【保存版】節税と社会保険料が削減できる借上げ社宅活用ガイド

社会保険料を削減する方法 社長の手取りを増やす方法

借上げ社宅制度を利用すれば、節税対策とと社会保険料を削減することができます。

借上げ社宅制度は福利厚生の一環で、社員だけに使えると思われがちですが、社長にも適用することができますので、税金と社会保険料の負担にお悩みなら、会社への導入を検討してみるのも方法です。

通常、社長の住む居住用住宅への家賃は、社長の自己負担で、会社が支払っても損金にはなりません。

しかし、借上げ社宅制度を使えば、社長の負担家賃は5割以下になり、会社も家賃を経費とすることができるのです。

ただし、「社宅の大きさ」によって、負担すべき家賃の額が変わりますので、注意が必要です。

この記事では、節税と社会保険料を削減できる「借上げ社宅制度」について解説していきます。

社宅には2種類ある

そもそも社宅といっても、次の2つの方法があります。

1・社宅そのものを会社で取得し、その物件を役員・従業員社宅として賃貸する方法

社宅を所有している場合は、その物件の減価償却費や借入金の利子などを会社の経費にすることができ、その分節税することができます。

ただし、いくら借入利息や減価償却費が経費になるといっても、居住用住宅を買うわけですから、大きなキャッシュアウトが生じます。

また、維持管理や人件費がかかってきますので、社宅のメンテナンス費用も考えておかねばなりません。

そう考えると、社宅を所有できるのは、キャッシュに余裕のある会社となります。

社長の自宅を社宅にしてキャッシュを最大化する全手法

2・社宅となるべき賃貸物件を会社が借りて、それを役員・従業員の社宅として賃貸する方法

会社が賃貸物件を社宅として借りて、それを役員・従業員へ社宅として貸します。

その際、無料で役員・従業員に貸してしまうと、給与扱いとなります。

そこで、家賃の支払いの一部を負担することで、大家に支払った家賃と役員から受け取った家賃の一部を引いた額を、損金に算入することができます。

これを「借上げ社宅制度」といいます。

もちろん役員・従業員だけでなく、社長が借上げ社宅制度を利用することもできます。

役員の家賃負担は、社宅の広さによりますが、すくなければ1割、多くても半額程度の負担で済みます。

借上げ社宅制度を社長が利用するメリット

役員・従業員が社宅に住むことで得るメリットは次の通りです。

メリット1・安い自己負担で済むことができる

社宅は事業活動や福利厚生の面も含まれます。

そのため、会社が家賃を負担することが可能になります。

ただし、すべての家賃の支払いを会社が行えば、役員・従業員に対する給与とみなされますので、役員・従業員は一部家賃を負担をしなくてはいけません。

その負担額は、家賃の10%~50%の間で、相場に比べ相当安くなります。

メリット2・会社の経費にすることができる

借上げ社宅の家賃分は

・大家に支払う家賃-役員から受け取る家賃の一部=会社の経費

上記算式から求めた額を、会社の経費に計上できます。

仮に役員・従業員が10万円の家賃の家に住み、そのうち

  • 契約家賃:10000円
  • 会社負担:80%・80000円
  • 社長負担:20%・20000円

だったとします。

すると、

・100000円×12カ月-(20000円×12カ月)=960000円

を経費として計上できます。

また、自己所有ではないので、維持管理費や住宅の取得費もかかりません。

メリット3・賃料分の役員報酬が節税できる

個人で契約した賃貸住宅の場合、全額を自己負担しなくてはいけません。

結果として、役員報酬も家賃分を含めたものになり、その分だけ、税金と社会保険料の負担も大きくなります。

それが借上げ社宅で家賃の一部しか負担しなくてよければ、その額だけ役員報酬を下げることができます。

そうすれば、役員・従業員個人の節税と社会保険料を少なくすることができます。

<例>東京都、40歳未満、基礎控除のみで計算

  • 月額60万円、年収720万円の場合
  • 所得税・住民税:750200円
  • 社会保険料:998628円※
  • 手取り:5443772円

※社会保険料は実際の額とは異なります。後ほど説明します。

家賃10万円のうち2万円自己負担。役員報酬を52万円に下げた場合。年収624万円

  • 所得税・住民税:544700円
  • 社会保険料:897072円※
  • 手取り:4793636円+家賃960000円(非課税)

