「最適な役員報酬とは一体いくらなのか?」

あなたが社長(オーナー経営者)なら、一度はそんな悩みを持ったことがあるかもしれません。

とどのつまり、この疑問の知りたいことは、「会社と個人を合わせて一番税負担が少なくなるのはいくらか?」ということです。

逆にいえば、会社と社長個人と合わせて、最も手元にお金が残る役員報酬はいくらなのかともいえます。

この記事では、最適な役員報酬を導き出す方法を解説していきます。

社長の手取りを増やすのは会社の防衛戦略です

まずはじめに。

社長が自分の手取り収入を含めて、手元キャッシュを最大化しておくことは、会社の防衛対策です。

中小企業の社長の場合、会社と個人の財布は実質一体で、会社に火急のピンチが訪れれば、社長個人の財布から補てんしなくてはいけないからです。

金融機関がピンチのときに、都合よく貸してくれるは限りませんし。

そして金融機関は、社長の役員報酬の額もみています。

役員報酬額が多いか少ないかではなく、社長の家族構成から生活費を推測し、預貯金として残る額がいくらかを算出します。

その手元に残る額が多ければ、資産があるということであり、その結果、会社とは別の第2の資産として勘定してくれるのです。

そういう予備資金が多ければ、融資の際も有利に働きます。

返済に確実性が出てくるからです。

ですから、会社にお金を残しておくことはもちろん、社長個人の手取り収入も最大化しておかなくてはいけないのです。

けっして、私利私欲のためではありません(行き過ぎは私利私欲のためになりますが・・・)。

社長の最適な役員報酬の決め方

では、手元キャッシュを最大化するための社長の役員報酬の考え方を解説します。

考え方は簡単です。

役員報酬控除前の会社に残る利益があります。

法人税の実効税率は、1億円以下の資本で課税所得が800万以上の場合、33.8%です。※2107年9月現在

これに対し個人の所得は、所得税・住民税、社会保険料がかかります(社会保険料は控除の対象なので、所得税を減らす効果があります)。

要は役員報酬控除前の利益を、会社と個人で振り分けて、どちらが手元キャッシュが増えるかということです。

これが基本の形です。

以上を踏まえて、最適な役員報酬を求めます。

 

  1. 社長の家族構成、必要な生活費や貯金額を算出します。
  2. 1の報酬額の所得税額を求めます。他のパターンもいくつかシミュレーションしておきます。
  3. 翌期の予想の役員報酬控除前の利益を出します。
  4. 役員報酬控除前の金額から、1で算定した役員報酬を引いた金額を出します。その他のパターンも同じように引いておきます。
  5. 4の金額と、法人税の実効税率表から、それぞれの法人税額を求めます。
  6. 2と5の対応する金額のうち、一番小さい金額(の付近)が、当期の最適役員報酬です。

 

たとえば、役員報酬控除前の利益が2000万円。それを役員報酬、1000万円、1500万円、2000万円の3パターンで受取った場合のシミュレーションをしてみます。※35歳独身。基礎控除のみでシミュレーション。

シミュレーション結果は以下の通りです。

ご覧の表のように、役員報酬を1500万円、会社に残すお金を500万円に設定するのが、一番手元キャッシュを最大化することができるとわかります。

役員報酬を1000万円にしたときよりも、税額は約51万円差額(480万円-429万円)があることがわかります。

節税対策で役員報酬を決めてしまう罠

しかし、です。

ここでよく考えていただきたいのですが、たしかに税額は51万円安くなります。

ですが、そのときに残る会社のキャッシュを見比べて下さい。

1000万円の役員報酬に設定した場合:1000万円-338万円=662万円

1500万円の役員報酬に設定した場合:500万円-116万円=384万円

会社のキャッシュを、278万円も減らしてしまうことになります。

もちろん、その分を社長個人へ所得移転したともいえますが、それでは会社の自己資本を削ってしまうことになります。

節税が目的化してしまい、キャッシュを必要以上に減らしてしまうことが、果たして良いことなのかどうか。

思い出してください。

会社の防衛対策は、手元資金を最大化することです。

仮に会社に残した662万円から、いくらか非課税、または税率を低くして社長個人へ所得移転できるとしたのなら、あえて役員報酬を1000万円に抑えることもありなんじゃないでしょうか。

お金は会社に残すべき?それとも個人に残すべき?

