運転資金とは

運転資金は、通常の会社運営していくのに必要な資金で、仕入れや諸経費のために使うお金です。

手元のお金が不足して仕入などができない場合、不足部分を銀行融資などでまかないます。

運転資金は

・売上債権(売掛金・受取手形)+棚卸資産-買入れ債権(買掛金・支払手形)

で計算できます。

仮に次のような数値だった場合、必要な運転資金は200万円と算出できます。

  • 売掛金:500万円
  • 棚卸資産:300万円
  • 買掛金:600万円

・500万円+300万円-600万円=200万円

運転資金の種類

一口に運転資金といっても、前向きなものから後ろ向きなものまでいくつかあります。

前向きなものは銀行も貸しやすいですが、後ろ向きなものは当然、借りにくくなります。

借入のポイントは

  • 「○○の資金に使うので○○円貸してください」と「資金使途」を明確にすること。
  • その上で、返済財源の目途があることをきちんと説明すること。

この2つを明確に根拠を持って説明することで、融資の成功率は高まります。

運転資金の申込みの際は、しっかり説明することを忘れないようにしましょう。

経常運転資金

経常運転資金は、仕入れ、生産、販売、回収という営業プロセスのズレから必要になる資金です。

 

通常商売は、商品の仕入れが先にきて、販売代金の回収が後になります。

その間のタイムラグを指します。

経常運転資金が増えると手持ち資金は減ります。

その反対に、経常運転資金が減ると手持ち資金は増えます。

増加運転資金

経常運転資金が増加した場合を「増加運転資金」といいます。

増加運転資金には2種類あります。

1つ目は、回収サイトや在庫期間が長くなり、その反対に支払いサイトが短くなった場合。

これは主に、取引条件の変化によって生じる増加運転資金です。

資金繰りが悪くなる原因でもあるので、あまり喜ばしいことではないです。

2つ目は、売上の増加によるものです。

通常、売上が増えれば仕入れも増えますので、それに比例して運転資金が増加するというものです。

銀行にとって、経常運転資金も増加運転資金も使途が明確なので、前向きにとらえる融資となります。

季節運転資金

季節運転資金は、シーズンによって起こる一時的な赤字を補てんする資金です。

具体的には、決算資金、賞与資金、あるいはオフシーズンでの売上減少など、単月の赤字です。

この運転資金は、赤字の月を黒字の月で補てんする形になります。

したがって、年間通して赤字の会社は、季節資金を借りても返せません。

決算資金や賞与資金は、使途が明確な運転資金ですので、銀行としては比較的取組みやすい融資です。

ただし、季節資金を融資してもらうには、損益計算書の経常利益が最低でも黒字でなくてはいけません。

繰り返しになりますが、季節資金は単月の赤字を埋める資金です。

全体で赤字だと、返済の目途が立たないことは明白です。

また、前々年、前年と、減収減益が続いていると、去年と同じ額を融資しても良いかを検討されます。

立替え資金

立替え資金は、

  • 回収サイトが長くなり入金まで時間がかかる
  • 一時的にだが、大量の在庫を確保しなくてはいけない

など、入金までの時間を補うための資金です。

ここで銀行が何を重視するかといえば、確かな「返済財源」です。

工事代金の立替え資金なら、工事請負契約書の原本を確認、そして工事代金の受取り口座を自行にするよう求められるなどの保全措置が取られます。

後ろ向き資金

後ろ向き資金は次のものがあります。

  • 赤字運転資金
  • 設備資金の借り入れ不足
  • 不良売上げ債権資金
  • 不良在庫資金

上記に該当する後ろ向き資金を申し込まれると、銀行は警戒します。

なぜなら、ほとんどの借入の目的が、事業のマイナス材料の補てんにあるからです。

借入を申し込まれた銀行がチェックするのは次の2点です。

  • 実態ベースで債務超過になっていなか?
  • 黒字体質かどうか?