※社会保険料は実際の額とは異なります。後ほど説明します。

ご覧のように税金と社会保険料の合計が

・(750200円+998628円)-(544700円+897072円)=307056円

手取りが増えることになります。

会社が負担した家賃分96万円はは、実質非課税手当と同じです。

メリット4・会社も役員の社会保険料の負担が減る

会社が負担する社会保険料は労使折半です。

役員・従業員の社会保険料が少なくなれば、その分、会社が負担する社会保険料も少なくなります。

上記の例なら、101556円負担が少なくなります。※

※社会保険料は実際の額とは異なります。後ほど説明します。

住宅手当との違い

あなたはここで、同じ家賃の負担をするなら、わざわざ賃貸住宅を会社が借りなくても、「住宅手当」を支給して、役員に自由に借りてもらった方が面倒がなくて良いのではとお感じかもしれません。

しかし、「住宅手当」と「借上げ社宅制度」では、大きな違いがあります。

それが、住宅手当は「給与扱い」になるということです。

給与として支給されれば、税金と社会保険料は、その分負担しなくてはいけません。

また、会社側も、法人負担部分の社会保険料が増えてしまいます。

社会保険料の負担が重くなっていることを考えると、「住宅手当」を支給するよりは、「借上げ社宅制度」を検討した方がいいでしょう。

役員が負担すべき家賃の額の計算方法

では、借上げ社宅制度で、役員が負担すべき家賃とはいくらになるでしょう?

その負担額は、

  • 小規模な住宅
  • 小規模な住宅以外の住宅

と借りる住宅の面積によって計算されます。

小規模な住宅の場合

小規模な住宅でも、「耐用年数」によってさらに区分けされます。

  • 耐用年数が30年以下の住宅:延べ床面積が132平方メートル以下
  • 耐用年数が30年以上の住宅:延べ床面積が99平方メートル以下

※区分所有の建物は共用部分の床面積をあん分し、専用部分の床面積に加えたところで判定します。

No.2600 役員に社宅などを貸したとき(国税庁HP)

つまり、木造なら132㎡以下、RCマンションなら99㎡以下なら大丈夫ということです。

役員に貸与する社宅が小規模な住宅である場合の計算式

次の(1)から(3)の合計額が賃貸料相当額になります。

(1) (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%
(2) 12円×(その建物の総床面積(平方メートル)/(3.3平方メートル))
(3) (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%

次のようなマンションを借りていた場合を計算してみます。

  • 家賃:10万円
  • 固定資産税評価額:建物5000万円
  • 固定資産税評価額:敷地2500万円
  • 延べ床面積:1000㎡
  • 戸数:20戸(このうち一部屋を賃貸)

<計算>

・5000万×0.2%=10万円

・12円×(1000㎡÷3.3㎡)=3636円

・3000万×0.22%=6.6万円

・賃料相当額:10万円+3636円+6.6万円=169636円

この賃料額は、賃貸住宅1棟の固定資産税を元に求めた額です。

これを戸数で割り、一部屋分を求めます。

ここではすべての部屋の面積が同じと仮定して、単純に20戸で割ります。

・169636円÷20戸=8481円

これが役員が負担すべき金額になります。

ただこれは、あまりにもギリギリを狙った金額になりますので、実際は余裕を持たせ、家賃の10%~20%の負担とします。

仮に、10%の負担なら、9万円は会社が負担、役員は1万円の負担です。

その代わり、役員報酬を月額9万円下げれば、税金と社会保険料の負担も減り、社長の手取りは増えるというわけです。

小規模住宅でない場合

小規模な住宅でない場合の計算式は次の通りです。

※小規模住宅でない住宅とは、木造で132㎡以上、RC・鉄骨で99㎡以上の住宅です。

(1) 自社所有の社宅の場合

次のイとロの合計額の12分の1が賃貸料相当額になります。

イ(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×12%

ただし、法定耐用年数が30年を超える建物の場合には12%ではなく、10%を乗じます。

ロ(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×6%

(2) 他から借り受けた住宅等を貸与する場合

会社が家主に支払う家賃の50%の金額と、上記(1)で算出した賃貸料相当額とのいずれか多い金額が賃貸料相当額になります。

No.2600 役員に社宅などを貸したとき(国税庁HP)

社宅に業務で使用するスペースがある場合

さらに、役員・従業員の社宅に業務使う部分がある場合は、さらに自己負担額を少なくできます。

これは、小規模住宅に該当しない場合でも適用されます。

業務に関する使用部分等がある社宅等の賃貸料相当額

1、2又は3により賃貸料相当額を計算する場合において、その社宅等が次に掲げるものに該当するときは、賃貸料相当額はその使用状況を考慮して定めることになりますが、使用者がその社宅等につきそれぞれ次の金額を賃貸料として徴収しているときは、その徴収している金額をその社宅等の賃貸料相当額として差し支えないことになっています(所基通36-43)。

