社長が決算書を読めなくても、儲かる利益計画を作ることはできます。
決算書とは、経営に使える数字がぎっしり詰まった読み物です。
自社の1年間の経営の結果なので、当たり前といえば当たり前ですが、決算書を読み解けば、「この先経営をどうすべきか」のヒントを導き出すことができます。
にもかかわらず、社長が「決算書はむずかしくて読めない」、これは本当に危機感を持った方がいいです。
しかし、ご安心下さい。
冒頭にも書きましたが、社長が決算書を読めなくても、儲かる利益計画を作ることはできます。
実際問題、現在の会計制度は、税制や会計基準に合わせざるを得ず、余計にわかりにくくなっていて、現実の経営には役立たないものになっています。
そこで登場するのが「MQ会計」です。
MQ会計とは、西順一郎先生が開発された会計方法で、現実に即した、儲けるための会計です。
端的にいえば
- 儲けるためには何の数字に注目すべきか?
- 利益を生み出すための指標は何か?
こんな情報がわかってしまう会計方法です。
これこそが、社長のあなたにとって本当に知りたい情報ではないのでしょうか?
MQ会計は、税制や会計制度によって歪められてしまった決算書とは決別し、現実に即した方法であなたに儲かる方法を教えてくれます。
決算書が使えない理由
最初に誤解ないようにいっておきますが、決算書が必要ないというわけではありません。
決算書は決算書で大事です。
決算書が読めなければ、経営上不利になることはたしかです。
ただ、リアルの現場では、決算書で考えるとおかしなことが出てきます。
たとえば、現状の決算書では、
- 製造して残った在庫
- 仕入れて売れ残った在庫
これらがあると、不思議なことに利益が増えることになります。
普通の経営者の感覚でいえば、売れなかった在庫はマイナス財産になるはずです。
しかし、決算書では、利益は増えてしまうのです。
売れ残ったのに利益が増えるメカニズム
そのメカニズムはこうです。
仕入れた商品や作った製品は
- 売れたもの
- 売れなかったもの
の2つに分けられます。
このうち、売れたものは損益計算書の「売上原価」に計上されます。
そして売れ残ったものは、貸借対照表の「商品・製品」として資産に計上されます。
貸借対照表の資産に計上されたものは、売れたときに損益計算書の費用になり、売れなければ売上原価にならないのです。
よって、売上原価に計上されたものは、「収益-費用=利益」となり、利益は減ります。
これに対し資産計上されたものは、費用にはなりませんので、逆に利益は増えます。
これを損益計算書で考えると次のようになります。
- 売上高:1000万円
- 売上原価:300万円
- 売上総利益:700万円
- 販管費:200万円
- 営業利益500万円
このとき在庫が50万増えたとすると
- 売上高:1000万円
- 売上原価:250万円
- 売上総利益750万円
- 販管費:200万円
- 営業利益:550万円
となり、利益は550万円に増えます。
売れ残りが50万増えるとは、売上原価が50万減るということなので、結果として利益は50万増えるのです。
売れ残りが出て実際は儲かってないのに、決算書上は利益が増え、ときには税金さえ取られます。
「決算書は黒字なのに、資金繰りが苦しい」、実は上記のことも関係しています。
これって本当に、商売の実態に合っていますか?
MQ会計で儲かる利益計画が作れる3つの理由
MQ会計には、大きくいって次の3つの優れた点があります。
- 数値に論理的な根拠がある
- 戦略的な意思決定に使える
- 誰でもわかる
この3点があるからこそ、決算書が読めなくても。儲かる利益計画を作ることができるといえます。
理由1・論理的な根拠がある
ここでいう論理的とは、「数学的に矛盾がないこと」です。
数字的に矛盾がないからこそ、しっかりした儲けの理論を構築できます。
先ほど説明した、売れ残りや作った製品の在庫が増えるほど利益が出るといった、わけのわからない会計に惑わされていては、儲けが出せるわけがないのです。
何をどう変えれば利益が増えるか、それがわからず、むやみやたらに頑張っても結果は伴わないでしょう。
MQ会計は、非常にわかりやすく論理的な構成なので、どの数字を動かせば、利益がいくら増えるのか、瞬時に理解することができます。
だからこそ、改善策も的確な方法で打つことができます。
理由2・戦略的な意思決定に使える
従来の経営分析では、「業界の平均値と比べてどうなのか?」とか、「〇〇率が悪い」までしかわかりませんでした。
しかし、会社にとって肝心なのはその先、「これからどんな手を打つべきか?」という具体的な方策です。
MQ会計を使えば、数字が表す方向性が見えるので、戦略的な意思決定の道具として使えます。
戦略とは会社の大きな流れのことです。
その戦略を間違えてしまえば、会社は大変なことになってしまいます。
経営者であるあなたが、それを経験や感性に頼っていてはダメでしょう。
わたしもチラシなどの広告で散々失敗しましたが、一か八かで勝てるほど、マーケットは甘くありません。
勝つには勝つための根拠(数値)が必要です。
進むべきか退くべきか、進むとしたらどんな方策が有効なのか、数字という目に見える形だからこそ、戦略の方向性を正しく判断できます。
理由3・誰でもわかる
いかに優れた方法でも、理論が難解なら、実務レベルでは役に立ちません。
MQ会計なら、足し算、引き算、掛け算、割り算ができれば、誰でも理解することができます。
何ならエクセルに入れておけば、計算自体は自動で算出することができます。
誰でも理解できる方法だからこそ、現場レベルでも使いこなすことができますし、決算書が読めなくても儲かる利益計画を作ることができます。
MQ会計とは?
