会に委任することもできます。

役員退職金支給規程がある場合

役員退職金規定をあらかじめ定めておくことで、無用のトラブルや後々の税務調査に対応することができます。

ます、役員退職金規定があると、その規定に基づいて、役員の退職金額を求めることになります。

功労加算も規定があれば、支給することができます。

このように役員退職金規定があることで、金額の根拠が明確になります。

そすれば、税務調査で金額の根拠を聞かれた場合でも、客観的基準に基づいて支給したと、はっきりと答えられます。

もし、何の根拠もなく取締役会で決めたのなら、回答に窮することになります。

役員退職金規定がない場合

役員退職金規定がない場合は、退職する役員の功績や慣例を基に決めることになります。

しかし、明確な基準がないため、税務調査で指摘されれば、「お手盛り」と判断されてしまうおそれがあります。

さらに、研鑽に根拠がないと、他の株主や取締役から不満が出たり、場合によっては、高額の退職金支給で、会社に損害を与えたと訴えられかねないのです。

役員退職金に規定がないと、「何を根拠に算出した金額か?」が問題となって、トラブルを引き起こしやすいといえます。

規定がなくても退職金は支給できますが、それによるトラブルが起こるリスクを考えると、面倒でもしっかり用意しておきましょう。

社長の死亡退職金

社長が、万が一亡くなってしまったときは、死亡退職金を遺族に支払うことができます。

死亡退職金を受取った相続人には、「みなし相続財産」として死亡退職金が相続税の対象になります。

しかし、死亡退職金には

・500万円×相続人の数

という非課税枠が適用されます。

また、配偶者の場合は、法定相続分までは非課税となります(子がいれば2分の1まで)。

これも役員退職金規定を定めておくメリットなのですが、役員退職金規定で、死亡退職金の受取人を指定することができます。

受取人を指定された死亡退職金は、遺産分割協議の対象にはなりません。

それに対し、受取人を指定せず、「法定相続人」とすることもできます。

ただし法定相続人で指定すると、遺産分割協議が必要なときには、もめる原因となってしまいます。

お金を残したい人がいる場合には、役員退職金規定で受取人を指定しておきましょう。

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会社の連帯保証から社長のご家族を守る方法

非課税の弔慰金も支給できるようにしておく

社長が死亡した場合、弔慰金を支払うことができます。

弔慰金は死亡退職金とは違い、受け取る側は、下記の限度額までは「非課税」で受取ることができます。

  • 業務上死亡の場合:最終報酬月額×36カ月
  • 業務外死亡の場合:最終報酬月額×6カ月

つまり、限度額の範囲内であれば、死亡退職金より弔慰金の方が節税になるということです。

会社側としては、社会通念上、相当と認められる弔慰金は、支払った事業年度の損金に計上できます。

弔慰金を支給することで、ご遺族の手元に残るお金は増えます。

ですから、死亡退職金とは別に、弔慰金の支払規定を定めておいた方がいいでしょう。

税務調査で見られる3つのポイント

退職金の税務調査では次の3つの基準を見られます。

1・形式基準

退職後も実質的に会社経営の重要な地位にいるではないかの判定です。

いわゆる「みなし退職」の問題です。

退職したのは形だけで、実質退職してない状態なら、「退職金として認められない」となります。

否認される例
  • 売上げ、仕入れ等の営業活動について部下に指示している
  • 役員の人事や給与の査定に関与している
  • 新規契約や取引先の選定など経営に関与している

2・実質基準

取締役会及び株主総会が適正に開催されているかの判定です。

退職金の支給には「株主総会・取締役会の決議」が必要です。

しかしながら、多くの中小企業では、形式上したことにしているだけで、実際は開催されてないことがほとんどです。

実はここが問題点で、株主総会・取締役会の決議を虚偽と調査官に指摘されると、退職金が否認されてしまいます。

たとえば取締役は、退職金の支給と金額を決める、株主総会でも取締役会でも、出席することになります。

その取締役が知らないとなると、オーナー社長が手順を踏まないで勝手に決めたということです。

それってお手盛りの退職金で、退職金支給額に正当な根拠がありません。

そうなると、否認のおそれも出てきます。

形だけでなく、実際に開催して、その証拠も残しておくのがベストです。

もし指摘されれば、退職金は否認、会議事録などの仮装で、重加算税のペナルティを受ける可能性もあります。

3・金額基準

退職金が類似業種と比較して不当に高くないかの判定です。

いくらが退職金として適正な額かは、はっきりとした基準がないのげ現状です。

しかし一般的には、下記の「平均功績倍率法」で算出します。

・平均功績倍率法=最終報酬月額×在職年数×功績倍率(+功労加算)