この2つが大きなポイントになります。

そして借入の理由が、マイナス材料の補てんにあるだけに、銀行から事業の改善計画を問われます。

要するに、返済財源の目途がない(つきにくい)ため、経営計画書を作成して、今後利益を確保できる裏付けを説明しないといけないということです。

貸す銀行にしてみれば、当たり前のことです。

無担保の場合は、審査を通すのがむずかしくなるので、担保を入れたり保証協会を利用したりするこになります。

後ろ向き資金の借入が増えてしまった企業は、毎月の返済額が重くなり、その結果、返済資金を追加融資(ハネ資金、約弁資金)で補うことになり、借入依存体質になってしまいます。

リスケジュールに陥る会社が、その典型です。

銀行から運転資金を借りるつ5のコツ

銀行から運転資金を引き出すためには、次の5つのポイントを押さえておくとスムーズにいきます。

  • コツ1・返済財源を明確にする
  • コツ2・貸借対照表をキレイにしておく
  • コツ3・銀行に対して自分の言葉で業績を説明する
  • コツ4・お金の使い道を明確に説明する(とりあえず貸してくださいはダメ)
  • コツ5・今後の見通しを明確に説明する(事業計画・資金計画)

コツ1・返済財源を明確にする

銀行は「貸したお金が確実に返ってくること」を重視します。

そのため、返済財源が確実に確保できることを証明しなくてはいけません。

運転資金の返済財源は、短期借入と長期借入でそれぞれ違いますので、どちらで借りたかで説明するポイントが変わります。

計画を立て、きちんと返済財源があることを説明しましょう。

短期借入の場合

短期借入とは1年以内に返済するお金のことです。

一般的に運転資金の融資は短期借入で行われます。

短期借入金の返済原資は「売掛金回収額」です。

運転資金発生の仕組みで解説もしましたが、商品・サービスを販売しても、回収まではその代金を立替えておかなくてはいけません。

その資金のギャップを埋めるのが、短期借入によるお金です。

そのため、売掛金を回収すれば、それがそのまま返済財源になります。

赤字の会社での短期借入の運転資金が借りられるのは、間近に「売掛金の回収」という確実な担保があるためです。

長期借入

長期借入とは返済期間が1年を超す借入金のことです。

運転資金は短期借入で行われるのが普通でしたが、最近では長期借入で借りるパターンも増えています。

長期借入の返済原資となるのは、毎年稼ぎ出す損益計算書の、「税引き後当期純利益+減価償却費」です。

この原資を元に、3年なら3年の返済計画を立てます。

「税引き後当期純利益+減価償却費」が返済元本を上回っていれば、毎年の利益で返済していけるということです。

逆に「税引き後当期純利益+減価償却費」が返済元本を下回っていれば、返済計画が回らないということなので、計画を見直さなくてはいけません(見直さないと融資がでません)。

コツ2・貸借対照表をキレイにしておく

貸借対照表は、過去の経営のストック財産を表したものです。

この表を見ることにより、会社の現在の財務状況がわかります。

それゆえ貸借対照表のキレイな会社は、財務状況が良いと判断でき、融資を受けやすくなるのです。

ちなみに、キレイにとは粉飾決算のことではありませんので、誤解なさならいようにお願いします。

コツ3・銀行に対して自分の言葉で業績を説明する

運転資金調達のために自らプレゼンテーションする必要があります。

計画書を渡しておけば終わりではありません。

経営者が自分の言葉で話して、事業の将来ビジョン、返済の確実性を、自信を持って(ハッタリでも)訴えなくてはいけません。

しどろもどろの営業マンからは買わないように、プレゼンの場であたふたして質問に窮するようでは融資はむずかしくなるでしょう。

  • いくら借りたいか?
  • そのお金の使い道は?
  • 借りたお金はいつまでに返せるか?
  • その財源は?
  • その根拠は(事業の将来性)?