ここであらためて、社長にお金を残すすべきか、会社にお金を残すべきか考えてみましょう。

会社にお金を残すケース

会社の財務体質を強いものにしたい場合は、あえて法人税を納めて会社にお金を残した方が、自己資本が貯まって財務体質は良くなります。

また、今後設備投資を考えている場合も、ある程度会社にお金を残しておく必要があります。

ただし、会社に残したお金は「基本会社のことにしか使えない」という制限があります。

もし、役員報酬を少なく設定して、生活費が足りなくなったときは、会社から借りることになります。

この会社から借りたお金を「役員貸付金」といいます。

この役員貸付金が決算書に計上されると、融資の審査で問題になり、いざというとき銀行から資金調達できない可能性があります。

役員貸付金は、会社にとっては資産であるものの、実質返ってこないお金とみなされて、マイナス評価されてしまうこともあります(つまり、自己資本の減少)。

さらに、社長個人に対して、

  • お金にルーズ、経営者の資質に欠ける社長。
  • 万が一融資しても、そのお金を社長が横流ししてしまうのではないか?

と考えます。

ですから役員貸付金があると、融資を受ける際、非常に不利に働きます。

役員報酬額も会社の防衛戦略の一環であることを考えれば、融資に支障を来たす給与額では意味がないでしょう。

ですので、会社に残す比率を多くするなら、会社からお金を引き出さなくてよい額を役員報酬に設定するべきです。

個人にお金を残すケース

次に、社長個人にお金を残すケースを考えてみます。

会社に残したお金と、社長個人のお金の最大の違いは、「自由に使えるお金かどうか」にあります。

先ほど説明したように、会社のお金は「基本会社のため」という制限があり、個人で勝手に使うことはできません。

それに対し、社長が役員報酬で受取ったお金は、自由に使えるお金です。

プライベートも良し、また、会社が資金ショートを起こしそうなときにも、補てん目的のお金として使えます。

この補てんは、社長から会社への貸付となるわけですが、これを「役員借入金」と呼びます。

役員借入金は、返済期日もなく、督促もないお金で、実質「資本金」と変わりません。

ですから、決算書上に「役員借入金」が計上されても、金融機関はこれを問題としないのです。

事実、役員借入金を資本金とみなす金融機関もありますし、金融庁の「金融検査マニュアル別冊」でも、「代表者の借入金等については、原則としてこれらを当該企業の自己資本相当額に加味することができる」と書いてあるくらいです。※ただし、代表者が返済を要求しないと明らかなとき。

このように、同じキャッシュでも、会社にあるお金と個人では使い方の自由度が違うのです。

会社の利益の規模にもよりますが、これが会社にお金を残すか個人に残すかの、一つの基準になります。

【追記】役員借入金は、少額であったり、大きな額であってもすぐには問題となることはありません。

しかし、少額が積み重なって大きくなったり、多額の役員借入金をそのまま放置しておくと、相続が発生したときに問題となってきます。

ですから、今は問題ないとはいえ、いずれ解決しなくてはいけないということは忘れないようにしてください。

余談ですが、役員借入金の解決策に、終身保険を使ったスキームがあるといいます。

たとえば法人保険の契約形態を

・契約者:法人

・被保険者:社長

・死亡保険金受取人:社長の家族

とすれば、通常は役員に対する給与とみなされます。

給与とみなされれば、それは経費になりますので、保険料を損金に入れることができます(役員に対しては給与課税されます)。

つまり、会社に保険料でお金を返してもらいながら、損金として経費計上できれば、法人の利益も圧縮でき、なおかつ死亡が発生した際は、生命保険で遺族にお金を用意できるというわけです。