もし、会社の算定した退職金額が過大と判定されたら、通常は、類似業種法人の平均功績倍率法で求めた金額を用いて、適正金額を求めます。

その金額と、会社が計上した金額との差額が、「過大退職金」として否認されます。

退職金が否認された場合

退職金が否認されるパターンは、「過大退職金」として否認される場合と、「退職金の支給そのもの」を否認される2種類です。

法人側
過大退職金として否認された場合

支給された退職金のうち、「過大な部分」だけが損金不算入にあり、追徴課税されます。

退職金そのものを否認された場合

退職金のすべてが役員賞与となり、損金不算入で追徴課税されます。

個人側
過大退職金として否認された場合

ペナルティはなし。修正の必要はありません。

退職金そのものを否認された場合

退職の事実がありませんので、退職所得の税優遇が受けられなくなり、所得税が一気に増えます。

株価への影響
過大退職金として否認された場合

過大と認定された金額だけ利益が増え、株価が上がる可能性があります。

退職金そのものを否認された場合

退職金全額が利益に計上されるので、株価への影響も大きくなります。

退職の全否定は法人も個人も重いペナルティがある

「過大退職金」の否認ならまだましなのですが、仮に「退職金そのもの」を否認されてしまうと、法人側では役員賞与として、退職金全額が損金不算入となり、追徴課税。

さらに仮装や隠ぺいがあったとすると、重加算税、過少申告加算税、延滞税などもかかってきます。

個人側では、退職所得の優遇もなくなり所得税は増え、重加算税や延滞税がかかるケースもあります。

その結果、会社の資金繰りはズタボロ、社長個人の老後資金も手元から消えてしまいます。

このような最悪な結果にならないよう、しっかり対策をしておきましょう。

退職金は現金以外の現物支給もできる

退職金は現金以外でも支給できます(会社の財産で、不動産、生命保険、ゴルフ会員権など)。

現物支給の場合、現金の流出がありませんので、その分、「銀行からの評価が下がりにくい」というメリットもあります。

これは後継者にとっては大きなメリットです。・

ただし、現金以外で支給するときは、次の3つの注意点があります。

評価額の算定

不動産であれば、議事録で評価額を明確にしておかなければいけません。

価格の評価も、恣意的でないことを証明できるように「客観的な価格」で算定しましょう。

評価額と帳簿価格の差

現物の評価と帳簿の価格で差があれば、損益が発生します。

税務上問題にならない、会計処理が必要です。

源泉徴収は現金で行うこと

個人が手持ちの現金で納税するか、役員退職金の一部を現金支給として源泉徴収額に含ませるの、いずれかの方法で納税しなくてはいけません。

社宅で手取りを増やす退職金スキーム

社長は、自宅を会社に購入してもらい、その建物を勇退時に退職金として支給して受け取ることもできます。

通常、社長が自宅を持つ場合

  • 火災保険
  • 固定資産税
  • ローンの支払利息
  • 建物の修繕費

は、すべて自前の持ち出しになります。

しかし、会社の持ち物の社宅ならば、上記の費用が会社の経費として計上することができます。

さらに家賃は、相場の1割~2割程度の負担で住むことができます(タダで住むと給与課税されます。また、広い面積の建物だと家賃負担も高くなります)。

つまり、現役時は安い家賃で、建物維持の費用も会社が負担してくれ、勇退時には、退職金として受け取って(退職金の税優遇を受けて)、そのまま住むことができるのです。

これは社長ならでは、超財テク法といえます。

社長の自宅を社宅にしてキャッシュを最大化する全手法

2社から退職金を受け取る場合

2社から退職金を受け取るときのポイントは

  1. 先に退職する会社から、次の会社を退職するまでの期間が4年以上空いている
  2. 1社につき在任期間が5年以上ある

ことです。

退職金が有利になるのは、「退職所得控除」と「2分の1課税」があるからです。

複数の会社から退職金を受け取るときは、「退職所得控除」と「2分の1課税」が適用になるかをみなくてはいけません。

同一年に2社以上から退職金を受け取る場合

役員退職金を受け取るすべての会社のうち、最も長い勤続年数で退職所得控除を計算します。

それぞれの会社で、別々に退職所得控除は計算できません。

No.2735 同じ年に2か所以上から退職手当等が支払われるとき

4年以内に他の退職金の支給を受けている場合
  1. その年の退職金の勤続年数で計算した退職所得控除
  2. 重複部分期間を勤続年数として計算した退職所得控除
  3. 1-2=今回の退職所得控除