イ 使用者の業務に関する使用部分がある住宅等

1、2又は3により計算した賃貸料相当額の70%以上に相当する金額

ロ 単身赴任者のような人が一部を使用しているにすぎない住宅等

その住宅等につき1、2又は3により計算した賃貸料相当額×50(平方メートル)÷その家屋の総床面積(平方メートル)

引用・第2 給与所得の源泉徴収事務(国税庁HP)

ここで出てくる「1、2又は3」は、借上げ社宅の計算式のことです。

「使用者の業務に関する使用部分がある住宅等」とあるように、社宅の一部が事務所などに使われていた場合、法定家賃の70%まで減額できるのです。

小規模住宅に該当しない場合で、50%の家賃負担なら

・50%×70%=35%

の負担で済むことになります。

借上げ社宅の場合の社会保険料の計算方法

社会保険料では、報酬の全部または一部が、通貨以外のもので支払われた場合、現物給与として標準報酬月額に算入されます。

社宅も現物給与に含まれます。

その際、労働大臣が定めた価格に基づき、通貨に換算されます。

その換算した額が、社会保険料の基準となる、標準報酬月額に算入されるのです。

労働大臣が定めた価格は、「全国現物給与価格一覧表」で見ることができます。

全国現物給与価額一覧表(厚生労働大臣が定める現物給与の価額)日本年金機構HP

借上げ社宅の場合は、「畳み一畳につき」いくらと決められています。

東京都の場合で、2590円です。

この計算のポイントは、「居住用スペースのみ」が対象ということです。

居住用スペースでない、トイレ、ふろ場、玄関、台所、廊下などの面積は含めないで計算できるのです。

<例>東京都、1畳あたり2590円で計算

  • 居住スペース:8畳+6畳+8畳=22畳
  • 社宅の自己負担額:15000円

だった場合、社会保険料は

・労働大臣が定めた価格=2590円×22畳=56980円

・社会保険料の対象となる額=56980円-15000円=41980円

となります。

つまり、労働大臣が定めた価格から、自己負担分を引いた41980円が社会保険料の対象となる金額です。

社会保険料が高くなるのが嫌だということであれば、このケースでは自己負担額を15000円から56980円にすれば、社会保険料はかからないことになります。

社会保険料の負担は重くなり、企業の存続にかかわる

社会保険料の高負担化は、企業の経営を左右する問題になっています。

大変ショッキングな試算があります。

少子高齢化と人口減少が進んだ2035年には、消費税は25%にもなり、サラリーマンの可処分所得(社会保険料と税金を引かれたあとの手取り収入)は、現在の7割になるといいます(参照元:アゴラより)。

今現在30万の給料が、三七21万円になり、たとえばそこから15万円買い物に使ったとなると、37500円も消費税でぶん取られ、貯金は22500円しかできません。

まったくもって無茶苦茶な話ですが、現在の社会保障制度がどうなるかはさておき、正社員を雇う会社の方もたまったものじゃないでしょう。

あなたもご存知なように、社会保険料は労使折半なので、社員の保険料の半分は会社が負担せねばならず、さらに毎月一定額かかる固定費なので、確実に経営を圧迫します。

そういう意味では、社会保険料負担は企業にとって、今後さらなる頭の痛い問題になります。

社会保険料は税金とは違い、赤字でも黒字でも負担しなければいけない絶対的なコストです。

これを支払っていくだけで、キャッシュがドカンと飛んでいきます。

何せよ、税金・社会保険料の増大で、社会に出回るお金が少なくなれば、経営環境は悪化します。

キャッシュ事情も、今より厳しくなるでしょう。

戦略のない安売りなんかしてたら、あっという間に倒産です。

あと、法人税を節税するために、あえて役員報酬を高めに設定するというのもナンセンスではないでしょうか。

すでに、社会保険料が高負担化する中では、無駄に役員報酬を高くしても、その分、社会保険料が高くなりますから。

役員報酬も、社会保険料を十分考慮する時代です。

社会保険料倒産なんて悪夢にならないよう、しっかり対策を行いましょう。

まとめ

借上げ社宅制度は、活用すると、役員・従業員を含め、社長の節税対策と社会保険料を削減することができます。

近年、国は高所得者を狙い撃ちにして、増税してきています。

1000万円以上の給与所得者の給与所得控除は縮小されました。

また、社会保険料の負担も大きくなってきています。

社会保険料は労使折半なので、会社の負担も多いです。

借上げ社宅制度を有効活用して、節税と社会保険料削減を実現しましょう。

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