しかしです。

ここで給与と認定されるためには、「役員に対して会社から経済的利益供与があった」事実が必要になります。

ですが、役員に対しては、実質借りたお金の元本を返しているだけなので、経済的利益供与には当たらず、保険料は給与とみなされないということです(よって会社の経費にならない)。

これは、国税の方の見解なので、最高裁の見解まではわかりませんが、一つの参考にはなるでしょう。

下手なスキームを実行してしまっても、何の効果もないことになります。

役員報酬の額は融資の審査でもポイントになる

役員報酬の額は融資の際のポイントになります。

役員報酬が多いか少ないかではなく、その役員報酬額でいくら手元に残るか?です。

仮に、役員報酬2000万円で、社長、妻、子供3人の構成で、生活費としていくら使って、手元に残る余裕資金(預貯金できるお金)がいくらなのかということです。

手残りが多ければ、資産が多くあると推測でき、その結果、審査では有利に働くことになります(ただし、あくまで本業がメイン)。

役員報酬と生活資金の差額がギリギリなら、手持ちの資産が少ないということであり、融資のプラスポイントにはなりません。

したがって、融資のことをを視野に入れるなら、役員報酬は高めに設定して、社長の個人資産に余裕を持たせておくことは重要です。

貯金でなくても、不動産や投資信託などの金融資産になっていれば、それを銀行に開示することで、プラス評価されます。

また、連帯保証(会社の借入の個人保証)を外す際のポイントにも、社長の個人資産は大事になってくるので、やはり役員報酬は多めに取っておくのが無難です。

「経営」という視点で役員報酬が最適かを考える

役員報酬が最適かどうかを経営視点で観るなら、ROA(総資本利益率)で計算してみます。

ROAとは、そのビジネスに投下されている資産で、どれだけの利益を獲得したかを示す指標です。

また、ビジネスの効率性と収益性を同時に示す指標でもあります。

つまり、設定した役員報酬額で、ビジネスの収益性と効率性がどうなるかを計算してみるのです。

ROAの計算式は

・営業利益÷総資本

で求められます。※営業利益は、損益計算書の営業利益ですが、経常利益を使っても問題ないです。

ROAは一般的に、5%以上で優良企業といわれています。

この数値をそのまま当てはめるわけにはいきませんが、ROAがあまりにも低ければ、経営という視点で観れば、役員報酬をもらい過ぎともいえます。

一つの考え方ですので、参考にしてみて下さい。

事業承継では役員報酬の額も重要

役員報酬の額は、事業承継にも影響を及ぼします。

当たり前の話ですが、役員報酬は安ければ、会社に利益が多く残り、その反対に高ければ会社に残る利益は少なくなります。

利益が多くある会社の自社株は、評価が高くなります。

すなわち株価が高くなるということです。

会社は利益を上げることが目的ですので、本来株価が高くなることは良いことです。

しかし、事業承継の時期になると、それが裏目に出てきます。

後継者は自社株を引き継ぐことになるわけですが、その際、

  • 自社株を買うための資金
  • 相続・贈与で株式を受取るときの、相続税・贈与税の納税資金

を負担しなくてはいけません。

株式が高いと、自己資金でとてもまかない切れないケースが出てきます。

会社を継ぐために、多額の借金を背負う、あるいは会社の資金繰りが悪くなるでは、大きな負債も一緒に継ぐことになります。

したがって、がんばって高くした自社株が、皮肉にも裏目になってしまうのです。

会社の株式の評価を下げるためには、会社に貯まった利益を放出する必要があります。

そのとき有効なのが、役員報酬なのです。

自分の役員報酬を高めに設定して、これ以上会社に利益が貯まらないようにしたり、減らしたりするために利用するのです。※追記あり