要するに、4年前に受けた退職所得控除については、今回の計算では含まないということです。

2分の1課税について

2分の1課税については、平成25年の改正により、勤続年数が5年以下の場合は適用されなくなりました。

2分の1課税が受けられないとなると、税額は単純に倍になりますので、勤続年数が5年以上になるように計画的にしておきましょう。

社長が会長になった場合の分掌変更の退職金

社長が一線を退いて、後継者に会社を任せる場合、「すぐには不安」ということ、一旦会長になるという方法が採られることがあります。

社長が会長などに役職が変わること「分掌変更」といいます。

まずは、社長を退任して退職金を受取り、引き続き会長として会社に出社されるというパターンです。

事業承継問題が大きくなっている昨今では、分掌変更で事業承継を段階的に行う社長も増えてくるでしょう。

このとき、退職金の扱いは税務上どうなるかというと、

  1. 事実上退職している場合→退職金として認められる
  2. 事実上退職してない場合→退職金として認められない

となります。

事実上退職しているかの判断は、法人税基本通達で次の3つの例が挙げられています。

<法人税基本通達9-2-32(役員の分掌変更等の場合の退職給与)>

法人が役員の分掌変更に際して、その役員に対し退職給与として支給した給与については、その支給が、例えば次に掲げるような事実があったことによるものであるなど、その分掌変更等によりその役員としての地位又は職務の内容が激変し、実質的に退職したと同様の事情にあると認められることによるものである場合には、これを退職給与として取り扱うことができる。

① 常勤役員が非常勤役員(常時勤務していないものであっても代表権を有する者及び代表権は有しないが実質的にその法人の経営上主要な地位を占めていると認められる者を除く。)になったこと。

② 取締役が監査役(監査役でありながら実質的にその法人の経営上主要な地位を占めていると認められる者及びその法人の株主等で使用人兼務役員とされない役員となる全てを満たしている者を除く。)になったこと。

③ 分掌変更等の後におけるその役員(その分掌変更等の後においてもその法人の経営上主要な地位を占めていると認められる者を除く。)の給与が激減(おおむね50%以上の減少)したこと。

ただし、この通達は、あくまで事例にしか過ぎません。

最終的には「事実上、どれくらい経営の重要なポジションにいるか?」という、実態でみられることになります。

では、どのようなことを行っていいれば、「経営の重要なポジションにいた」となるのでしょう?

次のような例に当たる場合は、「事実上退職してない」とみなされる可能性が高くなります。

  • 銀行との融資交渉に同席している
  • 従業員、役員の異動や採用、給与査定など、人事に関わっている
  • 取引相手との値段や取引条件の交渉に関わっている
  • 売上、仕入れなどの営業活動に対して部下に指示している

本当に怖い退職の否認

「事実上、退職をしてない」と否認されてしまえば、退職金全額が否認されてしまいます。

個人の税優遇も、会社の損金算入もなくなりますので、おそろしく税金を課せられることになります。

ちなみに、「事実上退職したかどうか何てバレない」と考えるのは甘いです。

身内だけならまだしも、取引先や従業員まで口裏合わせることは不可能なので、実態調査をされてしまえば、何らかの形跡が出てきます。

もし、否認をされた場合に不服があるなら、国税不服審判所で裁判で争うことになります。

その場合勝つかどうかは別として、一旦は税務署から求められた税額を納めなくてはいけません。

納めないで放っておくと、滞納(延滞税も発生)で差押えをされてしまうからです。

税金を納めてから、審判所で争い、勝てば還付金という形で返してもらいます。

要するに、退職の事実を否認されてしまうと、裁判で勝っても負けても、それに伴う多額のお金を用意しなくてはいけないということです。

社長から退職したなら、税務署から否認されないよう、実質会社から退職しないと、とんでもなく痛い目にあいます。

役員への退職金の会計処理

役員へ退職金を支給した場合は、特別損失で処理できます。

役員への退職金は、毎期発生するものでなく、数年に一度あるかというようなタイミングで発生する性質のものです。

特別損失の定義とは、「反復経常的に行われる企業の営業活動や金融活動以外から生じた、臨時的・偶発的な損失」のことをいいます。

まさに、役員退職金に当てはまるケースです(逆に、役員への退職金が毎年発生するなら特別損失に計上できないともいえます)。

これに対し、従業員への退職金は、販管費で処理するか特別損失で処理するかの判断がわかれます。

ポイントは次の2つです。

  1. 従業員の退職が定期的にあるか
  2. 退職にあたって退職金を支払っているか

従業員の退職が定期的になく、退職しても退職金を支給しない会社は、特別損失に計上しても問題ないと考えられます※判断に迷ったときは、管轄の税務署に尋ねてみましょう。

特別損失に計上しないといけない理由

特別損失で処理する理由は、銀行融資に影響が出るからです。

銀行融資の格付けでは、損益計算書の営業利益がスコリング評価の項目の対象になっていて、しかもその配点は高いです。

営業利益が対象になっている項目
  1. 債務償還年数=有利子負債÷(営業利益+減価償却費)
  2. インタレスト・カバレッジ・レシオ=(営業利益+受取利息+配当金)÷支払利息・割引料
  3. キャッシュフロー額=営業利益+減価償却費

