売掛金の回収は、情報の多寡により決まってきます。
すなわち、何も情報を集めていなければ回収率は下がり、一つでも情報を多く集めれば、それだけ回収率は上がるのです。
仮に次のような情報を知っていれば
- 債務者の状況
- 債務者と会社の資産
- 債務者の資産は保全されているか(抵当権の有無など)
他の債権者に先駆けて、売掛金を回収できる可能性が高くなります。
債務者の中には「出し抜いてやろう」という人もいるかもしれません。
そのような良からぬ魂胆を防ぐには、情報収集が大切です。
情報入手1・インターネットから入手
インターネット上には、取引先の相手の情報がたくさん落ちています。
会社のホームページしかり、会社のブログしかり、個人のブログしかりです。
それ以外でも、フェイスブック、ツイッター、インスタグラムといったSNSを、どれか一つはしている人は多いです。
会社のホームページは、その会社の情報がたくさん載っています。
代表者の名前、資本金、従業員数、取扱製品など、それだけでなく、ときには取引先や取引銀行を公開していることもあります。
取引先があれば、万が一のときは「債権譲渡」という方法を使うこともできます。
債権譲渡(さいけんじょうと)とは、債権者が保有する債権を第三者に有償・無償で譲渡する行為です。
債権譲渡を行うにせよ、相手の経営状態が悪くなってからでは、他の会社に債権譲渡を行ってしまうかもしれません。
売掛金の回収はスピードこそ命です。
よって、ホームページやブログから、債権回収のヒントを得ることもできるでしょう。
そして、SNSも情報の宝庫です。
SNSには、たくさんの個人情報が含まれています。
そこから、何某かの資産や債務者の状況など察知することができます。
SNSに投稿する、画像などの個人情報をバカにしてはいけません。
たとえば、SNSにアップした写真に写り込んだ広告看板から住所を特定されてしまうこともあるくらいです(この間、たったの3分)。
ときに、ツイッターやYoutubeなどで、ネットを炎上させてしまう人々もいますが、それらもあっという間に個人情報を特定されてしまいます。
・元ストーカーが教えるネットの危険性…写真から辿れる個人情報
呑気にリア充自慢などをしていると、思わぬところから足がつくかもしれません。
逆にいえばそれこそが、債権者側にとっては、貴重な回収情報となるのです。
情報入手2・法人登記
取引先が法人の場合、法人の履歴事項全部証明書を取得します。
履歴事項全部証明書を取得するには
・会社・法人の登記事項証明書等を請求される方へ(法務省HP)
履歴事項全部証明書に記載されている内容は以下の通りです。
- 商号
- 本店
- 会社設立年月日
- 目的
- 資本金の額
- 役員に関する事項等
ここから読み取れる情報は
「商号」「本店」欄の記載から、本当に存在する会社なのか確認します。
「会社設立年月日」から、設立からどれくらい経過している法人かを確認します。
通常は、社歴が長い方が安心な会社と判断できます。
「目的」から、その法人がどんな目的で設立されたかを調べます。
「資本金」の大きさから、その会社規模を推測します。
一般的には、資本金が大きいほど安心な会社と判断できます。
「役員に関する事項」には、取締役の氏名や住所が記載されます。
名刺には取締役と書いてあっても、実際は違うというケースもありますので、そのような人物との取引は安心できないといえます。
また、代表取締役の自宅住所がわかれば、不動産登記事項証明書を取得し、代表の自宅の権利関係を確認することができます。
そして、実際の住所がわかれば、万が一のときは、社長本人へプレッシャーをかけることができます(自宅に集金人が現れる、これは大きなプレッシャーです)。
そして、取締役が何度も変わっているようなら、法人の運営が安定してない証拠です。
何かしら疑った方が良いかもしれません。
情報入手3・不動産登記
先ほど名前を出した「不動産登記事項証明書」ですが、ここからも貴重な情報が読み取れます。
不動産登記事項証明書での確認事項
表題部
表題部は土地・建物の概要を知ることができます。
土地:所在・地番・地目(土地の現況)・地積(土地の面積)など
建物:所在・地番・家屋番号・種類・構造・床面積など が記載されています。
マンションなどの区分所有建物には、敷地権の表示が加わる場合があります。
甲区
甲区には所有権に関する情報が記載されます。
その不動産の所有者が誰かを知ることができます。
不動産の所有者は誰で、いつ、どんな原因(売買、相続など)で所有権を取得したかがわかります。
もし、その不動産に「差押え」「仮差押え」とあれば、「差押え」「仮差押え」されていることの証拠です。
債務者は借金で詰まっている可能性が高いです。
乙区
乙区には、所有権以外の権利関する事項が記載されます。
所有権以外の権利とは、抵当権や根抵当権、質権などの「担保権」や地上権や賃借権などの「用益権」などがあります。
また乙区の「権利者その他の事項」の欄には、どの債権者がどの債権について、いくらの担保権を設定しているかがわかります。
第一順位、第二順位など、複数の抵当権の登記があれば、その不動産の担保余力は小さくなっているといえます。
乙区を見ることで、不動産の担保余力がわかります。
共同担保目録
共同担保目録には、担保権者がその不動産と共同して担保に取った不動産が記載されます。
債務者が他に保有している不動産の所在や、担保権者の担保権設定状況を知ることができます。
情報入手4・信用調査会社、探偵事務所、興信所
帝国データバンクや東京商工リサーチといった、信用調査会社から報告書を取得します。
企業の規模に応じて、情報量に差はありますが、ある程度の情報を取得することができます。
また、費用はかかりますが、探偵や興信所を使って調べる方法もあります。
情報入手5・関係者、取引先
債務者の関係者や取引先から情報を入手する方法もあります。
ただ、身辺を嗅ぎまわれることは、気分のいいものではありませんし、聞き方によっては「あの会社ヤバいのでは?」といった、あらぬ噂を立てしまうことにもなりかねません。
聞き方、調査の仕方は、慎重さを要します。
しかし、そのことを逆手に取ることもできます。
支払が滞ってきたのなら、あえて関係者や取引先に状況を聞いてまわり、債務者の耳に間接的に噂が入るようにします。
ここで第一に伝えるべきは、あなたの回収の「本気度」です。
「あの会社は本気で回収しにくるようだ」「裁判も辞さない覚悟」といったことが伝われば、それがプレッシャーとなります。
そしてそれを伝え聞く相手が、友人、兄弟、家族といった身近であるほど、プレッシャーは強くなっていきます。
売掛金回収は、債務者との心理戦です。
状況に応じて、相手にプレッシャーをかけていくことも必要です。
まとめ
売掛金回収は、裁判になって勝ったとしても、お金を回収できるかどうかは別の話です。
できれば裁判など避けて、その前の段階で回収できるのが望ましいといえます。
それには、事前の情報収集が大事です。
相手の経営状態や、資産状況や取引相手がわかっていれば、先手先手で回収対策を打てます。
後手に回るほど、回収率と回収額は下がります。
情報を一つでも多く持っている方が、売掛金回収では有利なのです。
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