また、後継者にも高めの役員報酬を支払って、事業承継の準備資金を用意してもらいながら、会社の利益を減らすことも必要です。

利益が出ている会社で、事業承継のタイミングが近づいてきたら、役員報酬が低いままだと、実は大きなリスクを抱えていることになります。

あえて役員報酬を高く設定するというのも、時期によっては必要なのです(私利私欲ではなく、後継者、会社、従業員のためにです)。

【追記】退職の時期に合わせて、役員報酬を一気に上げてしまうのは、大きなリスクになります。

仮に、これまで100万円の役員報酬だった人が、退職の1年前から200万円の報酬になれば、あきらかに不自然です。

税務調査で、「最終報酬月額を上げるためだけの臨時的昇給」とみなされれば、退職金を全額損金に算入することがむずかしくなります。

それだけでなく、上げた毎月の役員報酬自体が、「不相当に高い報酬」として、損金不算入になってしまう可能性もあります。

やはり、事業承継は長い目で、計画的にプランを実行しなくてはいけません。

社長の役員報酬を決めるルール

役員報酬の決め方の手順と手続き

役員報酬は、自分の会社だからといって、社長が勝手に決めていいものではありません。

会社法で「定款または株主総会の決議によって定める」となっています。

株主総会で決める場合

役員報酬の変更議案を株主総会に提出し、普通決議で可決すれば変更できます。

決議する内容は、変更する報酬額でも良いですし、具体的な報酬額ではなく、役員報酬の算定方法でもかまいません。

定款で決める場合

定款に役員報酬に関する取り決めを盛り込んでおきます。

定款では、全取締役の役員報酬総額の最高限度額を決めてしまいます。

メリットとして、最高限度額以内であれば、取締役会決議により、各人の報酬額を決められます。

その反面、最高限度額を変更する場合は、定款の変更が必要になり、株主総会の特別決議が必要になります。

一人会社の場合

一人会社の場合、取締役会は存在しませんので、自動的に株主総会で役員の報酬を決めることになります。

ですが、一人会社の社長は取締役であり、同時に大株主になります。

社長が提出した議案が否決されることはまずあり得ません。

つまり、社長本人が適正だと考えた報酬を議案として提出し、社長自身が承認する形になります。

注意点:議事録は必ず残す

一人会社でも、通常の会社の場合でも、税務署対策として、株主総会議事録は必ず残すようにします。

株主総会議事録には

  • 開催日時
  • 会場
  • 出席者
  • 総発行株式総数
  • 誰の役員報酬をいくらに変更することになったか
  • 出席者の署名・捺印

を明記します。

なお合同会社の場合は「同意書」という形で、変更内容を記載した書類を用意します。

この場合も出席者の署名・捺印は必要です。

とくに一人会社の場合、株主総会は、形式的なものになるでしょう。

ですが、税務調査など、役員報酬変更の経緯について、第三者に説明することが必要になることがあります。

そのとき、株主総会議事録または同意書がない場合、税務調査に対して変更内容の証明ができないのです。

そうすると、税務署は損金算入を認めるわけにはいかなくなるため、追徴課税をせざるを得なくなります。

ですから、きちんと株主総会議事録を残しておきましょう。

役員報酬が高すぎると「不相当に高い部分」が損金不算入

役員報酬は高く設定し過ぎてしまうと、「不相当に高い部分」は損金(経費)になりません。

高い部分の給料は、法人税と個人の所得税・住民税で2重に取られることになります。

法人税法では

役員に支給した給与の額が、その役員の職務の内容、その法人の収益及び使用人に対する給与の支給状況、類似法人の役員に対する給与の支給状況等から見て、その役員の職務に対する対価として相当であると認められる金額を超える場合には、その超える部分の金額は過大な役員給与として損金の額に算入されない。

