社長の持ち家を会社に売却することで、社宅として安い家賃で住むことができます。

持ち家を売る以外でも、会社が社長の自宅を社宅として建てれば(会社名義)、会社に家賃を支払うことで社宅として住むことができます。

家賃は一部負担が必要ですが、自宅を社宅にする経済的メットは大きく、個人で購入すれば当然自己負担になる

  • 固定資産税
  • 火災保険料
  • 建物修繕費

を会社経費として支払うことができます。

会社にしてみても、その分法人税を圧縮できます。

※社長の持ち家を、会社に貸して、社長が社宅として住む場合は、給与とみなされますので、混同しないようにしましょう。

持ち家を会社に売る場合

会社が社宅用に家を購入する場合は、

  • 借入金の金利
  • 建物の減価償却費
  • 固定資産税
  • 管理費、など

を経費にできます。

では、社長の持ち家を会社に売却した場合の価格はいくらに設定すべきでしょう?

会社とオーナーである社長個人の取引には、「同族会社の行為計算の否認」という問題が出てきます。

そこで、第三者が見ても納得できる価格で、売却代金を設定する必要がでてきます。

所得税基本通達 59-3 (同族会社等に対する低額譲渡)

山林(事業所得の基因となるものを除く。)又は譲渡所得の基因となる資産を法人に対し時価の2分の1以上の対価で譲渡した場合には、法第59条第1項第2号の規定の適用はないが、時価の2分の1以上の対価による法人に対する譲渡であっても、その譲渡が法第157条《同族会社等の行為又は計算の否認》の規定に該当する場合には、同条の規定により、税務署長の認めるところによって、当該資産の時価に相当する金額により山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額を計算することができる。

引用元:法第59条《贈与等の場合の譲渡所得等の特例》関係

土地の評価方法

土地の評価方法には

  1. 売買取引価格(実勢価格)
  2. 公示価格
  3. 路線価
  4. 固定資産税評価額

の4種類があります。

すべて同じ土地の評価額ですが、高い順から

  1. 実勢価格
  2. 公示価格(実勢価格の90%)
  3. 路線価(実勢価格の80%~70%)
  4. 固定資産税評価額(実勢価格の70%~60%)

になります。

実勢価格以外の土地の評価額は、国が発表している公的価格です。

いずれにしても、税務署は「適正価格」での売買を求めます。

会社に売る土地の価格が、高すぎても安すぎても、指摘を受ければ、次のような事態が想定できます。

会社が役員より安く買った場合

役員が2分の1未満での価格で会社に譲渡した場合、実際の価格にかかわらず、時価で譲渡したとみなされ、譲渡所得が課税されます。

会社が役員より高く買った場合

会社側は適正な額を超えた部分について、役員賞与があったとし、損金不算入。役員側は、適正な時価を超えた部分について、役員賞与があったとされ給与課税されます。

このような状況を招かないためにも、専門家の意見を聞いて、問題の起こらない価格で会社に売却しましょう。

社長所有不動産を時価より高く購入した場合

①会社側の税務

会社が社長から不動産を時価よりも高く購入した場合、会社においては、時価で社長所有の不動産を買ったものとして法人税を計算します。その不動産の時価が取得価額となり、購入価額のうち時価を超える部分の金額は、不動産を譲渡した社長に対する役員給与(原文ママ)とされます。

なお、この役員給与とされた額については、会社側で所得税の源泉徴収が必要になります。

②社長側の税務

不動産を譲渡した社長においては、譲渡代金と不動産の時価との差額が、会社から受けた役員給与として課税されます。

引用元:同族会社・オーナー社長間の不動産取引に係る税務上の注意点について(公益社団法人 全日本不動産協会HP)

建物の評価

ここでも基準は、売却価格が安すぎても高すぎても、税務署から突っ込みを入れられる可能性が高くなります。

No.4602 土地家屋の評価(国税庁HP)

【追記】会社に売却する土地・建物について

一般的には会社への譲渡は時価になります。

・会社に売却する建物の価格(時価)-(建物の取得価格(減価償却分を引く)+売却の諸経費)

で譲渡益が計算されます。

譲渡益が0円なら課税はされません。

しかし、取得価格が2000万の土地を、会社に2000万円で売ったような場合で、現在の時価の方が高いケースは問題です。

たしかに、売値と取得価格が同じで、差し引き0円ですが、土地の時価が5000万円に値上がりしているなら、「実際には5000万円で売った」として、課税される可能性があります。