MQ会計では、売上を8個の枠に分解します。
P:価格(プライス)
商品サービスの価格のことです。仮にTシャツ1枚の売値が1000円なら、Pの枠は1000が入ります。
V:原価(バリアブル・コスト)
VはTシャツの原価です。ここでは300円としています。
M:粗利単価(マージン)
Mは粗利単価のことです。MはPとVが決まってはじめて求めることができます。言い換えれば、売値Pが決まっていても原価Vが決まっていなければMは出ず、反対に原価Vが決まっていても売値Pが決まっていなければVは出ません。
P、V、Mは単価構造を表すことが上記の図からわかります。
Q:数量(クオンティティ)
Qは販売数量です。100枚Tシャツが売れたら、Qには100と入ります。よって「販売単価P×数量Q」で、全体の売上高PQは1000000円となります。同じように売上原価VQは、「原価V×数量Q」で30000円です。全体の粗利総額MQは、「粗利M×数量Q」で70000円となります(MQはPQ-VQではない)。
F:固定費(フイックスド・コスト)
Fは固定費です。固定費は、役員・従業員の給与、事務所や店舗の家賃、通信費、光熱費が入ります。ここでは40000円かかるとします。
G:利益(ゲイン)
Gは利益です。このTシャツ販売会社の利益は30000円です。
MQ会計でも目指すのは、利益Gの最大化です(これはどのビジネスも同じですね)。
それをP、V、Q、F、Gの各要素に分けて動きを見るので、とてもわかりやすく、戦略や問題点を考えやすくなっています。
MQ会計で儲かる利益計画をシミュレーション
ではここで、MQ会計を使った利益計画のシミュレーションを行ってみます。
ある街にファミリー層が中心の飲食店がありました。
店舗の経営状態は次の通りです。
- 平均単価:3000円
- 平均原価:1000円
- 毎月の固定費:120万円(家賃、人件費、水道光熱費など)
- 毎月の平均集客数:1000人
毎月残るお店の利益は80万円です。
しかしここで、近所に客層も同じの大手のチェーン店が進出し、客数が1割も減ってしまいました。
そしてお店の経営状態は、次のように変わりました。
客数が1割減ったので
- 売上高PQ:3000円×900人=270万円
- 売上原価VQ:1000円×900人=90万円
- 粗利益総額MQ:2000円×900人=180万円
- 利益G:180万円-120万円=60万円
利益は減ってしまいましたが、手元の利益Gは60万円残ります。
ここであなたなら、どんな戦略を採りますか?
1割の値引き戦略を採用した場合
あなたは大手チェーン店に対抗して価格を1割下げる戦略を採用しました。
その効果あって、客数は1000人に戻りました。
そのときの経営状態はどうなるでしょう。
- 平均単価:2700円
- 平均原価:1000円
- 毎月の固定費:120万円(家賃、人件費、水道光熱費など)
- 毎月の平均集客数:1000人
なんと、手元の利益Gは50万になり、逆に10万減る結果となりました。
その原因は、粗利Mが減ったためです。
客数が戻っても、粗利が少なくなったので、手元利益Gも減ってしまったのです。
商売は、最終的に手元に残る利益(もっといえばキャッシュ)が大事なので、これではいったい何がなにやら、安売りは採るべき戦略ではなかったということです。
資本が小さい中小企業は、粗利の確保が基本戦略です。
利益を80万に戻す利益計画を立てるには客数がいくら必要?
ではこの状態で、利益Gが最初の80万になるは、どれくらい客数を戻さなくてはいけないでしょう?