No.5211 役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分)国税庁HP

と規定されています。

高すぎる金額は、株主配当と同じような利益処分としての、「賞与に該当する」として会社の損金として認めていないのです。

役員報酬が高いかどうかの判定基準

役員報酬が高いかどうかの判断は、「実質基準」と「形式基準」の2通りの基準によってなされます。

実質基準とは、役員に支給した給与の額が、

  1. 役員の職務の内容
  2. 会社の収益状況
  3. 使用人に対する給与の支給状況
  4. 業種と事業規模が類似の会社が支給している役員給与の額

からみて、妥当かどうか判断されます。

これに対し「形式基準」とは、定款の規定や株主総会などの決議によって定められた、「給与の額として支給できる限度額」を基準にします。

この基準に比べて、役員報酬が妥当か判定されます。

ただし、「形式基準」の場合は、

  • 定款の規定
  • 株主総会の決議

のいずれかがなければ支給することも損金算入もできない点に注意が必要です。

また、株主総会で役員報酬の上限額を決議する際は、上限額に余裕を持たせるようにしておきます。

万が一、役員の増員などで総額が上限を超えてしまいそうなときは、必ず上限額の引き上げを行うようにしておきましょう。

役員給与を決める定時株主総会や、取締役会における決議は、役員報酬額の基準となりますので、きちんと議事録を作成しておく必要があります。

税務署対策には、証拠が何より大切です。

役員報酬の変更のルール

役員報酬は一定のルールを満たさないと、「会社の経費にならない」と法人税法で決まっています。

  • 定期同額給与:事業年度開始の日から3か月以内に役員報酬を確定しなくてはいけない。
  • 事前確定届出給与:株主総会から1か月以内に税務署へ届出る必要がある。
  • 利益連動型給与:同族会社以外で一定の要件を満たした場合のみ。

なぜこのような規定があるかというと、期の途中で役員報酬の変更を許してしまうと、簡単に利益調整ができてしまうからです。

大きな利益が出そうなら、期末に役員報酬を増大すれば、法人税から逃れられてしまいます。

それを避けるためにも、基本、期の途中で役員報酬の変更は認めないことになっています。

役員報酬を変更する場合の手続き

とはいえ、事業開始から3カ月以降でも、条件によっては役員報酬の額を変更することはできます。

会社の状況だって一定ではありません。

大きな変動(取引先の倒産など)があれば、やむを得ず役員報酬を変更しなくてはいけないときもあります。

増額する場合

役員の職制上の地位の変更、その役員の職務の内容の重大な変更、その他これに類するやむを得ない事情等により、役員報酬を改定することは認めています。

たとえば、現社長が退任し、平取締役が社長に抜擢された場合、大幅な地位向上があったと認められ、その際は役員報酬を変更しても良いということです。

減額する場合

役員報酬を減額する場合もルールがあります。

それは

「経営状況の悪化に伴い、第三者である利害関係者(株主、債権者、取引先等)との関係上、役員給与の額を減額せざるを得ない事情が生じた」

場合と、国税庁では定めています。

ただし注意しなくてはいけないのは

  • 経営状況の悪化
  • 第三者である利害関係者との関係性

の2点です。

もし、経営状態がひどく悪くなったとしても、株主や債権者などとの関係に問題が生じていなければ、例外として認めないとっています。

例外として認められるためには、下記のような要件を満たす必要があります。

①株主との関係上、業績や財務状況の悪化についての役員としての経営上の責任から役員給与の額を減額せざるを得ない場合

②取引銀行との間で行われる借入金返済のリスケジュールの協議において、役員給与の
額を減額せざるを得ない場合

③業績や財務状況又は資金繰りが悪化したため、取引先等の利害関係者からの信用を維
持・確保する必要性から、経営状況の改善を図るための計画が策定され、これに役員給
与の額の減額が盛り込まれた場合