上記の質問に答えるには、資料作りをコンサルタント任せにしていてはダメです。

経営者が積極的に関わって、主導的立場で作る必要があります。

コツ4・お金の使い道を明確に説明する(とりあえず貸してくださいはダメ)

資金使途は必ず聞かれる項目です。

さらに、融資の審査にも大きく影響してきます。

資金使途を明確に説明できなければ、財務内容の良い会社でも融資がむずかしくなるくらいです。

銀行が求めるのは、返済の確実性です。

仮に事業資金で融資したのなら、それは事業で返済できると見込んだからでしょう。

にもかかわらず、経営者個人が株で使ってしまったのなら、返済の見込みが立たなくなります。

これは銀行が最も恐れることです。

資金使途違反については、一括返済、または今後の融資不可となりますので、注意が必要です。

コツ5・今後の見通しを明確に説明する(事業計画・資金計画)

繰り返しになりますが、銀行が知りたいのは、「返済の確実性」です。

  • 返済財源はどこなのか?
  • 今後の事業の見通しは?
  • 仮に失敗した場合、どうやって返済するのか?
  • なぜそういえるのか?その根拠は?

ということに答えられれば、返済の確実性を明確に説明することができます。

要するに、「返済が確実な事業計画をきちんと立てているか」ということです。

短期借入で運転資金を借りるならまだしも、長期借入で運転資金を借りたいなら、しっかりした事業計画が必要です。

運転資金の借入の優先順位

運転資金の借入先の優先順位の基本は次の通りです。

1・銀行でのプロパー融資

2・銀行での信用保証協会付き融資、もしくは政府系金融機関での融資

3・銀行でのノンバンク付き融資

4・ノンバンクからの融資、または資産売却(ファクタリング・固定資産リースパックなど)

5・知人からの資金調達

銀行でのプロパー融資を第一にする理由は、プロパー融資には金額の上限がないからです。

それに対し、政府系金融機関、信用保証協会付き融資、ノンバンク保証付き融資は、借りる金額に上限があります。

つまり、まず、プロパー融資が可能なら受けておく。

それで

  • 借入額が足りない
  • 将来の融資に備えて枠を空けておきたい

ときのために、政府系金融機関、信用保証協会付き融資、ノンバンク保証付き融資での融資を残しておくのが基本です。

ただし、保証協会付きや政府系金融機関より、プロパー融資の審査は厳しくなります。

ノンバンクはできるだけ使わないように、優先順位は低くしておきましょう。

プロパー融資、政府系などより金利が高いことはもちろんですが、ノンバンクから借りていることがわかってしまうと、政府系・民間金融機関共に、今後の融資に於いて、審査でマイナスポイントになります。

各借入先の特徴

それでは、各融資の申し込み先についても軽く説明しておきます。

信用保証協会付き融資

プロパー融資を受けられない会社が、次に考える借入先です。

創業したばかりの会社や、創業2~3年など、年数の経ってないところで、銀行からまだ融資を受けたことがない会社は、信用保証協会付き融資、または国民政策金融公庫の国民生活事業で融資を考えるのが基本です。

この融資の特徴は、保証協会が保証人になってくれることで、銀行からの融資を借りやすくしてくれるものです。

そして信用保証協会付き融資への申し込みは、銀行融資へのスタートになります。

ここで躓くようなことがあれば、今後銀行から資金調達する場合、とても苦労することになるということです。

はじめて信用保証協会付き融資に申し込むときは、これからの資金調達がかかっていることを忘れず、慎重に臨みましょう。

政府系金融機関

政府系金融機関は、利益を上げることが目的ではないことに特徴があります。

営利よりむしろ、企業の育成を金融面から支え、経済を活性化させるという使命を持って運営しています。

政府系金融機関の種類には次のものがあります。

日本政策金融公庫(国民生活事業)

小規模企業・自営業者向けの取り扱いが多い。創業者向け融資も出してくれやすい。

日本政策金融公庫(中小企業事業)

