法人保険は節税目的で使われることが多い金融商品です。

しかし、ただ単に「利益が出たから加入した」では、無駄なキャッシュアウトが起きるだけで、返って経営資源の無駄遣いになります。

会社のお金の使い道には、経営者の戦略意図が必要です。

意味もなくお金を眠らせてしまっては、会社の財務体質は弱くなり、成長機会も失います。

節税という甘い誘惑に惑わされないで、しっかりした目的を持って、お金の運用を行いましょう。

節税にある2つのタイプ

節税には、大きくいって繰延べ型と恒久型の2つのタイプがあります。

恒久型とは、節税効果が永遠に続くタイプのものをいい、消費税の課税取引や経費と認められるグレーゾーンなどがこれに当たります。

消費税課税取引に該当すれば、その取引の消費税分は節税になりますし、グレーゾーンの経費が正当と認められれば、以後その経費分はずっと節税できます。

これに対し繰延べ型とは、その名通り、税金の支払いを1年後、10年後と繰り延べているタイプをいいます。

支払を繰り延べているだけなので、本当の意味では節税とはいえません。

法人保険が、まさにこの繰延べ型の節税商品です。

ただの繰延べでも実は価値がある

しかし、ファイナンス理論からいえば、「今日の100円の価値は1年後の100円より高い」となりますので、法人保険に繰延べ効果しかないとはいえ、税金の支払いを遅らせるだけでも、理論上は節税価値はあることになります。

なぜ、同じ100円でも、今日の100円と1年後の100円を比べると、今日の100円の価値の方が高いか?

これを疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。

それは、「割引率」という考えがあるからです。

たとえば、「目の前にある100円」と「1年後にもらえる約束の100円」とでは、あきらかに目の前にある100円の方が価値が高いです。

すぐに使える100円は、オヤツだってジュースだって買うことができますが、1年後の100円は使えるまでに、1年間という期間を経なくてはいけません。

このタイムラグが、今日の100円と未来の100円の価値をわかちます。

そこで登場するのが利率です。

お金の支払いを1年間待ってもらう代わりに、利息をつけてお渡しするという考えです。

1年で10%なら110円、20%なら120円。

この差額が、あなたの見合う価値に折り合うところで、その利率が決まります。

仮に30%なら、1年後に130円にしてお金をくれるなら、待ってもいいよ、ということです(30%はリスクに見合う対価ともいえます)。

逆にいえば、1年後の130円が今日の100円の価値ともいえるわけです。

130円を30%で割引けば、当たり前ですが100円になりますでしょ。

このファイナンス理論に基づけば、税金の支払いを遅らせることも、意味があるわけです。

今日の法人税の100万円より、10年後の100万円の価値は低いわけですから。

※ただし、保険会社もタダで運用しているわけではありません。

しっかり運用手数料は取られていますので、繰延べ効果がコストに見合うものか、じっくり検証が必要です。

その節税、意味ある?

しかしです。

法人保険に加入するということは、毎年保険料という形でキャッシュが出ていきます。

これもまたファイナンス理論でいけば、10年なら10年の期間、手元にある価値の高い100円を寝かせておくことになるわけです。

なぜ手元のお金の価値が高いのか?よーく思い出してくださいね。

それはすぐに自由に使えるお金だからです。

保険に加入するより、高いリターンで投資収益があるなら、わざわざ保険で10年お金を寝かせておく理由は見当たりません。

それなら、毎年30%という法人税を支払ってでも、投資案件を実行できる備えをした方が会社は大きく成長するかもしれません。

ですが、法人保険に加入することで、その投資機会を失い会社の成長も遅れます。

あるいは、借入があるなら、その支払いを繰り上げですることで、利息の負担を減らすことができます。

借入利息の負担が減れば、「インタレスト・カバレッジ・レシオ」の倍率は減って、金融機関からの評価は上がります。

さらに、税引き後営業利益も増えるので、資金調達の面において、とても有利に働きます。

無計画な節税が資金調達を狂わす理由

しかし、法人保険でキャッシュアウトしていれば、こういった施策を打てないこともあり得ます。

節税とは、手元キャッシュを最大化して、将来の危機や投資に備えておくためのものです。

本来必要なはずの施策が節税で阻害されるのであれば、何が何やら、何のための節税かということです。

ですから、最初にお話しした通り、会社で使うお金は、経営者の戦略意図が必要なのです。

法人保険に加入する意味

何だか保険の悪口みたいになってしまいましたが、保険は保険で必要です。

とくに、会社が大きくなるほど、その必要性は高まります。

保険の持つ、換金性の高さがその一つです。

たとえば事業承継の際、後継者に経営権を渡したいなら、保険を使って後継者以外の人に代償分割でお金を渡すことは重要です。

それが会社の経営権で、もめない手立てになるからです。

また、繰延べであっても、保険で資金を貯めておくことでのメリッもあります。

保険は保険でありながら、多用な使い方ができます。

解約返戻金のあるタイプなら、赤字や運転資金が必要なときに、法人保険を解約して補填や資金調達に使えます。

契約者貸付けという制度もそう。

契約者貸付を利用すれば、解約返戻金の80~90%の範囲でお金を借りることができます。

ただし、保険は本来万が一に備えるためのものなので、資金調達を目的にするのは間違った施策です。

資金調達は、あくまでサブ的な役割です。

まとめ

法人税の支払いは、目の前の痛みです。

これを回避しようとするのは、ある意味人間の本能です。

人は目に見えない痛みには鈍感ですが、実感できる痛みには敏感です。

それゆえ、節税に走るわけですが、しかし、法人保険を使った節税は、実は見えないところで大きな損失を起こしていることもあるのです。

誤解をしないでいただきたいのですが、法人保険に加入するなということではなく、経営者が視るべきは、一段上の俯瞰した戦略ということです。

会社の成長戦略や財務基盤を考えた上で、節税が必要ということであれば、積極的に法人保険でも使って節税すべきでしょう。

しかし、節税だけを考えてなら、まったく意味のない施策(それどころか損しているだけの)かもしれないのです。

会社のお金の使い道は、経営者しか決められません。

活きたお金を使って、会社を100年生き残る基盤にしましょう。

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