引用:役員給与に関するQ&Aより

3カ月を過ぎて、役員報酬を増額・減額して認められなかった場合の説明は、後ほど解説致します。

金銭以外のものでもらう場合

金銭以外で役員が受け取るものでも、「経済的利益」に当たるときは、給与として扱われることがあります。

法人税基本通達9-2-9で、以下の12項目が規定されています。

(1) 役員等に対して物品その他の資産を贈与した場合におけるその資産の価額に相当する金額

(2) 役員等に対して所有資産を低い価額で譲渡した場合におけるその資産の価額と譲渡価額との差額に相当する金額

(3) 役員等から高い価額で資産を買い入れた場合におけるその資産の価額と買入価額との差額に相当する金額

(4) 役員等に対して有する債権を放棄し又は免除した場合(貸倒れに該当する場合を除く。)におけるその放棄し又は免除した債権の額に相当する金額

(5) 役員等から債務を無償で引き受けた場合におけるその引き受けた債務の額に相当する金額

(6) 役員等に対してその居住の用に供する土地又は家屋を無償又は低い価額で提供した場合における通常取得すべき賃貸料の額と実際徴収した賃貸料の額との差額に相当する金額

(7) 役員等に対して金銭を無償又は通常の利率よりも低い利率で貸し付けた場合における通常取得すべき利率により計算した利息の額と実際徴収した利息の額との差額に相当する金額

(8) 役員等に対して無償又は低い対価で(6)及び(7)に掲げるもの以外の用役の提供をした場合における通常その用役の対価として収入すべき金額と実際に収入した対価の額との差額に相当する金額

(9) 役員等に対して機密費、接待費、交際費、旅費等の名義で支給したもののうち、その法人の業務のために使用したことが明らかでないもの

(10) 役員等のために個人的費用を負担した場合におけるその費用の額に相当する金額

(11) 役員等が社交団体等の会員となるため又は会員となっているために要する当該社交団体の入会金、経常会費その他当該社交団体の運営のために要する費用で当該役員等の負担すべきものを法人が負担した場合におけるその負担した費用の額に相当する金額

(12) 法人が役員等を被保険者及び保険金受取人とする生命保険契約を締結してその保険料の額の全部又は一部を負担した場合におけるその負担した保険料の額に相当する金額

引用:法人税基本通達9-2-9

仮に時価を大きく下回る金額で売買すると、差額が課税対象になることがあります。

たとえば、社長個人の資産を、安い価格で法人に売ると、時価との差額について「法人が利益を受けた」とされ、法人税の課税対象になります。

逆に法人から社長個人へ安く売った場合も、「役員賞与を支払った」とみなされ、個人に所得税の負担が発生します。

金銭のやり取りがないからといって、給与課税されないということではないので、気をつけましょう。

役員報酬は期の途中で変更できない

ちなみに、役員報酬には

  • 毎月同額を支給すること
  • 役員報酬は、その期のはじめから3カ月以内に決定すること

というルールがあります。

毎月の報酬額を好きなように変更できてしまうと、その期の終わりに簡単に利益調整できてしまうので、このような2つのルールが存在します。

3カ月ルールを守らなかったときのペナルティとは?

もし、3カ月ルールを守れなかったらどうなるでしょう。

ケース1:期首から3カ月経過後、株主総会で「役員報酬の増額改定の決議」が行われた場合

増額した分が法人税法上の経費(損金)として認められません。

ケース2:事業年度開始から3ヶ月経過後に支給額を減額した場合

逆に、役員報酬の支給額を減額した場合は、減額後の役員報酬がベースになり従来の役員報酬で超過している部分が経費(損金)に認められません。

要するに、会社の損金として認められないだけで、損金に計上できないこと計算の上で増額・減額の変更を行うなら、それはそれで有りです。

社長の手取りを増やす報酬のもらい方

もっとも負担が重い社長の報酬の「もらい方」とは?