もし営業利益でなく、販管費の人件費で処理してしまうと、営業利益が小さくなってしまいます。

すると、債務償還年数、インタレスト・カバレッジ・レシオ、キャッシュフロー額の数値が悪くなり、必然的に点数も低くなるというわけです。

ちなみに、債務償還年数、インタレスト・カバレッジ・レシオ、キャッシュフロー額だけで、配点割合は42%にもなります。

営業利益を高く保っておくことが、格付けに大きな影響を及ぼすことがわかります。

役員退職金は、一般従業員に比べ高額になります。

銀行融資に影響の少ない会計処理を選びましょう。

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退職金で社長の手取り収入がガッポリ増えるスキーム

日本の税制では、個人が所得を得るには、特例を除いて必ず所得税がかけられます。

収入が1800万超の人にでもなれば、その税率は40%(住民税を含めば50%)にも及びます。

最近ではこれに、重い負担の社会保険料が加わります。

がんばって稼いでも、給与の半分以上は税金や社会保険料で持っていかれます。

つまり、社長個人が使うお金は、所得税・住民税・社会保険料を負担した後のお金だということです。

たとえば1800万円給与収入がある社長が、個人マネーで100万円の貯金するケースを考えてみましょう。※ここではややこしくなるので、社会保険料は抜きにして計算します。

役員報酬が年間1800万円超の社長の税負担は、50%です(住民税含む)。

したがって、社長が個人マネーで100万円貯金したいなら、会社が用意すべき負担前の役員報酬は200万円です。200万円×(1-50%)=100万円

逆にいえば、会社で100万円貯めておくなら、仮に法人税が実効税率30%だとすると、会社で用意するキャッシュは143万円で済むことになります。※143×(1-30%)=100.1万円

繰り返しますが、社長が個人マネーで100万円貯金するなら、役員報酬で200万円なくてはいけません。

その差、57万円です。

お金を貯めることだけ考えるなら、法人税の率の方が低いので、会社でキャッシュを貯めた方が、断然早く多く貯められることはお分かりいただけたかと思います。

しかし、ここで問題があります。

会社のお金は俺の金とばかりに、勝手に個人へ所得移転はできません。

役員報酬以外で引き出す場合、役員貸付金など、一定の制限がかかり、個人で自由に使えないのです。

役員賞与にしても、事前確定給与届で以外で受取る場合は、経費に認められず、法人税がかかります。

そう、結局のところ、税率では会社にキャッシュを残した方が良いことはわかっていても(お金がたくさん残る)、それをいかにして税負担少なく社長個人へ所得移転するかを考えておかないと意味がないのです。

そこで使うのが、退職金です。

この記事でお話してきたように、退職金には大きな税優遇があります。

個人の税優遇としては、退職金が最大です。

この税優遇を利用して、会社に残したお金を社長個人に所得移転します。

そうすることで、最も少ない税負担で、最も大きな金額を、社長のポケットマネーに移転できるのです。

いい換えれば、退職金税制を利用しないと、社長の生涯手取り収入は増えないということです。

この記事の中でご説明したように、1億8000万円の退職金を受け取るときの、所得税・住民税の合計は約5000万円です。

もし、1億8000万円を退職金の税優遇なしで受取るとしたら

・1億8000万円×55%-479万6千円=94204000

で、9420万円税金を支払わなくてはいけません。

しかし、退職金でなら、4400万円も少なくて済みます。

社長の手取り収入にどれだけ違いがあるかお分かりいただけたかと思います。

まとめ

はじめにも書きましたが、退職金は社長のものであって、社長のためだけのものではありません。

一個人で考えるには、その影響はあまりにも大きいです。

自分自身はもちろんのこと、会社、後継者、ご家族まで影響が及びます。

間違った退職金プランで、誰かが泣く破目になれば、金額が金額なだけに、大ダメージです。

しっかり知識を身につけ、ハッピーリタイアに備えましょう。

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