資金繰りと粗利益は密接な関係があります。

すなわち、粗利益の多いビジネス(業態)は資金繰りが楽で、その反対に、粗利の少ないビジネスは、資金繰りがキツめということです。

粗利益とは、売上から原価を引いた額なので、それが直に資金繰りに影響することは、当たり前といえば当たり前ですが、自分のビジネスの粗利がどうなのか把握しておくことは大事です。

粗利の低いビジネスなら、あえて借入をして手持ち資金を厚くするという選択もできますし、逆に粗利が多いビジネスなら、借金を減らして自己資本を厚くする方針を採れるからです。

自分のビジネスに合った財務方針を採用すれば、資金繰りは安定しやすく、経営の安全度も増します。

資金繰りは粗利によって決定される

粗利益とは、会計上では「売上総利益」と呼ばれます。

粗利益は、売上高から原価(商品の仕入、製造にかかった費用)を引いた額のことです。

余談ですが、原価になるものは「売れたもの」だけで、仕入れたのに売れなったものは原価の対象にはなりません。

この粗利益が売上高に占める割合を、「粗利益率」といいます。

・粗利益率=粗利益÷売上高×100

この粗利益こそが、企業の原動力となります。

なぜなら、この粗利益の中から、経費、広告費、支払い利息、法人税などを支払うことができるからです。

そして、諸々の諸経費を引いた後に残るのが、フリーキャッシュフローと呼ばれる、企業が事業活動から得た自由に使えるお金です。

フリーキャッシュフローが多ければ、資金繰りも潤沢ということです。

ということは、粗利益が多ければ、必然的にお金も残りやすくなるわけです。

粗利と運転資金の関係とは?

そして、運転資金の面から考えても粗利の低いビジネスは、不利を否めません。

それは立替える運転資金の額が大きくなるからです。

運転資金は、通常、仕入の支払いが先で、販売の回収は後になります。

運転資金は、そのタイムラグを埋めるために必要な資金です(経常運転資金といいます)。

仮に、100万円の中古車を売って、仕入値が80万の場合ですと、販売代金100万円を回収するまでに、80万円を立替えておかなくてはいけなくなります。

しかし、これが粗利益率が60%の40万円の仕入れ値なら、立替えておくべき金額は、40万円で済みます。

用意すべき運転資金も、粗利益の額でまったく違うことになります。

どちらが資金繰りが楽かは一目瞭然です。

粗利の低いビジネスの資金繰り改善法

ではこれが現金商売ならどうなるでしょう?