余談ですが、社長に役員として支給する報酬には、毎月の給料の「役員報酬」の他に、業績に応じて支給される「役員賞与」、退職時に支給される「退職金」の3つがあります。

この中で一番損なもらい方は、「役員賞与」になります。

なぜなら、役員に対する賞与は、損金(税法上の経費)に認められないので、会社で法人税を支払った後に支給されます。

その後、個人で所得税が課せられます。

つまり、法人と個人で2重に税金を取られるわけです。

一番増える「もらい方」は退職金

それに対し、最も税負担がないのが「退職金」です。

退職金に対する課税は、勤続年数に応じて控除枠があります。

さらにそこから、2分の1課税と優遇されます。

※5年以下の勤続年数は2分の1課税なし。

それだけでなく、退職金は分離課税なので、他の所得(給与など)と合算されませんので、税負担は25%にとどまります。

役員報酬を決める際の3つの注意点

役員報酬を決めるときは、次の3つのことに注意しましょう。

原則、期の途中で役員報酬の額を変更できないだけに、最初の段階でリスクを予想しておくのは大事です。

役員報酬の注意点1:損益計画の予測が狂うと資金繰りに支障が出る

役員報酬は、その期のはじめから3カ月以内に決めなければならない、というルールがあります。

減額する場合は、役員の職務の内容に重大な変更があった場合、会社の経営状態が著しく悪化したなど、厳格なルールに基づいたものでなければなりません。

そのため、期首にある程度正確な、今期の損益を予測しなくてはいけません。

売上が好調なら、その分納める法人税が多くなり、場合によっては法人税を支払うために資金繰りが苦しくなることもあります。

逆に売上が下降したなら、利益が減った分、役員報酬が利益を圧迫(利益に対してもらい過ぎ)することになります。

1年間の業績を正確に予測することはむずかしいですが、当初立てた損益計画が狂うと、納税額に違いがでることは忘れないようにしておきましょう。

役員報酬の注意点2:役員報酬を少なくすると法人税が増える

役員報酬を少なくすると、その分会社の利益が増えるので、法人税は多くなります。

会社の財務体質を強くしたい、設備投資に備えて資金を貯めておきたいなど、経営戦略があるのなら、あえて法人税を支払って、会社にお金を残しておく選択もありまです。

ただ、役員報酬を減らせば利益が増えて法人税は増える。

役員報酬を増やせば利益が減って法人税は減る、という反比例の関係があることは覚えておきましょう。

役員報酬の注意点3:役員報酬を増やすと社会保険料が増える

役員報酬を上げると、社会保険料も上がります。

社長の場合、会社負担分も実質自分で負担していると同じですから、給料の3割が社会保険料で飛ぶ計算です。

東京都の場合ですが、40歳、月60万円の役員報酬なら、労使合わせて

・健康保険料:68204円(個人負担:34102円)

・厚生年金保険料:107970円(個人負担:53985円)

になります。

この負担を大きいです。

社長の手取りを増やすには、法人税節税より個人の所得税対策が重要です

ここまで役員報酬について解説してきましたが、社長の手元にお金が残るのキーポイントになるのが所得税です。

所得税対策をしない限り、社長の手取り収入は増えないのです。

法人税の節税だけでは増えません。

法人税は下げられる傾向にありますが、個人への所得は増税されています。

たとえ法人にお金が残ろうが、法人から社長に所得移転する際に、所得税という形でごっそり持っていかれてしまいます。

要するに、所得税を何とかしないと、社長の個人収入は増えないということです。

結局は所得税で分捕られます

社会保険料しかり、税金しかり、負担が多くなるものばかりですが、法人税だけは下がる傾向にあります。

とはいえです。

会社にいくらお金を残そうが、役員報酬を高くして所得を移転すれば、所得税で持っていかれてしまいます。

所得税は累進課税です。

所得が多くなるほど税率は高くなり、1800万以上の収入で、所得税・住民税を合わせると、50%は税金を納めなくてはいけません。

無題

No.2260 所得税の税率(国税庁HP)