国民生活事業よりも大きな規模の企業に対応。設備投資など、金額が大きく返済期間が長いものの取り扱いが多い。

商工組合中央金庫

国民生活事業より、比較的大きな規模の企業に対応。

ノンバンク

ノンバンクで借入れる場合は、なるべく個人での借入を考えます。

会社で借りると、決算書に付随する書類の中で、ノンバンクで借りていることが記載されてしまいます。

銀行、信用保証協会、政府系金融機関は、ノンバンクからの借入を厳しくみますので、今後の審査でマイナスになってしまいます。

しかし、経営者個人での借入なら、会社への貸し付けは「役員借入金」と記載されます。

要するに、決算書を傷めなくて済むということです。

もちろん、経営者の個人情報を見られれば、それはすぐバレてしまうことですが、相手が気づかないのであれば、それはそれでOKでしょう(故意に隠すという意味ではなく)。

このような理由から、ノンバンクで借りる場合は、会社ではなく個人を優先させます。

実際の運転資金の返済の流れをシミュレーション

ではここで、実際の銀行からの運転資金の返済の流れをシミュレーションしてみましょう。

毎年いくら返済して、その結果いくら手元資金が残るか?これを把握してないと、資金繰りはいつまでも改善できません。

それどころか、現実を把握してないのは非常に危険です。

とくに追加融資を受けたときが、実は一番危いのです。

まずは、利益と返済の流れを把握して、

  • 現状の分析
  • 借入が増えることでの資金繰りの状況

などをシミュレーションしてみましょう。

未来を予測することで、資金繰りの悪化を防ぐことができます。

キャパオーバーです

では、シミュレーションしていきます。

次のような損益計算書の会社があったとします。

当期純利益は、108万円の黒字です。

しかしこの会社には

  • 借入残額:1200万円
  • 金利:3%
  • 残り返済期間:10年
  • 返済方法:元金均等

の借金がありました。

残りの運転資金の返済計画は下図の通りです。

 

実は、現在の状態で返済すると、今期で赤字(マイナス12万円)になることがわかります。

企業の返済能力を見る場合、「経常利益+減価償却費-法人税」で限界値がわかります。

この会社だと、この年は約108万円が、返済できる限界となります。

となると、借金の元金部分が120万ありますので、マイナス12万円のキャパオーバーとなることがわかります。

この不足分をカバーするには、どこからかお金を調達してこなくてはいけません。

追加融資で息を吹き返しますが・・・

そこで、銀行と交渉をして、新たに200万の融資をしてもらうことになりました(この状態で追加融資してもらえるかどうかの突っ込みはなしでお願いします。これはあくまでわかりやすい例題です)。

借入条件は以下の通りです。

  • 融資額:200万円
  • 金利:5%
  • 返済期間:5年
  • 返済方法:元金均等

<返済計画>

 

するとどうなるか?

借りた運転資金が入ってきますので、毎年の返済額が増えたとはいえ、その年の資金繰りは一気に楽になります。

借金返済後の手元資金も132万円にまで増えています。

追加融資の罠。5年目にはマイナスという現実

では、このままの売上と利益の状態で、返済を続けていくとどうなるか?

次の年から手元資金は減りはじめ、5年目にはマイナスになることがわかります(追加融資からは4年目)。

銀行からの新たな借入でも、運転資金が増えたことで安心してしまいますが、実は社長に残された期間は3年しかなかったのです。

赤字に転落する前までに、売上を上げるなりコストカットをするなりして、利益が残る体質にして、資金繰りが回るように改善しておかなくてはいけなかったのです。

少なくとも、返済の元金部分を超えるよう、当期純利益が160万以上残るようにです。

これは状況変化のないシミュレーション上のことなので、何も手を打たなければ、現実にはもっと早く赤字になると考えた方がいいでしょう。

まとめ

一口に運転資金といっても、銀行が前向きにとらえてくれるものから、後ろ向きなものまでいくつか種類があります。

それにより、借入の難易度も変わります。

運転資金の借入のポイントを抑えて、融資の審査に臨みましょう。

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