このようなトラブルを避けるためには、管轄の税務署で相談した方がいいでしょう。

社長が会社に支払う「適正」家賃を決める方法

新たに取得した場合でも、持ち家を会社に売却した場合でも、会社名義となった住宅を、社宅として使うには、社長から所得税基本通達で定められた社宅家賃の「賃貸料相当額」を徴収しなくてはいけません。

家賃を支払わず、タダで住んでしまうと、給与とみなされ課税されてしまいます。

では、「賃貸料相当額」とはいくらになるのかというと、その家賃は「小規模住宅」と「小規模住宅でない場合」で計算方法が変わります。

小規模住宅の場合

次の①から③の合計額が賃貸料相当額とされます。

①(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%
②12円×(その建物の総床面積(平方メートル)/(3.3平方メートル))
③(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%

小規模な住宅とは、法定耐用年数が30年以下の建物の場合には床面積が132平方メートル以下である住宅、法定耐用年数が30年を超える建物の場合には床面積が99平方メートル以下(区分所有の建物は共用部分の床面積をあん分し、専用部分の床面積に加えたところで判定します。)である住宅をいいます。

小規模な住宅でない場合

役員に貸与する社宅が小規模な住宅に該当しない場合には、その社宅が自社所有の社宅か、他から借り受けた住宅等を役員へ貸与しているのかで、賃貸料相当額の算出方法が異なります。

自社所有の社宅の場合

次の①と②の合計額の12分の1が賃貸料相当額になります。

①(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×12%

ただし、建物の耐用年数が30年を超える場合には12%ではなく、10%を乗じます。

②(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×6%

小規模な住宅に当たらない場合は、ある程度の家賃を取らないと経済的利益について課税されます。

社宅が「豪華社宅」に当たる場合

役員に貸し付ける社宅が、社会通念上一般に貸与されている社宅と認められない、いわゆる豪華社宅である場合は、上述の算式の適用はなく、時価(実勢価額)が賃貸料相当額とされます。

いわゆる豪華社宅であるかどうかは、床面積が240平方メートルを超えるもののうち、取得価額、支払賃貸料の額、内外装の状況等各種の要素を総合勘案して判定します。

なお、床面積が240平方メートル以下のものについては、原則として、プール等や役員個人の嗜好を著しく反映した設備等を有するものを除き、小規模住宅、または小規模住宅でない場合によります。

社宅家賃をシミュレーション

では、所得税基本通達で定められた「賃貸料相当額」がいくらになるのか計算してみます。

<条件>取得価格:建物3000万円 土地1800万円

  • 木造住宅:120㎡
  • 固定資産税評価額:建物 500万円
  • 固定資産税評価額:土地 300万円

500万円×0.2%=10000円

12円×(120㎡÷3.3㎡)=436円

300万円×0.22%=6600円

10000円+436円+6600円=17036円

社長が負担すべき1カ月の家賃は、何と17036円です。

土地建物合わせて4800万円の物件に、わずか17036円の負担で住めます。

これは適正に求めた賃料とはいえ、ギリギリを攻めた家賃になりますので、余計な突っ込みを入れられないためには、もう少し負担を多めにしとくなど対策しておいてもよでしょう。

とはいえ、破格の家賃であることに間違いはありません。

持ち家を会社に売却して、手取り収入を最大限にする方法

持ち家を会社に売却して社宅とする場合は、一括ではなく分割で売却代金を受け取ることで、税金と社会保険料の負担を減らし、社長の手取り収入を増やすことができます。

一括で何百万、数千万のお金を用意するのは現実的ではありませんし、仮に一括で用意できても、その恩恵は1年で終わってしまいます。

しかし分割なら、分割した年数分だけ手取りを増やすことができます。

たとえば、800万円で会社に持ち家を売却し、5年分割で1年あたり160万円ずつ受取ったとします。

そのときの社長の役員報酬は900万円です。

これから5年間は160万円を毎年受け取ることができますので、役員報酬を160万円下げて740万円にします。

すると、ご覧のような結果になります。

対策前と対策後では、社会保険料と税金の負担が減り、社長の手取りは年間290292円増えます。

5年間のトータルでは、1451460円にもなります。

そしてさらに、会社にしても、人件費と社会保険料の削減効果で負担が減ります。

その額は、年間447584円、5年トータルで237920円。

これだけ会社と社長の手元にお金が残ります。

※シミュレーションは、住民税は考慮していません。※給与は40歳以下、2018年1月現在の、給与所得控除+基礎控除+社会保険料控除で計算

中古の建物も減価償却できる

土地と建物を会社に売却した際、土地は減価償却できませんが、建物は減価償却費として計上できます。

ですがこの場合、仮に木造住宅で築年数が25年と、法定耐用年数の22年を超えていた場合どうなるでしょう?