- 平均単価:2700円
- 平均原価:1000円
- 毎月の固定費:120万円(家賃、人件費、水道光熱費など)
- 毎月の平均集客数:?人
利益Gを80万にするには、粗利総額MQが200万必要です(200万-固定費120万)。
平均単価2700円で平均原価1000円なら、粗利単価は1700円です。
要は、粗利単価1700円で、200万稼げばいいので、
・200万÷1700円=1177人
となります。
たかが1割の値引きと侮ることなかれ。
値引きを1割した場合、利益Gを確保するためには、最初より約1.2倍の集客数が必要だったのです。
何度もいいますが、商売は手元に残る利益こそが大事です。
売上だけ見ていると、思わぬ落とし穴にはまります。
いずれにしても、安易な安売り戦略を採用してしまうと、ドツボにハマるという好例です。
ではこのようなとき、どの部分から手を付ければ一番効果的あるのでしょう?
そんなときに使うのが、「利益感度分析」です。
利益感度分析で進むべき戦略方針を決める
MQ会計では、P、V、Q、Fという要素を動かして、最終的な利益Gがどうなるかを見ていきます。
つまり、どの項目を動かせば、一番効果的なのかを知ることができるのです。
先ほどの飲食店のケース(下がった状態)でシミュレーションしていきます。
- 平均単価:2700円
- 平均原価:1000円
- 毎月の固定費:120万円(家賃、人件費、水道光熱費など)
- 毎月の平均集客数:1000人
固定費Fの利益感度
最初に固定費Fを見ていきましょう。
現状の利益Gが0になるのは、固定費が170万円になったときです(120万+50万)。
固定費Fの利益感度は次のように計算します。
Fkは固定費の利益感度です。
Fは現状の120万、F´は増加した金額170万です。
この飲食店は、固定費を今より42%多く使うと利益がなくなります。
よって固定費Fの利益感度は、42%です。
数量Qの利益感度
次にQを見ていきます。
ここで見るのは、「客数が何人まで減ったら利益が0になるか?」です。
利益が0になるとは、MQが120万になることです。
となれば、粗利の単価は1700円なので、120万を1700円で割れば答えが出てきます。
答えは706人です。
Qは現状1000人、Q´は減少後の706人です。
つまり、客数が29%減ると、利益が0になるということです。
よって、Qの利益感度Qkは29%です。
原価Vの利益感度
次は原価Vの利益感度です。
「現在の仕入れ値1000円が、いくらに値上がりすれば赤字になるか?」を調べます。
売値Pが3000円、数量Qが1000、固定費Fが120万です。
このデータから利益が0になるということは、粗利総額MQは120万になります(MQ=F120万+G0)。
MQは、粗利Mと数量Qをかけたものです(MQ=M×Q)。
よって求めるMは、120万÷1000=1200円となります。
平均単価は3000円なので、Vは「3000円-1200円=1700円」と求められます。
したがってVの利益感度は、170%となります。
現状は1000円、平均原価が1700円に値上がりすると利益が0になります。
この飲食店のVの利益感度Vkは70%です。
Pの利益感度
最後にPの利益感度を見ていきます。
「現在3000円の平均単価を何円まで下げれば赤字になるか?」そのラインを調べます。
ここでわかっているのは、平均原価1000円、客数1000人、固定費120万ということです。
利益が0ということは、MQは120万になります(MQ=F+G)。
ということは、粗利Mは120万÷1000人=1200円です。
粗利は1200円、平均原価は1000円なので、平均単価Pは「1200+1000円=2200円」となります。
現状の平均単価Pは2700円、値下げ後のP´は2200円。
よってPの利益感度Pkは19%となります。
この飲食店は19%値下げすると赤字になるということです。
利益感度を求める
それぞれに求めた利益感度を数値の小さい順に並べていきます。
この分析結果から、利益アップに一番効果的なのは平均単価のアップということがわかります。
逆に最も効果のないのは、平均原価の値下げです。
例に挙げた飲食店が、利益を回復するには、値引きで客数を集めるのではなく、客単価アップをすることだったのです。
客単価アップし、利益を確保できれば、広告費を多めに投入することもできます。
そうすれば、客単価アップで離れていってしまった客数を、広告で集めることもできます。
これが戦略を考えるということです。
売上が落ちた、慌てて値下げでは、自らの首を絞めているようなものです。
ちなみに利益感度の順番は、企業によって変わりますが、ほぼ共通していえるのは売値Pをどうするかが戦略上とても大切だということです。
Pはどの場合でも敏感に反応するので、Pをどうするかによって、その企業の利益も決まります。
利益改善と聞くとコストダウンが真っ先にきますが、コストダウンだけでは、会社の利益は改善されないのです。
まとめ
いかがでしたか?
MQ会計を使えば、売上の各要素を動かすだけで、最終的な利益がどうなるかがわかります。
それだけに、自社の方向性を決める戦略的意思決定に使うことができます。
勢いや勘だけでは、いずれ市場では勝てなくなります。
裏付けのある方法だからこそ、社長は勝てる見込みを立てることができます。
ぜひ、現場で役立つMQ会計を取入れて、儲かる利益計画を立てましょう。
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