中古車のオーダーを聞いて、そこから仕入れて現金と商品を交換です。

これなら粗利が低くても、販売代金の回収が先で、仕入れの支払いが後になりますので、資金繰りは楽になります。

つまり、資金繰りは、支払いが後になるほど(長引くほど)楽になるということです。

粗利の低いビジネスで勝負するなら、資金繰りのことを考えて、販売代金の回収は早く、支払いはなるべく遅くしないと、資金繰りで自らの首を絞めることになります。

売上の増大で資金繰りは苦しくなる

ちなみに、売上が増えるほど、資金は足りなくなります。

通常は、売上が増えれば仕入れも増え、人件費や経費も一緒に増えてしまうからです。

増えた分の運転資金を、「増加運転資金」と呼びます。

運転資金は

・売掛債権+棚卸資産-買掛債務

で求められます。

もし、

  • 売掛債権:500万円
  • 棚卸資産:500万円
  • 買掛債務:500万円

なら、必要な運転資金は500万円です。

同条件の取引で、売上が2倍に増えたなら、運転資金も2倍の1000万円必要になるということです。

仮に、大口の契約を取れたとしても、売上アップを喜ぶ前に、どれくらい運転資金がかかるのか計算しておかなければいけません。

計算の結果、運転資金に不足が生じるようなら、事前に銀行と融資の交渉を進めておくべきです。

幸いに銀行は、売上アップで資金不足になる、増加運転資金の融資には前向きですから、資金不足を借入で乗り切れます。

何も対策をしてないのなら、最悪、黒字倒産も起こり得るのです。

コストカットは経営者の視点で

このような運転資金の計算が理解できると、経営視点で物事を考えられるようになります。

粗利の増大=キャッシュの増大だけでなく、資金繰りにも目が向くようになるのです。

たとえば、次のような状態の会社があったとします。

  • 年間売上げ:3000万円
  • 売上げ原価;1800万円
  • 売掛金:800万円
  • 棚卸資産:420万円
  • 買掛金:460万円

この会社の売上債権回転日数、棚卸資産回転日数、買入れ債務回転日数は

売上債務回転日数:800万円÷3000万円×365日=97日

  • 棚卸資産回転日数:420万円÷1800万円×365日=85日
  • 買掛債務回転日数:460万円÷1800万円×365日=93日

となり、これをCCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)で計算すると

  • 97日+85日-93日=89日

になります。

CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)とは?

CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)を使って資金繰りを改善

このような状態で、年間の売上原価が200万円削減できる新規の取引の打診がありました。

  • 粗利益:3000万円-1600万円=1400万円

となり、粗利益率は40%から47%に増大です。

しかし、その取引条件で買掛日数短縮の提示があり、全体の買掛金が350万円、棚卸資産は360万円になります。

すると買掛債務回転日数と棚卸資産回転日数は

  • 買掛債務回転日数:350万円÷1600万円×365日=80日
  • 棚卸資産回転日数:360万円÷1600万円×365日=82日

となります。

これで全体のCCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)を求めると

  • 97日+82日-80日=99日

となり、現状の89日から10日も延びて99日となってしまいます。

これは資金繰りが悪化することを示しています。

このように、粗利額が大きくなるからといって、必ずしもそれが好ましい取引とはいえないのです。

コストカットするのが良いことは誰でも思いつくことですが、経営者が考えるべきはその先です。

その仕入れ価格で資金繰りがどうなるか、経営者なら判断するべきでしょう。

会社が潰れるのは、キャッシュが尽きたときなのですから。

仕入れ値が高いか安いかで物事を判断するのは、担当者レベルの視点です。

そのコストカットは経営方針と合致するか?

上記の取引をはじめるかどうかは、会社の経営方針で変わります。

仮に、自己資金が豊富にある会社なら、CCCが延びたとしても、財務状況がいきなり悪くなるわけではありません。

だとしたら、取引条件には多少目をつむり、コストカットに比重を置いて、フリーキャッシュフローの最大化を目指すのも一つの方法です。

フリーキャッシュフローとは、売上から、原価、経費、人件費、税金などを引いた、最終的に残るお金です。

このお金が増えれば、資金繰りは安定します。

フリーキャッシュフローを増やすには、粗利を大きくしなくてはいけません。

逆に、自己資金が少ない会社なら、フリーキャッシュフローの最大化より、運転資金の改善を優先すべきでしょう。

手持ち資金が少なければ、運転資金の運用も苦しいわけで、フリーキャッシュの最大化の前に、取引条件の見直しで、資金繰りの改善から着手する方が先です。

このように、一口にコストカットといっても、会社が目指すべきゴールや、会社の状態によって採るべき経営方針は違ってきます。

そしてそれを決めるのは、経営者の仕事です。

だからこそ、経営者は財務を理解していないとマズいでしょっていう話です。

担当者と同じ目線では、経営を見誤ることになります。

まとめ

粗利の厚さは、運転資金にも影響してきます。

すなわち、粗利の薄いビジネスは資金繰りがキツくなり、厚ければ運転資金も楽になります。

手持ち資金の少ない会社が、安売り路線に走るのは、そういう意味でも自らの首を絞めるようなもので、採るべき経営方針ではないでしょう。

それでやっていけるのは、CCCの短めの会社です。

粗利と運転資金の関係を考えて、資金繰りに困らない経営方針を立てましょう。

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