がんばって稼いでも、5割は税金です。

さらに2017年から、年収1000万以上の給与所得控除は、一律220万円に縮小されました。

あるところから分捕る、高額所得者を狙い撃ちです。

要するに、役員報酬を高くするだけでは、社長の所得を増えないということです。

最近では、いたずらに役員報酬を高くすると、社会保険料も高負担になりますので、ただ高くしても意味ないどころか、逆に負担は増えます。

これを利用しないと社長の手取りは増えません

個人への負担は増額傾向にある中、唯一、所得税が大きく軽減される税制があることをご存知でしょうか?

それが退職金です。

退職金には、

  • 分離課税される
  • 課税が2分の1になる
  • 退職控除がある

という3つの大きな特典があります。

その特典を使えば、法人に貯めたお金を、最小限所得税を抑えた形で、個人に移転できるのです。

退職金は文字通り、がんばって働いてきた人に対する「最後の恩恵」ともいえます。

それだけに、税金に関して最小限に済むよう、国からの大盤振る舞いなのです。

逆にいえば、この恩恵がなければ(あるいは使わなければ)、所得税を最小限に抑えて、社長個人へ所得移転することはできないのです。

経営者が「絶対」に知らないといけない金融商品

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余談ですが、小規模企業共済という制度をご存知でしょうか?

中小企業のオーナーであれば一度は聞いたことのある制度でしょう。

簡単にいえば、国が作った役員のための退職金制度です。

で、よく知られることですが、小規模企業共済には、「節税効果」というメリットがあります。

毎月の掛金を所得から控除できるので、たとえば、掛金が毎月5万円の場合ですと、節税額が182500円にもなり、実質417500円で、年額60万円の積み立てが出来ます。

平均利回りに換算すれば、43.7%の高利回りで、マイナス金利といわれるこのご時勢、東南アジアあたりでエビの養殖がうんたらかんたらという怪しげな投資話以外に、これほどパフォーマンスの高い金融商品もないでしょう。

小規模企業共済には、そのほかにも貸付制度があったりして(事業廃止に伴う貸付制度まであります)、ここまではよく知られたメリットです。

小規模企業共済とは(中小機構HP)

しかし、実はあまり知られてないメリットがあります。

経営者を「破産」から守る

それが、小規模企業共済の掛金が、自己破産した場合に「差押さえが禁止されている債権」になることです。

経営者の財布は、個人も法人も同じだったりします。

また、取引先の倒産など、もらい事故のような理由で倒産なんてこともありますので、万が一のときに、差押さえされない財産を持っておくことは、自己を守るセーフティネットとして大事です。

ただし、破産申立時に、すでに解約をしている場合は、預貯金として扱われることになるので、「差押さえが禁止されている債権」には当たらなくなります。

破産時に、小規模企業共済に加入していて、未解約という条件がつきます。

注意点として、差押さえが禁止されているからといって、すべての共済金を自由に使えるというわけではないようです。

そのあたりは、破産処理を依頼する弁護士さんとの相談が必要です。

何にしても、小規模企業共済を、キャッシュを残す手段、いざというときの借りる手段、万が一のとき自己を守る手段として、加入を考えてみてはいかがでしょう?

世の中は、知らないと損することの方が多いです。

まとめ

結局のところ、「最適な役員報酬額」とは、それぞれの社長の事業戦略によって変わります。

ですから、この方法で求めるのが正しいとはいえません。

しかし、基本の求め方はこの記事に書いた通りです。

ただ、一つだけいえることは、役員報酬額が節税目的になってはいけないということです。

節税の目的は、手元のキャッシュを最大化することであって、節税で無駄にキャッシュを減らしてしまっては意味ないです。

節税はあくまで「部分の最適化」であって、「全体の最適化」ではないのですから。

役員報酬を決める際は、この記事を参考にしてみて下さい。

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