実は、築年数が耐用年数を超えていた場合でも、税法上は4年間償却できます。

法定耐用年数の全部を経過した資産は、その法定耐用年数の20%に相当する年数を耐用年数とすることができるのです。

・法定耐用年数22年×20%=4年※少数点以下切り捨て

よって建物を500万円で売却したときは、

・500万円÷4年=1年あたり125万円

減価償却費として計上でき、その分、法人税を節税できます。

中古資産を取得して事業の用に供した場合には、その資産の耐用年数は、法定耐用年数ではなく、その事業の用に供した時以後の使用可能期間として見積もられる年数によることができます。

ただし、その中古資産を事業の用に供するために支出した資本的支出の金額がその中古資産の再取得価額(中古資産と同じ新品のものを取得する場合のその取得価額をいいます。)の50%に相当する金額を超える場合には、耐用年数の見積りをすることはできず、法定耐用年数を適用することになります。

また、使用可能期間の見積りが困難であるときは、次の簡便法により算定した年数によることができます。

ただし、その中古資産を事業の用に供するために支出した資本的支出の金額がその中古資産の取得価額の50%に相当する金額を超える場合には、簡便法により使用可能期間を算出することはできません。

(1) 法定耐用年数の全部を経過した資産:その法定耐用年数の20%に相当する年数
(2) 法定耐用年数の一部を経過した資産:その法定耐用年数から経過した年数を差し引いた年数に経過年数の20%に相当する年数を加えた年数

なお、これらの計算により算出した年数に1年未満の端数があるときは、その端数を切り捨て、その年数が2年に満たない場合には2年とします。

(注) 中古資産の耐用年数の算定は、その中古資産を事業の用に供した事業年度においてすることができるものですから、その事業年度において耐用年数の算定をしなかったときは、その後の事業年度において耐用年数の算定をすることはできません。

引用:No.5404 中古資産の耐用年数(国税庁HP)

自宅売却時にかかる費用

会社に自宅を売却する各種税金と登記手数料がかかります。

  • 登録免許税
  • 不動産取得税
  • 印紙税
  • 司法書士への登記の報酬

上記は、社長個人の負担ではなく、会社の負担になります。

したがって、経費にすることができます。

住宅ローンがあるときは注意!

社長の持ち家を会社に売却して社宅にする方法は、住宅ローンの残高が少なければ問題はありませんが、ローン残高が多いと実行が困難になります。

住宅ローンは個人に対する融資です。

会社が売却先といえど、個人と法人は別ですので、融資の残りの一括返済を求められます。

その一括で返済するローン残高が、支払える額なら何の問題もありません。

しかし資金がなく、会社が融資を申し込んでお金を用意する場合はどうでしょう?

会社の融資は、「設備資金」と「運転資金」にわけられ、「設備資金」で社宅取得の資金を貸してくれません。

そうなると必然的に、運転資金で申し込むことになりますが、運転資金では大きな額の融資に応じてくれないでしょう。

したがって、住宅ローンの残高が多いと、社長の持ち家を会社に売却して社宅にする方法は実現が困難になります。

買うのが無理という場合でも、賃貸住宅を社宅として使うこともできます。

【保存版】役員のための借上げ社宅活用ガイド

社宅を退職金代わりに支給できる

会社に売却した社宅は、退職金の代わりに現物支給することもできます。

つまり、持ち家を会社に売却して社宅にする方法を選択できる社長は

  • 現役時:家賃を最小の負担にして手取り収入を増やすことができる
  • 退職時:社宅(元自宅)を会社から現物支給してもらい、そのまま住める

という2つのメリットを得ることができます。

退職金で現物支給してもらう際、社長は「時価」で買い取ることになります。

その時価が、退職金所得に合算されます。

不動産を取得することになりますので、登録免許税、不動産所得税、印紙税、司法書士への報酬を個人負担することになります。

会社は、社宅を社長に時価で売却し退職金を支給したため、時価と簿価の差額を譲渡損益に計上します。

仮にここで譲渡益が発生したとしても、社長への退職金という損金で相殺されることになるでしょう。※要計算。利益を保証するものではありません。

まとめ

会社が社宅を新たに建てる場合でも、社長の持ち家を会社に売却する場合でも、資金の余裕がないとできないため、この方法を選択できる会社は限られています。

計算上は手取りが増えるとはいえ、資金繰りが苦しくなってしまっては本末転倒です。

ただ会社に資金の余裕があり、会社名義の社宅を取得しても資金繰りに詰まらないなら、大いに検討すべき方法です。

社会保険料、税金ともに、その重税感は増すばかりです。

少しでも会社と社長の手元にキャッシュが残る方法を選択しましょう。

 

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